食通ずんだもん Menu2 妖精山葵
最終更新：
spacezunda581 2023年02月24日(金) 15:25:37履歴
作者 スペースずんだ 
皆さんは『ワサビ』をご存知だろうか？
そう、古くから日本料理の薬味として用いられるツンとした辛さが特徴の緑色のアレだ。
今回の話は最近、巷で人気の『妖精山葵』と呼ばれる新種の食材を栽培している業者さんに密着取材を行った、その記録である。
某所
近くに清流が流れる自然豊かな場所に、その家はあった。入り口付近に人が倒れている。
食通『大丈夫ですか？』
私は倒れている人型ずんだもんを起こした。恐らく今回の取材相手『養殖家のずん田門』氏だ。
養殖家「た、助かったのだ...箱詰めしている時にやられたのだ...」
「やつらは獰猛で、時には命を落とす者も現れるのだ...」
「ところで、もしかして貴方は今回取材に来てくださった『食通』の豆二郎さんですのだ？」
『はい、最近人気と呼ばれる食材の詳細について調べるため足を運んできました。』
「それはよかったのだ！さあさあ、家にお上りください。養殖場に案内しますのだ！」
私はずん田門氏のお宅に上がった。
内装は普通の和風建築の家といった感じだが、ずん田門氏曰く家の区画の一部を養殖場として改装したとのことだ。
「ここが妖精山葵の養殖場なのだ！」
私は内部を見て驚いた。
なんと養殖場には大量の妖精ずんだもんが飼育さ
れていた、まるで集落のような平和な場所だ。
（おぎゃー！おぎゃー！）
（ままずん、ぱぱずん、おはようなのだ！）
（おなかすいたのだ！）
「ふふふ、驚いたのだ？」
『ええ、まさか妖精を薬味として用いることができるなんて、妖精は基本的に甘みが強い食材と聞いていますが。』
「ここで育つ妖精は市販や野良の奴らとは一味も二味も違うのだ。まず辛味成分を含む食材をずんだペーストに混ぜた物を妖精に少しづつ食べさせて、体内に辛味成分を蓄積させるのだ。」
「妖精は基本雑食であらゆるものを消化できるとされているけども、山葵等に含まれるアリルイソチオシアネート（アリル芥子油）だけは消化できず体内に蓄積されるのだ。」
「そうして長い間蓄積され続け、細胞一つ一つに芥子油が溜まる事で最高の妖精山葵が出来上がるというわけなのだ！」
『成程...しかし何故近年になってそのような食材ができたのでしょうか、先駆者も過去に居そうですが』
「妖精ずんだもんはストレスを感じることで辛味が強くなる性質を持つのだけれど、あまりに強いストレスを感じてしまうとショックで死んでしまうのだ。」
「故に私は妖精に常に辛味成分を摂取させる事で強いストレスへの「耐性」を獲得させる事でこの問題を克服したのだ！」
ずん田門氏は長々と解説する。
「ん、そろそろお昼なのだ、妖精ちゃん達に餌を与える時間なのだ、豆二郎さんも様子を見学するのだ？」
『はい、宜しくお願いします』
（あっ、ごしゅじんさんなのだ）
（おなかすいたのだー！）
（ごはんたべたいのだ！）
「はいはい、みんな仲良く食べるんだよ」
ずん田門氏は妖精達にずんだ入りのお皿を差し出した
（ずんだ！ずんだ！）
（おいち！おいち！）
（ちょっとぴりっとするのだ！）
「次にこれを...」
妖精達がずんだを食べ終わると、目の前に豆乳が入ったカップが出された。
（あまいのだ！）
「妖精の細胞に辛味成分を馴染ませる為、妖精の体液に近くなるよう調整した特製の豆乳を飲ませるんです。これでよりよいものができあがるのだ。」
（ごしゅじんさん、きょうもありがとうなのだ）
「いいんだよ、君たちのおかげで僕も幸せに暮らせるのだから...」
「今日はお客さんが来ていてね、君達一家を外に連れて行ってあげるよ」
（ほんとなのだ！？わーいなのだ！）
（おしょと！おしょと！）
（ぼくたち、とってもしあわせなのだ！）
「ではこの箱の中に...」
3匹の妖精は箱に入った。
ずん田門氏がひっそりと呟いた
（今日のご飯はこの一家にするのだ）
私は中庭のテラスに案内されると、ずん田門氏は台所に行き、箱の中から先ほどの妖精3匹を取り出した。
（いたいのだ！あれ？ここは？）
（おちびちゃん、だいじょうぶ？）
（ままずん、ぱぱずん、ここがおしょとなのだ？）
「やあ君達、初めての外の空気どうなのだ？」
*1
「そうかそうか、まあこれが人生最後になるんだけどね」
（え？）
その時、パパずんとママずんの首筋に包丁が入る
（ｱ...ｱ...）
「ふう、飛行器官の神経を断ち切るのにはコツがいるけど、この子達は油断しているから非常に楽なのだ」
（ままずん、ぱぱずん、しっかりするのだ！）
（おちびちゃん！にげて！）
（ぼくたちは大丈夫なのだ！）
「おっと、この子も忘れてたね」
子ずんの両手両足が切断され、達磨のようになってしまった。
「この子は生まれたばかりであまり辛味がないけど、それが生食する際に丁度いいのだ」
（おちびちゃん...）
（ごしゅじんさん、どうして...）
「ふふふ、素晴らしい親子愛なのだ。どれ、妖精山葵を完成させるための最後の工程に移るのだ」
（お、おちびちゃんになにするのだ！？）
ずん田門氏は華麗な包丁裁きで子ずんを三枚おろしにし、刺身にしてしまった。
（おちび...ちゃん...?）
（あ...あ...）
（（アアアアアアアアアアア！！！））
「命の危機に晒し、ストレスを最大限まで高める事で、辛味を限界まで引き出す。これぞ妖精山葵の真骨頂なのだ」
「さて、ショック死しないうちにあれを...」
彼は台所からある物を取り出した、鮫の皮で出来た特製のワサビおろしだ。
（ｺﾞﾘ...ｺﾞﾘ...）
ずん田門氏は精神崩壊した親ずん達を丁寧に擦りおろす、そしてあっという間に皿の上には子ずんの刺身に親ずんだった緑のペーストが盛り付けられていた。
「完成なのだ！妖精山葵の親子盛り合わせ！」
「妖精山葵を醤油につけてお召し上がりくださいのだ！」
『では...いただきます！』
『モグモグ...これは！』
『子ずんのモチモチとした食感に加え雑味の無い味わいにに親ずんのピリッとくる辛味が非常に合うのだ！これは何杯でもいけそうなのだ！』
『おかわりください！』
「そういうと思ってたのだ！」
ずん田門氏が壺のようなものを運んでくる
中には妖精が醤油漬けにされていた
『これは...たりない妖精！？』
「名付けて妖精山葵の醤油漬けなのだ！」
「ご飯も炊いてあるから遠慮なくたべるのだ！」
『わーい！ありがとうなのだ！』
それから私達は日が暮れるまで妖精料理を堪能した。
「今日はありがとうございましたのだ！」
『いえいえ、妖精ずんだもんの食材としての新しい領域に触れられてこちらも満足です！』
「また機会があれば是非お越しくださいなのだ！」
私は邸宅を後にした。
今日は最高の一日だった。この薬味が有れば私の『フルコース』の完成も近づくだろう...
おわり
このページへのコメント
最初ずんだもんやられていたけど、箱詰めしてたずんだ虫はどうなったんだ！？ 辛さ耐性しかないとはいえ、逃げていないか心配だ！
普通なら辛い食べ物を食べ過ぎると拒絶反応で死ぬハズなのに、あえてそれに適応させることで辛味を全身の細胞に蓄積させてワサビにするとは…!!
しっかし、普段は大切に育てられてて主人になついてる良い子なのに出荷となると殺しにかかるとか防衛本能がえげつねぇ……(汗)
花火ずんのオマージュ良いぞ〜コレ
そして料理路線すきなので続きを期待
妖精を山葵として使うとは…これまた新しくて面白いですね。潰して醤油と混ぜるといい刺身醤油になりそうで美味しそう…