あにまん掲示板の各種スレッドに掲載されているR-18小説を保管するためのwikiです。

 「なあ、やっぱ無駄だって……さっさと続けようぜ……?」

 「いや! まだもうちょっと……もしかしたら柔らかいとこがあるかもしれないだろ!?」

 そう言って、自分で召喚したアトラの蟲惑魔の体にべたべたと触れる友人の姿を、俺はフィールド越しに――ウィッチクラフト・ハイネの肩越しに眺めていた。

 質量を持つ立体映像――リアルソリッドビジョンが実用化に至ったのは、ずいぶん前のことになる。
 今や誰のデュエルディスクにもリアルソリッドビジョンの投影システムが搭載されており、デュエルを始めればどんなモンスターもカードから実体を伴って現れてくれるが……一部のデュエリストは、共通した小さな不満を抱いていた。

 まず、デュエル中でないと呼べないというのがひとつ。
 それからもうひとつが、今の友人の姿にある。

 「畜生……!! 目の前にかわいい女の子モンスターがいるっていうのに……!!!」

 主人に体をべたべたと触られ、あからさまに不機嫌な様子を示し始めるアトラの蟲惑魔。
 カード一枚一枚に簡素なAIが仕込まれているため、接触に対して反応を返すことはある。それが不躾というか不敬というか、とにかく一般的に失礼なことに値すれば機嫌も悪くなる。
 しかめ面でこちらのハイネを見つめるアトラを見ながら、俺も彼を真似てハイネの手に触れてみた。
 
 「………………硬いんだよな」

 その手は、さながら服屋のマネキンのように硬かった。

 これが、その一部のデュエリストが抱いている不満の理由。
 リアルソリッドビジョンはモンスターに実体を与えるが、その感触はどれも同じで、ほのかに暖かくはあるが等身大のフィギュアのように硬いのだった。
 ブルーアイズホワイトドラゴンの鱗と、アトラの蟲惑魔の肌の感触にまるで違いがないのだ。

 蜘蛛の方のアトラの蟲惑魔に頭をかじられながらうなだれる友人の姿を見つつ、ちらとこちらに振り返るハイネと目を合わせる。
 
 まるでそこにいるかのように微笑みを返す、ウィッチクラフト・ハイネ。触れた手には触れ返し、小さく握ってもくれる。
 けれどもその手の感触はとても硬く、ヒトのそれとは程遠い。彼女はそも、そこにあるがそこにいない、立体映像に過ぎないのだ。

 ――俺の友人のように、初恋をモンスターカードに捧げたデュエリストにとって。
 この、「そこに居るし触れるのに、触っても物足りないし出すのも手間」という実態は、なかなかに酷なものらしかった。


 *


 結局あの後出したヴェールの効果で攻撃力8400になったハイネの一撃でデュエルは終わり、現地で友人と別れた俺は帰路についていた。
 祝日の夕方ともなれば、通りを行く人の流れもまばらになっている。帰ったら何を食おうかと考えていると、道路脇から投影されるビジョンモニターの映像がふと目に入った。
 ――デュエルモンスターズの新弾パックのコマーシャルだ。巨大な城の玉座に女王と思わしき女性が鎮座している。
 脇や肩が露出していて、あと胸もデカい。新弾パックの目玉は、どうやら彼女らしい。

 (増えたなー、かわいい女の子モンスター)

 前々からそういった方向性のモンスターは結構いたのだが、最近はデッキパワーも相まってかなり前面に出てくるようになった印象だ。
 イラストにも気合が入っていて、実際召喚してみるとあまりに綺麗でびっくりするほどだが、デュエルはデュエル、繰り広げられるのはドラゴンとかゴーレムとか機械とのブン殴り合いである。
 今日の俺と友人のように可愛らしい女の子モンスター同士のデュエルもあるにはあるが、それもそれで本気のぶつかり合いに違いはないので、デュエル中に彼女たちを少女として観る余裕などないというのが実状であり、大半のデュエリストが同じことを思っている。
 その中で、尚もモンスターを女の子として好くやつがいることも事実だが……こうしてドヤ顔を見せる胸の大きな女王の姿を見ていても、(確か罠カード主体のデッキだったよなあ)とか、(あいつのデッキとシナジーがあったりすんのかなあ)とか、そういうことばかり考える自分がいて、ある意味では俺よりもあいつの方がデュエルを楽しんでそうな気さえしてきてしまっていた。

 そもそもデュエルが出来なきゃ市民権すら得られない街の住民なのだから、思考としてはその方が正しいはずだが。
 ふと足を止めてデュエルディスクからデッキを外し、六十枚のカードの束をじっと見つめてみる。

 裏返したカードの表面、デッキのいちばん下にあったのは、先のデュエルでも活躍してくれたウィッチクラフト・ハイネだった。
 
 彼女の硬い手を握ってみたことを思い出す。手を伸ばすとそれに応えてくれて、ぎゅっと握り返してくれた彼女の姿。
 基本、デュエルは高速だ。手持無沙汰になってリアルソリッドビジョンに手を伸ばす機会などそうない。
 しかし実際に触れてみると、いくら硬く無機質でも、そこに妙な心の揺らぎを覚えてしまうものだった。

 「………………かわいいんだよな、ハイネ…………」

 普段のデュエル一辺倒の思考をいったん隅に置いといて、改めて彼女のイラストを見てみると、あいつの気持ちもわからなくもなかった。
 ……というかそもそも、俺がこのデッキを握ったのも、パックを剥いて手に入ったカードが『可愛くて強そう』だったからな気もする。
 その考えがデュエル一色に染まってしまったのはいつからだったか。バカみたいに強い環境デッキを差し置いて、それでも彼女たちと一緒に戦うのは、俺自身の愛着以外にも理由があるのかもしれない。

 そんな物思いにふけっていると、道路から警告音が鳴り始め、アナウンスが響いた。

 『当レーンは、ライディングデュエルが開始されます。一般車両は退避して下さい』
 
 「うおっと、危ねえ危ねえ」

 歩道を歩いていた他の人たちもぱたぱたと走り、道路から離れていく。
 よりにもよってこの道で、しかもこんな時間にとは、えらいはりきりボーイが居たものである。俺も走り、近くにあったカードショップのあたりまで退避した。

 「このあたりまで来れば、まあ大丈夫だろ……たぶん」

 距離があっても吹っ飛んだDホイールが飛んできたりすることがあるので、一概に安全とは言い難いが。
 手に持ちっぱなしだったデッキを装填し直して、道路を避けて家に帰るにはどうしたらいいかなと考える。暫くしてから、キン、ヒィン――と風を切るような音が聞こえてきて、変形した道路の上をDホイールが突っ走ってくのが見えた。

 「さてさて、どっちが勝つのやら」

 なんとなしに、電光の輝きをぼうっと見つめていたところ。

 「おーい、おにーさん」

 不意に誰かに呼ばれ、ふっと後ろを振り向いた。
 誰もいない。カードショップの中でくたびれた爺さん店員が頬杖をついているのが見えたが、声色からして彼ではない。
 
 「こっちこっち、こっちだって」

 声のする方を確かめながら足を運んでみると、カードショップの脇、別の店との間にある路地裏から声は聞こえていた。
 体格と不釣り合いな大きさの、ぶかぶかなフードを被った女の子がそこに居た。

 「……え、っと? 君が呼んだの?」

 「そうそう。ちょっとお願いがあってね……」

 「用?」

 何者とも知れぬ人間だが、こんな感じでデュエルを申し込まれることも初めてではない。
 ほとんど反射的にデュエルディスクを構えながら歩き寄る俺を、女の子は、ああ待って待ってと静止した。

 「お願いってのはそっちじゃないよ。……間違いじゃないけど」

 「……? デュエルじゃないなら、何だよ」

 女の子はぱたたとこっちに近寄ってきて、俺のデュエルディスクをまじまじと見つめた。
 それから、うん、やっぱり――と一言。

 「おにーさん…………かわいい女の子のデッキを使っているね……?」

 にんまりと探りを入れるように笑いながら、一言。
 
 「………………そうだが?」

 環境でもないかわいいだけのデッキというのは、わりかし小ばかにされがちである。
 なぜ彼女にデッキの内容が知れたのかは定かではないが、ここで退いてはならない。今時ウィッチクラフトなぞと笑ってきた相手を、俺は例外なくワンターンでねじ伏せてきたのだから。
 主にウィッチクラフトゴーレム・アクセスコードトーカーで。

 すっとデュエルディスクを構え直し、思わず敵意を含んだ眼差しを向けてしまった俺に、女の子はぱたぱたと両手を振る。

 「ああいやいやいや! 下に見るような意図はないんだよ、けっして! むしろそういうデッキの方が助かるっていうか――」

 だからそれを下げて欲しい、と焦りながら示す彼女を見る。どうやら本当にそういった意図ではないらしい。
 何なのかと問う前に、女の子は咳ばらいをひとつしてから。

 「……詳細は明かせないけど、ただいま新型デュエルディスクのテストに協力してくれる人を探しててね」
 
 そう言って、小型の白いデュエルディスクをコートの内側から取り出した。
 見慣れない形をしたそれに、かしんとデッキを嵌め込むと、ディスクを手に持ったまま片手でカードをドロー。

 「とはいっても、これにデュエルの機能は搭載されてないの、まだね。……じゃあ、何の機能のテストかっていうと」

 そのまま、ドローしたカードをフィールドに置く。
 ――瞬間、ふわりと淡い光が放たれて。光が粒子となって散っていくと、召喚されたモンスターがそこにいた。
 女の子と俺の足元。丸っこくて小さな、白い毛皮の……これは……えっと。

 「…………バニーラ??」

 「そ。要するに次世代型リアルソリッドビジョンのベータ版を搭載してるの」

 十数年ぶりに見たわ、バニーラ。
 バニーラはぴょんと跳ねて女の子の肩、頭に飛び乗ってから、俺の胸へ向けて飛び込んできた。

 「わ、っと……!?」

 もふっ、と守備力二千五十のバニラモンスターのダイレクトアタックを受ける。
 思わず両腕で抱きかかえる形になって受け止めたが、存外に重たかった。
 ずっしりとしていて、それでいて毛皮はもふもふ、撫で心地のいい暖かい体をしている。

 …………。
 ん……? もふもふ……??

 「え……あれ、お嬢さん、このバニーラは」

 「言ったでしょ、次世代型のリアルソリッドビジョンって」

 もぞもぞと俺の胸の中で丸まるバニーラを撫でる。毛皮は柔らかく、内側にある骨格の硬さ、それから呼吸して上下する体の動きまでも手から伝わってくる。
 ……これが…………ソリッドビジョン、なのか……?

 「す……ごいな、これ」

 「でしょ? これはテスト機だから投影システムしか搭載してないし、デュエル中に限らずいつでも、高レベルのモンスターだってリリースの必要もなく出せるの。おにーさんには、そのテストを手伝ってもらいたくて」

 女の子がディスクからカードを取ると、バニーラは再び光の粒子に包まれ、今度はふわりと消えていった。
 ……胸にバニーラを抱えていた感触が、まだ少し残っている。あのもふもふとした感触と、呼吸で上下する体と、何よりもほのかな体温。あれが、この新型デュエルディスクが作り出すリアルソリッドビジョンの感触なのか……?

 「っ、いや、けど……こんな性能のデュエルディスクのテストを、俺がしていいものなの……?」

 俺は無名のデュエリストである。ベータテストとはいえ、こんな道端でこんな代物をぱっと寄越されていい人間ではないだろう。
 そう思ったのだが、女の子にとってはそうではないらしく、いいからいいからとぐいぐいディスクを押し付けられ、ほとんど強制的にそれを受け取ってしまう。

 「考えてもみてよ。これがサイバー流デッキとか時械神デッキとか、ヌメロンデッキだったらどうなると思う?」

 「え? いや、それは…………」

 俺はそこで、彼女が俺にこれを押し付けた理由にようやく勘づいた。
 この精度のソリッドビジョンで、サイバーエンドドラゴンやミチオンやシニューニャが呼ばれたら、確かに天変地異もいいとこだ。
 俺のウィッチクラフトなら、呼ばれるのはせいぜいピットレやポトリーにシュミッタ、ジェニーといった女の子たちで…………。

 「…………ちょっ、と待て。それは」

 それは……それで……問題、じゃないか?
 だって、いくらソリッドビジョンとはいえ、これだけ高い精度で女の子が投影されてしまったら。
 それは…………もはや。

 うろたえる俺の心の内を見透かしたように、女の子はにっこりと微笑んで顔を近づけて。


 「だいじょーぶ。だって、ただのソリッドビジョンだよ?」


 その微笑みが、やけに蠱惑的で。
 
 「ただの……ソリッドビジョン」

 「そう。デュエル中に限らず……ていうか、デュエル機能すら搭載してないから、ほんとに、好きなモンスターを、好きな時に呼び出すためだけの……アイテム。ね?」

 そんな……都合のいい道具が。
 都合よく、俺のもとに来ていいもの、なのか?

 「というわけで――試遊のご協力、お願いね?」

 俺が困惑している隙に彼女は、そう言いながら……俺が持ったままのデュエルディスクのモンスターゾーンから、一枚のカードを取り外した。
 
 「ぃ、いや、まだやると決めたわけじゃ――」

 そのカードの裏面を向けたまま、女の子の体が光の粒子に包まれる。
 
 「……はい!?」

 「じゃ、よろしくおねがい。ああ、レポートとかは必要ないから……ホントに、好きに遊んでね?」

 「いや、いやいやいや!? え…………っ」

 伸ばした手が虚空に触れて、目の前から女の子の姿は消え失せていた。
 女の子がディスクにセットしていたデッキと、彼女が取り外したカードと一緒に。

 その場に残されたのは、俺と……俺の手にある、カラになった白いデュエルディスクのみ。

 「…………え……ええ……?」

 俺は、未だに目の前で何が起きていたのかを理解できないまま。
 バニーラを抱きしめていたときのことを反芻しながら。
 自分のデュエルディスクに収まっているデッキの――カードたちの姿を思い浮かべて。

 「…………」

 ……興味。
 そう、興味だ。愛用しているカードたちが、より高い精度で現れてくれることに対する期待と、興味だ。そう誰にでもなく心の内で言い聞かせながら。
 ほんのわずかに、心の底に根付いた欲求の形を実感していた。


 *


 今まで、一度たりとも彼女たちでそういった妄想をしなかったかと問われれば。
 答えは、否である。
 召喚された彼女たち――彼女と、そういった行いをする妄想をしなかったかと、問われれば。
 やっぱり、答えは否なのだ。

 「…………」

 あの後、周囲を走り回ってみたが、この白いデュエルディスクをくれた彼女はどこにもいなかった。
 自宅であるワンルームマンションに帰るころには、外はすっかり暗くなっていて、結局俺は飯も食わずに小一時間このデュエルディスクと睨み合っていたのだった。

 「……いや……でもな……うん……でもなあ…………」

 結局彼女が何者であって、俺に何をさせたいのかとか、これは本当に安全なのかとか、解決しない疑問は多々あるが。
 この、限りなくリアルで精巧なリアルソリッドビジョンを投影できる道具で、好きに遊んで、と言われてしまえば。
 ひとり暮らしの男がすることなど、殆ど決まっているようなもので。
 そもそもこのワンルームの中、フローリングに敷かれたふっかふかの布団の上に呼べるモンスターなど、それこそ限られている。

 「本当に出るのかどうかも……なあ……」
 
 もしかしたらあの子が持ってたカードが特別で、俺は騙されてオモチャを掴まされただけかもしれない。
 彼女がこれを寄越してきたのは、今こうして俺がネットだとかでさんざ見れるシチュエーションを妄想するだけして、騙されて転げる姿を見て笑うためなのかもしれない。
 自分の意思を押し隠すように、そんな建前をいくつも並べれば並べるほど、反比例して胸の奥底の欲望が大きく膨らんで顔を覗かせてくるような気がした。

 ――会いたい。

 会ってみたい。

 あの時抱きしめたバニーラのように、人のそれと遜色ない質感と体温を持った彼女に、会いたい。
 その彼女を目の前にした自分が、いったい彼女に何をするのかと、糾弾するような自分がいて。
 それこそをしたいのだと、バクンバクンと高鳴る心臓がそう叫んでいるような気がした。

 頭の隅にかすかによぎる、蟲惑魔使いの友人の顔を思い出しつつ。
 これがネタなら笑ってくれ、ガチだったらごめん――と、心の内に謝りながら。
 
 「…………ウィッチクラフト・クリエイションを……発動……」

 デッキを広げ、その中にある彼女を手札に加え。
 泣き虫のくせに凛々しい表情を見せる彼女を、ディスクにセットする。


 「ウィッチクラフト・ハイネを…………手札から……召喚……ッ!」


 コウン、と。ディスクが起動した音がしてから、ぎゅっと閉じていた瞼の向こうから、まばゆい光が差し込んでくる。
 しばらくして、光が止んで。部屋を照らす電光の明かりだけが残ったと、そう感じてから目を開けたとき。

 「………………?」

 「くぅ……くぅ…………」

 俺の目の前には。
 ぺたんと膝を畳んだ、女の子座りのまま、寝息を立てているハイネがいた。


 *


 いくつものベルトでフロントを閉じた黒い衣服が、胸元だけは押さえきれずに開いており、真っ白い胸の谷間が覗いている。
 上半分は露出し、下半分はインナーと思わしき布で包まれているが、実際にそれを目の前にして、改めて圧倒された。

 「……で…………っか……」

 いや、ハイネのおっぱいでっか。彼女より大きい女の子モンスターは確かにいるが、今の俺の目には彼女のそれしか入ってこない。
 寝息を立ててわずかに胸が上下するたび、ほんのわずかに揺れている。片目を隠す前髪も、ゆらり、ゆらりと体に合わせて振れる。
 しかし、なんでそもそも寝ているんだろう。それも座ったまま。理由はわからないが、とにかく召喚したからには彼女に触れてみないことには始まらない。
 
 たった今投影された、新次元のリアルソリッドビジョンである彼女。
 そう、彼女はソリッドビジョンだ。投影された場所だって、俺の部屋だ。
 だから、本来はマネキンのように固いそこに触れたところで、誰に咎められるわけでもない。

 意を決して、手のひらでそれを包んだ、瞬間。
  
 「はっっ…………??」


 "む、んにゅぅ…………うっ……♥"


 手のひらに、服の生地のすべすべした感触と、体温と、その奥の柔らかさがいっぺんに伝わってきて。
 ハイネのおっぱいをわし掴んだ自分の手を見つめながら、俺は、情けなく放心していた。

 「……ん…………」

 ハイネはまだ眠っている。わずかに手のひらを動かせば、手全体に胸の感触が伝わってくる。
 あの時触れた手のひらとまるで違う――ここまで大きいものを揉んだ経験はないが――生の人間のそれと遜色ない、暖かみと柔らかさ。
 我慢できずにもう片方の手でもその胸に触れてしまう。こんなことをしていいわけがないと、ずっと圧し留めてきた欲求の箍が簡単に壊れて、彼女の体を夢中になって手のひらで貪ってしまう。

 "むにゅぅぅう……っ♥ むに、むにっ……ぎゅっ、むぅ……♥"

 「ん……ぅ、…………ん……ぇ……?」

 まずい。これは、まずい。止めようがない。
 手のひらへの感触だけでもとっくに理性を壊されているというのに、無意識に体を近づけると、香りまでもが鼻腔から浸食してきて、脳を蕩かしていく。
 女の子の香り、としか言いようのない匂い。それに加え、近づけば近づくほど、当然ながら彼女の顔が近くなり。唾液でてらりと光る柔らかそうな唇だとか、わずかに開いた瞼だとか、視界が、とにかく彼女の顔に埋め尽くされていく。
 ハイネの顔はこんなに可愛らしいものだったのか。かわいい。とにかく、顔がいい。
 うたた寝をする少女のおっぱいを両手で鷲掴みにしながら、息を荒くして彼女の唇を見つめる俺の姿は、変態としか言いようがないだろうが。

 「え、っと……あれ……? 私……いつの間に寝て――」

 彼女は俺が召喚した、俺のモンスターだ。
 だから、何の問題もない。


 『だいじょーぶ。だって、ただのソリッドビジョンだよ?』


 「……へ? え、っ、ゃ…………!?」

 何をしようと問題はない。
 だって彼女は……俺のものじゃないか。


 目を開き、一瞬驚愕したような表情を見せた彼女を、俺は。
 布団の上へ、うつ伏せになるように押し倒した。


 *


 「きゃぅ…………っ!!?」

 小さな悲鳴をあげて、少女にしては大きめのハイネの体が倒れ伏せる。
 普段俺が使っている布団の上に、ハイネが寝転がっている。膝をつき、持ち上がった大きなお尻を俺に向けて。
 黄色と金色の中間の色をしたタイツで包まれたそこを撫でれば、タイツの触感と内側の柔らかな尻肉の感触が伝わってきて、自然と息が荒くなってくる。

 「んぃっ!!? ちょ、ちょっと、どこを触ってっっ……!? ぃ、いえそれよりもっ、誰なんですか貴方、なんで私、こんなとこにっ…………!?」

 胸はもちろん大好きだが、タイツ越しに撫でるお尻もなかなかどうして、心地いいものだ。
 次世代のリアルソリッドビジョンを堪能しつつ、ふとハイネが困惑していることにようやく気付く。

 「ふーーっ……ふーーっ…………!」

 怯え切った表情で、涙を浮かべながらこちらを睨んでいる。
 デュエル中であれば絶対に見ることのない、自身の相棒の姿と表情。
 ずきりと罪悪感が心に傷をつけるが、それ以上の背徳感で体が動く。
 
 ――少し冷静になって考える。これが本当のハイネだったら、まずこちらに反撃を試みるだろう。
 彼女の攻撃力はレッドアイズと同等であり、ぶん殴られれば俺はまず生きてはいまい。
 つまり、この状況を覆すことは、彼女にとって容易なはずだ。それでもなお、こちらにお尻を向けたまま、睨む以外のことをしてこない、ということは。

 「ひ……っ!? や、止めてっ、止めてくださいっ……!!?」

 彼女のタイツを引き延ばし、ぐっと力任せに左右に広げ、びりびりと破く。
 内側にある黒い下着と、真っ白な地肌が露わになり、尚もぶるぶると震える以外のことをしてこないハイネを見て確信する。
 ああ、やっぱり彼女はソリッドビジョンだ。この反応も、拒みはせど明確に危害を加えようとしないことから、AIによる自動的な対応なのだろう。
 友人の頭を甘噛みしていたアトラの蟲惑魔とさして変わらない、ということだ。

 しかし、相手がAIならば、こういったマイナスに転じる行動ばかりしてもいられない。
 俺はハイネの背中に覆いかぶさって、彼女の頭の横に肩肘をつき、その手で彼女の頭を軽く抱き寄せて。

 「な……何なんですか、貴方っ、さっきから……! やだ、いや……!!」

 「いつもありがとう、ハイネ」

 「………………はい……?」

 カードにはさほど複雑なAIは仕込まれていない。
 デュエル中に感謝の言葉や好意を伝えれば、転じて機嫌をよくしてくれるし、喜んでもくれる。

 モンスターを撃破して得意げに振り向く、あの笑顔にいつもかけていた言葉。
 それとは別の、もっと踏み込んだような言葉すら、俺は不思議と口にしてしまっていた。

 「好きだ」

 「…………〜〜〜〜っ!??!?」

 「ハイネは可愛い。すごく可愛い。それと強いから、俺はハイネが大好きだ」

 「はい……はいっ…………!!??」

 我ながら歯の浮くような言葉だが、実際のところ本心だった。
 テーマで言えば彼女たちよりも強いデッキは大量にある。お世辞にも、彼女たちは物凄く強いとは言い難いが。
 構築とプレイング次第ではどんな相手にも噛みつき、紙一重で喉笛を食いちぎれるポテンシャルを秘めた彼女たちが、彼女が、俺は好きなのだ。
 
 汚く濁った欲望に身を任せて、さらけ出して、ようやく悟った簡単な理由。
 
 そりゃあ。
 好きな子相手にこんなことをすれば、罪悪感だって背徳感だって、すさまじいものだろう。

 「……そ……んな、こと……ぃ、言われ……ましてもっ」

 俺の枕を涙でぐしょぐしょにしながら、ハイネがもぞもぞと俺から目線を外す。
 感触もさることながら、動きひとつとってもリアルなものだった。
 これがソリッドビジョンでなく、本当の彼女であったらよかったのに。

 「わ、たし……困りますし……そのっ……」

 しかし、これはこれで、困惑する彼女の態度に少し煩わしさを覚えた。
 そりゃあそんな反応もなるだろうが、せっかくソリッドビジョンなんだ。もう少し都合のいい反応でも良かったじゃないか――などと思いつつ、空いている手を彼女の背中の上で滑らせて、黒い下着の下に忍ばせた。

 「ひっ……!!? …………ぁ」

 ――にぢゅ、り。
 と。
 感じたこともない熱さと、ぬるりとした柔らかい感触があった。

 「…………」

 よくよく見てみれば、ハイネは泣きじゃくりながらも頬から耳までを真っ赤に染めている。
 
 「……ちが、これは……違っっ」

 「ハイネ」

 もう一度、顔を彼女の耳元に近づけて。
 それと同時に、あまりにもリアルで心地いい感触の、ぐちょぐちょに濡れそぼった膣内ににゅるりと指を侵入させた。


 「好きだ」


 「〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!♥♥」

 口にした瞬間に、膣内がぎゅうと締まって中指を締め付けた。
 すぼめた口に思い切りしゃぶりつかれて包まれるような、熱さと柔らかさに満ちた感触が襲ってくる。

 ああ、そうか、なるほど。
 下の口では――とかいう、その。

 ありのままの好意を伝えれば、簡単に股間を濡らしてくれる。
 ――『遊ぶ』にあたり、これほど都合のいいこともあるまい。

 「……ゃ……やだっ……言わないで、言わないでっっ…………」

 大した経験もないが、ぐぢゅぐぢゅと膣内で指を動かしてみる。
 愛撫というより、弄ぶ。ぎゅっと締まる膣内の脈動と膣肉の感触があまりに心地よくて、もっと感じていたくなる。

 「私、私っ、ぜったいにヘンでっ……! ぁ、あなたのことっ、何にも知らない、はず――なのに……っっ」

 「ハイネ」

 「ぁ――――っっ♥♥」

 名前を呼ぶだけですら、彼女の膣内はぎゅうと反応した。

 「……本当に可愛いな、お前……」

 「〜〜っ……♥ やだ、やめて、言わないでっっ……♥♥ ぉ、お願いします、から……っっ」

 止めてと言われ、俺は体を起こし、ぬるりと彼女の膣から指を引き抜いた。
 その手で自分の股間を取り出せば、何をされても射精しそうなほど、先走りでドロドロになった自分の竿がぶるんと現れる。
 それを、彼女の股間に押し当てて。

 "ぐぢゅ…………っ"

 「ひ――――っっ!!?」

 恐怖に満ちた、けれどどこか嬌声のようでもある小さな悲鳴をハイネがあげる。
 ぐ、っと下着を引き延ばし。その奥にある秘裂を、じっくりと観賞したい気持ちを押し殺し。
 
 もはや声すら上げず、真っ赤に染まった顔のまま、涙を浮かべてこちらを見つめ。
 ふるふると黙って首を横に振るハイネと、目を合わせる。

 思いとは裏腹にひどく反応を示す自分の体と、俺に恐怖しているのだろうか。
 泣き虫の彼女は本当によく涙を流すし、その泣き顔があまりにも可愛らしくて。

 ――ソリッドビジョン相手じゃなけりゃ、童貞卒業なんだけどな。

 そんなことを考えながら。

 「…………ぁ」

 親指で押し広げた、だくだくと透明な汁を流す膣穴に先端を押し当てて。
 そのまま、ぐっと強く押し付けた。

 「ぉ゛っっ――」

 "にゅ、ぐっっ……つ、ぷっっ…………♥♥"

 粘液と粘液がぶつかり合って、はじけて。
 肉と肉が絡み合って、溶け合うような快楽。

 "ばぢゅんっっ!!!♥♥"

 「あ゛――…………ッッ♥♥」

 がくがくと、びくびくと痙攣する彼女の腰を、両手で鷲掴みにして。
 俺は俺の相棒を、エースを、大好きな女の子を。

 ウィッチクラフト・ハイネを、犯した。


 *


 一切の容赦も躊躇もなく、膣口をこじ開けながら膣奥を突き上げたソレによって、私の処女は呆気なく散らされた。
 
 「――ぁ…………あ゛ッッ――――♥♥」

 幾度となく頭の中で弾ける快楽信号が、私の口からまともな言語を奪い去る。
 お腹の奥に溜まっていた空気が、喉を通って押し出てくる喘ぎ以外、私には口にすることが許されなかった。
 
 「〜〜〜〜っっ…!!! なん、ッッだ、これ……!! キ、ッツ…………ぅ……!!」

 自分の意思とは裏腹に、その侵入をこの上なく悦んでいる自分の体が、心を置き去りにして一方的に絶頂を繰り返す。
 度重なる膣痙攣は、さぞ彼にとっては心地いいと思う。私だって、イきたくてイってるわけではないのに。

 ぼやける思考でどうにか経緯を思い出す。
 私。私は、そう、ついさっきまで仕事に勤しんでいた。 
 姿を消したマスターの分までどうにか私が頑張ろうと、たしか、寝ずの夜を二回ほど越えたと思う。

 たぶん、その無理がたたって、ほんの休憩のつもりで座り込んだ体勢のまま、眠りこけてしまって。

 ――目が覚めたら、どことも知れない場所で、誰かもわからない人に襲われていた。
 そして、犯されている。

 「はぁっ、はぁぁ……っっ!! ソリッドビジョンのくせにっ、エグいまんこしやがって……!! オナニー出来なくなるだろ、こんなの……っっ!!」

 「ん゛ぅっっ!!♥♥ ん、んっっ、ぁ、あ゛っっ、あ゛!!♥♥」

 ……確かに、自慰の頻度は減っていたけれど。
 私は、こんなにも、感じてしまうような体だったっけ……??
 
 疑い、考えようにも、膣奥を突き上げられるたびに思考が快楽に塗りつぶされてしまう。
 とめどなく溢れる唾液と涙で――恐らくは彼の――枕をぐしゃぐしゃに濡らしてしまいながら、ひとかけらの体力も残っていない体で、暴力的な快楽を受け入れることしかできない。
 ばちゅん、ぱちゅんと、肉と粘液がぶつかり合って弾ける音がする度に、体ごと心と頭を犯されていく。
 侵されて、いく。

 「っっふーーー……♥♥ っふーー…………!!♥♥ ッッ!!!?♥♥ んぎぅっっ……!!!♥♥」

 「ああくそ、もう出るっっ、締め付けすぎなんだよ、畜生っ……!! もっと、もうちょっと、ハイネのまんこっ、楽しみたい、ってのに……!!」
 
 彼に。
 彼に、染められる。

 いや、違う。
 染められるのは……私に?

 子宮が疼く。頭が蕩ける。彼に犯されるほど、尚も体が彼を求めていく。
 駄目。それ以上求めたら駄目。求められるだけなら被害者でいられるけれど、求めてしまっては。
 求めてしまっては、本当に――。

 「出すっ、出すぞ……!! ハイネ、ハイネっっ!!!」

 「〜〜〜〜〜〜〜〜っっ♥♥♥」

 名前を。宣言される度に、心が安らいでいく。
 彼に名前を呼ばれるだけのことの、どこに安らぎを覚えているのだろう。
 容赦なく私を犯してくる腰使いからは、避妊という二文字の要素など感じられなくて。
 たぶん、このまま、彼は果てる。私の中で。私を感じて。私を犯す快楽で、私で果ててくれる。

 私は。
 私の膣が、彼に快楽を与えているという事実に、ひどく悦んでいる。

 (出しちゃ駄目、出しちゃ駄目出しちゃ駄目っっ、妊娠する、私――妊娠させられるっっ、そんなの、絶対駄目、駄目っっ…………)

 そんな思考が、彼に通じるわけもなく。

 「イっっ――く……!!! ん、っっぐ!!!」

 (駄目――――ぁ………………♥♥♥)

 
 "どくんっっ……どくっ……びゅく……びゅる…………っっ♥♥"

 「んぃ゛っっ!!! ――――ぁ……♥ ……はぁぁあぁああぁああっっ…………♥♥♥」
 

 ひときわ強く、腰を打ち付けられた後。ぴたりと、腰が止まって。
 密着したまま、膣内でびくびくと彼の欲望が脈打った。

 私は、それを。当然のように、受け入れていた。
 甘美な飴を、舐めしゃぶるように、味わうように、惜しむように。

 「ふーーっ…………ふーーっっ…………!」

 (……駄目……って……言っだ、のにぃっっ…………♥♥)

 未だ硬く勃起したままの、彼の肉棒にしゃぶりついていた。

 「はぁぁ……くそ……!! おかしいだろ……この精度っっ…………」

 どさりと、彼の体が私の背中に覆いかぶさった。
 布団と体に挟まれて、その温かさと密着感で再び絶頂しそうになる。
 
 快楽に呑まれ、情けなく膣内射精を受け入れてしまった私の耳元で、彼はぽつりと呟いた。


 「……これが、ソリッドビジョンじゃなくて……本物のハイネだったら、なぁっ…………」

 
 …………。
 それは。どういう意味なのだろう。

 ――ほどなくして、再び彼が抽送を再開する。
 たった一度の射精では満足していないらしい。絶頂の余韻も抜け出ていない弱った膣を突かれると、そろそろ本当に死んでしまいそうになる。

 「ぁ゛っっ……♥♥ ぉ、っっぎゅ♥♥♥」

 「ぁ、っこら……締められたら、またっ……!! ソリッドビジョンの癖に、ッ――!!」

 「ッッ!!?♥♥ 待っ、せめて休まぇ――――〜〜〜〜ッッ!!!♥♥」

 どぢゅっっ……と、突くというより押し潰される形で、強く膣奥をえぐられる。
 さっきとは体勢が変わり、もっと深いところにまで届いてしまうから、潰れるような下品な声ばかりが漏れてしまう。

 「休ませて欲しいのはこっちだっつの……!! 滅茶苦茶に締め付けてきやがって、くそっっ……ハイネがこんな、オナホみたいなまんこしてるわけないだろ……っっ!! もうちょっと考えてソリッドビジョン作れっつの……!!!」

 「――――ッッ♥♥ ち、が…………♥ わたし、ほんもっっ――ぉ゛っっ♥♥♥」

 "どすっ、どぢゅっっ、ず、ずんっっ、ずぢゅ、どぢゅっっ……!!♥♥"

 「ん゛んぅぅぅぅぅぅぅうううっっ!!?!♥♥♥」

 わずかに口にできた言葉も、彼が叩き付ける快感で嬌声に塗りつぶされる。
 
 「ふぎゅっ……ふーーっっ!!!♥♥ ぁ、あ゛っっ、あ゛ーーーーーっっ!!!♥♥」

 「あーーーーっっ出る、出るっ!! もう出るっ、くそ、またイくっ……!!! ハイネもどきのまんこでイかされるっっ……!!!」

 「もどぎっっじゃなぅっっ!!!♥♥ ぉお゛っ、ぁ゛ーーーーっっ♥♥♥」

 突然、不意に背中を彼に抱きしめられる。
 布団と体の隙間に指が入り込み、ぎゅっと彼のお腹が背中に押し付けられる。


 "びくんっっ――びくん、びくっ、びゅく、びゅぶるる…………っっ♥♥"


 ずん、と彼の体の重みを感じた後。
 絶えず絶頂し続ける子宮の口に、二度目の精が注がれた。

 「〜〜〜〜〜〜っっ…………♥♥♥」

 ぐる、ん――と。瞳が自然と、上を向く。
 気持ちいい、の奔流に、呑まれすぎて、何も考えられなくなる。
 
 気持ちいい、気持ちいい……気持ちいい。嬉しい。好き。大好き。
 
 そんな、自分のものでないはずの、自分の気持ちが湧き出て止まらない。
 未だ射精を続けている彼が、私の後頭部に顔を埋めて、もごもごと呟いた。

 「ハイネっ、ハイネ……好きだ、大好き……ほんとに、マジで、好きっっ……くそ……」

 好意を耳にする度に、心が熱く満たされる。
 
 私は。
 そのあたりで。

 視界の端に、床に転がった道具らしきものを、見つけて。

 「…………」

 「本物なら……本物ならよかったのにっっ……ハイネで童貞卒業して、ハイネとセックスしてえぇっ……」

 その道具に、乗せられた。

 一枚の、『私』の姿を、見つけた。


 *


 ……さすがに、抜かずの二発はマジでこたえた。

 あまりに興奮しすぎて、ハイネの髪に顔を埋めながら変なことを口走る。
 ハイネの形をしたリアルソリッドビジョンとのセックスに、本当のハイネとのセックスを思い描いてしまう。
 さすがに、さすがにマズいだろ。いくら身近だとて、彼女らはカードの中の存在だ。

 彼女の髪から顔を離し、ふるふると頭を振って、冷静に徹しようと試みる。
 あまりアツくなりすぎては駄目だ。これはオナニーだ。あのデュエルディスクからカードを離せば、彼女は消え去る。
 彼女……というか、等身大のハイネのオナホか。

 ようやく萎えた自分のモノをずるりと引き抜き、膝立ちになってハイネを見下ろす。
 倒れ伏したままの彼女の左肩を掴み、ぐいと仰向けに転がせる。

 「…………っ、……っ」

 ぶるん、とおっぱいが揺れる。
 ハイネは両腕で自分の目元を覆い、しゃくり上げて泣いていた。
 泣き虫とは聞いているが、さすがに泣きすぎではないのか。寝バックで犯しているときはあれだけ乱れていたくせに。

 体勢のせいで触れることすらままならなかったそこに、改めて手を伸ばす。
 最初のような抵抗はもう無かった。両手で彼女の胸を鷲掴みにして、ぐにゅぐにゅと揉みくちゃにして感触を堪能する。

 「っ……ん……、……っ…………」

 ぴくん、とハイネが体を小さく反応させた。
 大きくて、柔らかくて温かい。手を離すことが惜しくてたまらなくなるような彼女のそれを味わっていると、吐き出し尽くした精がふつふつと蘇るようだった。

 見たい。
 脱がしたい。
 それから、しゃぶりつきたい。

 俺の……俺だけのリアルソリッドビジョン、俺専用のハイネの体に、俺はいつの間にかひどく惚れ込んでしまったようだった。
 彼女の服を留めるベルトらしき部位をぎゅっと握り、ぐっと下へと引っ張る。


 …………脱げない。

 「……痛い…………」

 ……ソリッドビジョンにすら文句を言われてしまった。
 こう見えて絶妙にぴったりなサイズに仕上がっているらしく、なんとかして留め具を外す必要があるらしい、が。

 ……外し方が、わからない。

 「ハイ、ネ…………」

 自分で外してもらおうと、彼女の顔に目を向けたとき。

 いつの間にか目元を覆っていた腕がずれて、その奥から彼女の瞳がこちらを見ていた。
 その眼差しに、少しだけどきりとする。

 「……あの」

 その顔が。

 「見たい……ん、ですか」

 あまりにも、ヒトらしかったから。


 いや、そんなはずはないだろうと自分に言い聞かせようとして。揉むのを止めて手を乗せたままの彼女の胸から、リズミカルな振動がすることに気づく。
 どく、どく、どく、どく。
 ひどく小刻みで早い振動。
 いや、違う。これは。
 彼女の瞳から視線が外れれば、今度は彼女が顔を押し付けていた俺の枕が目に入る。

 ……なんで。ソリッドビジョンの涙で、枕が濡れている?

 デュエルの演出の一環で、水飛沫が飛び散ることはままあるが、それらが実際に影響を及ぼすことは無い。質量を持つとはいえ、あくまでも「もどき」であるためだ。でなければフィールド魔法を使ったが最後、どんな街も伝説の都アトランティスと化す。
 だから。だからソリッドビジョンの体液で、こうなるはず……が。

 「ねえ」

 心臓が跳ねる。
 ハイネの瞳は、やっぱり俺を見ていた。

 「…………見たい」

 かろうじて、俺は答える。

 「……偽物でも?」

 口の中がカラカラになる。
 もしかすれば、と。
 俺は取り返しのつかないことをしているのではないか、と。
 考えるよりも先に、口が動く。

 「本物でも……偽物でも、いいから」

 「ハイネのおっぱいが……見たい」

 言い終えてから、俺はようやく気づく。

 そもそも、俺の股間がぐちょぐちょの愛液まみれになっていることが、すでにおかしかった。
 ソリッドビジョンが体液など分泌するはずもない。あったとしても、それは演出であってこんな働きはしない。
 彼女を襲うことばかり考えて、まったく思考が行っていなかったが。
 そもそも。


 『ホントに……好きに遊んでね?』


 彼女は、あのデュエルディスクからカードを取り去って、消えていったのだから。
 俺が話していた彼女は紛れもなく、彼女、本人だった筈だ。
 なら。カードを乗せて呼び出される、『極めて精巧なリアルソリッドビジョン』の、正体は。


 ――彼女の手に、胸から手をどけてくれ、と促され。
 名残惜しさを覚えつつも手を離すと、目元にあった片腕で、ハイネは自分の服の留め具をかちりと外した。
 するりと、彼女の服が緩まる。
 そこで一度、彼女は自分の手を止めた。

 「…………あの」

 涙を浮かべた瞳を、こちらに向けて。
 恐らくは……羞恥を堪えているが故の、荒い呼吸の合間に、俺に話しかけてくる。

 「……笑わないで……ください、ね」

 そう言って、少しずつ服を左右に広げながら、くい、と引っ張った瞬間。

 
 "ぼるんっっ…………♥♥"


 窮屈だったと言わんばかりに、服を押し出して彼女の胸がまろび出た。
 じっとりと汗ばんで、てらてらと光る白い肌と、その先端の深い桃と橙の中間色。
 大きく膨らんだ乳輪は乳頭を包み、横に一筋の線を作り出していた。

 陥没乳首。
 俗に、彼女のような胸をそう呼ぶことを知っている。

 「はっっ」

 あまりの不意打ちに、素っ頓狂な声が上がり。
 先程までの疑念と相まって、とっくに硬さを取り戻していた股間にドクドクと熱が集っていく。

 「……笑わないで、って……言ったのに」

 真っ赤に染まった顔をぷいとそむけるハイネ。
 いや、違う。この声は、嘲ったのでは、なく。

 「〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!」

 「へ……?」


  "びゅくっ……!! びゅる、びゅるるっ、ぱたたっっ……!!♥"


 「ぇ……あ、あれ、なんで……え……??」

 黒い服に、白濁が散る。
 笑う、どころじゃない。エロい。あまりに、卑怯というか、不意打ちと、言うべきか。
 彼女が本物かもしれないと疑った矢先に、本物のハイネのおっぱいが陥没乳首だなんて知ってしまっては、尋常でないほどの興奮が背中を走ってしまって。

 手も触れないまま。
 興奮だけで、射精した。

 「…………」

 今、何が起こったのか。
 それを口に出さずとも、今の俺がどんな気持ちでいるのかを、ハイネは察したらしく。
 目元を隠していた両腕が、するするとそこを離れて。俺を受け入れるように、頭の上へと移動した。

 そうして、差し出されたおっぱいを前にして、すべきことなど決まっていて。
 
 「……ふー……ふーー……っ、ふーーっ…………♥」

 体をかがめて、口が彼女の胸へと近づくほど、彼女の吐息が荒くなっていくのがわかる。
 
 「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ……♥ ふぅっ…………♥♥」

 胸を、ぎゅむっと横から握り。親指と人差し指の間から、乳肉が溢れるような形に歪ませて。
 つんと前に突き出した、それでも隠れたままの乳首に向かって口を開けて。


 「ん゛――――っっっ♥♥」


 思い切り、むしゃぶりついた。


 *


 「ん゛、ひっ……♥♥  ぁ……っっ♥♥」

 大きく膨らんだ、胸全体に対して広めの乳輪を口の中で弄ぶたび、ハイネが柔らかな嬌声をあげる。
 犯していた時とは別の、より色っぽい声。それが聞けることがあまりに心地よくて、味のしない乳首に懸命にしゃぶりついてしまう。

 「ぁ、あっっ、んっ、んっっ……♥♥ ふっ、ふっ、ふっ……!!♥ ん゛……っっ♥♥」

 味はしない。しないが、しかし。
 美味しい、と表現する他ない。
 彼女のおっぱいは揉んでも心地いいし、口に含んでも心地いい。ずっと揉んでいたいし、ずっとしゃぶっていたい。それだけの魔性の魅力がある。
 舌の表面でざりざりと乳輪の表面を撫ぜるが、乳首には届かない。どれだけ深く埋没しているのかが気になって、舌を伸ばし、より奥の部分……粘性の強い唾液が分泌される部分でそこを撫ぜた。

 「はぁ……はぁ……っ♥ っ、懸命に、吸ってくださって……ほんとに、好き、なんですねっ…………?」

 好きだ。おっぱいというかおまんこというか、とにかく、ハイネが好きだ。
 いい具合にふやけてとろとろになったそこに、今度は力を込めた舌先をずにゅりと差し込む。

 「んっ……? ぁ……あ、だめ、まって、そこはだめっっ、だめ…………っ!!」

 ずぶずぶずぶっっ……と、舌先が乳首に埋まっていき。案外すぐに、こつん……と一際硬い部分に舌が触れた。

 「あ゛ッッ!!!?!!?♥♥♥」

 思わず耳を塞ぎそうになる、大きな嬌声が響く。
 構わずそこに埋めた舌をぐねぐねと動かしつつ、じゅるじゅると乳輪ごとしゃぶり続ける。舌先に当たる特別硬い乳頭の感触が、あまりにも心地いい。

 「ぁ゛、ぁひっっ、ひ、んっっぎゅ、んぃ゛っっ!!!♥♥♥ 待っ、待っ、知らな、ごんなのっっ、知゛らなあっっ!!!♥♥♥」

 彼女は自分でここを弄った経験はあるのだろうか。
 どちらにしろ、誰かの舌を差し込まれた経験はあってほしくなかった。
 彼女が本物だろうが偽物だろうが、今だけは、俺だけのハイネであってほしくて。
 俺が舌を動かす度、下品に喘ぐ彼女の姿をずっとずっと独占していたかった。

 「イ゛っっぐ、イぐっ、イがされるっっ、おっぱいだけでイっちゃ…………!!! ――――っっ」

 イく、と聞こえたので。
 つぽん、と舌を窮屈な陥没穴から引っこ抜いて、唾液でぬるぬるのそこだけを残した。

 「え…………ぇっ、なん、で…………」

 ひどく名残惜しそうな彼女の声がたまらなく愛おしい。
 愛おしくて、今度はまだ口をつけていない方の乳首に口を近づける

 「っっ!!? 待って待って待って待って待っぁ゛っっ!!!!!♥♥♥」

 にゅるん。と、今度は早かった。
 さっきと同じく、やっぱり同じように乳首を探し当てて、盛り上がった乳輪に舌をぎゅうぎゅうと締め付けられながら舌を動かすと、こりこりとした心地いい硬さの先端があって、そこをいじめると彼女が喘ぐ。

 「ぁ゛♥♥ あ゛っっ♥♥ ぉ、ひっっ…………♥♥♥ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ♥♥♥」

 かちかちと歯が鳴る音が聞こえる。食い縛ろうとして、痙攣でわずかに開いてしまうのだろうか。生憎と女ではないので、腟痙攣の感覚はわかったものでは無いけど、ハイネが気持ちいいならなんでもよかった。
 
 ほどなくして、またハイネが絶頂しそうになったので、つぷんと乳首から舌を引き抜く。

 「〜〜〜〜〜〜っっなん…………で……ぇっ…………♥♥♥」

 とろとろと陥没乳首から俺の唾液が溢れ出す。
 これだけ唾液を塗りたくれば十分だろう。
 ぼたぼたと大粒の涙を流し、もどかしさで腰をくねらせる彼女の期待に応えるため。

 "むにゅうぅうっっ!!♥♥"

 「ひぅっっ…………!?♥」
 
 両手を使い、人差し指以外で彼女の両方のおっぱいを掴み。
 伸ばした人差し指で、唾液でとろとろになったそこに、ちょんと触れる

 「――――ぁ」

 瞬間、ハイネは俺が何をするのかを察した様子で。
 唇をきゅっと結び、ふるふると首を横に振ったが、その眼差しは期待に満ちたもので。

 「ハイネ」

 「〜〜〜〜っ……♥ はいっっ……!?」

 「……何なんだよ、このエロい乳首は……? ただでさえでっかいおっぱいのくせに、乳首までこんなとか、卑怯だろ……!?」

 「ひ、卑怯って、言われても……!? だっ、だって、ぅ生まれつきですからっっ……」


 "づぷっっっ♥♥"
 

 「ん゛ぎぅっ!!!?!?♥♥」

 口答えするなと、言うように。
 人差し指を陥没乳首にねじ混んで、奥の乳首に指先の爪を押し当てる。

 「まんこの具合は最高だし、顔は可愛いしおっぱいはでかくて陥没だしっっ、盛るのもいい加減にしろ、この女っ……!! エロいんだよ、馬鹿!!! 見ただけで興奮して射精させられたぞ、このっっ!!!」

 「っそ、それは、わたし、関係な――――お゛っっ!!?!!?♥♥♥ ぉ、お゛っっ、あ゛っっあっあっあっあっあっ!!!!♥♥♥」

 そのまま、ぐにゅぐにゅと。
 揉みくちゃにしながら、埋めた指を前後に動かして、硬い乳首を逃げ場のない乳肉の中でいじめ抜く。
 弄られ慣れていないらしい乳首はそれでも大いに感じるらしく、犯していた時よりもずっと淫らな声でハイネがよがり狂う。

 「あーーーっっかわいいなお前ほんと可愛いっっ!! 大好きだ馬鹿!!! もっと喘げ、おっぱい弄られてイけよ、ド変態っっ!!!」

 「だっっぃすきっで言わないでっっ今やばっほんどやばっっ!!!!♥♥♥ やだっっイぐっイがされぢゃっっ!!!♥♥ 乳首弄られるだけでイがされぢゃぁぁぁあ゛ぁぁああぁぁっっっ!!!!♥♥♥」

 嬌声を張り上げながら、乳首で指をしゃぶりながらハイネが絶頂する。
 がっくんっっ、びくんっっと跳ねる腰に自分の腰を押し当てて、ぶしゅぶしゅと精液をこぼしながら潮を噴く彼女の股間に、興奮させられっぱなしのソコを思い切り押し付けた。

 「ぁ゛ひっっっっ!!!!!!♥♥♥」

 "にゅるんっっっ♥♥ ずぶっぢゅっっ♥♥"

 絶頂の最中にある彼女の膣へは、滑り込むように簡単に挿入できた。
 おっぱいをいじめながら、感触を楽しみながら、彼女をよがらせながらの挿入。もののついでと言わんばかりに、絶頂の最中にあろうがお構い無しに、彼女の膣を使える快楽。
 乳首への刺激だけでイき狂いっぱなしの彼女の膣は、腰が砕ける、どころではなく。
 腰が融けてなくなったんじゃないかと思えるほどの快楽で。

 「駄目っっぞれ駄目っ今は駄目っっっどっぢもぁだめぇぇ゛ええぇえっっ!!!♥♥♥ ぉ゛っっお゛っおっおっおっぁっっあ゛っっあ゛ひっっっ!!!♥♥♥」

 「うるさい馬鹿、お前のおっぱい気持ちよすぎなんだよ!! オカズにするからオナホぐらい使わせろっっ!!!」

 "ばぢゅっっばっぢゅっっばぢゅんっばぢゅんっずぢゅっずちずちずちずちずちっっっ♥♥♥"

 融けて、ゼリーのような快楽の塊になった腰をぶつけて、彼女のお尻にぶち当たる衝撃で形を取り戻して。
 引き抜いて、また融けて、突いて、戻って。
 何度も、何度も、何度も何度もそれを繰り返し。
 埋めた指で乳首を滅茶苦茶にしながら、指四本では揉みきれないおっぱいをこねくり回し、彼女の嬌声で耳を支配される。

 涙でぐちゃぐちゃになった顔が愛おしい。
 絶えず嬌声をあげる姿が愛おしい。
 好きだ、好き、彼女が好き、好きでたまらない。
 だから犯す。彼女が偽物だろうが本物だろうが、誰だろうと関係ない。

 俺だけのハイネ。
 ウィッチクラフト・ハイネを、ただ犯す。

 「っっっ出す、出すぞハイネっっ、ハイネ……!! イく、イぐっ……!! オナホまんこにイかされるっっ……!!!」

 「ぉ゛なほっっじゃなっっぁぁあっっ!!!♥♥ 出す、ならっっ、せめ、でっ……ん゛、んっっ、ん、んっっうぅぅぅうっっ!!♥♥」
 
 何度も白目を向きかける瞳を、懸命にこっちに向けるハイネ。
 何を求めているかは簡単にわかったし、俺もしたいことだった。

 初対面で胸を触って、それから犯して、胸を弄って、また犯して。
 滅茶苦茶なまぐわいばかりをしてきて、出来ていないこと。
 ふつう。たぶん。
 好きな人を相手に、いの一番にすべきこと。

 「出るっっ、ぃ、っっぐ…………!!!!♥」

 「も、ぃぃっ、出しちゃえ、出しちゃえぇっ、ばかっっ……!!!♥♥ ん、んぶっっ!!?」

 射精の瞬間に、彼女の体に覆いかぶさり。
 その口と、自分の口を重ねる。
 そして、吸い付く。しゃぶりつく。思い切り、ねぶる。

 「んっっ、む、んぢぅ……っ!!」

 「っん、ん、ん゛ーーーっっ!!!♥♥ んんんぅぅううぅうううっっっ!!!!♥♥♥」


 "びゅぐっっっ!!! びゅぐ、びゅる、びゅるるるっっ…………どくんっ……どくっっ…………!!!♥"


 背中と、腰に。彼女の、腕と、脚が、絡んでくる。
 ……のを。
 かろうじて、感じて。

 融けて、ゼリーのようになった、腰を、快楽の塊を。
 思い切り、全部。

 ハイネの膣内に、流し込んだ。


 *


 …………。

 あれから、結局。
 何度彼女に射精したか、覚えていない。

 最終的には、どちらともなくへたり込んで、抱き合う形で布団の上で眠りこけて。

 目が覚めた時には、彼女の姿は無かった。


 「…………」

 ひどい目覚めである。
 時刻はもう昼を過ぎていた。

 (休日で…………よかった…………)

 ろくに毛布も被らず寝たはずが、何故か俺の体はきちんと布団に包まれて寝ていた。
 ……というか、布団が違う。これは来客用の予備の布団ではないのか。

 ベランダに目をやると、普段使いの布団が干されていた。

 扉一枚を隔てる狭いキッチンの方から、物音がする。

 「……………………」

 昨晩、少女にもらったデュエルディスクには、まだ一枚のカードが表側表示でセットされたままだった。


 がちゃり。
 扉が開き、背の高い少女が顔を覗かせた。


 「あ」

 「…………ぁ」

 「……こほん。おはようございます。きちんと眠れました?」

 「え……あ……はい。……おかげさまで」

 「よかったです。私もさっき起きた所だったので……お昼、すぐ用意しますね」

 「……おかまいなく…………?」


 ぱたん。
 扉が閉じる。

 再びひとりになった俺は、床に置かれっぱなしのデュエルディスクを取って、じっと見つめてみた。

 先程、キッチンの方から顔を覗かせた彼女。
 ウィッチクラフト・ハイネがそこに居た。

 (カードを外せば……いなくなる、けど)

 これを寄越してきた少女を思い出す。

 (置きっぱなしだと……ずっと……ここに、召喚されっぱなしになる…………のか……)


 冷静になって思考を働かせれば、俺がした所業に俺自身が圧し潰されそうになるので、考えを止めつつ。
 デッキから何枚かカードを取り、表側にして布団の上に並べていく。

 隣の芝刈り。
 モンスターゲート。
 名推理。
 ウィッチクラフト・クリエイション。
 冥王結界波。

 ウィッチクラフト・ジェニー。
 ウィッチクラフト・エーデル。
 ウィッチクラフト・シュミッタ……。

 ……ウィッチクラフトマスター・ヴェール。
 

 俺はヴェールを手に持って、ひっそりと、しかし深く謝罪の意を示した。


 (本当に……本当に……申し訳ありません……ウィッチクラフトマスター…………)

 (……あと)



 『童貞卒業はフレシアの蟲惑魔って決めてんだ!! お前も先越してウィッチクラフトで童貞卒業したら許さねえぞマジで!!!』

 『越せるか馬鹿。できるわけねえだろ』
 
 

 (ごめん――)

 「――先、越しちゃった………………」


 ぽつりと、ついでに謝っておいた。



 *



 「はー……畜生……あいつ、容赦なくハイネでぶん殴ってきやがった……」

 ぷらぷらと一人で歩く帰り道。
 道筋は決めていて、人の流れの激しい繁華街を避け、店と店の間をするすると抜けていく。

 「けど、諦めねえぞ……きっと何か、裏技みたいなのがあるはずだ……でなきゃ」

 左腕のデュエルディスクにセットされた、四十枚のデッキから一枚ドロー。
 引いたカードは、トリオンの蟲惑魔。

 「リアルソリッドビジョンとかいう、到底エロいことにしか使われないような技術は生まれてねえ……!!」

 グッとガッツポーズを決める、蟲惑魔デッキのデュエリストがひとり。

 「おにーさん、ちょいちょい」

 その背後から、声をかける少女の姿。

 「ん……? あれ、何? デュエルかい、お嬢さん?」

 「んーん。用はそれじゃなくてね――」

 
 

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