実験・第二研究室
最終更新：
hayashidada 2023年11月20日(月) 01:02:53履歴
「何故、ずんだ虫が言葉を、特に日本語を喋るのか。答えは簡単でアレがかつて家畜だったからだ」
第二研究室室長は斯く語る。
「かつて日本では肉食が忌避された歴史があり、しかし実際には肉食は行われていたわけだが、ずんだ虫はその中でもよく食べられたようだ」
七輪の上に三匹のずんだ虫が並んでいる。その全てが腹を裂かれ内蔵を取り出されていた。
「兎を一羽と数えるのは兎は獣肉ではないという御為ごかしなわけだが、ずんだ虫も同様だ。だからずんだ虫と呼ぶのだよ」
焦げ目のついた頭部を割ると小さな脳とそれを圧迫するように二つ並んだ枝豆袋が収まっている。それを火に炙り口に運ぶとよく咀嚼してから飲み込んだ。
「ずんだ虫は兎に角増やしやすい。飢饉を凌ぐのに良く役立ったようだ。即ち、良く食べられていたようだが、ずんだ虫もそれで良しとはしなかったのだろうな。人間とコミュニケーションを取れるようになるための進化をしたわけだ」
刷毛で醤油を塗りたくり両面がよく焼けたところで足から食べ始めた。肉というよりは田楽くらいの食感だなと淡々と語る。
「人間もコミュニケーションが出来る相手を食べるのは気が引ける。猫や犬を食べる気にはなれないだろう？ 本能でそれを悟ったのだろうな」
三匹を平らげると今度はまだ生きているずんだ虫を取り出した。「ずんちゃをたべないで！ ぼくはおいしくないのだ！ となりにいたあいつのほうがおいしいのだ！」「ふざけるななのだ！ おまえのほうがまるまるしてておいしいにきまってるのだ！」室長は騒音を聞き流すと二匹とも取り出し串を尻に突き刺すと「おほぉ！？ あにゃるさんがきもちいいのだ！」「もっとするのだ！ くしょにんげん！」などと騒ぎ始めたがそのまま塩水の入ったバケツの中に突っ込まれた。
「とは言えだ。ずんだ虫はその性質上極めて自己中心的にならざるを得ず、更に枝豆袋の為に脳を圧迫され知能も育たない。折角得られた言語能力を活かすことが出来なかったわけだ」
塩水の中で二匹が暴れ、水面に波が立っている。「ごぼぼぼ！ がぼぼぼ！」「がぼ！ がぼぼぼ！」何を言っているかは分からないがお互いに殴り合っているので不毛な争いをしているのだけは間違いなさそうだった。
次第に大人しくなってきた頃、ようやく塩水から引き抜かれたずんだ虫はグッタリとしていた。その二匹から串を引き抜くと同時に総排泄孔から腸が引き抜かれた。『あああああああああああああああああああああああああ！？』想像を絶する痛みに叩き起こされ二匹揃って電磁波みたいな悲鳴を上げる。
「知性を持った生き物ではあるが、人間とコミュニケーションを取るために言語能力を得たにも関わらず、人間を見下し挑発的な態度をとるため遂には家畜として扱われることさえなくなった」
ナイフで四肢を切断するとまたも悲鳴を上げるずんだ虫の腸を失った総排泄孔に串を刺す。喉を通過して口腔内部にまで達した串の痛みにずんだ虫が震えだした。
「そうしてずんだ虫は野に放たれ現在に至る、というわけだ」
串が頭部を貫通する。声もなく最後を迎えた二匹は仲良く七輪に並べられきつね色になるまで焼かれた。
室長はそれを渡すと立ち上がった。
「ずんだ虫の生食は未だ難しい。どんな菌を持っているか分からないからな」
第二研究室ではずんだ虫の食用利用が研究されている。食物繊維が豊富であり健康食として有用ではあるが生ゴミなどを漁るため個体によっては毒性があり生食は難しい。
また、味も美味であるとは言い難い。匂いも悪く餌付けから見直す必要があるが、ずんだ虫を再び家畜として広く扱うには難があるのも事実である。
ずんだ虫食の前途は多難である。
第二研究室室長は斯く語る。
「かつて日本では肉食が忌避された歴史があり、しかし実際には肉食は行われていたわけだが、ずんだ虫はその中でもよく食べられたようだ」
七輪の上に三匹のずんだ虫が並んでいる。その全てが腹を裂かれ内蔵を取り出されていた。
「兎を一羽と数えるのは兎は獣肉ではないという御為ごかしなわけだが、ずんだ虫も同様だ。だからずんだ虫と呼ぶのだよ」
焦げ目のついた頭部を割ると小さな脳とそれを圧迫するように二つ並んだ枝豆袋が収まっている。それを火に炙り口に運ぶとよく咀嚼してから飲み込んだ。
「ずんだ虫は兎に角増やしやすい。飢饉を凌ぐのに良く役立ったようだ。即ち、良く食べられていたようだが、ずんだ虫もそれで良しとはしなかったのだろうな。人間とコミュニケーションを取れるようになるための進化をしたわけだ」
刷毛で醤油を塗りたくり両面がよく焼けたところで足から食べ始めた。肉というよりは田楽くらいの食感だなと淡々と語る。
「人間もコミュニケーションが出来る相手を食べるのは気が引ける。猫や犬を食べる気にはなれないだろう？ 本能でそれを悟ったのだろうな」
三匹を平らげると今度はまだ生きているずんだ虫を取り出した。「ずんちゃをたべないで！ ぼくはおいしくないのだ！ となりにいたあいつのほうがおいしいのだ！」「ふざけるななのだ！ おまえのほうがまるまるしてておいしいにきまってるのだ！」室長は騒音を聞き流すと二匹とも取り出し串を尻に突き刺すと「おほぉ！？ あにゃるさんがきもちいいのだ！」「もっとするのだ！ くしょにんげん！」などと騒ぎ始めたがそのまま塩水の入ったバケツの中に突っ込まれた。
「とは言えだ。ずんだ虫はその性質上極めて自己中心的にならざるを得ず、更に枝豆袋の為に脳を圧迫され知能も育たない。折角得られた言語能力を活かすことが出来なかったわけだ」
塩水の中で二匹が暴れ、水面に波が立っている。「ごぼぼぼ！ がぼぼぼ！」「がぼ！ がぼぼぼ！」何を言っているかは分からないがお互いに殴り合っているので不毛な争いをしているのだけは間違いなさそうだった。
次第に大人しくなってきた頃、ようやく塩水から引き抜かれたずんだ虫はグッタリとしていた。その二匹から串を引き抜くと同時に総排泄孔から腸が引き抜かれた。『あああああああああああああああああああああああああ！？』想像を絶する痛みに叩き起こされ二匹揃って電磁波みたいな悲鳴を上げる。
「知性を持った生き物ではあるが、人間とコミュニケーションを取るために言語能力を得たにも関わらず、人間を見下し挑発的な態度をとるため遂には家畜として扱われることさえなくなった」
ナイフで四肢を切断するとまたも悲鳴を上げるずんだ虫の腸を失った総排泄孔に串を刺す。喉を通過して口腔内部にまで達した串の痛みにずんだ虫が震えだした。
「そうしてずんだ虫は野に放たれ現在に至る、というわけだ」
串が頭部を貫通する。声もなく最後を迎えた二匹は仲良く七輪に並べられきつね色になるまで焼かれた。
室長はそれを渡すと立ち上がった。
「ずんだ虫の生食は未だ難しい。どんな菌を持っているか分からないからな」
第二研究室ではずんだ虫の食用利用が研究されている。食物繊維が豊富であり健康食として有用ではあるが生ゴミなどを漁るため個体によっては毒性があり生食は難しい。
また、味も美味であるとは言い難い。匂いも悪く餌付けから見直す必要があるが、ずんだ虫を再び家畜として広く扱うには難があるのも事実である。
ずんだ虫食の前途は多難である。
このページへのコメント
「ミドリムシ加工品」や「昆虫食」が食糧問題解決の希望の星になっているように、「ずんだ虫」も例外ではないということですね！
ここまで数が多いと、野生の妖精によって広範囲に媒介される病原菌とかいそうで恐ろしいです……
クソ虫共を再家畜化するなら、枝耳の情報伝達を遮断した環境下に隔離して生まれたての赤ずんの時点で繁殖を繰り返させればいいんじゃないかな?
アイツら幼体の時点で生殖能力だけは完成していてそれ以外の機能はまだまだ未熟だから、赤ずん同士で一日100世代以上世代交代(+親ずんは交尾後や出産直後に処分)を繰り返させていけば、忌々しい言語能力も飛行能力も(ついでに知能も運動能力も)退化してカイコ未満の完全家畜にできそう……。
家畜化といっても用途による。
旨いずんだ虫を作るには、それ相応の仕様が必要となる。厄介なのは、ストレスを与えずに育てると自分は偉いと勘違いして仲間同士で自分が一番だと争い始める。かといって、隔離すれば仲間がいなくてストレスを抱える。
そういう意味でも旨いずんだ虫を生産的に生み出すのは厳しい。
家畜化できた生物って実は少ないので
大抵の世界線のずんだ虫は絶対多数である家畜化不能生物の方に入ってるんやろなあ
まあ今なら遺伝子弄って無力化からの無力化個体の拡散っていう手段も取れそうだけど
ずんだ虫の個体数と実行コストを考えると完全駆除が目的でない限りそっち方面は研究室止まりかなと
家畜化するのは簡単なこと。これまでも施設内で外部に触れされることなく育てるずんずんカンパニーや反対に力と性欲で抑え込み繁殖を行ってる組織もある。
どちらにしても、野生種を捕まえて食べ物として家畜化するのは前途多難。
お疲れ様です。
…この生態はまるで某八景の饅頭を思い浮かべちゃいますね。
「脳が枝豆袋で圧迫されてるから言語能力はあっても知能は無い」
というのは新しいですね
ここから枝耳が生えるんでしょうか
現代の科学で再家畜化がうまくいけばいいですね