ずんだハザード
最終更新：
spacezunda581 2023年02月04日(土) 12:11:42履歴
作者 スペースずんだ 
『北大西洋、北極圏に存在する幻の島...イームサ島。
19世紀末、数多の探検家が開拓の為にこの島に訪れた。しかし、この島は夏の季節でも平均気温が氷点下を超える事はなく、植物は苔すら根付かず、地球上の生命が生存するにはあまりにも過酷な場所であった。』（豆打書房『この世で最も寒い島』より引用）
それから暫くして...やがてこの島の存在が忘れられてゆき、世界地図からも消えようとした頃、とある製薬会社がこの島の土地を丸ごと買い取った。
その製薬会社の名前はズーン製薬。
ずんだ虫関連の製品を販売、生産している。
そう、ズーン製薬にとって『あらゆる生命を拒絶するこの島』は『あらゆる環境に適応する化け物』の管理に最適だったのである。
20□□年XX月〇〇日
イームサ島 ずんだ虫研究所
研究員ずん『ふう、今日の実験終わりなのだ！』
料理人ずん 『お疲れ様なのだ！コーヒー淹れたのだ！人工栽培で品質管理された最高のコーヒー豆を使ったのだ！』
『ｽﾞｽﾞｽﾞ...うまい！料理人ずんのコーヒーはいつも美味しいのだ！』
『ありがとうなのだ、例の研究も大詰めだって聞いたから、腕によりを掛けたのだ！』
『ああ、ずんだ虫競技用の品種を"改良"してずんだ虫の環境適応能力の謎を解明する研究の事だね』
『僕は料理以外からっきしだけど、研究員ずんの研究が上手くいけば僕だけじゃない、多くの人ずんがより良い生活ができるのだ！だから応援したいのだ！』
『うん...』
（ずんだ虫の放牧による品種改良）
ずんだ虫は元より繁殖力が強く、性成熟を迎えたずんだ虫の雄雌は交尾を行い一度に数匹の子ずんを出産する。
更にずんだ虫は直ぐ異なる遺伝子のずんだ虫同士と交尾し合い、"雑種"を産む。
これらの生態がずんだ虫の品種改良を困難にしていた。
だが、厳重に隔離された場所や過酷な環境の場合はその限りではない。
狭い空間に閉じ込められたずんだ虫は近親との交尾を行う確率が非常に高くなるのだ。
そしてこの島は環境的に『閉じ込められている』
放牧をしつつ品種改良をするには最適なのだ。
しかし近親交配による改良には問題点も多く...
研究所 ずんだ虫飼育場
研究員ずん『（最近、たりないずんだ虫が増加しているのだ...）』
『（それ以外にも、枝豆耳が全く生えないヤツや、目が一つのヤツ、ずんだ虫と人ずんのあいのこみたいなのもいるのだ...管理人は何を考えているのだ...）』
『（こんなのが増え続けたらいずれこの島はゾンビパニックならぬ、ずんだパニックになるのだ...いやいや、それはありえないか...だってこいつらにはそんな知能は無いんだもの）』
研究員ずんは一人で思考し、一人で納得した。
そして仮眠室に行き、泥のように眠った。
その頃、新種のずんだ虫の隔離場所にて
ハーフずん『オトウチャ、オカアチャ、ボクたちはイツからココにイルノダ？』
緑色の異形の巨人が、子供のような無垢な疑問を血の繋がる家族に投げかける。
ママずん『おちびちゃんが産まれるずっと前からよ。』
パパずん『パパのおじいちゃんから聞いた昔話だと、僕たちの家族のご先祖さまは元々別の場所から連れてこられたのだ』
ハーフ『ソウナノダ？ボクたちもソトにデタイノダ！』
パパずん『だめなのだ！あいつらに見つかったら大変なことになるのだ！パパのパパもそれで見つかって...』
ハーフ『オジイチャ、あのヒトガタにツブサレタのだ？ユルサナイノダ、ユルサナイノダ』
緑の怪物を閉じ込めていた強化アクリルの檻がギシギシと怪しげな音を立てる
ハーフ『かぞくヲキズツケルニンゲン、ユルサナイのだ』
パパずん『おちびちゃん！ダメー！！』
パパずんの悲鳴も虚しく、透明な檻は破られてしまった。誰でも通り抜けられるように
【緊急事態発生！緊急事態発生！】
管理ずん「『新種』のずんだ虫の親子が隔離部屋から脱走したのだ！警備員のみんなは外へ繋がるZ区域の入り口を封鎖するのだ！」
「また、研究所内に居る研究員、その他人ずんは避難用シェルターに逃げるのだ！これは避難訓練ではないのだ！！」
「繰り返す！これは避難訓練ではないのd...」
誰かいる 生存本能が警鐘を鳴らしている。
突如アナウンスを止めた管理人ずんが謎の気配を感じて振り返った。
放送室の入り口には...
ハーフずん『ミツケタ...』
あいつがいた
管理ずん「あ...あ...」
管理ずんの股下から茶色い液体が流れ落ちる...
醤油のような匂いがするその液体を垂れ流しながら非常口から出ようとすると、ハーフずんが管理ずんの腕をへし折った。
『オマエがボクのカゾクをコロシタノダ？』
「ア...ガ...ち、違うのだ！！あんなクソみたいな生き物！！何度も殺処分してるクソったれだから覚えていないのだ！！あ」
『ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ』
「アガガガガガガ！！」ﾍﾞｷｬｯ
管理人ずんの首が棒アイスのようにへし折れた。
_
研究所 仮眠室
「...きて...」
「...やく...きるのだ...」
『うーん...』
料理人ずん「起きて！！」
研究員ずん『うわぁ！！』
『なんなのだ...人がせっかく気持ちよく寝てたっていうのに...』
料理人ずん「それどころじゃないのだ！！」
「今隔離されていた新種ずんだ虫が脱走して大騒ぎになってるのだ！」
研究員ずん『脱走だと？あれだけ頑丈な檻から逃げられる奴なんて...まさかアイツが！？』
『こりゃまずいことになったのだ！！』
料理人ずん「早く避難シェルターへ！！」
2人は全速力で走る
しかし研究員ずんはシェルターへの道とは反対の方向に進み出した
「何をしてるのだ！？早くこっちに！」
研究員ずん『よく考えるのだ、逃げ出した奴は強化アクリル板すら簡単にぶち破る様な怪物。仮にシェルターに逃げ込もうが、奴はいずれ僕たちを見つけ出して殺されるのがオチなのだ...』
料理人ずん「ならどうすればいいのだ！？」
研究員ずん『奴を駆除するのだ！』
料理人ずん「それならずんジェットはどうなのだ？」
研究員ずん『研究所の非常用スプリンクラーにはずんジェットに近い成分のガスを噴出する機能があるッ！でも奴の図体では効き目が薄い！！ガスの成分が全身に回るまで時間がかかるからなのだ！』
料理人ずん「一体どうすればいいのだ...」
研究員ずん『確かこの研究所の地下にはズーン製薬の試作した製品を保存している倉庫がある！そこに向かうのだ！』
研究所 地下倉庫
『着いたのだ！』
『この倉庫の奥に...あれがあるのだ...』
研究員ずん『発売されたが...余りの効力に回収騒ぎになるまでに発展し、ズーン製薬から存在ごと消された曰くつきの対ずんだ虫用最終兵器...その名も』
『『ずんアクティブ！！』』
その時、倉庫の壁の一部が轟音と共に破壊された
ハーフずん『『GAAAAAAAAAA!!!』』
研究員ずん『出やがったな化け物め...』
料理人ずん「怖い...の...だ...」
研究員ずん『料理ずん、ここは僕が奴を引きつける、その間に君はシェルターに逃げるのだ。』
『ずんアクティブはずんだ虫が近づけば近づくほど効果が高まる...しかもこれは試作品...市販された物よりも大幅に出力を上げたものなのだ。仮に最大出力まであげたら君も僕もただじゃすまないのだ』
料理人ずん「で、でも！そんな事をしたら貴方が！」
研究員ずん『わかってる、でもこれはアイツを産み出した僕なりのケジメなのだ。』
『そして...君が無事逃げられたらここで起こったことを皆に伝えるのだ...さあ、急ぐのだ...早く！！』
料理人ずんは階段へと走った
研究員ずん『さあ来い！俺はどこにも逃げ隠れしないぞ！存分に復讐してこい！』
ハーフずん『KWAAAAAAAAAA!!』
研究員ずん『この研究所で産まれた闇を消し去るッ！！ずんアクティブ！出力最大！！』
_
その後、この研究所は封鎖された。
研究所を捜索したずんだもんの報告によると、中で管理していたずんだ虫は全員何故か原型を留めないほど肉体が崩壊しており、特に地下倉庫に居たと思われるずんだ虫は緑色の水溜りとなっていた。
上層部はこの事態を重く見ており、この事件で死亡した2名の人型ずんだもんを手厚く埋葬した。
私は今、ズーン製薬を退職し故郷に帰り家族の経営するずんだカフェを手伝っている。
ずんだ餅を持ってくるため冷蔵庫に行くと、下にずんだ虫が居た。
(ずんだもち！おいちーのだ！)
（ずーん...ずーん..!）
彼らと私たち、祖先を同一とする種族が、いつ何処で違ってしまったのだろうか。人間に害をなすずんだ虫を殺す為に、何も悪事を働いていない無害なずんだ虫を殺してもいいのだろうか...
彼らもまた必死に生きていたというのに...
おわり
このページへのコメント
とりあえずマメカスは見つけ次第無差別に殺せ
あのバケモノ、毒や刺激物による攻撃が通じなかったのだ...やつを倒すには細胞ごとドロドロに破壊する装置が必要だったのだ...
ずんアクティブ結局回収騒動になってて草www
にしても、あんなバケモノ創って何するつもりだったんだろ…?あんなにも強大なら脱走と同時に麻酔やら睡眠薬、あとは七味唐辛子などの殺処分する仕掛けとか設置しろよ……。
それと"耳の生えない個体"や"一つ目個体"、"虫と人のハーフ"ってのもどんな姿なのか気になるなぁ!!