最終更新:ID:YoFMyMqr0g 2022年07月22日(金) 13:12:01履歴
作者:るにゅやんたん
教導の騎士フルルドリス。
3つの神器を使いこなす誇り高き教導軍の騎士長であり、四肢に4つの聖痕を持つ聖女でもある私は現在──
「はぁ…………。」
自室のベッドに座ったまま、何度目になるかわからない溜息を吐いた。
脳裏に昨日の出来事が蘇る。
===
日課の鍛錬を終えて、エクレシアとの待ち合わせの場所へと向かうと、彼女に小さな女の子が花をプレゼントしている場面に出くわした。
『エクレシアさま、あの…えっと、これ!』
女の子は顔を真っ赤にして緊張した様子で震えながらも、摘み取ったばかりの可愛らしい白い花を差し出していた。
対するエクレシアは目を丸くして驚いていたが、すぐに優しい笑みを浮かべてその子の頭を撫でた。
『ありがとうございます。とっても綺麗なお花ですね?』
その言葉を聞いた瞬間、女の子の顔はパァッと明るくなった。
『ふふっ、良かったですねエクレシア。』
私がそう声をかけると女の子がこちらに振り向く。
そして私の顔を見てギョッとした表情をした。
『きゃああああっ!?フ、フルルドリスさま!?ご、ごべんなざい…。」
『な、泣かないでください、姉様は別に怒ってないですからね?ほら、涙を拭いて……』
慌てて泣き出した女の子にエクレシアがハンカチを渡してあげるのを見ながら私はオロオロするしかなかったのだった…。
===
「後ろから急に話しかけた、鍛錬直後で雰囲気が怖かったかもしれない、元々目付きが鋭い……理由は幾らでも思い付きますが……流石に子供に泣かれるのは堪えますね…。」
思い出すとまた落ち込んでしまいそうになる。
「いえ、落ち込んでいる場合ではありませんね。未熟な点があるのならば努力し、改善していけば良いのです!」
気合いを入れ直し、姿見の前に立つ。
「ふーむ…やはり全体の雰囲気が怖いのでしょうか?」
鏡の前で様々なポーズを取りながら、自分の顔や身体を見る。
高い身長、鍛え上げた肉体、長い髪、鋭い眼光…どうもこの見た目が子供達には威圧感を与えてしまうようだ。
「やはり形から入るべきでしょうか……?」
自分の中で最も人懐っこく柔らかい雰囲気の持ち主…エクレシアを想い浮かべる。
「取り敢えず髪型から真似てみましょうかね……?」
休日のエクレシアのように髪を2つに結えてみる。
「おぉ、これは中々悪くないのではないでしょうか?」
クルクルと回って自分の姿を眺める。
我ながらなかなか似合っているように思う。
……まぁ、エクレシアの可愛さには遠く及びませんが……。
「こうなると服も可愛げのあるものにしたいところですね………ああ、そういえば…。」
ふと先日誤発注で届いてしまった服を思い出し、クローゼットを開ける。
「確かこの辺りに……」
奥の方にあった箱を取り出し、中にあった服を広げる。
「まさかこれの袖を通す日が来るとは思いませんでしたが毒喰らわば皿までと言いますし、物は試しということで……。」
決心を固め、服を着替えると鏡の前に立つ。
「おお…これはかなり良いのではないでしょうか?……あとは何か可愛いらしい仕草を……えーっと…。」
熱に浮かれたような状態で脳をフル回転し、乏しい知識からどうにか可愛らしく見える動作を模索する。
「こほん!……ル、ルンルンル〜ン!フルルです〜♡」
時間が止まったような気がした。
先程までの熱がサッと引いていつもの冷静な自分が戻ってくる。
「何やってるんですか私は……。」
恥ずかしくて死にそうだ。
こんなことなら最初からしなければよかったと後悔すら湧き上がる。
「自室で良かった。これを誰かに見られたらと思うと……ん?」
鏡越しにいつの間にか部屋に入っていたエクレシアと目が合う。
「あっ、えっと、ノックをしても返事がなくて、昨日あんなに落ち込んでたから何かあったんじゃって思って、それで、えっと……。」
しどろもどろになり、手をわたわたしている。
「……エクレシア、いつから見ていたのですか?」
「えっと、それは……『コホン!』からで……えーっと、とても可愛いと思いましたよ?」
天から竜が落ちてきても声を上げずに撃墜するであろう聖女はこの日、生まれて初めて悲鳴を響かせるのだった………。
教導の騎士フルルドリス。
3つの神器を使いこなす誇り高き教導軍の騎士長であり、四肢に4つの聖痕を持つ聖女でもある私は現在──
「はぁ…………。」
自室のベッドに座ったまま、何度目になるかわからない溜息を吐いた。
脳裏に昨日の出来事が蘇る。
===
日課の鍛錬を終えて、エクレシアとの待ち合わせの場所へと向かうと、彼女に小さな女の子が花をプレゼントしている場面に出くわした。
『エクレシアさま、あの…えっと、これ!』
女の子は顔を真っ赤にして緊張した様子で震えながらも、摘み取ったばかりの可愛らしい白い花を差し出していた。
対するエクレシアは目を丸くして驚いていたが、すぐに優しい笑みを浮かべてその子の頭を撫でた。
『ありがとうございます。とっても綺麗なお花ですね?』
その言葉を聞いた瞬間、女の子の顔はパァッと明るくなった。
『ふふっ、良かったですねエクレシア。』
私がそう声をかけると女の子がこちらに振り向く。
そして私の顔を見てギョッとした表情をした。
『きゃああああっ!?フ、フルルドリスさま!?ご、ごべんなざい…。」
『な、泣かないでください、姉様は別に怒ってないですからね?ほら、涙を拭いて……』
慌てて泣き出した女の子にエクレシアがハンカチを渡してあげるのを見ながら私はオロオロするしかなかったのだった…。
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「後ろから急に話しかけた、鍛錬直後で雰囲気が怖かったかもしれない、元々目付きが鋭い……理由は幾らでも思い付きますが……流石に子供に泣かれるのは堪えますね…。」
思い出すとまた落ち込んでしまいそうになる。
「いえ、落ち込んでいる場合ではありませんね。未熟な点があるのならば努力し、改善していけば良いのです!」
気合いを入れ直し、姿見の前に立つ。
「ふーむ…やはり全体の雰囲気が怖いのでしょうか?」
鏡の前で様々なポーズを取りながら、自分の顔や身体を見る。
高い身長、鍛え上げた肉体、長い髪、鋭い眼光…どうもこの見た目が子供達には威圧感を与えてしまうようだ。
「やはり形から入るべきでしょうか……?」
自分の中で最も人懐っこく柔らかい雰囲気の持ち主…エクレシアを想い浮かべる。
「取り敢えず髪型から真似てみましょうかね……?」
休日のエクレシアのように髪を2つに結えてみる。
「おぉ、これは中々悪くないのではないでしょうか?」
クルクルと回って自分の姿を眺める。
我ながらなかなか似合っているように思う。
……まぁ、エクレシアの可愛さには遠く及びませんが……。
「こうなると服も可愛げのあるものにしたいところですね………ああ、そういえば…。」
ふと先日誤発注で届いてしまった服を思い出し、クローゼットを開ける。
「確かこの辺りに……」
奥の方にあった箱を取り出し、中にあった服を広げる。
「まさかこれの袖を通す日が来るとは思いませんでしたが毒喰らわば皿までと言いますし、物は試しということで……。」
決心を固め、服を着替えると鏡の前に立つ。
「おお…これはかなり良いのではないでしょうか?……あとは何か可愛いらしい仕草を……えーっと…。」
熱に浮かれたような状態で脳をフル回転し、乏しい知識からどうにか可愛らしく見える動作を模索する。
「こほん!……ル、ルンルンル〜ン!フルルです〜♡」
時間が止まったような気がした。
先程までの熱がサッと引いていつもの冷静な自分が戻ってくる。
「何やってるんですか私は……。」
恥ずかしくて死にそうだ。
こんなことなら最初からしなければよかったと後悔すら湧き上がる。
「自室で良かった。これを誰かに見られたらと思うと……ん?」
鏡越しにいつの間にか部屋に入っていたエクレシアと目が合う。
「あっ、えっと、ノックをしても返事がなくて、昨日あんなに落ち込んでたから何かあったんじゃって思って、それで、えっと……。」
しどろもどろになり、手をわたわたしている。
「……エクレシア、いつから見ていたのですか?」
「えっと、それは……『コホン!』からで……えーっと、とても可愛いと思いましたよ?」
天から竜が落ちてきても声を上げずに撃墜するであろう聖女はこの日、生まれて初めて悲鳴を響かせるのだった………。
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