食通ずんだもん Menu3 空駆ける枝豆
最終更新：
spacezunda581 2023年03月28日(火) 12:25:52履歴
作者 スペースずんだ 
長い氷の季節も終わり、眠りについていた大地が目覚め、生き生きと活動し始める桜の季節。そんな中、私はいつものように公園でずんだ餅を食べていた。
『やはり東北屋のずんだ餅は格別なのだ』
『初代の店長が嫁いで居なくなってから、２代目を人型ずんだもんが継ぐとなった時は驚いたけど、この味はきちんと受け継がれていて安心なのだ。』
餅を食べる手が早くなる
『...あと一個しか残ってないのだ』
『それじゃあ、最後の一個もじっくり味わうのだ...』
食通がずんだ餅を取ろうとしたその時
（ﾉﾀﾞｯ）ﾊﾞｻｯ
突然何かがが餅を奪い取って飛び去った
（ｽﾞﾝﾀﾞﾓﾁ!ｽﾞﾝﾀﾞﾓﾁ!）ｷﾞｭｰﾝ!!
『......』
『フンッ！』ｶﾞｼｯ
次の瞬間、食通は餅を奪った犯人を素手で捕獲した
（ギャッ！）
『こいつはずんだ虫か...でも見た事ない種類なのだ』
餅泥棒の正体は、枝豆が肥大化したずんだ虫だった。
『よし...こいつをケージに入れて知り合いのいる研究所に持っていくのだ』ｶﾊﾟｯ
（ﾊﾅﾁﾃ!ﾊﾅﾁﾃ!ﾀﾞﾚｶﾀｼｭｹﾃ!!）ﾄﾞｻｯ
〜妖精研究所〜
「うん？久しぶりだね豆二郎。研究対象のずんだ虫でも捕まえてきたのかい？」
『そうなんだよ、俺のずんだ餅を盗んだ嫌なヤツだが、これを見てくれ』
「ふむ...こいつは羽ずんだね」
『羽ずん？』
「ああ、最近発見された新種のずんだ虫で、なんでも飛行能力に特化した個体だそうだ。飛行器官が発達している代わりに手足が退化しているってわけさ。」
「さらに揚力を得るため枝豆が発達し表面積が増えており、飛行時にはそれをグライダーのように使って滑空するそうだ。」
「普段は山の上や高原に生息しているとされているが...まさか住宅街にも現れるとはね、まったくずんだ虫の環境適応能力には驚かされるよ」
『で、味は？』
「...やっぱりそれを聞きに来たの？」
『ああ、これだけでかい枝豆なら栄養もたっぷり詰まってそうだしな』
「うーん...データには載ってないけど...多分食べられるとおもうよ」
『なら、俺が世界で初めてこいつを食べたコトになるわけだ』
「...そうみたいだね。それと、これを」
所長ずんは食通にタブレットを渡した
「羽ずんを食べた時の感想をこのレポートに書いてほしいんだ、データとして残す必要があるからね」
『わかった、それじゃあここの調理室を借りていいか？』
「おっけー！完成したら私にも食べさせて！」
〜〜調理室〜〜
（ﾊﾅｽﾉﾀﾞ!ﾊﾅｽﾉﾀﾞ!）
『まずはこのデカい枝豆を...』ｻｸｯﾌﾞﾁｯ
（...ﾉﾀﾞ?）
ｳｼﾞｭﾙｳｼﾞｭﾙ...ｸﾞｸﾞｸﾞｯ
なんと枝豆を切断した跡から、新しい枝豆が再生した！
『枝豆耳に痛覚が無いうえに再生したのか！？こいつは驚いたのだ』ﾌﾟﾁﾌﾟﾁﾌﾟﾁﾌﾟﾁ
（ﾓｳﾔﾒﾃ!!ｴﾀﾞﾏﾒｼｬﾝﾄﾗﾅｲﾃﾞ!!）
暫く枝豆をちぎり続けていると、枝豆が再生しなくなり、小さい芽しかでなくなった。
『ふむ、栄養を使い果たすと再生速度が低下するのか、これは凄い発見なのだ』
『さてと、これだけ枝豆があれば酒のつまみにできそうなのだ』
『でも、ただのお酒で食べるには勿体無い代物なのだ...閃いた！』
食通は栄養失調で干からびた羽ずんをコップの中に入れた
（ﾊｧ...ﾊｧ...）
『さっきは枝豆をとってすまなかったのだ。お礼にずんだもちをご馳走するのだ』
（ｽﾞﾝﾀﾞﾓﾁ!!）
羽ずんは一心不乱にずんだ餅を貪る
（ｽﾞﾝﾀﾞﾓﾁ!!ｵｲﾁｰﾉﾀﾞ!!）
（ｱﾚ?ﾅﾝﾀﾞｶｸﾗｸﾗｽﾙﾉﾀﾞ ﾃﾞﾓｷﾓﾁｲｲﾉﾀﾞ!）
（ﾑﾗﾑﾗ!ﾍｺﾍｺ!）
『ふふふ、ずんだ餅に酒粕を入れておいたのだ。しかし妖精はこの程度のアルコールでも酔うとは...これは手っ取り早く終わりそうなのだ』
食通は酔った羽ずんを酒瓶の中に押し込んだ
『ほーらほら、美味しいお米のジュースなのだ』
『さっきのずんだ餅に似た味だからたーっぷり飲むのだ！』
（ｼﾞｭｰｽ!!ｵｲﾁ!ｵｲﾁ!）
（ｵｲ...ﾁ...ｵﾎﾞﾎﾞﾎﾞﾎﾞﾎﾞ!!）
（ﾀｼｭｹﾃ!ﾀｼｭｹﾃ!）
『ダーメなのだ、私だって大事なオヤツを奪われたのだ、次はお前がオヤツになる番なのだ』
（......）
羽ずんは酒に溺れた
『よーし、羽ずんを漬けたずんだ酒、完成なのだ！』
〜〜〜
『おーい！完成したのだ！』
「意外と早いねえ...」
それじゃあ...
『「いただきまーす！」』
mgmg...
『人間は「イザカヤ」と呼ばれる場所でお通しとして枝豆を出すそうだが、その理由がわかった気がするのだ』
「私は飲まないけど...枝豆単品でもすごく美味しいのだ！」
「これはずんだ食の歴史に新しい1ページが刻まれるのだ！」
続く
このページへのコメント
ずんだ虫に備わっている飛行器官は針で刺すと機能しなくなると聞くが、そこの味はどうなのか。
飛んでない時（非活性）は体と同じで、ただのずんだ餅だが、浮遊時（活性）は非常に美味で強い中毒性があると予想。そうでなければ、飛んでいる最中のずんだ虫を鳥が積極的に襲おうとはしないはず。
なかなか興味深い(そして罪深い)変種ずんだもんですなぁ〜!耳を翼にし、四肢が退化してるとは鼻行類の｢ダンボハナアルキ｣を連想させますね!
そして通常種と同様に住処の山から降りて人里で略奪行為か……人類の環境破壊で住処や食糧が減ったからか、あるいは奴らが過剰に繁殖して食糧を食い尽くしたからか……どちらにせよ適応力の高さも相まって厄介な問題だな。
しかし枝豆耳を千切っても養分があればすぐに何度でも再生するとは面白い!この性質を利用して茶摘みのように｢枝豆耳大量生産用の食用ずん｣を生み出せないだろうか?