実験・第一研究室
最終更新：
hayashidada 2023年11月19日(日) 20:30:54履歴
拙作、ずんだ案山子の続編となります。
「実験経過報告
動物界脊椎動物門哺乳網モチモン科ズンダブツ
通称ずんだ虫と呼ばれるこの生命体の研究及び実験に関するこれまでの記録をここに記す」
「や……やめるのだ！ やめるのだ！ ぼくのずんぽをどうするつもぎゃあーっ！？」
手で鷲掴みにされた生殖器が音を立てて千切れて血を吹き出した。
手術台に拘束されたずんだ虫たちが全身を切り刻まれており、悲鳴が響き渡る。
第一研究室ではその生命力を研究するため日夜ずんだ虫の肉体に負荷をかけ続ける実験が行われている。
四肢の切断程度であれば十分な栄養を与えれば再生するためＤＮＡ鎖の完全なる複製と保存が行われている可能性があり、これを応用すれば人体の再生医療にも使える可能性がある。
とはいえ、この再生能力にも限度があり、ずんだ虫の目の前で切断した肉体を粉砕するなど永久的に喪失されたと認識させると再生しない傾向が見られる。
「や……やめちぇ！ ずんぽをどうするきなんちゃ！ ままずんもおちびもすきにしていいから、ずんぽだけはやめちぇ！」
自己保存を優先する保身に走った思考は肉体の脆弱性と繁殖力の高さから発現する性質である。
この傾向は交尾からの出産に至るまでの期間が短い種程顕著である。
交尾即出産、そして多産であればあるほどに子供に価値がなくなっていく。またすぐ作れるからだ。
ずんだ虫にも種類があり、その性質も多岐にわたる。ずんだ虫が一般に忌避されるのは言葉が通じるにも関わらず人間の感性とかけ離れた思考をしているためだが、よく知られている、つまり最も数の多い出産サイクルの早い多産のずんだ虫がこれにあたる。
皮肉な話で、生存戦略として獲得した性質が他の生命から駆除対象にされる理由となるのだから救えない。
というわけで救えない虫の目の前で切除した生殖器をプレスにかける。白い表皮が破れて緑色の肉をあらわにする。睾丸が潰れる前に白い液体を飛び散らした。人間の足でもミンチにできるような物体が５ｔの圧力に耐えられるはずもなく潰れて緑の残骸となった。
「そ、そんな……ぼくのずんぽが……」
絶望に打ちひしがれるずんだ虫のずんぽが再生することはなかった。
どうやらこの生物はメンタルと肉体の機能が直結している模様であり精神が弱っていると各種機能が働かなくなることが確認されている。
無根拠な自信や傲慢さはどうやら自身の機能を維持するためのものであると予測されている。
その性質のために猫や犬、烏をはじめとした他の生き物の捕食対象でありながら相手を煽り出すのだからこれまた皮肉としか言いようがない。
「ぐっ！ げっ！ ごぶっ！ ぐぴゃっ！」
天井から垂らされた糸に繋がったずんだ虫が振り子のように何度も壁に叩きつけられている。
地面は虫の吐血した緑色で染まりきっており、よく見るとその中には千切れた耳や飛び出た目玉も転がっている。
だが、こうして叩きつけられている虫は五体満足である。
「コロチテ……コロチテ……」
何度目かの衝撃で眼窩から飛び出した目玉を揺らしながら虫が懇願する。研究員の一人がそれを確認すると赤い液体を飲み込ませる。
すると、飛び出していた目玉が千切れるように落ち、新しい目玉がその眼窩に収まっていた。
「はっ！ ぼ、ぼくは……げっ！」
再び振り子の時間が始まる。正気を取り戻したずんだ虫が「も、もういやちゃ！ だれかたすけてええ！」と叫んでいたが誰もそれには応えない。
何しろ他のずんだ虫は他のずんだ虫で忙しい。全身を切り刻まれたり内蔵を掻き出されたり猫の慰みものとなっていずれも生き地獄を味わっている。
「ぼ、ぼくのおてて……あんよさん……えだみみ……ぜんぶなくなったちゃ……コロチぐええええええ！」「や、やめちゃ！ ぼくのなかみ、ぜんぶなくなっちゃ……ごぶっ」「く、くしょねこ！ かとうせいぶつのぶんざいでこのずんちゃをあ、やめてやめてやめて！ うではそんなほうこうにまがらなあああああ！」
今にも死にそうな虫どもであるが、こいつらには十分な栄養素を与えれば肉体の欠損さえ回復することは分かっている。
死を避けられない状況になると苦痛から逃れるために所謂コロチテ症を発症するがそれも一定の刺激を与えれば回復することが分かっている。
死なない限り致命傷は存在しない。それがこの生物である。
第一研究室ではこのずんだ虫の再生力を人間の肉体に移植する技術を事実上完成させているが、副作用や倫理観の問題から実用化の目処は未だ立っていない。
「実験経過報告
動物界脊椎動物門哺乳網モチモン科ズンダブツ
通称ずんだ虫と呼ばれるこの生命体の研究及び実験に関するこれまでの記録をここに記す」
「や……やめるのだ！ やめるのだ！ ぼくのずんぽをどうするつもぎゃあーっ！？」
手で鷲掴みにされた生殖器が音を立てて千切れて血を吹き出した。
手術台に拘束されたずんだ虫たちが全身を切り刻まれており、悲鳴が響き渡る。
第一研究室ではその生命力を研究するため日夜ずんだ虫の肉体に負荷をかけ続ける実験が行われている。
四肢の切断程度であれば十分な栄養を与えれば再生するためＤＮＡ鎖の完全なる複製と保存が行われている可能性があり、これを応用すれば人体の再生医療にも使える可能性がある。
とはいえ、この再生能力にも限度があり、ずんだ虫の目の前で切断した肉体を粉砕するなど永久的に喪失されたと認識させると再生しない傾向が見られる。
「や……やめちぇ！ ずんぽをどうするきなんちゃ！ ままずんもおちびもすきにしていいから、ずんぽだけはやめちぇ！」
自己保存を優先する保身に走った思考は肉体の脆弱性と繁殖力の高さから発現する性質である。
この傾向は交尾からの出産に至るまでの期間が短い種程顕著である。
交尾即出産、そして多産であればあるほどに子供に価値がなくなっていく。またすぐ作れるからだ。
ずんだ虫にも種類があり、その性質も多岐にわたる。ずんだ虫が一般に忌避されるのは言葉が通じるにも関わらず人間の感性とかけ離れた思考をしているためだが、よく知られている、つまり最も数の多い出産サイクルの早い多産のずんだ虫がこれにあたる。
皮肉な話で、生存戦略として獲得した性質が他の生命から駆除対象にされる理由となるのだから救えない。
というわけで救えない虫の目の前で切除した生殖器をプレスにかける。白い表皮が破れて緑色の肉をあらわにする。睾丸が潰れる前に白い液体を飛び散らした。人間の足でもミンチにできるような物体が５ｔの圧力に耐えられるはずもなく潰れて緑の残骸となった。
「そ、そんな……ぼくのずんぽが……」
絶望に打ちひしがれるずんだ虫のずんぽが再生することはなかった。
どうやらこの生物はメンタルと肉体の機能が直結している模様であり精神が弱っていると各種機能が働かなくなることが確認されている。
無根拠な自信や傲慢さはどうやら自身の機能を維持するためのものであると予測されている。
その性質のために猫や犬、烏をはじめとした他の生き物の捕食対象でありながら相手を煽り出すのだからこれまた皮肉としか言いようがない。
「ぐっ！ げっ！ ごぶっ！ ぐぴゃっ！」
天井から垂らされた糸に繋がったずんだ虫が振り子のように何度も壁に叩きつけられている。
地面は虫の吐血した緑色で染まりきっており、よく見るとその中には千切れた耳や飛び出た目玉も転がっている。
だが、こうして叩きつけられている虫は五体満足である。
「コロチテ……コロチテ……」
何度目かの衝撃で眼窩から飛び出した目玉を揺らしながら虫が懇願する。研究員の一人がそれを確認すると赤い液体を飲み込ませる。
すると、飛び出していた目玉が千切れるように落ち、新しい目玉がその眼窩に収まっていた。
「はっ！ ぼ、ぼくは……げっ！」
再び振り子の時間が始まる。正気を取り戻したずんだ虫が「も、もういやちゃ！ だれかたすけてええ！」と叫んでいたが誰もそれには応えない。
何しろ他のずんだ虫は他のずんだ虫で忙しい。全身を切り刻まれたり内蔵を掻き出されたり猫の慰みものとなっていずれも生き地獄を味わっている。
「ぼ、ぼくのおてて……あんよさん……えだみみ……ぜんぶなくなったちゃ……コロチぐええええええ！」「や、やめちゃ！ ぼくのなかみ、ぜんぶなくなっちゃ……ごぶっ」「く、くしょねこ！ かとうせいぶつのぶんざいでこのずんちゃをあ、やめてやめてやめて！ うではそんなほうこうにまがらなあああああ！」
今にも死にそうな虫どもであるが、こいつらには十分な栄養素を与えれば肉体の欠損さえ回復することは分かっている。
死を避けられない状況になると苦痛から逃れるために所謂コロチテ症を発症するがそれも一定の刺激を与えれば回復することが分かっている。
死なない限り致命傷は存在しない。それがこの生物である。
第一研究室ではこのずんだ虫の再生力を人間の肉体に移植する技術を事実上完成させているが、副作用や倫理観の問題から実用化の目処は未だ立っていない。
このページへのコメント
はたから見ると（一応本ずんにとっても）非道な虐待でも
研究員たちはあくまでも「実験」として淡々と行っている対比がいいですね
しっかし、精神や認識が肉体の機能にここまで影響するとは、ずんだ虫って不思議ダナー
楽しみにしてましたよ！
全然死なない、自信過剰で打たれ弱い精神力、何故か喋れる鬱陶しい日本語など…全てが虐待しがいがあります！
進化の方向性を間違った本来ならば自然淘汰されるべき存在が圧倒的繁殖でそれを免れているというのが間接的にわかりますねこれは
しかし精神力で四肢を復活させるとかバトル漫画でも早々ないやばい能力だよ本当…
『ずんだ案山子』の続編嬉しいです！！
「へこずん」の因子等々、妖精があそこまで傲慢で自分勝手な理由が説得力あっていいですね！！第一研究室ということは連番で他にも研究室が……？
最後の記述はまるで「ブタの心臓」問題のような……妖精なら移植に対してなおさら嫌悪感を示す人も多そうですね……