異世界召喚ずんだクエスト
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hayashidada 2024年04月27日(土) 11:07:33履歴
俺はどこにでもいるごく普通のサラリーマン山丘四郎。
今日もブラック企業に扱き使われ終電で帰宅。残業代も出ないし、そろそろ辞めたいところだが職場には狙っている女がいるのでまだ辞めるわけには行かない。接点がなくなるからね。
俺は一見、うだつの上がらない平々凡々とした男だが実はお料理系動画を定期的に上げている家庭系男子なのだ。
疲れ切っちゃいるが、今日もいっちょ頑張って収録しますか！
と、張り切ってＹシャツの袖を捲り上げると背後が突然光りだした。
すわ、何事かとそちらを見るとテレビの画面から光が溢れ出ているではないか！
……いや、別におかしなことじゃないな。テレビから光が出てくるのは普通のことだ。
なーんだ、と改めて撮影の準備を始めたところで俺は気がついた。
待て、俺はテレビを付けた覚えはないぞ？
そしてもう一度振り返ると、テレビは一際強く光り出し、その光に包まれて俺は目を閉じた。
「で、気が付いたらここにいたってワケ」
松明の灯った壁に囲まれた薄暗い部屋の中で、そう言って自分の足元を指差す。不思議な文様の描かれた石造りの床だった。
「はい。我が国の召喚魔術によるものですね」
眼の前にいる僧侶みたいな格好をした男が頷き返す。男は青色の髪をして、金色の瞳をしている。
俺は即座に悟った。
「これ、異世界召喚か」
「話が早くて助かります」
妙に慣れた様子で男は肯定すると部屋の扉を開けて「ここではなんですから、こちらへどうぞ」と手招いた。
男は年若く、二十歳そこそこに見えるが、その割に背中は肉が薄くこじんまりとした肩幅で、頼りなく思えた。
成る程これは例のアレかな？
じっと自分の手を見やる。水仕事で荒れた指先が乾燥していてひび割れを起こしている。刃物を握るのには慣れているが、よもやまさかという他ない。
異世界転生といったら恒例のアレ。魔王をやっつけてくれとかに違いない！
俺はちょっと興奮していた。
「こちらです」
改めて通された部屋は仕事机の並んだ、日本でもよく見るオフィスの光景によく似ていた。
……おかしいな？
てっきり王様とかに面会させられて選ばれし勇者ようんぬんかんぬんみたいなこと言って大冒険の幕が開くみたいな展開かと思ったんだが……。
こちらに座ってくださいと促され、事務机を挟んで対面する。
机の上にはいくつかの書類と朱印が置かれていた。
「ええとですね、山丘四郎さんで間違いありませんか？」
「はい……何で俺の名前を？」
冒頭で名乗ったが、この男には名乗っていない。
「それはこちらも調査をしてからお呼びしていますので。万が一にも間違いなどあっては大変ですから、本人確認をさせていただいております」
何だこの異世界。
「それであの……なんで俺呼ばれたんです？ 魔王とかやっつけるためですか？」
男は爽やかにハハハと笑った。
「皆さん、それおっしゃいますね。ご安心下さい。魔王なんておりません」
マジかよ。他にも呼ばれてる上、業者呼んでる感覚じゃねえか。
俺の中の幻想が音を立てて崩れていく。
「そ、それじゃあどうして俺は……」
「現在我が国では食料が不足しておりまして、その対策のために異世界からエキスパートをお呼び立てしております」
「食料？」
「はい。我が国の食料自給率は５５％と低下しております。諸外国からの輸入で畜産を賄っている状態なのです」
「それで自国でも畜産をしたいと」
「正確には安価な畜産ですね。自国産の食肉は品質の高さが売りなんですが、如何せん値段が張るもので」
「どっかで聞いたような話ですね」
しかしこれは困った。どう考えても俺の出る幕じゃない。
畜産に関わる伝手はあるが、専門的な知識はない。
とはいえ、事前に調査して俺を呼んだのだから、俺が必要で呼んだわけで……。
そこで気がついた。
「ずんだ虫か」
俺の呟きに男は頷いた。
「先日お呼び立てした方から新たな家畜としてずんだ虫を御教示いただきました。幸い、番を同時に召喚出来たため現在十分な数のずんだ虫を確保出来ております」
大丈夫か、この異世界。
外来種……特にあんな生き物を繁殖させたら確実に後悔するだろうに。生態系とか大丈夫か？
「実はあまり大丈夫でなかったりします」
やっぱりか。
「ずんだ虫は食物連鎖的には最下層に位置するおかげでずんだ虫が繁殖したことによって他の動物が食べるものがない、ということはないんですが……まあ、これは別の話です」
「他にどんな問題が？」
そう尋ねると男は顔を暗くした。
「数を増やすことに成功した、までは良かったのですが……その、美味しくなくて」
得心がいった。ずんだ虫は適切な方法を取らなければ生臭くて食べられたものではない。
そしてその方法は単なる調理に留まらない工程が必要となるので、知らなければ食肉として利用するのは不可能だろう。
前に呼ばれた者は食肉加工はしていなかったのだろう。それでずんだ虫料理のエキスパートとして俺が呼ばれたわけか。
「理解しました。俺に、ずんだ虫料理の手ほどきをしてほしいということですね？」
「その通りです。どうかご助力いただけませんか。勿論報酬はお支払いいたします」
机の引き出しを開くと中から箱を取り出した。
その箱の蓋を開くと、中には布地の詰め物がされ、その中心には金色に光るインゴットが収められていた。
「き……金！？」
「一キロあります。これでお引き受けいただけませんか」
「やります」
一も二もなく俺は引き受けた。
「へこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこおおおおおおおおおおおっ！」
「ずんぽいいのおっ！ しんじゃうのお！ もっとたねちゃんそそいでほしいのだあああああああああああああっ！」
「ぼくのずんぽでこすもをかんじるのだあああああああああああっ！」
「ぼくのおなかでびっくばんがひろがっているのだ！ あらたなせいめいのたんじょうをかんじるのだ！」
「うっ、うまれるのだ！ うまれたのだ！ とってもかわいいのだ！」
「すごいのだすごいのだ！ さっそくつぎのおちびちゃんをつくるのだ！ たえまないへこへここそうまれてきたいみなのだ！」
「おぎゃーおぎゃー！ おなかへったのだ！ ずんちゃはおなかへったのだ！ ずんだもちよこすのだ！ ずんだもち！」
「おぎゃーおぎゃー！ やめるのだ！ ぼくはずんだもちじゃ……いちゃいいちゃい！ やめちぇぇぇぇぇぇぇぇえぇ！」
「うわあ……………………」
ずんだ虫を量産すべく用意されたその部屋は世紀末もかくやという地獄の様相を呈していた。
不浄の生物が下半身から撒き散らした液体や物体がそこらに撒き散らされており、呼吸しただけで病気になりそうな有り様である。
生まれてきた子供は地面で泣きじゃくっており、親どもはそれを無視して新たな子作りを始めている。
食べ物を親から与えられない子供たちがお互いの身体を舐め合い、食べ合い、齧りかけの死体がそこらに転がっている。
これで管理できてんのか？
「ここにいるのは生産用のずんだ虫です。共食いから生き延びた個体から肉付きの良いものを選別して食肉加工します」
部屋の中に入ったスタッフが子ずんを拾い上げ、何やら選別して回収していく。大体３つに別けられているようだった。
「食肉加工用、生産用、家畜の餌として使うものに別けています」
生産用以外の未来は暗そうだ。
早速俺は食肉加工用のずんだ虫の様子を見に行くことにした。
屠殺場であるそこでは何も知らないずんだ虫どもが「ずんだもちよこすのだ！」「はやくするのだ、くそにんげん！」「つかえねーのだ！ むのーなのだ！」などと好き放題喚いている。
屠殺人は一匹のずんだ虫を捕まえるとすかさず首を切り「かっ……ひゅっ……」喋れなくしてから横の籠に放り投げた。一切の無駄も躊躇もない、苦しみを与えない素晴らしい仕事だ。
「ああした後は解体して処理しているのですが、あまり美味しくなくて……」
サンプルとして差し出されたずんだ虫の串焼きを食べてみる。
人類が食べてはいけない味をしていた。あまりの不味さに吐き気を催す。
口元を拭う俺にどうにかなりませんか？ と目で訴えてくる。
俺は静かに笑みを浮かべた。
「明日もう一度ここに来て下さい。本物のずんだ虫料理というものをお見せしますよ」
「やあ、ようこそいらっしゃい」
宣言通り、翌日俺は本物のずんだ虫料理を用意して待ち構えていた。
長机に乗せられた皿の上には一匹のずんだ虫がこんがりと焼けて転がっている。
間抜けに開かれた口と尻を貫通する串がここを持って食えと主張しているようだ。
「こ……これは……」
ごくりとつばを飲む気配がした。食欲をそそられているのか、その威容に圧倒されているのか、今のところはわからない。
「どうぞ、食べてみてください。尻のあたりが食べやすいですよ」
俺にすすめられるまま恐る恐る串の両端を両手で握り丸焼きとなったずんだ虫を眺める。その顔色はいささか青い。
「で……では、いただきます」
ぱくりと齧り付くと、柔らかい尻肉を噛み千切った。
何度か咀嚼しているうちにみるみるその顔が驚嘆へと変わっていく。
「う……うまい！ 噛みごたえのある弾力でありながら、決して固くはなく、舌の上で蕩けるようだ！ 勿論味もいい！ 独特の風味が鼻を抜け喉の奥へと肉を誘うように香る！ 醤油ベースのタレの旨味に負けず、意外と後味を引く肉の脂が食欲を増進して止まない！ これはまさに肉弾列車！ 口から喉、そして胃袋までノンストップの急行列車やでー！」
謎の食レポが炸裂し、どうやらご満足頂けたことを知り、俺は渾身のドヤ顔を見せた。
「いかがです？ これが本物のずんだ虫料理というものですよ」
かぶりついていた肉から口を離し慌てたように手で拭う。動揺を隠しきれず、頬に紅が差していた。
「お……驚きました。よもやまさかずんだ虫にこれ程のポテンシャルがあろうとは……」
まあ、そうよな。それが普通の感想だ。
「ウチの世界でも当初はただの害獣でしたよ。しかしうちの会社が運営してる研究所での研究の結果、コイツらの調理の仕方が判明したのです」
「これは単なる丸焼きにしか見えませんが……」
「その極意をお教えしましょう。ついてきて下さい」
ずんだ虫料理はその選別から特別な目利きが必要になる。
異世界の人々はそこまでは習ってなかったようで、ともすれば見当違いと言わざるを得ない選別をしていた。
「と、言いますと？」
「食材として優秀なずんだ虫の肉付きを気にするのは一般的な見方としては正しいけれど、こいつらに関してはそうじゃない。どれ……」
俺はずんだ虫どもの繁殖場で目を皿のようにして奴らの動向を観察する。
交尾に明け暮れるもの、同族の血肉を啜るもの、狂乱の最中から逃げ回るもの、そしてそんな弱者をつつ回すもの……。
「のーだのだのだ！ おびえろ！ すくめぇ！ おまえのようなよわむしは、もりのけんじゃとしてのきょうじをなげすててにげまどうがいいのだあ！」
「や、やめてほしいのだ！ ぼくはただ……」
「うるせーのだよわむしが！ おまえみたいなくそざこはこのぼくのような”りあじゅうずんだ”にもてあそばれてしぬうんめいなのだ！」
「しょ……しょんな！ あまりにりふじんなのだ！」
涙ながらに訴えるものの、自称リア充は聞く耳持たず、ゲラゲラ笑いながら弱者ずんの尻尾を掴んだ。
「い……いちゃ……」
「おまえたち！ おまえたちはそいつのあたまさんをつかむのだ！ つなひきしてあそぶのだ！」
「はーいのだ！」
家族らしきメスずんや子ずんが弱者ずんの頭を掴む。
「やめ……やめ……もげちゃ……げっ！」
ごきりと弱者ずんの首のあたりから嫌な音がした。
おそらく頚椎を損傷したのだろう。白目をむき、舌を垂らし、身体を脱力させて動かなくなった。
「なんだこいつ、もうしんだのだ！ くそざこにもほどがあるのだ、はじしらずめ！ ぼくがしんのきょうしゃとはなんなのかをおしえてやるのだ！」
そう宣言すると鼻息荒く全身を震わせて顔を赤くした。
「う、うわ！？」
リア充の力は凄まじく、メスずんや子ずんもろとも死んだ弱者ずんを引き込んで宙に舞わせていた。
「のーだのだのだ！ どうだ！ ぼくのかちなのだ！」
「すごいのだすごいのだ！」
「ぱぱずんはさいきょーなのだ！」
「そうだろうそうだろう。さっそくつぎのおもちゃをさがすのだ！」
『のだ！』
弱者ずんの死体を打ち捨てて、文字通り次の遊び道具を探し始めた。
俺はその様子を眺めてニヤリと笑みを浮かべる。
「アレがいいな」
指差す先では既に新たな玩具を壊して下卑た笑みを浮かべながら楽しむリア充の姿がある。
「アレですか。アレは生産用という話ですが……」
「性欲旺盛でメスの目を引くからそうしたんだろうけど、アレこそ食用ですよ」
ずんだ虫とは傲慢であり、無知であり、故にどこまでもポジティブになれる。
その傲慢さの絶頂にある虫こそが食材として最も適しているのだ。
「のーだのだのだ！ なまくびさっかーなのだ！ それ、おちびちゃん！ ぱすなのだ！」
「わーい！ おもしろいのだ！」
俺に目をつけられたずんだ虫は、迫りくる命の危機を察知することなく、他のずんだ虫の頭を引っこ抜き、それをボールにして遊んでいるようだった。
飛んできた生首を腹で受け止めた子ずんがひっくり返る。
「いちゃい！ このくそなまくび！ よくもずんちゃをころばせたなのだ！ ちねー！」
生首に何度も汚い足で踏みつけを行う子ずんを母親は微笑ましいものを見る目で眺めていた。
「おちびちゃんたらはしゃいじゃって……とってもかわいいのだ！」
「ずんちゃかわいいのだ！？」
「とってもかわいいのだ！ せかいいちなのだ！」
「そうなのだ！？ ずんちゃ、せかいいちかわいいのだ！ ずんだもちもらえるのだ！？」
「きっとおちびちゃんのかわいさにくそにんげんもめろめろになってずんだもちをけんじょうするのだ！」
「ほんとうなのだ！？ あっ、くしょにんげんがいるのだ！ やい！ くしょにんげん！ せかいいちかわいいずんちゃにずんだもちをよこ」
何事かべちゃべちゃ喋っていたがガキに用はないので踏み潰した。
靴の裏で踏み潰された頭が胴体に陥没し、完全に即死だった。
「ああああああああああああああああ！？ お、おちびちゃーん！」
「しょ、しょんな……おちびちゃんが……せかいいちかわいいおちびちゃんがああああああああああああ！」
「よお、楽しそうだな。俺も混ぜてくれよ」
「ふざけるななのだ！ おまえだけはぜったいにゆるさないのだ！ おちびちゃんをかえせー！」
「ほい」
死体を蹴り飛ばして返してやった。
「ぎゃっ！」
飛んできた死体にぶつかり、二度三度と地面を転がった。
「おいおい。ちゃんと受け止めろよおちびちゃんサッカー、得意なんだろ？」
倒れたまま悔しげに、怒りに顔を歪ませてずんだ虫が俺を睨みつけてくる。
「おちびちゃんはぼーるじゃないのだ！ それに、しんでるおちびちゃんにようはねーのだ！ おちびちゃんをいきかえらせるのだ！」
「そ、そうなのだ！ いきてるおちびちゃんをかえすのだ！」
やいのやいのと騒ぎ始める夫婦。その愛にさしもの俺も内心大爆笑である。
「そうかそうか。生きてるガキが欲しかったのか。それを先に言えよ……っと」
「ぎゃー！」
ずんだ虫の両手足に串を突き刺し地面に固定する。そして、あわあわとしているメスを拾い上げた。
「ぱ、ぱぱずーん！ たすけてのだー！」
「ま、ままずん！ ままずんをはなすのだ、このくそざこたんしょうずんぽにんげん！」
謂れなき中傷を受けて俺は激しく傷つき涙した。
「酷いこと言うね。折角おちびちゃんに会わせてやろうというのに」
「のだ！？ おちびちゃんがいきかえるのだ！？」
「のだ！ それならはやくするのだいますぐでいいのだ！」
「まあ、そう慌てるなよ。ところでこいつを見てくれ。どう思う？」
そう言って俺が取り出したのはずんぽ型ディルド極太サイズである。
その巨大なイチモツを見た瞬間、オスメス共に息を呑んだ。
「な……なんなのだ、それ……」
「と……とてもおおきいのだ……」
「これは俺のずんぽだよ」
『のだ！？』
驚きのあまりハモる夫婦。
短小と侮っていた人間が、見たこともないサイズのそれを持ってきたことに圧倒されているようだった。
まあ、もっとも。俺にはずんぽなんてものは存在しないので大嘘ではあるのだが。
そいつの先端をメスのケツに当ててやった。
「こいつでおちびちゃんと再会させてやるよ」
「え？ ま、まさか……」
ずんだ虫（オス）の顔が青ざめる。
「こいつを使って新しいガキを作ってやろうって言ってんのさ」
「や！ やめるのだ！」
妻の貞操の危機に暴れ出すずんだ虫ではあるが、その手足には串が刺さっている。動く度に血が滲み床に染みが広がっていく。
「そ、そうなのだ！ や、やめるのだ……ぼ、ぼくのあにゃるは……ぱぱずん……だけの……」
メスも抵抗する素振りを見せながら、しかし尻に当たる巨大ずんぽディルドに意識を奪われているのは明白であった。
俺はその顔にそっと口を近づけ囁く。
「そういうなよ。お前のオスじゃ到底味わえない快楽をくれてやるよ」
ぐっ、と力を入れるとわずかにディルドが内部に侵入する。
「は、はうあ！？」
「や、やめりょおおおおおおおおおおお！」
「どうする？ やめるか？」
「う、うう……！」
「はっきり言わないなら、やめるけど？」
ディルドが尻から抜ける。その間際に。
「や、やめにゃいで！」
悲痛な叫びをメスが上げた。
「ままずん！？ なにをいっているのだ、ままずん！？」
「あ……ちが……」
思わず口にしてしまった言葉を口の中に戻すように、メスは口に手を当てる。しかし、もう一度ディルドを少しだけ進めると「のだぁ……」と気味の悪い声を出した。
「違うのか。じゃあやめるわ」
「あっ、まっ……」
そして、今度こそ引き抜こうとすると括約筋を引き締めディルドを己の体内に止めようとする。
「はっきり言えよ。旦那のカスみたいなずんぽよりずっと大きなコイツで自分のことをぶっ壊してくださいってさぁ」
「うるさいうるさいうるさい！ だまれくそにんげん！ ぼくのずんぽはかすじゃないのだ！ ままずん、はやくやめろってはっきりいってやるのだ！」
二人の男にそれぞれ正反対の要求をされ、メスの中で天秤が揺れ動いている。
未知の快楽か。操を捧げた男に殉じるか。
ああ、その迷いは無意味である。どうせこの生き物にはただ一つの選択肢しかない。
「こ……」
「ん？」
「ぶっこわして……」
「ま、まま……ずん……？」
「ぶっこわしてええええ！ そのおっきなずんぽで、ぼくのおまんずんをぐちゃぐちゃにしてほしいのだあああああああ！」
泣き喚くように、メスが懇願する。
そう。結局この生き物はいつもこうなのだ。
脳が枝豆生やすための袋で圧迫されてるから学習能力なんてありゃしないし、先のことを考える頭もない。
「そうかい。じゃあお望み通りにぶっ壊してやるよ」
ディルドを乱暴に突っ込むと「のぢゃああああ！？」と一際大きく叫んだ。
なんの容赦も遠慮もせず雑に扱っているというのに悍ましいゴミ虫は肉の悦びに白目を剥いて涎を垂らし穢らしい液体を下半身から撒き散らしている。
その痴態を見せつけられているオスは信じられないものを見るように目を見開き、顔を真っ青にして泣いていた。
「す……すごいのだ！ いままでのどんなずんぼともべつじげんのさいきょうずんぽなのだぁぁぁぁぁぁ！」
うひょーと泣き喚く虫の中に入れては出し入れては出す度に気持ち悪い歓喜の声を上げる。
「さいこうなのだぁぁぁぁぁぁぁぁ！ へこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこぉぉぉ！ ずんぽ、ずんぽいいのおおおおおおお！ これしっちゃったらほかのごみずんぽなんてかんがえられないのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」
手元でよがり狂うメスの恥も外聞もありゃしねえ有り様は、そうさせた側であってもドン引きする他ない。
吐き気を催す。正直殺したい。
内心の嫌悪を押し殺して俺はゴミ虫に語りかける。
「そんなにいいのかよ！ お前の旦那が見てるってのにちょっと薄情なんじゃねえの！？」
俺の言葉責めにメスは抗うどころか「んほおおおおおおおお！」と薄っ気味悪い悦びの声を上げ、身を大きく震わせた。
「あんな、かすみたいなたんしょうずんぽはぁ、ぱぱずんなんかじゃないのだ！ ぼくにはこのずんぽがぜんぶですのだぁぁぁぁ！」
もう理性もクソもない。本音を思いっきりぶちまけると、それを聞いたオスが益々青ざめる。
「な、なにをいってるのだ、ままずん！ ぼくのずんぽはさいこうだってあんなに……」
「うるせえぇぇぇえぇぇええぇぇのだぁぁぁぁあぁあぁぁぁ！ しゃべんなかすずんぽなのだ！ おまえみたいないかせないごみずんぽにそんざいかちねえのだ！ いきがくせぇからしにやがれなのだ！」
何だコイツ。俺は割とマジでドン引いていた。
でもまあ、こんなもんだろ。コイツラなんて。
「そいつはおちびちゃんをぶっころしたかたきなのだ！？ そんな、そんなやつのずんぽで……」
「おちびちゃんなんてぼくにはいなかったのだ！ そこにころがってるのはただのずんちなのだ！ おねがいですにんげんしゃん！ にんげんしゃんのずんえきではらませてほしいのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」
最後のよすがさえ蹴り飛ばし、俺に冗談じゃねえことを頼んでくる害虫。背筋が悍ましさでゾワゾワする。
そういう内心をとにかく隠し立て、俺は「よおし」と承った。
「じゃあ子種をくれてやる。しっかり孕め、クソメスが！」
「きてきてきてぇぇぇぇぇぇえぇえぇ！ きゅうきょくのたねちゃんちょうだいなのだぁぁぁぁぁぁ！」
操作するとディルドに内蔵された液体が放出され虫の腹の中に注ぎ込まていく。
「あふぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇ！？ す、すごすぎるのだぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」
虫の体がどんどん膨らみ、ディルドが耐えきれず押し出された。
虫の体では到底収まりきらない白濁した液体が穢らわしいゴミ虫の穴から滝のように流れていく。
あんまり汚いから地面にメスを投げ捨てた。
それでもまだなお生きており、その面は恍惚に満ちていた。
「あ、ああ……あああ……こんな……こんなの……うしょ、なのだ……」
その様を呆然自失として眺めているオスの目からは緑色の涙が流れている。
気の早いヤツだ。絶望はこれからだというのに。
俺はメスをつま先で軽く蹴る。かなりぞんざいに扱っているのだがメスは嬉しそうに「のだぁ」と甘えた声を出す。気持ち悪い。
「さっさと出産しろ」
未だ恍惚の表情を浮かべているメスが体を震わせながら「う……うま……うまれ……うまれりゅぅぅぅ……」と気持ちの悪い声を出している。
それに反応するかのようにメスの穴から「おぎゃーおぎゃー！」とうざったい鳴き声を上げながらゴミ虫がポップコーンみたいに飛び出した。
こいつらは年がら年中交尾して、年がら年中出産している。だからどうせ身籠っているし、出産できると思っていたのだがやはり想像通りだった。
「お……おちびちゃんがうまれたのだ！ とってもかわいいのだ！」
オスは青ざめた顔をしながらも子供の誕生を喜んだ。さっき自分のガキが死んだばかりだから、せめてそこに救いを求めているのだろう。
だが、だからこそ絶望に落とせるのだ。
「ほ……ほら！ おちびちゃん！ ぼくがおとーちゃなのだ！ こっちにくるのだ！」
地面に貼り付けにされた父親を自称するオスを見てガキどもは「おとーちゃ……？」と首を傾げつつもそちらへ行こうとする。
その感動の対面に俺のインターセプトが決まり壁のように立ちふさがった。
「馬鹿か。お前のガキなわけないだろ。今、俺がコイツに子種をくれてやったんだからな」
それは見ないようにしていた現実なのだろう。オスは顔を益々青ざめさせながら、必死に頭を横に振っていた。
「ち……ちがうのだ！ ぼくのこなのだ！ ぼくはきのうもへこへこしたのだ！ だからぼくのこなのだ！」
ずんだ虫の妊娠から出産までのサイクルはかなりまちまちで、交尾即出産する個体もいれば一週間、あるいは数ヶ月という個体もいる。
その妊娠期間による個体の差は特にない。研究者の友人によると「多分だけど気分で妊娠期間を決めている」とのことだ。
だから基本的には交尾したら大体既に子供はできている。なので新たに生まれてきてしまったこの虫どもは本当にコイツの子供なのだろう。
それを踏まえたうえで、俺は改めてオスを嘲笑った。
「お前の、貧相なずんぽとやらから出てきたクソ雑魚精子が俺のスペシャルずんぽに勝てるわけ無いだろ」
理屈になってないが、そういうのはこの虫相手に必要ない。劣等感さえ植え付ければそれでいい。
狙い通り、オスは最早顔面蒼白、血の気が引いて真っ白だ。まあ、もともと白いんだけど。
必死になって「ちがうのだ……ちがうのだ……」とうわ言を壊れたラジオみたいに垂れ流している。
「ぼくのおちびちゃんなのだ……！ ぼくのゆーしゅーないでんしをうけついだ、とってもかわいいぼくの……」
「うるせえのだ！」
オスの必死な訴えをかき消す声は体を起こしたメスによるものだった。
「おまえみたいなかすずんぽがこのこたちのおとーちゃなわけねーだろーがなのだ！ ねごとはねてからほざきやがれなのだ！ おちびちゃんたち！ ほんとうのおとーちゃはそこにいるにんげんさんなのだ！」
ウッキウキでお父さんとして紹介されてしまった。
ガキどもは俺を見上げ目をきらめかせながら「おとーちゃ！」「おとーちゃなのだ！」と俺の足にすり寄ってくる。
キモい。潰したいが、今は我慢だ。
「そうだな我が子ども。俺がお前らのおとーちゃだ」
「おとーちゃおとーちゃ！」「だっこしてほちいのだ！」「なめなめしてほしいのだ！」
するわけねーだろ。
適当に笑顔を浮かべてあしらっていると、ガキの一匹が「じゃああそこにいるのはなんなのだ？」と純粋な疑問を浮かべた。
「ぼ……ぼくはおまえたちのおとーちゃなのだ！ ほんとうのおとーちゃなのだ！」
涙ながらの訴えに、ガキ共の反応は淡白だった。
「でも、じめんにはいつくばっててかっこわるいのだ！」
「そうなのだ！ そんなおとーちゃはいらねーのだ！」
「くそざこなのだ！ ごみなのだ！」
やいのやいのと言い立てる。子供たちから否定されて、とうとう言葉もなくしたようだった。
そこに、俺がとどめの一言をかけてやる。
「あれはお前たちのために用意したおもちゃだ。殴るなり蹴るなり、小便引っ掛けるなり好きに遊べ」
死の宣告にも等しい俺の言葉にオスはさらなる絶望を、ガキどもは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「ありがとうなのだ、おとーちゃ！ ふるぼっこにしてあそぶのだ！」
「おもちゃさん！ きゃっきゃっ！」
「のだのだのだのだのだのだのだ！」
ガキどもは嬌声を上げて玩具に群がる。耳を引っ張り、顔を足蹴にし、小便を引っ掛けてはしゃいでいた。
「や……やめるのだ、おちびちゃん……ぼくは……ぼくは……」
「このおもちゃおもしれーのだ！」
「もっといたぶってあそぶのだ！」
「おといれさんにしてやるのだ！」
それは想像しうる限り最悪の光景の一つに違いない。
実に子供に暴力を振るわれ、なす術もない父親。
男としても、父としても、最低の最低まで尊厳を傷つける。人の世にあってはならない光景である。
でも、これはずんだ虫なのでオーケです。
そんな地獄のような状況が暫く続くと、とうとうオスずんが動かなくなった。途中から「コロチテ……コロチテ……」としか言わなくなったのでそのあたりでもう十分だったが、ガキどもにとどめを刺させた方が都合がよろしいので放置していたのだ。
絶望に染まり、心身ともに死に切ったオスずんに最後の一発とずんぺを引っ掛けるガキ。「しんだのだ！ ざまあなのだ！」とキャッキャッしているのを俺は微笑ましく感じながらそいつ等の側に寄る。
「お疲れさん。楽しかったか？」
「たのしかったのだ！ またくしょごみかすざこたんしょうげろむしであそびたいのだ！」
「おとーちゃ！ またおもちゃさんをもってくるのだ！」
「はやくするのだ！ いますぐでいいのだ！ かわいいずんちゃたちのためなのだ！」
生後一時間も経たない内からこの上なく調子にのりまくるカスムシどもを見てメスはウフフと笑っていた。
「おちびちゃんたちったらはしゃいじやって……とってもかわいいのだ！ おとーちゃ！ おちびちゃんたちのためにはやくおもちゃをよういするのだ！」
俺はそれに微笑みながら頷き返しガキ共の中から一匹を捕まえ持ち上げた。
「すごいのだすごいのだ！ とってもたかいのだ！ たのしいのだ！」
「ずるいのだずるいのだ！ ずんちゃもたかいたかいしてほしいのだ！」
「おにーちゃばっかりずるいのだ！」
そう言って足元に縋り付いてこようと近付いてくるガキの一匹を俺は無言で踏み潰した。
「え」
何が起きたのか分からず呆然としているもう一匹を蹴り飛ばすと五体がバラバラとなって、何が起きたのかも分からないといった表情を浮かべた頭部がコロコロと転がっていく。
それが、呆けたままのメスの眼前にやって来るとメスは発狂した。
「あああああああああああ！？ お、おちびちゃ……おちび、おち……なんっ……なんで」
「お、おとーちゃ！？ ど、どうしちゃったのだ！？」
信じられない出来事に手の中でクソ虫が絶望の表情を浮かべている。俺の顔に浮かんでいるのは笑みではあったが、それには多分に嘲りが含まれていた。
「バカか、お前らは。俺がお前の親父なワケがないだろ。お前らの親父はお前らがぶっ殺したそこのゴミカスだよ」
今日もブラック企業に扱き使われ終電で帰宅。残業代も出ないし、そろそろ辞めたいところだが職場には狙っている女がいるのでまだ辞めるわけには行かない。接点がなくなるからね。
俺は一見、うだつの上がらない平々凡々とした男だが実はお料理系動画を定期的に上げている家庭系男子なのだ。
疲れ切っちゃいるが、今日もいっちょ頑張って収録しますか！
と、張り切ってＹシャツの袖を捲り上げると背後が突然光りだした。
すわ、何事かとそちらを見るとテレビの画面から光が溢れ出ているではないか！
……いや、別におかしなことじゃないな。テレビから光が出てくるのは普通のことだ。
なーんだ、と改めて撮影の準備を始めたところで俺は気がついた。
待て、俺はテレビを付けた覚えはないぞ？
そしてもう一度振り返ると、テレビは一際強く光り出し、その光に包まれて俺は目を閉じた。
「で、気が付いたらここにいたってワケ」
松明の灯った壁に囲まれた薄暗い部屋の中で、そう言って自分の足元を指差す。不思議な文様の描かれた石造りの床だった。
「はい。我が国の召喚魔術によるものですね」
眼の前にいる僧侶みたいな格好をした男が頷き返す。男は青色の髪をして、金色の瞳をしている。
俺は即座に悟った。
「これ、異世界召喚か」
「話が早くて助かります」
妙に慣れた様子で男は肯定すると部屋の扉を開けて「ここではなんですから、こちらへどうぞ」と手招いた。
男は年若く、二十歳そこそこに見えるが、その割に背中は肉が薄くこじんまりとした肩幅で、頼りなく思えた。
成る程これは例のアレかな？
じっと自分の手を見やる。水仕事で荒れた指先が乾燥していてひび割れを起こしている。刃物を握るのには慣れているが、よもやまさかという他ない。
異世界転生といったら恒例のアレ。魔王をやっつけてくれとかに違いない！
俺はちょっと興奮していた。
「こちらです」
改めて通された部屋は仕事机の並んだ、日本でもよく見るオフィスの光景によく似ていた。
……おかしいな？
てっきり王様とかに面会させられて選ばれし勇者ようんぬんかんぬんみたいなこと言って大冒険の幕が開くみたいな展開かと思ったんだが……。
こちらに座ってくださいと促され、事務机を挟んで対面する。
机の上にはいくつかの書類と朱印が置かれていた。
「ええとですね、山丘四郎さんで間違いありませんか？」
「はい……何で俺の名前を？」
冒頭で名乗ったが、この男には名乗っていない。
「それはこちらも調査をしてからお呼びしていますので。万が一にも間違いなどあっては大変ですから、本人確認をさせていただいております」
何だこの異世界。
「それであの……なんで俺呼ばれたんです？ 魔王とかやっつけるためですか？」
男は爽やかにハハハと笑った。
「皆さん、それおっしゃいますね。ご安心下さい。魔王なんておりません」
マジかよ。他にも呼ばれてる上、業者呼んでる感覚じゃねえか。
俺の中の幻想が音を立てて崩れていく。
「そ、それじゃあどうして俺は……」
「現在我が国では食料が不足しておりまして、その対策のために異世界からエキスパートをお呼び立てしております」
「食料？」
「はい。我が国の食料自給率は５５％と低下しております。諸外国からの輸入で畜産を賄っている状態なのです」
「それで自国でも畜産をしたいと」
「正確には安価な畜産ですね。自国産の食肉は品質の高さが売りなんですが、如何せん値段が張るもので」
「どっかで聞いたような話ですね」
しかしこれは困った。どう考えても俺の出る幕じゃない。
畜産に関わる伝手はあるが、専門的な知識はない。
とはいえ、事前に調査して俺を呼んだのだから、俺が必要で呼んだわけで……。
そこで気がついた。
「ずんだ虫か」
俺の呟きに男は頷いた。
「先日お呼び立てした方から新たな家畜としてずんだ虫を御教示いただきました。幸い、番を同時に召喚出来たため現在十分な数のずんだ虫を確保出来ております」
大丈夫か、この異世界。
外来種……特にあんな生き物を繁殖させたら確実に後悔するだろうに。生態系とか大丈夫か？
「実はあまり大丈夫でなかったりします」
やっぱりか。
「ずんだ虫は食物連鎖的には最下層に位置するおかげでずんだ虫が繁殖したことによって他の動物が食べるものがない、ということはないんですが……まあ、これは別の話です」
「他にどんな問題が？」
そう尋ねると男は顔を暗くした。
「数を増やすことに成功した、までは良かったのですが……その、美味しくなくて」
得心がいった。ずんだ虫は適切な方法を取らなければ生臭くて食べられたものではない。
そしてその方法は単なる調理に留まらない工程が必要となるので、知らなければ食肉として利用するのは不可能だろう。
前に呼ばれた者は食肉加工はしていなかったのだろう。それでずんだ虫料理のエキスパートとして俺が呼ばれたわけか。
「理解しました。俺に、ずんだ虫料理の手ほどきをしてほしいということですね？」
「その通りです。どうかご助力いただけませんか。勿論報酬はお支払いいたします」
机の引き出しを開くと中から箱を取り出した。
その箱の蓋を開くと、中には布地の詰め物がされ、その中心には金色に光るインゴットが収められていた。
「き……金！？」
「一キロあります。これでお引き受けいただけませんか」
「やります」
一も二もなく俺は引き受けた。
「へこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこおおおおおおおおおおおっ！」
「ずんぽいいのおっ！ しんじゃうのお！ もっとたねちゃんそそいでほしいのだあああああああああああああっ！」
「ぼくのずんぽでこすもをかんじるのだあああああああああああっ！」
「ぼくのおなかでびっくばんがひろがっているのだ！ あらたなせいめいのたんじょうをかんじるのだ！」
「うっ、うまれるのだ！ うまれたのだ！ とってもかわいいのだ！」
「すごいのだすごいのだ！ さっそくつぎのおちびちゃんをつくるのだ！ たえまないへこへここそうまれてきたいみなのだ！」
「おぎゃーおぎゃー！ おなかへったのだ！ ずんちゃはおなかへったのだ！ ずんだもちよこすのだ！ ずんだもち！」
「おぎゃーおぎゃー！ やめるのだ！ ぼくはずんだもちじゃ……いちゃいいちゃい！ やめちぇぇぇぇぇぇぇぇえぇ！」
「うわあ……………………」
ずんだ虫を量産すべく用意されたその部屋は世紀末もかくやという地獄の様相を呈していた。
不浄の生物が下半身から撒き散らした液体や物体がそこらに撒き散らされており、呼吸しただけで病気になりそうな有り様である。
生まれてきた子供は地面で泣きじゃくっており、親どもはそれを無視して新たな子作りを始めている。
食べ物を親から与えられない子供たちがお互いの身体を舐め合い、食べ合い、齧りかけの死体がそこらに転がっている。
これで管理できてんのか？
「ここにいるのは生産用のずんだ虫です。共食いから生き延びた個体から肉付きの良いものを選別して食肉加工します」
部屋の中に入ったスタッフが子ずんを拾い上げ、何やら選別して回収していく。大体３つに別けられているようだった。
「食肉加工用、生産用、家畜の餌として使うものに別けています」
生産用以外の未来は暗そうだ。
早速俺は食肉加工用のずんだ虫の様子を見に行くことにした。
屠殺場であるそこでは何も知らないずんだ虫どもが「ずんだもちよこすのだ！」「はやくするのだ、くそにんげん！」「つかえねーのだ！ むのーなのだ！」などと好き放題喚いている。
屠殺人は一匹のずんだ虫を捕まえるとすかさず首を切り「かっ……ひゅっ……」喋れなくしてから横の籠に放り投げた。一切の無駄も躊躇もない、苦しみを与えない素晴らしい仕事だ。
「ああした後は解体して処理しているのですが、あまり美味しくなくて……」
サンプルとして差し出されたずんだ虫の串焼きを食べてみる。
人類が食べてはいけない味をしていた。あまりの不味さに吐き気を催す。
口元を拭う俺にどうにかなりませんか？ と目で訴えてくる。
俺は静かに笑みを浮かべた。
「明日もう一度ここに来て下さい。本物のずんだ虫料理というものをお見せしますよ」
「やあ、ようこそいらっしゃい」
宣言通り、翌日俺は本物のずんだ虫料理を用意して待ち構えていた。
長机に乗せられた皿の上には一匹のずんだ虫がこんがりと焼けて転がっている。
間抜けに開かれた口と尻を貫通する串がここを持って食えと主張しているようだ。
「こ……これは……」
ごくりとつばを飲む気配がした。食欲をそそられているのか、その威容に圧倒されているのか、今のところはわからない。
「どうぞ、食べてみてください。尻のあたりが食べやすいですよ」
俺にすすめられるまま恐る恐る串の両端を両手で握り丸焼きとなったずんだ虫を眺める。その顔色はいささか青い。
「で……では、いただきます」
ぱくりと齧り付くと、柔らかい尻肉を噛み千切った。
何度か咀嚼しているうちにみるみるその顔が驚嘆へと変わっていく。
「う……うまい！ 噛みごたえのある弾力でありながら、決して固くはなく、舌の上で蕩けるようだ！ 勿論味もいい！ 独特の風味が鼻を抜け喉の奥へと肉を誘うように香る！ 醤油ベースのタレの旨味に負けず、意外と後味を引く肉の脂が食欲を増進して止まない！ これはまさに肉弾列車！ 口から喉、そして胃袋までノンストップの急行列車やでー！」
謎の食レポが炸裂し、どうやらご満足頂けたことを知り、俺は渾身のドヤ顔を見せた。
「いかがです？ これが本物のずんだ虫料理というものですよ」
かぶりついていた肉から口を離し慌てたように手で拭う。動揺を隠しきれず、頬に紅が差していた。
「お……驚きました。よもやまさかずんだ虫にこれ程のポテンシャルがあろうとは……」
まあ、そうよな。それが普通の感想だ。
「ウチの世界でも当初はただの害獣でしたよ。しかしうちの会社が運営してる研究所での研究の結果、コイツらの調理の仕方が判明したのです」
「これは単なる丸焼きにしか見えませんが……」
「その極意をお教えしましょう。ついてきて下さい」
ずんだ虫料理はその選別から特別な目利きが必要になる。
異世界の人々はそこまでは習ってなかったようで、ともすれば見当違いと言わざるを得ない選別をしていた。
「と、言いますと？」
「食材として優秀なずんだ虫の肉付きを気にするのは一般的な見方としては正しいけれど、こいつらに関してはそうじゃない。どれ……」
俺はずんだ虫どもの繁殖場で目を皿のようにして奴らの動向を観察する。
交尾に明け暮れるもの、同族の血肉を啜るもの、狂乱の最中から逃げ回るもの、そしてそんな弱者をつつ回すもの……。
「のーだのだのだ！ おびえろ！ すくめぇ！ おまえのようなよわむしは、もりのけんじゃとしてのきょうじをなげすててにげまどうがいいのだあ！」
「や、やめてほしいのだ！ ぼくはただ……」
「うるせーのだよわむしが！ おまえみたいなくそざこはこのぼくのような”りあじゅうずんだ”にもてあそばれてしぬうんめいなのだ！」
「しょ……しょんな！ あまりにりふじんなのだ！」
涙ながらに訴えるものの、自称リア充は聞く耳持たず、ゲラゲラ笑いながら弱者ずんの尻尾を掴んだ。
「い……いちゃ……」
「おまえたち！ おまえたちはそいつのあたまさんをつかむのだ！ つなひきしてあそぶのだ！」
「はーいのだ！」
家族らしきメスずんや子ずんが弱者ずんの頭を掴む。
「やめ……やめ……もげちゃ……げっ！」
ごきりと弱者ずんの首のあたりから嫌な音がした。
おそらく頚椎を損傷したのだろう。白目をむき、舌を垂らし、身体を脱力させて動かなくなった。
「なんだこいつ、もうしんだのだ！ くそざこにもほどがあるのだ、はじしらずめ！ ぼくがしんのきょうしゃとはなんなのかをおしえてやるのだ！」
そう宣言すると鼻息荒く全身を震わせて顔を赤くした。
「う、うわ！？」
リア充の力は凄まじく、メスずんや子ずんもろとも死んだ弱者ずんを引き込んで宙に舞わせていた。
「のーだのだのだ！ どうだ！ ぼくのかちなのだ！」
「すごいのだすごいのだ！」
「ぱぱずんはさいきょーなのだ！」
「そうだろうそうだろう。さっそくつぎのおもちゃをさがすのだ！」
『のだ！』
弱者ずんの死体を打ち捨てて、文字通り次の遊び道具を探し始めた。
俺はその様子を眺めてニヤリと笑みを浮かべる。
「アレがいいな」
指差す先では既に新たな玩具を壊して下卑た笑みを浮かべながら楽しむリア充の姿がある。
「アレですか。アレは生産用という話ですが……」
「性欲旺盛でメスの目を引くからそうしたんだろうけど、アレこそ食用ですよ」
ずんだ虫とは傲慢であり、無知であり、故にどこまでもポジティブになれる。
その傲慢さの絶頂にある虫こそが食材として最も適しているのだ。
「のーだのだのだ！ なまくびさっかーなのだ！ それ、おちびちゃん！ ぱすなのだ！」
「わーい！ おもしろいのだ！」
俺に目をつけられたずんだ虫は、迫りくる命の危機を察知することなく、他のずんだ虫の頭を引っこ抜き、それをボールにして遊んでいるようだった。
飛んできた生首を腹で受け止めた子ずんがひっくり返る。
「いちゃい！ このくそなまくび！ よくもずんちゃをころばせたなのだ！ ちねー！」
生首に何度も汚い足で踏みつけを行う子ずんを母親は微笑ましいものを見る目で眺めていた。
「おちびちゃんたらはしゃいじゃって……とってもかわいいのだ！」
「ずんちゃかわいいのだ！？」
「とってもかわいいのだ！ せかいいちなのだ！」
「そうなのだ！？ ずんちゃ、せかいいちかわいいのだ！ ずんだもちもらえるのだ！？」
「きっとおちびちゃんのかわいさにくそにんげんもめろめろになってずんだもちをけんじょうするのだ！」
「ほんとうなのだ！？ あっ、くしょにんげんがいるのだ！ やい！ くしょにんげん！ せかいいちかわいいずんちゃにずんだもちをよこ」
何事かべちゃべちゃ喋っていたがガキに用はないので踏み潰した。
靴の裏で踏み潰された頭が胴体に陥没し、完全に即死だった。
「ああああああああああああああああ！？ お、おちびちゃーん！」
「しょ、しょんな……おちびちゃんが……せかいいちかわいいおちびちゃんがああああああああああああ！」
「よお、楽しそうだな。俺も混ぜてくれよ」
「ふざけるななのだ！ おまえだけはぜったいにゆるさないのだ！ おちびちゃんをかえせー！」
「ほい」
死体を蹴り飛ばして返してやった。
「ぎゃっ！」
飛んできた死体にぶつかり、二度三度と地面を転がった。
「おいおい。ちゃんと受け止めろよおちびちゃんサッカー、得意なんだろ？」
倒れたまま悔しげに、怒りに顔を歪ませてずんだ虫が俺を睨みつけてくる。
「おちびちゃんはぼーるじゃないのだ！ それに、しんでるおちびちゃんにようはねーのだ！ おちびちゃんをいきかえらせるのだ！」
「そ、そうなのだ！ いきてるおちびちゃんをかえすのだ！」
やいのやいのと騒ぎ始める夫婦。その愛にさしもの俺も内心大爆笑である。
「そうかそうか。生きてるガキが欲しかったのか。それを先に言えよ……っと」
「ぎゃー！」
ずんだ虫の両手足に串を突き刺し地面に固定する。そして、あわあわとしているメスを拾い上げた。
「ぱ、ぱぱずーん！ たすけてのだー！」
「ま、ままずん！ ままずんをはなすのだ、このくそざこたんしょうずんぽにんげん！」
謂れなき中傷を受けて俺は激しく傷つき涙した。
「酷いこと言うね。折角おちびちゃんに会わせてやろうというのに」
「のだ！？ おちびちゃんがいきかえるのだ！？」
「のだ！ それならはやくするのだいますぐでいいのだ！」
「まあ、そう慌てるなよ。ところでこいつを見てくれ。どう思う？」
そう言って俺が取り出したのはずんぽ型ディルド極太サイズである。
その巨大なイチモツを見た瞬間、オスメス共に息を呑んだ。
「な……なんなのだ、それ……」
「と……とてもおおきいのだ……」
「これは俺のずんぽだよ」
『のだ！？』
驚きのあまりハモる夫婦。
短小と侮っていた人間が、見たこともないサイズのそれを持ってきたことに圧倒されているようだった。
まあ、もっとも。俺にはずんぽなんてものは存在しないので大嘘ではあるのだが。
そいつの先端をメスのケツに当ててやった。
「こいつでおちびちゃんと再会させてやるよ」
「え？ ま、まさか……」
ずんだ虫（オス）の顔が青ざめる。
「こいつを使って新しいガキを作ってやろうって言ってんのさ」
「や！ やめるのだ！」
妻の貞操の危機に暴れ出すずんだ虫ではあるが、その手足には串が刺さっている。動く度に血が滲み床に染みが広がっていく。
「そ、そうなのだ！ や、やめるのだ……ぼ、ぼくのあにゃるは……ぱぱずん……だけの……」
メスも抵抗する素振りを見せながら、しかし尻に当たる巨大ずんぽディルドに意識を奪われているのは明白であった。
俺はその顔にそっと口を近づけ囁く。
「そういうなよ。お前のオスじゃ到底味わえない快楽をくれてやるよ」
ぐっ、と力を入れるとわずかにディルドが内部に侵入する。
「は、はうあ！？」
「や、やめりょおおおおおおおおおおお！」
「どうする？ やめるか？」
「う、うう……！」
「はっきり言わないなら、やめるけど？」
ディルドが尻から抜ける。その間際に。
「や、やめにゃいで！」
悲痛な叫びをメスが上げた。
「ままずん！？ なにをいっているのだ、ままずん！？」
「あ……ちが……」
思わず口にしてしまった言葉を口の中に戻すように、メスは口に手を当てる。しかし、もう一度ディルドを少しだけ進めると「のだぁ……」と気味の悪い声を出した。
「違うのか。じゃあやめるわ」
「あっ、まっ……」
そして、今度こそ引き抜こうとすると括約筋を引き締めディルドを己の体内に止めようとする。
「はっきり言えよ。旦那のカスみたいなずんぽよりずっと大きなコイツで自分のことをぶっ壊してくださいってさぁ」
「うるさいうるさいうるさい！ だまれくそにんげん！ ぼくのずんぽはかすじゃないのだ！ ままずん、はやくやめろってはっきりいってやるのだ！」
二人の男にそれぞれ正反対の要求をされ、メスの中で天秤が揺れ動いている。
未知の快楽か。操を捧げた男に殉じるか。
ああ、その迷いは無意味である。どうせこの生き物にはただ一つの選択肢しかない。
「こ……」
「ん？」
「ぶっこわして……」
「ま、まま……ずん……？」
「ぶっこわしてええええ！ そのおっきなずんぽで、ぼくのおまんずんをぐちゃぐちゃにしてほしいのだあああああああ！」
泣き喚くように、メスが懇願する。
そう。結局この生き物はいつもこうなのだ。
脳が枝豆生やすための袋で圧迫されてるから学習能力なんてありゃしないし、先のことを考える頭もない。
「そうかい。じゃあお望み通りにぶっ壊してやるよ」
ディルドを乱暴に突っ込むと「のぢゃああああ！？」と一際大きく叫んだ。
なんの容赦も遠慮もせず雑に扱っているというのに悍ましいゴミ虫は肉の悦びに白目を剥いて涎を垂らし穢らしい液体を下半身から撒き散らしている。
その痴態を見せつけられているオスは信じられないものを見るように目を見開き、顔を真っ青にして泣いていた。
「す……すごいのだ！ いままでのどんなずんぼともべつじげんのさいきょうずんぽなのだぁぁぁぁぁぁ！」
うひょーと泣き喚く虫の中に入れては出し入れては出す度に気持ち悪い歓喜の声を上げる。
「さいこうなのだぁぁぁぁぁぁぁぁ！ へこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこへこぉぉぉ！ ずんぽ、ずんぽいいのおおおおおおお！ これしっちゃったらほかのごみずんぽなんてかんがえられないのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」
手元でよがり狂うメスの恥も外聞もありゃしねえ有り様は、そうさせた側であってもドン引きする他ない。
吐き気を催す。正直殺したい。
内心の嫌悪を押し殺して俺はゴミ虫に語りかける。
「そんなにいいのかよ！ お前の旦那が見てるってのにちょっと薄情なんじゃねえの！？」
俺の言葉責めにメスは抗うどころか「んほおおおおおおおお！」と薄っ気味悪い悦びの声を上げ、身を大きく震わせた。
「あんな、かすみたいなたんしょうずんぽはぁ、ぱぱずんなんかじゃないのだ！ ぼくにはこのずんぽがぜんぶですのだぁぁぁぁ！」
もう理性もクソもない。本音を思いっきりぶちまけると、それを聞いたオスが益々青ざめる。
「な、なにをいってるのだ、ままずん！ ぼくのずんぽはさいこうだってあんなに……」
「うるせえぇぇぇえぇぇええぇぇのだぁぁぁぁあぁあぁぁぁ！ しゃべんなかすずんぽなのだ！ おまえみたいないかせないごみずんぽにそんざいかちねえのだ！ いきがくせぇからしにやがれなのだ！」
何だコイツ。俺は割とマジでドン引いていた。
でもまあ、こんなもんだろ。コイツラなんて。
「そいつはおちびちゃんをぶっころしたかたきなのだ！？ そんな、そんなやつのずんぽで……」
「おちびちゃんなんてぼくにはいなかったのだ！ そこにころがってるのはただのずんちなのだ！ おねがいですにんげんしゃん！ にんげんしゃんのずんえきではらませてほしいのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」
最後のよすがさえ蹴り飛ばし、俺に冗談じゃねえことを頼んでくる害虫。背筋が悍ましさでゾワゾワする。
そういう内心をとにかく隠し立て、俺は「よおし」と承った。
「じゃあ子種をくれてやる。しっかり孕め、クソメスが！」
「きてきてきてぇぇぇぇぇぇえぇえぇ！ きゅうきょくのたねちゃんちょうだいなのだぁぁぁぁぁぁ！」
操作するとディルドに内蔵された液体が放出され虫の腹の中に注ぎ込まていく。
「あふぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇ！？ す、すごすぎるのだぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」
虫の体がどんどん膨らみ、ディルドが耐えきれず押し出された。
虫の体では到底収まりきらない白濁した液体が穢らわしいゴミ虫の穴から滝のように流れていく。
あんまり汚いから地面にメスを投げ捨てた。
それでもまだなお生きており、その面は恍惚に満ちていた。
「あ、ああ……あああ……こんな……こんなの……うしょ、なのだ……」
その様を呆然自失として眺めているオスの目からは緑色の涙が流れている。
気の早いヤツだ。絶望はこれからだというのに。
俺はメスをつま先で軽く蹴る。かなりぞんざいに扱っているのだがメスは嬉しそうに「のだぁ」と甘えた声を出す。気持ち悪い。
「さっさと出産しろ」
未だ恍惚の表情を浮かべているメスが体を震わせながら「う……うま……うまれ……うまれりゅぅぅぅ……」と気持ちの悪い声を出している。
それに反応するかのようにメスの穴から「おぎゃーおぎゃー！」とうざったい鳴き声を上げながらゴミ虫がポップコーンみたいに飛び出した。
こいつらは年がら年中交尾して、年がら年中出産している。だからどうせ身籠っているし、出産できると思っていたのだがやはり想像通りだった。
「お……おちびちゃんがうまれたのだ！ とってもかわいいのだ！」
オスは青ざめた顔をしながらも子供の誕生を喜んだ。さっき自分のガキが死んだばかりだから、せめてそこに救いを求めているのだろう。
だが、だからこそ絶望に落とせるのだ。
「ほ……ほら！ おちびちゃん！ ぼくがおとーちゃなのだ！ こっちにくるのだ！」
地面に貼り付けにされた父親を自称するオスを見てガキどもは「おとーちゃ……？」と首を傾げつつもそちらへ行こうとする。
その感動の対面に俺のインターセプトが決まり壁のように立ちふさがった。
「馬鹿か。お前のガキなわけないだろ。今、俺がコイツに子種をくれてやったんだからな」
それは見ないようにしていた現実なのだろう。オスは顔を益々青ざめさせながら、必死に頭を横に振っていた。
「ち……ちがうのだ！ ぼくのこなのだ！ ぼくはきのうもへこへこしたのだ！ だからぼくのこなのだ！」
ずんだ虫の妊娠から出産までのサイクルはかなりまちまちで、交尾即出産する個体もいれば一週間、あるいは数ヶ月という個体もいる。
その妊娠期間による個体の差は特にない。研究者の友人によると「多分だけど気分で妊娠期間を決めている」とのことだ。
だから基本的には交尾したら大体既に子供はできている。なので新たに生まれてきてしまったこの虫どもは本当にコイツの子供なのだろう。
それを踏まえたうえで、俺は改めてオスを嘲笑った。
「お前の、貧相なずんぽとやらから出てきたクソ雑魚精子が俺のスペシャルずんぽに勝てるわけ無いだろ」
理屈になってないが、そういうのはこの虫相手に必要ない。劣等感さえ植え付ければそれでいい。
狙い通り、オスは最早顔面蒼白、血の気が引いて真っ白だ。まあ、もともと白いんだけど。
必死になって「ちがうのだ……ちがうのだ……」とうわ言を壊れたラジオみたいに垂れ流している。
「ぼくのおちびちゃんなのだ……！ ぼくのゆーしゅーないでんしをうけついだ、とってもかわいいぼくの……」
「うるせえのだ！」
オスの必死な訴えをかき消す声は体を起こしたメスによるものだった。
「おまえみたいなかすずんぽがこのこたちのおとーちゃなわけねーだろーがなのだ！ ねごとはねてからほざきやがれなのだ！ おちびちゃんたち！ ほんとうのおとーちゃはそこにいるにんげんさんなのだ！」
ウッキウキでお父さんとして紹介されてしまった。
ガキどもは俺を見上げ目をきらめかせながら「おとーちゃ！」「おとーちゃなのだ！」と俺の足にすり寄ってくる。
キモい。潰したいが、今は我慢だ。
「そうだな我が子ども。俺がお前らのおとーちゃだ」
「おとーちゃおとーちゃ！」「だっこしてほちいのだ！」「なめなめしてほしいのだ！」
するわけねーだろ。
適当に笑顔を浮かべてあしらっていると、ガキの一匹が「じゃああそこにいるのはなんなのだ？」と純粋な疑問を浮かべた。
「ぼ……ぼくはおまえたちのおとーちゃなのだ！ ほんとうのおとーちゃなのだ！」
涙ながらの訴えに、ガキ共の反応は淡白だった。
「でも、じめんにはいつくばっててかっこわるいのだ！」
「そうなのだ！ そんなおとーちゃはいらねーのだ！」
「くそざこなのだ！ ごみなのだ！」
やいのやいのと言い立てる。子供たちから否定されて、とうとう言葉もなくしたようだった。
そこに、俺がとどめの一言をかけてやる。
「あれはお前たちのために用意したおもちゃだ。殴るなり蹴るなり、小便引っ掛けるなり好きに遊べ」
死の宣告にも等しい俺の言葉にオスはさらなる絶望を、ガキどもは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「ありがとうなのだ、おとーちゃ！ ふるぼっこにしてあそぶのだ！」
「おもちゃさん！ きゃっきゃっ！」
「のだのだのだのだのだのだのだ！」
ガキどもは嬌声を上げて玩具に群がる。耳を引っ張り、顔を足蹴にし、小便を引っ掛けてはしゃいでいた。
「や……やめるのだ、おちびちゃん……ぼくは……ぼくは……」
「このおもちゃおもしれーのだ！」
「もっといたぶってあそぶのだ！」
「おといれさんにしてやるのだ！」
それは想像しうる限り最悪の光景の一つに違いない。
実に子供に暴力を振るわれ、なす術もない父親。
男としても、父としても、最低の最低まで尊厳を傷つける。人の世にあってはならない光景である。
でも、これはずんだ虫なのでオーケです。
そんな地獄のような状況が暫く続くと、とうとうオスずんが動かなくなった。途中から「コロチテ……コロチテ……」としか言わなくなったのでそのあたりでもう十分だったが、ガキどもにとどめを刺させた方が都合がよろしいので放置していたのだ。
絶望に染まり、心身ともに死に切ったオスずんに最後の一発とずんぺを引っ掛けるガキ。「しんだのだ！ ざまあなのだ！」とキャッキャッしているのを俺は微笑ましく感じながらそいつ等の側に寄る。
「お疲れさん。楽しかったか？」
「たのしかったのだ！ またくしょごみかすざこたんしょうげろむしであそびたいのだ！」
「おとーちゃ！ またおもちゃさんをもってくるのだ！」
「はやくするのだ！ いますぐでいいのだ！ かわいいずんちゃたちのためなのだ！」
生後一時間も経たない内からこの上なく調子にのりまくるカスムシどもを見てメスはウフフと笑っていた。
「おちびちゃんたちったらはしゃいじやって……とってもかわいいのだ！ おとーちゃ！ おちびちゃんたちのためにはやくおもちゃをよういするのだ！」
俺はそれに微笑みながら頷き返しガキ共の中から一匹を捕まえ持ち上げた。
「すごいのだすごいのだ！ とってもたかいのだ！ たのしいのだ！」
「ずるいのだずるいのだ！ ずんちゃもたかいたかいしてほしいのだ！」
「おにーちゃばっかりずるいのだ！」
そう言って足元に縋り付いてこようと近付いてくるガキの一匹を俺は無言で踏み潰した。
「え」
何が起きたのか分からず呆然としているもう一匹を蹴り飛ばすと五体がバラバラとなって、何が起きたのかも分からないといった表情を浮かべた頭部がコロコロと転がっていく。
それが、呆けたままのメスの眼前にやって来るとメスは発狂した。
「あああああああああああ！？ お、おちびちゃ……おちび、おち……なんっ……なんで」
「お、おとーちゃ！？ ど、どうしちゃったのだ！？」
信じられない出来事に手の中でクソ虫が絶望の表情を浮かべている。俺の顔に浮かんでいるのは笑みではあったが、それには多分に嘲りが含まれていた。
「バカか、お前らは。俺がお前の親父なワケがないだろ。お前らの親父はお前らがぶっ殺したそこのゴミカスだよ」
このページへのコメント
どこが更新されたのか毎回教えてほしいのだ
みぎうえのほうに 履歴 とかいてあるのだ
ずんだ虫の性描写は毛深い太ったおっさん同士のオッスオッスがマシに見えるほどキモい。話に繋がるなら仕方ないけど
あとは拷問に期待したいところ
「特別な目利き」にて選ばれたのは相当なくずんだですか
ここで「単なる調理に留まらない工程」が活きてくるわけですね
眼前でおちび潰したり、番いのNTR見せつけたり、お次は何でしょうか
続きが楽しみです
「ずんだ虫は痛めつけたりストレスを与えると旨味が増す」系の設定は前からあったけど、それをしないと食べられないレベルで不味いのは珍しいかも
続編に期待ですね
画像コード「へこんお」で草
ずんだ虫の食品加工の専門家として召喚された事やすぐずんだ虫と即答した事を考えるとこの人「ずんずんカンパニー」の職員の可能性が高いですね
「今日もブラック企業に扱き使われ」とあるが…
ずんずんカンパニーがブラック企業である可能性も…？