こんにちは。
今回の読み切りは、昨年の11月に投稿いたしました『妖精人間』のアナザー・ストーリーとお考え下さい！（一部、内容重複してます）
そちらも合わせて読んでいただけると、より楽しめるかと思われます！
※『妖精人間』シリーズの元ネタは、むらさき様のR-18Gイラスト『むらさきが描いたやつまとめ15』より、『おじさんにおうち取られたのだ』です。素晴らしいイラストをありがとうございます！
………………
「出てけっ！クズ妖精！！ここはお前らの家じゃねえよ！！」
「のだぁっ！いちゃいいちゃい！」 どさどさっ……
焼き鳥屋の店主が怒鳴り、追い立てられた妖精たちが通りに転がり出てくる。
この町ではもはや、珍しくない光景だ。ここ数か月で、町で目撃・駆除される妖精の数は以前の3倍にも増えた。
そして信じ難いことに、どの妖精も、口々に同じことを言うのである。
「おやまさんにあるぼくたちのおうちさんが、くちょにんげんにのっとられたのだ！！」
無論、人々はそれを信じるわけもなかった。自分たちの利益のためなら平気でウソをつく妖精のことだ。その言葉をまんまと信じるお人好しも、そういるものではない。
「バカ言うなよ！同情を誘おうったってそうはいかないぜ……だいたい、わざわざお前らの巣を乗っ取ろうなんて物好きはいねえよ」
「くちょにんげんは、いつもおうちさんがあってなまいきなのだ！！ぼくたちのおうちさん、よこすのだ！」
「害獣がいっちょまえに住居を要求してんじゃねえよ！ゴミ捨て場にでも寝てろ」
「だから、ここをぼくたちのあたらしいおうちさんにするってきめたのだ！おにくさんもあって、これからうまれてくるおちびちゃんたちもしあわせなのだ！」
「勝手に決めつけんじゃねえ！最初から俺の店だっ、ここわぁっ！！」 ぐじゃっ！ぐじゃっ！
「あぎゃがああああああああああああああああああああああああああああああああ！！」
……町の妖精が増えたぶん、それだけ殺される数も増えた。
それでも、山に帰れない事情があるのか、妖精たちは何とかして定住場所を見つけようと、町を飛び回った。
「きゃあっ！？何で、ガラスが……」
「おいくちょにんげん！なに、はいってきてるのだ！ここは、ぼくたちのおうちさんになったのだ！とっとと、でていくのだ！」
石を投げ、留守の住居の窓ガラスを割って侵入した挙句、帰ってきた住人を侵入者扱いする妖精。
「のだのだのだのだのだのだのだのだ！！」
「まずい！妖精だ！……おい、窓を閉めろ！入ってくるぞ！」
「すぐだ、すぐにもだ！わたちをむかえいれるのだあああああああああああああああああ！！」
がしゃあああああああん！！
ガラスに頭突きして、強引に侵入することを覚えた妖精。
「のだのだのだのだ！！ぼくたちのごはんさんをまもるのだあああああああああ！！」
「ここには、あのくちょにんげんもこないからあんしんなのだ！ずーん……ずぅーん……」
他にも、妖精の大群にコンビニが占拠されたり、遊歩道が妖精で埋め尽くされたり等、町の治安は、多数の妖精が来たことによってかなり悪化していた。
「おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！ぺこぺこ、ぺこぺこ！！」
「に、にんげんしゃん……おねがいなのだ！おちびちゃんがおなかをすかせているのだ！どうか、ごはんさんを……」
「朝からうるせえな害獣が！ほら、子ずんよこせよ」
「お、おちびちゃんよかったね……にんげんしゃんが、ごはんさんくれるって……」
「死ね」 ごりっ！！
「おぎゃー、おぎゅあああああああああああああああああああ！！」 べちょ……
駅前のロータリーでは、多数のメス妖精が、空腹で泣き喚く子ずんを抱えて、道行く人々に「ごはんさん」の施しを求めている。妖精の飛来によって心が荒んだ人々は、それらの妖精を殺すことで、溜まりに溜まった鬱憤を晴らすのであった。
「しょ……しょんな、おち、おちびちゃん……ぼ、ぼくたちは、“なんみん”なのだ！どうして、そんな、ひどいこと、できるちゃ！」
「難民だぁ！？どの口が言ってる！おおかた、山の食べ物を食い尽くして降りてきただけだろうが！こういうの、自業自得っていうんだぜ？わかったらとっとと町から出てけよクズ妖精が！！」
「ほ、ほんとうなのだ！ぼくたちのおうちさんは、くちょにんげんにのっとられたのだ……」
「示し合わせたように同じこと言いやがって気持ち悪い！！何でも俺たち人間のせいにしやがって！じゃあ、お前らは無実か！？違うよなあっ！？何かお前らが好き勝手にしでかすことで、事態はどんどん悪くなっていくんだ！！」
「や、やめちぇ……な、“なんみん”には、やさしくしなきゃ、だめなのだ……」
「お前らは難民なんかじゃねえ！思い上がるな、害獣があああああああああ！！」 ずちゅううっ！！
「ごぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！」
多くのサラリーマンの革靴に付着した妖精の体液が、通勤電車の床にべったりと尾を引いていた。誰もが、町を散々に荒らした妖精に良い感情を持っていなかったのである。
実は、「のっとられた」という妖精の言葉は、すべて間違いだった。「なんみん」という自称、勘違いも甚だしい。
なぜなら、妖精が「のっとられた」と思っていた場所は………………
もうひとつの妖精人間
「のだのだのだのだ！みなのずん、いそいでにげるのだ！」
「はあ、はあ……どうして、どうしてこんなことになったのだ！」
「ぼくたちのへいおんなくらしが、やぶられたのだ！こんなのって、ありえないちゃ！！」
「くちょお、くちょおおお！！ぼくたちの、ぼくたちのおうちさんが、あんなくちょにんげんなんかにいいいいいい！！」
妖精たちが口々に叫びながら、必死に山の中を逃げ惑っている。何者かに、追われているようだ。
数多くの妖精が町へ繰り出して「なんみん」を自称したが、すべての妖精が山を下りたわけではなかったようだ。
「う、おも、おもいのだ……おちびちゃん……」
「ど、どうちたにょだ！？おかーちゃ！もっちょ！もっちょ、はやく、とぶにょだああああああああああああああ！！」
単独で逃げる妖精は、まだ良い。飛べない子ずんを抱えて逃げる親ずんは、すぐに後れを取った。
ざすっ、ざすっ、という足音を立てて、後方から何者かが近づいてくる。さらに恐怖した子ずんは、その小さな前足で、自分を抱きかかえる親ずんを殴り始めた。
「おかーちゃ！い、いそぐにょだ！くちょにんげんが、くちょにんげんが、きちぇるにょだ！このままじゃ、かわいいずんちゃが、つかまっちゃうにょだあああ！！」 ポカポカ…
「も、もうむりちゃ……ご、ごめんね、おちびちゃん……また、またうんであげるからね！」
「えっ…………にょだああああああああああああああああああああああああっ！」
ぽてっ……
親ずんは、子ずんという名の重りを投棄して、フルスピードで逃げ始める。落とされた子ずんは、呆然として地面に這いつくばった。
「お、おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！おかーちゃ！まっちぇ、まっちぇ！まっちぇほちいにょだあああああああああ！！」
自分がひとりぼっちになったことに気づくと、子ずんは必死に泣き喚き始める。こうすれば、親ずんが「役目」を思い出して、こちらへ戻ってくると頑なに信じているからだ。
だが、子ずんの思惑に反して、親ずんは子ずんの方を一切見ることはなく、そのまま森の奥へと姿を消した。
「おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！」
子ずんは、さらに泣き声のボリュームを上げるが……
びゅっ！ぐじぃゆっ！！
その体のサイズとは不釣り合いの騒音は、後ろから振り下ろされたバールで、ようやく止んだ。
バールで子ずんを殺した「彼」は、50代くらいの「人間」であった。
頭には「闘魂」の文字が書かれたハチマキ、上半身には色鮮やかな法被を羽織り、下半身にはふんどしだけを身に着ける。夏祭りコーデだとしても、明らかに季節外れである。
しかし、何よりも奇怪なのは、腰に括り付けられたカセットプレーヤーであった。
子ずんの死を確認した「彼」は、おもむろにボタンを操作する。カセットが回り始め、ピンク・レディーの曲が流れ出した。
本来ならば静かなはずの山奥に、怪しげなイントロがこだまする。
そして、ミーとケイの声に負けないくらいの大声で、「彼」は歌い出す。
替え歌であった。
♪まさかと思っているのでしょ〜う〜が〜〜♪
♪実は〜実は〜わたくし〜〜♪
♪“妖精人間”な〜〜〜〜〜の〜〜〜で〜〜〜〜〜っ、すぅ〜〜〜〜〜〜〜♪
「♪処ッ苦！処ッ苦！処ッ苦！ ♪処ッ苦！処ッ苦！処ッ苦！ ♪処ッ苦！処ッ苦！処ッ苦！ ♪あああああああああああああああっ！処ッ苦〜〜〜〜〜〜ッ！！ 処オオオオオオオオオオオオォッ苦！！」
音質は良いものとは言えないが、それでも音量はじゅうぶん。「彼」は高らかに叫ぶと、曲の盛り上がりに合わせて走り出す。
妖精の群れを追って。
「お……おさずん！にげられないのだ！」 「ぐるぐるぱんちでこわすのだ！！ 「む……むりちゃ！こわれないのだあああ！！」
それから数十秒もせずに、「彼」は妖精たちを一ヶ所に追い詰めた。大きな岩に阻まれ、妖精たちは右往左往していたのである。
「こ、こわいのだ……くちょにんげん！あっちいけええええええ！」 「ちね！ちね！とまれえええええええええ！！」
ギターの軽快な音色が、「彼」をスキップさせる。その動きが、妖精たちには恐ろしいものとして見えるようだった。
「うううぅ、ずんちでりゅ……………………でちゃ！」 ぶりゅりゅりゅっ！
「う、うまれりゅ、うまれりゅ！」 ぷりっ、ぷりっ！ 「おぎゃーおぎゃーおぎゃー！」 「のだーのだああああ！！」
死の恐怖に苛まれ、本能が排泄や出産を促したのだろう、「彼」を見るや、いろいろなモノをお尻から出し始める個体もいた。
醜い、とでも言うように口元を歪めた「彼」は、続きを歌い始める。
♪世間をさわがす不思議なこと〜は〜♪
♪すべては“妖精人間”なのです♪
「くらえ、くちょにんげん！！ぼくたち“もりのけんじゃ”のおうちさんを、かえすのだあああああああああ！！」
妖精たちから、「おさずん」と呼ばれた個体が、前足をぐるぐると振り回しながら向かってきたが、「彼」は別の妖精が先ほど排泄したばかりの「ずんち」を掴み上げ、迷わず「おさずん」の口内に詰め込んだ。
♪傲岸不遜の“おさずん”♪
♪突然“ずんち”を食ったのも♪
がぼっ！！ 「むぐがこおっ！？」
次に、生まれたばかりの2匹の子ずんを掴み上げる。
「うまれたのだ！これから、がんばってそだてて……おいくちょにんげん！おちびちゃんかえせえええええ！！」
♪子ずんを投げたり、ねじったり♪
「おぎゃーおぎゃー！はなちて、はなちてええええええ！！」 びゅっ！ぐちゃあああ……
「のだーのだっ、のだあああだああああああああぐうぐぐぐぐううっ……」 ぎゅりゅっ！
「しょ、しょんな……おちびちゃんが、おちびちゃんがああ！！これから、しあわせな、ひびが、まっているはずだったのに……」
♪“ずん虐”ブームもっ♪
♪わたしぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ですぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪
生まれたばかりの子ずんは、泣き喚きながら容赦なく殺された。絶望した親ずんや、「彼」を遠巻きに見つめるその他の妖精たちを前に、曲はサビを迎える。
♪よ〜うせ〜いにんげんっ♪ あらわる♪あらわる〜♪
♪よ〜うせ〜いにんげんっ♪ あらわる♪あらわる〜♪
追い詰められた妖精たちにさらに絶望を与えるがごとく、「彼」は歌いながら、バールを振り回す。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！」
「ぷくううううううううっ！ちね！ちぬのだ！くちょにんげんんんんんんん！！ぷぎゅああああああああああああ！！」
「く、くちょにんげん！とまれ、とまれええええええ！！じゅぶあああああああああああああああああああああああああ！！」
ばちゃっ！！ どすっ！ ばしっ！
♪無茶〜をいっては 困ります♪
♪止められないのが よ〜うせ〜いにんげ〜んですぅ〜〜〜〜〜〜♪
殆ど抵抗出来ないまま、叩き潰される妖精たち。替え歌のとおり、「彼」の殺害衝動は、止まることを知らなかった……
やがて、「ずんち」を口に詰め込まれたまま転がる「おさずん」と、先ほど子ずんを捨てた親ずんだけが残された。
「むぐむぐ……ぎゅっききょぎょっ！ぎゅっきょぎょききぇきゃぎゅ！ぐみょぎんぎん……！！」 ぶちゅっ……
口を「ずんち」でいっぱいにしたおさずんは必死で何かを叫ぼうとするが、その呪詛を聞かれることのないまま、踏み潰された。
〆ますよ〜♪ （〆ますよ〜♪）
最後に残ったのは、自分のした行動が全て無駄だったと知り、体中をわななかせる親ずん。
それにとどめを刺すべく、「彼」はゆっくりと近づく。
「に、にげるために、せっかく、おちびちゃんすてたのに……にげられるはずだったのにいいいいい！！」
〆ますよ〜♪ （〆ますよ〜♪）
「くちょ、くちょおお！！どうちて、どうちて、ぼくたちのおうちさんだけ、あらしてのっとろうとするのだ！ほかにおうちさんは、いっぱいあるはずなのだ！どうちて、おまえみたいなくちょにんげんに、なにもしてないぼくたちだけが、いためつけられなきゃ、いけないちゃ！おちびちゃんかえせ…………」
「〆ますッ！！〆ます、〆ます、〆ますッ！！！！」
ばしゃっ！ぐぢいぃっ！みぢゅっ！どじゅっ…………
最初の一撃で、妖精は死んだ。それでも、イライラが抑えきれないといった様子の「彼」は、何度もバールを振り下ろす。
「♪処ッ苦、処ッ苦、処ッ苦…………♪処ッ苦、処ッ苦、処ッ苦…………♪処ッ苦、処ッ苦、処ッ苦…………」
妖精の群れを全滅させた後も、何かに憑りつかれたかのように、歌い続ける「彼」。軽快な曲調に反して、その顔は、険しかった。
がささっ！ばたばたっ！
「のだのだのだのだ！ぼくたちのおうちさんを、あらすくちょは、どこちゃ？」
「いたのだ！くちょにんげんなのだ！」
「ころしぇ！ころしぇ！ずんちゃたちは、くちょにんげんごときをおそれて、おやまさんをおりた、あんなこしぬけのくちょずんどもとは、ちがうのだあああああああああああああ！！」
…………新手の妖精の群れが飛び出してきた。いつまでたっても「彼」に平穏は訪れない。
♪あああああああああああああああっ！処ッ苦〜〜〜〜〜〜ッ！！ 処オオオオオオオオオオオオォッ苦！
再び歌が盛り上がる。「彼」はバールを構え、真正面から突進した…………
「……なあ、妖精の巣を乗っ取る人間なんて、ホントにいるのかな、不安になってきた」
「それ言っちゃったら、ここまで来た意味がないだろっ？いるって信じればさ、いるんだよっ、きっと！！」
「マジだりぃ〜。足疲れたし、もう帰ろうよ？」
この町のうわさ話を聞いて山に分け入った、3人の若者がいた。男ふたりは、ツチノコのような「UMA」を探す感覚で、ワクワクしているようだったが……
長く続く山道に不満を漏らすひとりの女は、ただ怖いもの見たさでついてきただけのようだった。
やがて、おもむろに女がつぶやいた。
「……お花摘んでくる」
「ごゆっくりどうぞ。オレたちは見ないから安心して出してきな」
「なんでそう、ノンデリかなぁ〜？死ねよマジで」
女が用を足すために茂みへ分け入った時のことだった。
「ッきゃあああああああああああああああ！？」
鋭い悲鳴。何かあったのかと心配した男ふたりが、慌てて駆け寄った…………
「なんだっ！？なんだ……なんだってんだよぉ！？……はっ！？」
「えっ…………こ、これって…………」
茂みの奥には、妖精の死骸の山。あまりにも普通ではないその凄惨さに、女はたまらず悲鳴をあげたのだった。
「ど、どうして………こんなに…………おいパンツ見てんじゃねえし！殺すぞ」
「ひでえ言いがかりだ！だってお前が叫ぶからさあ……」
「お、おい……何か聞こえないか？」
「え？……………………ホ、ホントだ…………行ってみようぜ」
「おいこら、ウチを置いてくなっ！！」
もめ始める若者たちは、風に乗って聞こえてくる音楽を聞きつけ、その音のする方向へと移動を始めたのだった。
…………
♪A-well-a everybody’s heard♪ about the bird♪
♪B-b-bird♪ b-bird’s the word A-well a bird bird bird♪ bird is the word♪
♪A-well a bird bird bird well-a bird is the word♪
♪A-well a bird bird bird♪ b-bird is the word A-well a bird bird bird well-a bird is the word♪
♪A-well a bird♪ bird♪ b-bird’s the word A-well a b-b-bird♪ b-bird’s the word♪
♪A-well a bird bird bird well-a bird is the word♪
♪A-well a bird♪ bird♪ b-bird’s the word♪
♪A-well a don’t you know♪ about the bird？
♪Well！！everybody knows that the bird is the word！！
♪A-well a bird♪ bird♪ b-bird’s the word A-well a♪
ドドパパンドパン、ドドパドンドパン、ドドパパンドパン、ドドパドンドパン！！
流れていたのは、若者たちの知らない曲だった。
「え…………人間？」
「なにやってんだいったい…………」
「キモ………なにあの格好…………」
茂みに隠れた若者たちは、視界に「彼」を捉えると、口々につぶやく。「彼」は、まるでチキンウォーカーのようにひょこひょこと歩きながら、曲のリズムに合わせて、足元で逃げまどう妖精たちを次々に潰していく。
「………べべーざうぇらうぇら？何て言ってるんだろう」
「それどころじゃねえよ！見つかったらやべえよ！殺されるかも……」
「ねえなにやってんのアイツまじで…………変質者だよ絶対！！」
「もしかして、あれが、“妖精の巣を乗っ取る人間”……？ほら、妖精殺してるし」
「え、なんでわざわざ、妖精のすみかを乗っ取るんだ？」
「知らないし！だから変質者だって言ってんの！！」
「♪さ〜〜〜〜〜〜ふぃ〜〜〜〜〜ん、ばぁああぶるぶるぶるぶるぶるるるるるるるるるるるうるるるるるるるるるうるるるっるるるるるびょおるりゃりょりゃりゃりゅびょりょりゃりょおおおおうわああおおあうおおああああああああっ…………！！」
若者たちの恐怖をよそに、突如、ボス・ナス陛下みたいに叫び出したかと思うと、地面にうずくまる「彼」。
「えっ…………だ、大丈夫かよっ？！」
「ばかっ！やめとけって！！殺されるぞ！！」
それを見て、ひとりの男が、茂みから飛び出して駆け寄った。だが…………
「…………あばばばばばばばばばばばばばばばばばぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ、んまま〜ま〜ぱぱ♪ んま〜ままっ、ぱぱっ♪」
ダガダッダッ！！
「んまま〜ぅま〜ぱぱ♪ ぅんま〜まま〜ぱぱ♪ んまま〜ぅま〜ぱぱ♪ ぅんま〜まま〜♪」
「うははっ！曲の演出だったのかよ！！」
「彼」は何事もなかったかのように立ち上がり、歌い出したのであった。飛び出していった男は「彼」の動きに合わせ、手をブンブン振り回して陽気なダンスを始める。
「す……すげえ…………カッコいい…………」
「は？」
「ごめん、ちょっと踊ってくるわ！！」
気が付けば、もうひとりの男も、足をリズミカルに動かしながら、「彼」のもとへ飛び出していった。
「彼」が流している曲は、ザ・トラッシュメンの『Surfin' Bird（サーフィン・バード）』（元ネタはザ・リビングトンズの『The Bird's the Word』と『Papa-Oom-Mow-Mow』）であった。
1963年の曲なので、この曲が挿入歌として使用されている映画でも観ていなければ、若者たちが知るはずもない。
だが、世代を超えて連綿と受け継がれているロックの衝動が、ふたりの若者を突き動かしたのかもしれない。
ぅんまんまんまんま♪ んまま〜ま〜ぱぱ♪ んま〜ぅまま〜ぱぱ♪
「ああああああああああああああ！！」 「いぢゃあああああ！！」 「やめちぇええ！やめちゃだああああああ！！」
ぐちゃっぐちゃっぐちゃっ！！どちゅっどちゅっどちゅっ！！
んまま〜ま〜ぱぱ♪ ぅんま〜まま〜ぱぱ♪ んまま〜ま〜ぱぱ♪ んま〜ぅまま〜♪
まるでそこがダンスホールであるかのように、3人の男が踊り狂う。その足元では、瀕死の妖精たちが次々に潰され、さながら肉フェス（？）のようになっていた。
ぽっぽっぽっ………ぽぽぽぽぽっぽ……ばさばさ……
やがて、合言葉のとおりにハトの群れが舞い降り、潰された妖精をついばみ始めたことで、さらに奇妙な光景が広がることとなる。
「なにあの変な曲……なにこの状況……」
ひとり、茂みの中に取り残された女は、少し警戒心が薄れたのか、スマホを取り出して動画撮影を開始した。
そう、目の前で広がる奇妙な光景を、SNS上にアップしようというのであった。
ちょうど、男たちは地面に転がる妖精の死骸を掴み上げ、まるでトマト祭りのように、流れ落ちる臓物や体液を、自分の体にべちゃべちゃと塗りたくり始めたところであった…………………………
そこからは、早かった。
普段、この女は、主に自撮りや、流行りの曲に合わせたダンス動画をSNS上に投稿していた。それが、急に山の奥深くでおこなわれている男たちの奇妙なダンス動画を上げたものだから、フォロワーたちは騒然となり、瞬く間に動画が拡散されることとなる。
やがて、「特定厨」と呼ばれる人々が、動画に映った植生から、この奇妙なダンスのおこなわれている場所を特定し、山のふもとにある交番に通報したのである。
「ちょっ！？何で、ウチまで！？放せっての！ウチは無罪だって！！触んな！！」
「お話を聞くだけですって！どうして、あなたがここにいて、どうしてあの動画を撮っていたのかを……」
「変質者がいたからに決まってるっしょ！？何かされた時のために、証拠がないと……もういいでしょ！？放してよ！！」
………………………
その場にいた女を含めた若者3人と「彼」は、“とりあえず”……迷惑防止条例違反として、交番まで連行された。
♪はあああぁあぁぁ、どっこいしょ〜っ！どっこいしょ〜っ！（♪どっこいしょ〜っ！どっこいしょ〜っ！）
♪ソーランッ！ソーランッ！（♪ソーランッ！ソーランッ！）
「うわっ！？」
「な、懐かしい！小学生の時に踊りましたよ私！これ！ イヤあぁぁ〜〜〜〜っ！！ハイッ！ハイッ！ソイヤッさ！！」
「おい、取り調べ中だぞ、なにやってんだ、ふじゃけるな！！」
取り調べ中、隣の部屋に置かれた「彼」のカセットプレーヤーが、北海道民謡「ソーラン節」を大音量で流し始め、懐かしさに感動した若手警官が踊り出すという珍事もあり、若者たちは、へとへとになって解放された。
「やっとだ、やっと帰れる……それにしてもいい曲だったなあれ……ちょっとフザケすぎちゃったかな」
「それどころじゃねえよ……俺はてっきり、牢屋入れられるんじゃないかと……結局あの踊ってるおじさん何だったんだよ……」
「結局、あのおじさんが“妖精の巣を乗っ取る人間”……？」
「なわけ！どう考えたって、ボッチでバカ騒ぎするのが趣味の、ただのキモおじに決まってるって！！」
「大丈夫かな〜おじさん……俺たちのせいで酷い罪にならないかなあ」
「俺たちは出れたけど、おじさんまだ取り調べ中だもんな……長いね」
「元はと言えば……アンタたちがキモおじの前にフラフラ出てったせいじゃん！うっわもうこんな時間……マジ最低……こんな町、早く出よ」
………………………
狭く息苦しい、取り調べ室。酷く緊張した「彼」は、人間と会話することすら久しぶりの様相だ。
「……どうして、妖精を町に送り込むようなマネを？」
「わ、わたしは、わたしは……わるいことをした、だなんて、これっぽっちも、おもってなかとです…………ただ、“あくりょう”を、たいじしようと……」
「“あくりょう”？……悪霊、と？」
…………
この山には、かつて人がにぎわう豊かな村があって、昭和の時代には、頻繁にお祭りがおこなわれていたらしい。「彼」は村長の息子で、父の跡継ぎだった。
だが、少子高齢化に伴う人口減少によって、伝統文化の継承もうまくいかなくなった。
「彼」の父………村長は、じわじわと消えゆく村に絶望しながら息を引き取った。
「彼」は村が消えてもひとり、村長としてこの場所に住み続けると、父に誓った。
やがて時は流れ、廃村と化した山に、妖精が住み着いた。
我が物顔で。
人間が「彼」以外に残っていないのを良いことに。
父との約束を守り、ひとりで質素な暮らしを続けていた「彼」は、怒り狂った。
そして、確信した。こいつらは、悪霊だと。
村を滅ぼし、父を絶望のままに死に追いやった、悪霊だと…………
「彼」は怒りのままにバールを手に取り、この村が人でにぎわっていた、良き時代を思い返しながら、そして帰らぬ青春を悔やみながら、妖精を殺して回っていたのだ。
レトロな音楽を流しながら、あくまで陽気に。
法被を着ているのは、村長として、ひとりでもお祭りを続けるという執念だったのかもしれない。
とはいえ、「彼」から逃げおおせた妖精が、発展した町に下りて被害をもたらしているというのは冒頭に描写したとおりで、「彼」の証言を聞いた警察としても、「彼」の独断の駆除活動を全面的に了承するわけにもいかなかった。
そこで、「彼」は町の「病院」で静養してもらい、その間に駆除業者に委託して、山と町の妖精を一斉に駆除してもらうということになったのである。
「な、なにを…………あんたがたは、どうして、どうしてかってに、きめるとですか！？わたしが、わたしが……！！」
「村長さん、これはね……決定事項、なのだよ……？」
「彼」は、これは自分の村の問題だから手を出すな、と激しく反対したが、半ば強制的に、「病院」へと搬送された。
若者3人は精神鑑定の結果、何も異常はないと判断されたが、「彼」だけは、重度のストレス障害の疑いがあると診断されたのであった………
「やれやれ…………正義感に憑りつかれたバカほど、厄介なモノはない……この世の“正義”は我々だけでじゅうぶんだ」
「おっしゃる通りです。そのために、我々警察がいるのですから」
〜終〜
ここまで読んでいただきありがとうございます。実を言うと、音楽ネタがやりたかっただけです……
投稿祭を経て、様々な創作アイデアが浮かんできましたので、今後も週に1本ペースで小説を投稿していけたらと思っております！
（毎週金曜日、投稿予定）
どうぞ、ご期待くださいませ！
けも
今回の読み切りは、昨年の11月に投稿いたしました『妖精人間』のアナザー・ストーリーとお考え下さい！（一部、内容重複してます）
そちらも合わせて読んでいただけると、より楽しめるかと思われます！
※『妖精人間』シリーズの元ネタは、むらさき様のR-18Gイラスト『むらさきが描いたやつまとめ15』より、『おじさんにおうち取られたのだ』です。素晴らしいイラストをありがとうございます！
………………
「出てけっ！クズ妖精！！ここはお前らの家じゃねえよ！！」
「のだぁっ！いちゃいいちゃい！」 どさどさっ……
焼き鳥屋の店主が怒鳴り、追い立てられた妖精たちが通りに転がり出てくる。
この町ではもはや、珍しくない光景だ。ここ数か月で、町で目撃・駆除される妖精の数は以前の3倍にも増えた。
そして信じ難いことに、どの妖精も、口々に同じことを言うのである。
「おやまさんにあるぼくたちのおうちさんが、くちょにんげんにのっとられたのだ！！」
無論、人々はそれを信じるわけもなかった。自分たちの利益のためなら平気でウソをつく妖精のことだ。その言葉をまんまと信じるお人好しも、そういるものではない。
「バカ言うなよ！同情を誘おうったってそうはいかないぜ……だいたい、わざわざお前らの巣を乗っ取ろうなんて物好きはいねえよ」
「くちょにんげんは、いつもおうちさんがあってなまいきなのだ！！ぼくたちのおうちさん、よこすのだ！」
「害獣がいっちょまえに住居を要求してんじゃねえよ！ゴミ捨て場にでも寝てろ」
「だから、ここをぼくたちのあたらしいおうちさんにするってきめたのだ！おにくさんもあって、これからうまれてくるおちびちゃんたちもしあわせなのだ！」
「勝手に決めつけんじゃねえ！最初から俺の店だっ、ここわぁっ！！」 ぐじゃっ！ぐじゃっ！
「あぎゃがああああああああああああああああああああああああああああああああ！！」
……町の妖精が増えたぶん、それだけ殺される数も増えた。
それでも、山に帰れない事情があるのか、妖精たちは何とかして定住場所を見つけようと、町を飛び回った。
「きゃあっ！？何で、ガラスが……」
「おいくちょにんげん！なに、はいってきてるのだ！ここは、ぼくたちのおうちさんになったのだ！とっとと、でていくのだ！」
石を投げ、留守の住居の窓ガラスを割って侵入した挙句、帰ってきた住人を侵入者扱いする妖精。
「のだのだのだのだのだのだのだのだ！！」
「まずい！妖精だ！……おい、窓を閉めろ！入ってくるぞ！」
「すぐだ、すぐにもだ！わたちをむかえいれるのだあああああああああああああああああ！！」
がしゃあああああああん！！
ガラスに頭突きして、強引に侵入することを覚えた妖精。
「のだのだのだのだ！！ぼくたちのごはんさんをまもるのだあああああああああ！！」
「ここには、あのくちょにんげんもこないからあんしんなのだ！ずーん……ずぅーん……」
他にも、妖精の大群にコンビニが占拠されたり、遊歩道が妖精で埋め尽くされたり等、町の治安は、多数の妖精が来たことによってかなり悪化していた。
「おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！ぺこぺこ、ぺこぺこ！！」
「に、にんげんしゃん……おねがいなのだ！おちびちゃんがおなかをすかせているのだ！どうか、ごはんさんを……」
「朝からうるせえな害獣が！ほら、子ずんよこせよ」
「お、おちびちゃんよかったね……にんげんしゃんが、ごはんさんくれるって……」
「死ね」 ごりっ！！
「おぎゃー、おぎゅあああああああああああああああああああ！！」 べちょ……
駅前のロータリーでは、多数のメス妖精が、空腹で泣き喚く子ずんを抱えて、道行く人々に「ごはんさん」の施しを求めている。妖精の飛来によって心が荒んだ人々は、それらの妖精を殺すことで、溜まりに溜まった鬱憤を晴らすのであった。
「しょ……しょんな、おち、おちびちゃん……ぼ、ぼくたちは、“なんみん”なのだ！どうして、そんな、ひどいこと、できるちゃ！」
「難民だぁ！？どの口が言ってる！おおかた、山の食べ物を食い尽くして降りてきただけだろうが！こういうの、自業自得っていうんだぜ？わかったらとっとと町から出てけよクズ妖精が！！」
「ほ、ほんとうなのだ！ぼくたちのおうちさんは、くちょにんげんにのっとられたのだ……」
「示し合わせたように同じこと言いやがって気持ち悪い！！何でも俺たち人間のせいにしやがって！じゃあ、お前らは無実か！？違うよなあっ！？何かお前らが好き勝手にしでかすことで、事態はどんどん悪くなっていくんだ！！」
「や、やめちぇ……な、“なんみん”には、やさしくしなきゃ、だめなのだ……」
「お前らは難民なんかじゃねえ！思い上がるな、害獣があああああああああ！！」 ずちゅううっ！！
「ごぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！」
多くのサラリーマンの革靴に付着した妖精の体液が、通勤電車の床にべったりと尾を引いていた。誰もが、町を散々に荒らした妖精に良い感情を持っていなかったのである。
実は、「のっとられた」という妖精の言葉は、すべて間違いだった。「なんみん」という自称、勘違いも甚だしい。
なぜなら、妖精が「のっとられた」と思っていた場所は………………
もうひとつの妖精人間
「のだのだのだのだ！みなのずん、いそいでにげるのだ！」
「はあ、はあ……どうして、どうしてこんなことになったのだ！」
「ぼくたちのへいおんなくらしが、やぶられたのだ！こんなのって、ありえないちゃ！！」
「くちょお、くちょおおお！！ぼくたちの、ぼくたちのおうちさんが、あんなくちょにんげんなんかにいいいいいい！！」
妖精たちが口々に叫びながら、必死に山の中を逃げ惑っている。何者かに、追われているようだ。
数多くの妖精が町へ繰り出して「なんみん」を自称したが、すべての妖精が山を下りたわけではなかったようだ。
「う、おも、おもいのだ……おちびちゃん……」
「ど、どうちたにょだ！？おかーちゃ！もっちょ！もっちょ、はやく、とぶにょだああああああああああああああ！！」
単独で逃げる妖精は、まだ良い。飛べない子ずんを抱えて逃げる親ずんは、すぐに後れを取った。
ざすっ、ざすっ、という足音を立てて、後方から何者かが近づいてくる。さらに恐怖した子ずんは、その小さな前足で、自分を抱きかかえる親ずんを殴り始めた。
「おかーちゃ！い、いそぐにょだ！くちょにんげんが、くちょにんげんが、きちぇるにょだ！このままじゃ、かわいいずんちゃが、つかまっちゃうにょだあああ！！」 ポカポカ…
「も、もうむりちゃ……ご、ごめんね、おちびちゃん……また、またうんであげるからね！」
「えっ…………にょだああああああああああああああああああああああああっ！」
ぽてっ……
親ずんは、子ずんという名の重りを投棄して、フルスピードで逃げ始める。落とされた子ずんは、呆然として地面に這いつくばった。
「お、おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！おかーちゃ！まっちぇ、まっちぇ！まっちぇほちいにょだあああああああああ！！」
自分がひとりぼっちになったことに気づくと、子ずんは必死に泣き喚き始める。こうすれば、親ずんが「役目」を思い出して、こちらへ戻ってくると頑なに信じているからだ。
だが、子ずんの思惑に反して、親ずんは子ずんの方を一切見ることはなく、そのまま森の奥へと姿を消した。
「おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！」
子ずんは、さらに泣き声のボリュームを上げるが……
びゅっ！ぐじぃゆっ！！
その体のサイズとは不釣り合いの騒音は、後ろから振り下ろされたバールで、ようやく止んだ。
バールで子ずんを殺した「彼」は、50代くらいの「人間」であった。
頭には「闘魂」の文字が書かれたハチマキ、上半身には色鮮やかな法被を羽織り、下半身にはふんどしだけを身に着ける。夏祭りコーデだとしても、明らかに季節外れである。
しかし、何よりも奇怪なのは、腰に括り付けられたカセットプレーヤーであった。
子ずんの死を確認した「彼」は、おもむろにボタンを操作する。カセットが回り始め、ピンク・レディーの曲が流れ出した。
本来ならば静かなはずの山奥に、怪しげなイントロがこだまする。
そして、ミーとケイの声に負けないくらいの大声で、「彼」は歌い出す。
替え歌であった。
♪まさかと思っているのでしょ〜う〜が〜〜♪
♪実は〜実は〜わたくし〜〜♪
♪“妖精人間”な〜〜〜〜〜の〜〜〜で〜〜〜〜〜っ、すぅ〜〜〜〜〜〜〜♪
「♪処ッ苦！処ッ苦！処ッ苦！ ♪処ッ苦！処ッ苦！処ッ苦！ ♪処ッ苦！処ッ苦！処ッ苦！ ♪あああああああああああああああっ！処ッ苦〜〜〜〜〜〜ッ！！ 処オオオオオオオオオオオオォッ苦！！」
音質は良いものとは言えないが、それでも音量はじゅうぶん。「彼」は高らかに叫ぶと、曲の盛り上がりに合わせて走り出す。
妖精の群れを追って。
「お……おさずん！にげられないのだ！」 「ぐるぐるぱんちでこわすのだ！！ 「む……むりちゃ！こわれないのだあああ！！」
それから数十秒もせずに、「彼」は妖精たちを一ヶ所に追い詰めた。大きな岩に阻まれ、妖精たちは右往左往していたのである。
「こ、こわいのだ……くちょにんげん！あっちいけええええええ！」 「ちね！ちね！とまれえええええええええ！！」
ギターの軽快な音色が、「彼」をスキップさせる。その動きが、妖精たちには恐ろしいものとして見えるようだった。
「うううぅ、ずんちでりゅ……………………でちゃ！」 ぶりゅりゅりゅっ！
「う、うまれりゅ、うまれりゅ！」 ぷりっ、ぷりっ！ 「おぎゃーおぎゃーおぎゃー！」 「のだーのだああああ！！」
死の恐怖に苛まれ、本能が排泄や出産を促したのだろう、「彼」を見るや、いろいろなモノをお尻から出し始める個体もいた。
醜い、とでも言うように口元を歪めた「彼」は、続きを歌い始める。
♪世間をさわがす不思議なこと〜は〜♪
♪すべては“妖精人間”なのです♪
「くらえ、くちょにんげん！！ぼくたち“もりのけんじゃ”のおうちさんを、かえすのだあああああああああ！！」
妖精たちから、「おさずん」と呼ばれた個体が、前足をぐるぐると振り回しながら向かってきたが、「彼」は別の妖精が先ほど排泄したばかりの「ずんち」を掴み上げ、迷わず「おさずん」の口内に詰め込んだ。
♪傲岸不遜の“おさずん”♪
♪突然“ずんち”を食ったのも♪
がぼっ！！ 「むぐがこおっ！？」
次に、生まれたばかりの2匹の子ずんを掴み上げる。
「うまれたのだ！これから、がんばってそだてて……おいくちょにんげん！おちびちゃんかえせえええええ！！」
♪子ずんを投げたり、ねじったり♪
「おぎゃーおぎゃー！はなちて、はなちてええええええ！！」 びゅっ！ぐちゃあああ……
「のだーのだっ、のだあああだああああああああぐうぐぐぐぐううっ……」 ぎゅりゅっ！
「しょ、しょんな……おちびちゃんが、おちびちゃんがああ！！これから、しあわせな、ひびが、まっているはずだったのに……」
♪“ずん虐”ブームもっ♪
♪わたしぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ですぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪
生まれたばかりの子ずんは、泣き喚きながら容赦なく殺された。絶望した親ずんや、「彼」を遠巻きに見つめるその他の妖精たちを前に、曲はサビを迎える。
♪よ〜うせ〜いにんげんっ♪ あらわる♪あらわる〜♪
♪よ〜うせ〜いにんげんっ♪ あらわる♪あらわる〜♪
追い詰められた妖精たちにさらに絶望を与えるがごとく、「彼」は歌いながら、バールを振り回す。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！」
「ぷくううううううううっ！ちね！ちぬのだ！くちょにんげんんんんんんん！！ぷぎゅああああああああああああ！！」
「く、くちょにんげん！とまれ、とまれええええええ！！じゅぶあああああああああああああああああああああああああ！！」
ばちゃっ！！ どすっ！ ばしっ！
♪無茶〜をいっては 困ります♪
♪止められないのが よ〜うせ〜いにんげ〜んですぅ〜〜〜〜〜〜♪
殆ど抵抗出来ないまま、叩き潰される妖精たち。替え歌のとおり、「彼」の殺害衝動は、止まることを知らなかった……
やがて、「ずんち」を口に詰め込まれたまま転がる「おさずん」と、先ほど子ずんを捨てた親ずんだけが残された。
「むぐむぐ……ぎゅっききょぎょっ！ぎゅっきょぎょききぇきゃぎゅ！ぐみょぎんぎん……！！」 ぶちゅっ……
口を「ずんち」でいっぱいにしたおさずんは必死で何かを叫ぼうとするが、その呪詛を聞かれることのないまま、踏み潰された。
〆ますよ〜♪ （〆ますよ〜♪）
最後に残ったのは、自分のした行動が全て無駄だったと知り、体中をわななかせる親ずん。
それにとどめを刺すべく、「彼」はゆっくりと近づく。
「に、にげるために、せっかく、おちびちゃんすてたのに……にげられるはずだったのにいいいいい！！」
〆ますよ〜♪ （〆ますよ〜♪）
「くちょ、くちょおお！！どうちて、どうちて、ぼくたちのおうちさんだけ、あらしてのっとろうとするのだ！ほかにおうちさんは、いっぱいあるはずなのだ！どうちて、おまえみたいなくちょにんげんに、なにもしてないぼくたちだけが、いためつけられなきゃ、いけないちゃ！おちびちゃんかえせ…………」
「〆ますッ！！〆ます、〆ます、〆ますッ！！！！」
ばしゃっ！ぐぢいぃっ！みぢゅっ！どじゅっ…………
最初の一撃で、妖精は死んだ。それでも、イライラが抑えきれないといった様子の「彼」は、何度もバールを振り下ろす。
「♪処ッ苦、処ッ苦、処ッ苦…………♪処ッ苦、処ッ苦、処ッ苦…………♪処ッ苦、処ッ苦、処ッ苦…………」
妖精の群れを全滅させた後も、何かに憑りつかれたかのように、歌い続ける「彼」。軽快な曲調に反して、その顔は、険しかった。
がささっ！ばたばたっ！
「のだのだのだのだ！ぼくたちのおうちさんを、あらすくちょは、どこちゃ？」
「いたのだ！くちょにんげんなのだ！」
「ころしぇ！ころしぇ！ずんちゃたちは、くちょにんげんごときをおそれて、おやまさんをおりた、あんなこしぬけのくちょずんどもとは、ちがうのだあああああああああああああ！！」
…………新手の妖精の群れが飛び出してきた。いつまでたっても「彼」に平穏は訪れない。
♪あああああああああああああああっ！処ッ苦〜〜〜〜〜〜ッ！！ 処オオオオオオオオオオオオォッ苦！
再び歌が盛り上がる。「彼」はバールを構え、真正面から突進した…………
「……なあ、妖精の巣を乗っ取る人間なんて、ホントにいるのかな、不安になってきた」
「それ言っちゃったら、ここまで来た意味がないだろっ？いるって信じればさ、いるんだよっ、きっと！！」
「マジだりぃ〜。足疲れたし、もう帰ろうよ？」
この町のうわさ話を聞いて山に分け入った、3人の若者がいた。男ふたりは、ツチノコのような「UMA」を探す感覚で、ワクワクしているようだったが……
長く続く山道に不満を漏らすひとりの女は、ただ怖いもの見たさでついてきただけのようだった。
やがて、おもむろに女がつぶやいた。
「……お花摘んでくる」
「ごゆっくりどうぞ。オレたちは見ないから安心して出してきな」
「なんでそう、ノンデリかなぁ〜？死ねよマジで」
女が用を足すために茂みへ分け入った時のことだった。
「ッきゃあああああああああああああああ！？」
鋭い悲鳴。何かあったのかと心配した男ふたりが、慌てて駆け寄った…………
「なんだっ！？なんだ……なんだってんだよぉ！？……はっ！？」
「えっ…………こ、これって…………」
茂みの奥には、妖精の死骸の山。あまりにも普通ではないその凄惨さに、女はたまらず悲鳴をあげたのだった。
「ど、どうして………こんなに…………おいパンツ見てんじゃねえし！殺すぞ」
「ひでえ言いがかりだ！だってお前が叫ぶからさあ……」
「お、おい……何か聞こえないか？」
「え？……………………ホ、ホントだ…………行ってみようぜ」
「おいこら、ウチを置いてくなっ！！」
もめ始める若者たちは、風に乗って聞こえてくる音楽を聞きつけ、その音のする方向へと移動を始めたのだった。
…………
♪A-well-a everybody’s heard♪ about the bird♪
♪B-b-bird♪ b-bird’s the word A-well a bird bird bird♪ bird is the word♪
♪A-well a bird bird bird well-a bird is the word♪
♪A-well a bird bird bird♪ b-bird is the word A-well a bird bird bird well-a bird is the word♪
♪A-well a bird♪ bird♪ b-bird’s the word A-well a b-b-bird♪ b-bird’s the word♪
♪A-well a bird bird bird well-a bird is the word♪
♪A-well a bird♪ bird♪ b-bird’s the word♪
♪A-well a don’t you know♪ about the bird？
♪Well！！everybody knows that the bird is the word！！
♪A-well a bird♪ bird♪ b-bird’s the word A-well a♪
ドドパパンドパン、ドドパドンドパン、ドドパパンドパン、ドドパドンドパン！！
流れていたのは、若者たちの知らない曲だった。
「え…………人間？」
「なにやってんだいったい…………」
「キモ………なにあの格好…………」
茂みに隠れた若者たちは、視界に「彼」を捉えると、口々につぶやく。「彼」は、まるでチキンウォーカーのようにひょこひょこと歩きながら、曲のリズムに合わせて、足元で逃げまどう妖精たちを次々に潰していく。
「………べべーざうぇらうぇら？何て言ってるんだろう」
「それどころじゃねえよ！見つかったらやべえよ！殺されるかも……」
「ねえなにやってんのアイツまじで…………変質者だよ絶対！！」
「もしかして、あれが、“妖精の巣を乗っ取る人間”……？ほら、妖精殺してるし」
「え、なんでわざわざ、妖精のすみかを乗っ取るんだ？」
「知らないし！だから変質者だって言ってんの！！」
「♪さ〜〜〜〜〜〜ふぃ〜〜〜〜〜ん、ばぁああぶるぶるぶるぶるぶるるるるるるるるるるるうるるるるるるるるるうるるるっるるるるるびょおるりゃりょりゃりゃりゅびょりょりゃりょおおおおうわああおおあうおおああああああああっ…………！！」
若者たちの恐怖をよそに、突如、ボス・ナス陛下みたいに叫び出したかと思うと、地面にうずくまる「彼」。
「えっ…………だ、大丈夫かよっ？！」
「ばかっ！やめとけって！！殺されるぞ！！」
それを見て、ひとりの男が、茂みから飛び出して駆け寄った。だが…………
「…………あばばばばばばばばばばばばばばばばばぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ、んまま〜ま〜ぱぱ♪ んま〜ままっ、ぱぱっ♪」
ダガダッダッ！！
「んまま〜ぅま〜ぱぱ♪ ぅんま〜まま〜ぱぱ♪ んまま〜ぅま〜ぱぱ♪ ぅんま〜まま〜♪」
「うははっ！曲の演出だったのかよ！！」
「彼」は何事もなかったかのように立ち上がり、歌い出したのであった。飛び出していった男は「彼」の動きに合わせ、手をブンブン振り回して陽気なダンスを始める。
「す……すげえ…………カッコいい…………」
「は？」
「ごめん、ちょっと踊ってくるわ！！」
気が付けば、もうひとりの男も、足をリズミカルに動かしながら、「彼」のもとへ飛び出していった。
「彼」が流している曲は、ザ・トラッシュメンの『Surfin' Bird（サーフィン・バード）』（元ネタはザ・リビングトンズの『The Bird's the Word』と『Papa-Oom-Mow-Mow』）であった。
1963年の曲なので、この曲が挿入歌として使用されている映画でも観ていなければ、若者たちが知るはずもない。
だが、世代を超えて連綿と受け継がれているロックの衝動が、ふたりの若者を突き動かしたのかもしれない。
ぅんまんまんまんま♪ んまま〜ま〜ぱぱ♪ んま〜ぅまま〜ぱぱ♪
「ああああああああああああああ！！」 「いぢゃあああああ！！」 「やめちぇええ！やめちゃだああああああ！！」
ぐちゃっぐちゃっぐちゃっ！！どちゅっどちゅっどちゅっ！！
んまま〜ま〜ぱぱ♪ ぅんま〜まま〜ぱぱ♪ んまま〜ま〜ぱぱ♪ んま〜ぅまま〜♪
まるでそこがダンスホールであるかのように、3人の男が踊り狂う。その足元では、瀕死の妖精たちが次々に潰され、さながら肉フェス（？）のようになっていた。
ぽっぽっぽっ………ぽぽぽぽぽっぽ……ばさばさ……
やがて、合言葉のとおりにハトの群れが舞い降り、潰された妖精をついばみ始めたことで、さらに奇妙な光景が広がることとなる。
「なにあの変な曲……なにこの状況……」
ひとり、茂みの中に取り残された女は、少し警戒心が薄れたのか、スマホを取り出して動画撮影を開始した。
そう、目の前で広がる奇妙な光景を、SNS上にアップしようというのであった。
ちょうど、男たちは地面に転がる妖精の死骸を掴み上げ、まるでトマト祭りのように、流れ落ちる臓物や体液を、自分の体にべちゃべちゃと塗りたくり始めたところであった…………………………
そこからは、早かった。
普段、この女は、主に自撮りや、流行りの曲に合わせたダンス動画をSNS上に投稿していた。それが、急に山の奥深くでおこなわれている男たちの奇妙なダンス動画を上げたものだから、フォロワーたちは騒然となり、瞬く間に動画が拡散されることとなる。
やがて、「特定厨」と呼ばれる人々が、動画に映った植生から、この奇妙なダンスのおこなわれている場所を特定し、山のふもとにある交番に通報したのである。
「ちょっ！？何で、ウチまで！？放せっての！ウチは無罪だって！！触んな！！」
「お話を聞くだけですって！どうして、あなたがここにいて、どうしてあの動画を撮っていたのかを……」
「変質者がいたからに決まってるっしょ！？何かされた時のために、証拠がないと……もういいでしょ！？放してよ！！」
………………………
その場にいた女を含めた若者3人と「彼」は、“とりあえず”……迷惑防止条例違反として、交番まで連行された。
♪はあああぁあぁぁ、どっこいしょ〜っ！どっこいしょ〜っ！（♪どっこいしょ〜っ！どっこいしょ〜っ！）
♪ソーランッ！ソーランッ！（♪ソーランッ！ソーランッ！）
「うわっ！？」
「な、懐かしい！小学生の時に踊りましたよ私！これ！ イヤあぁぁ〜〜〜〜っ！！ハイッ！ハイッ！ソイヤッさ！！」
「おい、取り調べ中だぞ、なにやってんだ、ふじゃけるな！！」
取り調べ中、隣の部屋に置かれた「彼」のカセットプレーヤーが、北海道民謡「ソーラン節」を大音量で流し始め、懐かしさに感動した若手警官が踊り出すという珍事もあり、若者たちは、へとへとになって解放された。
「やっとだ、やっと帰れる……それにしてもいい曲だったなあれ……ちょっとフザケすぎちゃったかな」
「それどころじゃねえよ……俺はてっきり、牢屋入れられるんじゃないかと……結局あの踊ってるおじさん何だったんだよ……」
「結局、あのおじさんが“妖精の巣を乗っ取る人間”……？」
「なわけ！どう考えたって、ボッチでバカ騒ぎするのが趣味の、ただのキモおじに決まってるって！！」
「大丈夫かな〜おじさん……俺たちのせいで酷い罪にならないかなあ」
「俺たちは出れたけど、おじさんまだ取り調べ中だもんな……長いね」
「元はと言えば……アンタたちがキモおじの前にフラフラ出てったせいじゃん！うっわもうこんな時間……マジ最低……こんな町、早く出よ」
………………………
狭く息苦しい、取り調べ室。酷く緊張した「彼」は、人間と会話することすら久しぶりの様相だ。
「……どうして、妖精を町に送り込むようなマネを？」
「わ、わたしは、わたしは……わるいことをした、だなんて、これっぽっちも、おもってなかとです…………ただ、“あくりょう”を、たいじしようと……」
「“あくりょう”？……悪霊、と？」
…………
この山には、かつて人がにぎわう豊かな村があって、昭和の時代には、頻繁にお祭りがおこなわれていたらしい。「彼」は村長の息子で、父の跡継ぎだった。
だが、少子高齢化に伴う人口減少によって、伝統文化の継承もうまくいかなくなった。
「彼」の父………村長は、じわじわと消えゆく村に絶望しながら息を引き取った。
「彼」は村が消えてもひとり、村長としてこの場所に住み続けると、父に誓った。
やがて時は流れ、廃村と化した山に、妖精が住み着いた。
我が物顔で。
人間が「彼」以外に残っていないのを良いことに。
父との約束を守り、ひとりで質素な暮らしを続けていた「彼」は、怒り狂った。
そして、確信した。こいつらは、悪霊だと。
村を滅ぼし、父を絶望のままに死に追いやった、悪霊だと…………
「彼」は怒りのままにバールを手に取り、この村が人でにぎわっていた、良き時代を思い返しながら、そして帰らぬ青春を悔やみながら、妖精を殺して回っていたのだ。
レトロな音楽を流しながら、あくまで陽気に。
法被を着ているのは、村長として、ひとりでもお祭りを続けるという執念だったのかもしれない。
とはいえ、「彼」から逃げおおせた妖精が、発展した町に下りて被害をもたらしているというのは冒頭に描写したとおりで、「彼」の証言を聞いた警察としても、「彼」の独断の駆除活動を全面的に了承するわけにもいかなかった。
そこで、「彼」は町の「病院」で静養してもらい、その間に駆除業者に委託して、山と町の妖精を一斉に駆除してもらうということになったのである。
「な、なにを…………あんたがたは、どうして、どうしてかってに、きめるとですか！？わたしが、わたしが……！！」
「村長さん、これはね……決定事項、なのだよ……？」
「彼」は、これは自分の村の問題だから手を出すな、と激しく反対したが、半ば強制的に、「病院」へと搬送された。
若者3人は精神鑑定の結果、何も異常はないと判断されたが、「彼」だけは、重度のストレス障害の疑いがあると診断されたのであった………
「やれやれ…………正義感に憑りつかれたバカほど、厄介なモノはない……この世の“正義”は我々だけでじゅうぶんだ」
「おっしゃる通りです。そのために、我々警察がいるのですから」
〜終〜
ここまで読んでいただきありがとうございます。実を言うと、音楽ネタがやりたかっただけです……
投稿祭を経て、様々な創作アイデアが浮かんできましたので、今後も週に1本ペースで小説を投稿していけたらと思っております！
（毎週金曜日、投稿予定）
どうぞ、ご期待くださいませ！
けも
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珍妙な格好をして、山の妖精ずんを躍りながら駆逐してまわるなんて、並の精神状態ではできないとは思いますが、彼には彼なりのバックボーンがあったんですね。
とはいえ、村の生き残りが彼一人ではさすがに現代社会では精神のやられた不審者扱いを受けてしまうのが道理でしょう。
音楽ネタはピンクレディー懐かし！ってなりました。(もう一個の洋楽はわからない)
コメントありがとうございます。前回の『妖精人間』に引き続き、大衆からはまず理解されない、抑圧された個人の苦しみを表現しました！
私は元ネタの世代ではありませんが、あの時代の楽曲はやたら耳に残って良いですよね……『Surfin' Bird』（洋楽の方）は、『フル・メタル・ジャケット』という戦争映画で使用されています！時間がありましたら是非！
精神をやられた（ずんだ虫から見た）巨大な生き物に踊りながらずんサツれるずんだ虫の気持ちってどんなんだろうと想像すると、ゾクゾクしますね。
音楽に合わせてずんサツする動画（音MADみたいな動画）って地下牢ではあまり見かけないので、誰かに作って欲しいなぁと思いました。
コメントありがとうございます。話の通じない（人間とはもとから通じない）怪異に襲われたような絶望感がありそうですね！それこそ『ずんだ虫目線』のVRとかあったら()
音MAD楽しそうです！私も観てみたい……（他力本願）
くそったれなずんだ虫くん、難民っていうのは暴力や差別等迫害されて国を追われた人の事を言うんだよ？君達国無いでしょ？それ以前に人じゃ無いから人権無いの、理解できる？まぁ理解出来る出来ない関係無く愉快にくたばろうか？
消滅集落半歩前だろうとこんな住人（虫）はジェノサイド一択ですな
コメントありがとうございます。前回に引き続き、「なんみん」の表現はものすごくお気に入りになったので、今回もそのまま収録しました！！
（さらにタチが悪いのは、街のコンビニや家屋を乗っ取り、勝手に幸せを享受したうえで「なんみんだから」と開き直っている個体が多いことなんですよね……）
「へこへこ」しながら「なんみん」を自称しているわんわんお様のイラストが特に印象深いです……
こっちは「（人が居なくなったとはいえ）人間の村を要請が乗っ取った」パターンですか
これで事情も判明して駆除業者が動くことになり、妖精被害は収束するでしょう
投稿を基に（廃）村を訪れる人が増え、村の伝統文化に興味を持つ人が出てくるといいですね
コメントありがとうございます。問答無用で命を奪われてしまった前回の「彼」と比較して、生き残れただけ少しは救いがあったのかなあと思います！！
ただ、駆除業者によって妖精が駆逐されたとしても、「病院」送りになった「彼」は、ひとりで村を守り切れなかったという絶望感に襲われることになりそうです……
音楽に合わせて踊りながらずんだ虫を潰すなんてすごく楽しそうです。
コメントありがとうございます。たとえ害獣であれ、命を刈り取るという陰鬱な仕事、（当事者が）少しでも陽気に出来たらなあ、と考えながら執筆しました！
この世界のどこかに、民族舞踊と妖精駆除をミックスした伝統芸能があってもおかしくなさそうですね！