前作 - 血桜 襲〜
是非ご覧ください。
血桜、害 
始まりは、一本の電話だった。
ｶﾞﾁｬｯ
『株式会社カカシ、技術のさくらです。…はい、はい。…妖精被害の件ですね？被害状況の詳細をお願いいたします。
………………………なるほど。枝豆畑ですか。かなり大規模にやられてしまったのですね。……飼い猫が………………それは、ご愁傷様です。お辛いことを思い出させてしまい、申し訳ございません。
明後日の朝、そちらへお伺いいたします。それではよろしくお願いいたします。』
ｶﾞﾁｬｯ
『ワトソン君、依頼が来た。農家の畑が妖精にやられたようだ。だいずもん達を引き連れて向かう。君には今回大きな仕事を頼むことになる。
君の頭脳に期待して、だいずもん達の司令塔をやってほしいんだ。
依頼人の農家は、怒りを通り越して恨みすら抱いているようでね。私はそっちの対応で忙しくなりそうだ。まぁ、なだめるのも仕事のうちさ。』
［僕が司令塔？…まぁ頑張ってみるよ。
ちなみに、人身被害は？］
『今のところは無い。ただ、飼い猫が殺されたようなんだ。
恐らく、なるべく惨たらしく駆除するように依頼されると思う。生半可に駆除だけしようものなら、クレームになるかも。』
［うっ…………］
『被害の状況からしてオカシラがいない。無差別襲撃の可能性が高いとみた。オカシラを見つけて屠殺するだけで事態が終息しない、厄介な依頼だ。
だいずもん、依頼が来た。明後日、出発する！』
社長が手を叩く。
《準備するのだ！》《のだ！》《のだ！》《また駆除依頼なのだ…》《心が苦しいのだ…》
裏手から15匹の従業員が出てきた。
『それはすまないねぇ…君達春山氏の妖精だから、田畑で稲と枝豆でも育ててもらった方が、稼ぎになるのは間違いないんだけどもねぇ。まだ農業を始めるためのお金が貯まりきって無いんだよ。
ホントすまないね。』
《頑張って仕事するのだ！》《田畑が買えたら…春山のおとうちゃと社長さんに、ずんだもちをプレゼントするのだ。きっと春山のおとうちゃもそれで元に戻ってくれるのだ！》
（あぁっ…虐待したい…健気で可愛い！でも春山氏から引き取ったずんだもんだし、何より従業員が減ってしまうのが痛い。
それに、この15匹に農業をやらせたら、ほぼ確実に凄まじい利益を出すからねぇ。
殺すに殺せない。残念！！こんなに、ものすんごく、世界一可愛いのに！）
ﾆﾀｧ…
（［社長が不気味な笑顔を浮かべている…凄く良からぬことを考えている気がする。］）
………。
『あーコホン。ともあれ準備をしよう。
まずは、いつもの捕獲キットを用意してくれ。あとこの紙に書いてある番号の棚からも、道具を持ってきてくれ。』
《わかったのだ！》《皆、始めるのだ！》《のだ》《のだ》
（表向きは惨たらしく殺すプランなんて存在しないから、こういうのは俗に言うモンスター顧客のはずなんだけれどね。
正直、楽しいんだよなぁ。もっと来ないかなぁこういう依頼…！ずんだもんを虐待できるなら幾らでも来てほしいなぁ！）
―――――――――
同時刻、関東圏の枝豆畑にて…
『貴様らッ！』
身体中を憎悪で染め上げ、とある緑色の小動物を血眼で探す者がいた。
今回の依頼人「咲田(さくた)」である。
《おいち！おいち！》
《ずーん…ずーん…》
《ずんちでるのだ！》
《おちびちゃん、たくさんたべておおきくなるのだ！》
所有する枝豆畑の半分をずんだもんに食い荒らされ、飼い猫を面白半分に殺されてしまった。
その怒りと憎悪は、周囲の動植物を発火させる勢いだった。
そんなことは露知らず、ずんだもん達は我先に枝豆にかぶり付き、子ずんを増やしていく。
《あっ、くちょにんげんがきたのだ！みんなにげるのだ！》
《のだ！》《のだ！》
『ま゜でごら゛ぁ゛！！！』
狂乱しながら全速力で追いかける。
《わははは！！やれるものならやってみるのだ！》《くちょにんげんはとべないのだ！》
《ずんちでもくらうのだ！》
『ごの゛ｯ!！ｳｶﾞｧ!』
咲田も、何匹かは捕らえて殺しているが、思ったより動きが素早く、捕らえきれていない。
怒りが体を突き動かし、既に計100匹程惨殺しているものの、彼らの繁殖スピードには全く対応できていなかった。
しかし彼らの安寧は、もうすぐ終わる。
―――――――――
ｶﾞﾁｬｯ
『お世話になっております。カカシのさくらです。ご依頼いただいた駆除プランについて連絡させていただきました。
今回の駆除プランなのですが…1つ朗報があります。』
『あ゛ん！？カカシか！早く来てくれ！もう怒りで頭がどうにかなりそうだ！
それで、朗報ってのは何なんだ！？』
『その…あんまり大きな声では言えないんですが、ご要望の通り惨殺プランのようなものを、運良く準備できそうなんですね。
流石に、追加料金は発生いたしますが。どうなさいますか？』
『本当か！お金なら払う。やってくれッ！頼む！』
『かしこまりました。ではここでそのプランの概要を軽く説明させていただきます。』
……………………………
『という感じでいこうと考えております
…くふふふっ…
おっと失礼…それで、いかがいたしますか？』
『…はは…は…』
「何でも良いから、ずんだもん共を全滅させながらぐっちゃぐちゃに殺してほしい」それが咲田の依頼の概要だったのだ。
言ってしまえば、ここにいる分は全部駆除しつつ、ある程度の報復ができればそれで良かった。
しかし社長が持ってきた策は
『あんた…』
咲田の想像を、遥かに超えた。
『……何食ったらそんなの思い付くんだ…？』
まさか咲田も、電話1つで悪魔と契約させられるとは、思っていなかったのだろう。
しかも、その悪魔はあと２日後ここに来ることになっている。
…2日後、ここに来てしまう。
残暑の日中、冷や汗が咲田の背中を伝った。
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ホント害ずん共、食害のみならず遊び半分で他生物を虐殺しまくるとか……人間どころか自分たち…否、自分"自身"以外の存在との共存を徹底的に超絶極悪非道過ぎて悪意と殺意しか感じられない……
それでいて自分たちが殺されようものならその理由を全く理解せず、自分たちの愚行を棚にあげてただ一方的に人間への憎しみを募らせていく……"殺すのは大好き"なくせに"殺されるのは大嫌い"とかいう…!!
寝ぼけんのもいい加減にしろこのゴミ糞害獣共!!!!この戦争を真っ先に仕掛けてきやがったのはオメーらクソ妖精共なんだぞ!?!?それとも何だ!?｢当事者は既に殺されたからぼくたちには憎しみしかないから責任なんてないのだ｣とでも言うのかぁ!?!?!?
人間も、妖精もお互い様。同じ自然界に住んでいますから、どっちがどっちを害そうが罪も罰もありません。それどころか、人間はずんだもんの森の木々を随分切り倒して生活してますから、客観的に見れば害悪は人間の方なんですよ…。
そう。罪とか害悪とかじゃなくて、単に人間の方が強いってだけです。
そんな理不尽に苦しむずんだもん達は、凄く可愛いと思いませんか…！？
次回、愛ゆえに大虐殺！お楽しみに！
社長がワトソン君の前で限界化するの色々と隠さなくなってていいですね。
悪魔と契約してこれからどう転ぶのか楽しみです。