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【定義】

禅宗の特色とされる4つの言葉「不立文字教外別伝直指人心・見性成仏」の一。見性とは、自己が本来有する本性・仏性に気付くこと(=見性)であり、その徹見がそのまま悟りであることを見性成仏という。人間の本性を徹見して覚者となること。

【内容】

元々は、宝亮(444〜509)の撰述といわれる『涅槃経集解』に、「案ずるに僧亮曰く、見性成仏、即ち性を仏と為すなり」とあるのが最初であるという。しかし、六祖慧能の語録である『六祖慧能』の機縁にこれが取り入れられ、よって禅宗の言葉になった。禅では、人間の本性は仏性そのものであり、それ以外に本性として認めるべき物はないという。この仏性を開き現すことを見性成仏という。

自己に執着し、外物に執着する自己の心を徹底的に掘り下げ、自己の本性として見るべき物はないと悟ったとき、その身がそのまま仏であると悟る。これは特に臨済宗の系統では多く用いられており、一方で曹洞宗では道元禅師の批判(『正法眼蔵』「仏教」「四禅比丘」巻)や、瑩山禅師もその様子を『伝光録』第52章で示すなどしたため、多くは用いない。

両祖の見性批判について】

両祖の著作には、見性及び見性成仏への批判が見える。
ある漢いはく、釈迦老漢、かつて一代の教典宣説するほかに、さらに上乗一心の法を摩訶迦葉に正伝す、嫡嫡相承しきたれり。しかあれば、教は赴機戯論なり、心は理性の真実なり。この正伝せる一心を、教外別伝といふ。三乗十二分教の所談にひとしかるべきにあらず。一心上乗なるゆえに、直指人心、見性成仏なり、といふ。この道取、いまだ仏法家業にあらず、出身の活路なし、通身威儀あらず、かくのごとくの漢、たとひ数百千年のさきに先達と称すとも、恁麼の説話あらば、仏法仏道はあきらめず、通せざりける、としるべし。ゆえはいかん。仏をしらず、教をしらず、心をしらず、内をしらず、外をしらざるかゆえに。 「仏教」巻

これは、「仏教」巻の該当箇所であるが、道元禅師は「教外別伝」に関する批判を行いながら、それによって導かれる見性成仏もともに批判している。つまり、この場合、見性として徹見されるのは、「上乗一心」ということになるが、道元禅師はその一心を自己の対象として見ることが出来ないとする立場に立たれているので、見性などありえないことになる。
仏法、いまだその要、見性にあらず。西天二十八祖七仏、いづれの処にか仏法の、ただ見性のみなりとある。六祖壇経に、見性の言あり、かの書、これ偽書なり、附法蔵の書にあらず、曹渓の言句にあらず。仏祖児孫、またく依用せざる書なり。正受・智円、いまだ仏法の一隅をしらざるによりて、一鼎三足邪計をなす。 「四禅比丘」巻

こちらは、中国で唱えられた儒・仏・道の三教一致思想への批判であり、その場合仏教については、見性をもってその代表とすべき言葉と考えられた。よって、三教一致がありえないとする道元禅師は、その代表となっている見性についても、本来の仏教では用いられない言葉であるとして批判されたのである。ただし、一方で、「自賛」にこの語句を用いていることには注意しておきたい。
直指人心、拳頭頂𩕳、見性成仏、鼻孔眼睛、皮を得て髄を得る二三枚、微笑拈華して五葉開く。 『永平広録』巻10-自賛14

見性成仏をもって、自身の鼻孔眼睛とされるので、その概念もまた自身の得た仏法として薬籠中のものとしていた可能性があるといえる。一方で、道元禅師と懐奘禅師による問答でも、見性成仏が扱われた様子が知られる。
時に師聞て承諾し、忽に衣を更て再び山に登らず。浄土の教門を学し、小坂の奥義を聞き、後に多武の峰の仏地上人、遠く仏照禅師の祖風を受て見性の義を談ず。〈中略〉然るに永平和尚、安貞元丁亥歳、初て建仁寺に帰りて修練す。時に大宋より正法を伝て窃かに弘通せんといふ聞へあり。師聞て思はく、我既に三止三観の宗に暗からず、浄土一門の要行に達すと雖も、尚ほ既に多武の峯に参ず。頗ぶる見性成仏の旨に達す。何事の伝へ来ることかあらんと云て、試に赴きて乃ち元和尚に参ず。初て対談せし時、両三日は唯師の得所に同じし。見性霊知の事を談ず。時に師歓喜して違背せず。我得所、実なりと思ふて愈よ敬歎を加ふ。稍や日数を経るに、元和尚、頗ぶる異解を顕はす。時に師、驚きて鉾先を揚るに、師の外に義あり、悉く相ひ似ず。 『伝光録』第52章

これを見る限り、「見性」とは、達磨宗でも用いられていたようで、懐弉禅師は仏地覚晏のもとでそれを悟った。しかし、その見解を持って道元禅師の下に行ったところ、道元禅師に論破された様子が明らかにされている。

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