架空国家を作ろう2.2

ベンガル州はインド東部に位置する州。古代インドの文献、ラーマーヤナとマハーバーラタでバンガ王国として言及されていた地域である。
古代インドの文献に登場する伝説の地、アヨーディヤーはベンガルのことと思われる。インド亜大陸の古代、そして古典時代には、この地域にプンドラ、ガンガリダイ、ガウダ、サマタタ、ハリケラなどの多くの君主国があった。その後、アショーカ王のマウリヤ帝国の宗主下となった。彼らの国々は、海外貿易、ローマ世界との接触、中東への高級モスリンと絹の輸出、東南アジアへの哲学と芸術の影響で有名だった。パーラ朝、チャンドラ朝、セーナ朝はイスラムが広がる前のベンガル最後の王朝であった。イスラム教はパーラ朝のアッバース朝との貿易を通じて伝播し、インド・マムルーク朝のムハンマド・バフティヤール・ハルジーと、その後のデリー・スルタン朝のシャー・ジャラールの支配下で、ベンガル地域全体にイスラムの信仰が広まった。1576年、豊かなベンガル・スルタン国がムガル帝国に吸収されたが、スール朝に追い出された。その後はムガルに服属したが、アウラングゼーブ帝の死後、1700年代初頭ごろ、工業化が開始され、豊となったベンガルでは地元のナワブが半独立状態になった。その後、イギリス東インド会社が1757年のプラッシーの戦いで征服した。
現代のベンガル州の国境はベンガル分割令により破壊されかけ、分断されかけたものの、イスラム教徒とヒンドゥー教徒の団結により設立された現代の諸州連合の下で保たれた。
ベンガルは殆どがベンガル人によって占められるベンガル人の州であるが、南部などは仏教徒が多く暮らしている。また、西部では非ベンガル人の諸民族も多く居住している。
英国が最北部はシッキムより割譲させたダージリン市などを含み、ネパール系やチベット系の住民もわずかながらに暮らしている。

太古のベンガルに関しては情報が少ない。未だ文字も存在しない時代、この地はインドアーリア人、ドラヴィダ人、モンゴロイドの移動により人種の雑居状態が生まれたと思われる。

ベンガルデルタは、何千年もの間厚いジャングルと湿地で構成されていた。この状況は歴史時代まで続いた。ジャングルの喪失は人間の活動によるものである。ベンガルには古くから人類がいたと思われるが、ベンガルでの最初の人間活動についての情報はあまり明らかとなっておらず、遺跡も発見されていない。ある説では人間は6万年前に中国からベンガルに入ったと主張している。別の説では、10万年前に独特の地域文化が生まれたとしている。この地域の先史時代の人間の存在についての証拠は弱く、]新石器時代の人間の存在の証拠はほとんどない。これは、河川の流路の変化が原因である可能性がある。ベンガルの気候と地理は、遺跡を残すのに適していなかった。石材がないため、ベンガルの人類はおそらく、のちに風化してしまうこととなる木材や竹などの材料を使用していた。また、南アジアの考古学者は亜大陸の他の部分に焦点を合わせる傾向があり。ベンガルに関心のある考古学者は、近年の歴史に焦点を合わせてくる傾向が強く、多くの考古学者はベンガルの調査を好まなかった。
考古学的発見の多くはベンガルデルタ周辺の丘からのものである。ラルマイ、シタクンド、チャクラプンジでは木で作られた刃物やヘラ状のものなどの柄が発見されている。これらの結果はミャンマーでのものと関連があるとされる。先史時代に建てられたと考えられている巨石は、ベンガル北東部に建設されており、インドの近くの丘にある石と似ている。農業は少なくとも3000年以上前から行われている。
農業が盛んとなると、紀元前5世紀に町の出現や海を渡る貿易、政治などが生まれた。考古学者たちは、古代ローマや東南アジアと交易するワリ・バテシュワルの港を発見した。考古学者たちは、ワリ・バテシュワルの貨幣鋳造物、陶器、鉄工芸品、レンガの道、砦を発見した。調査結果は、この地域が重要な行政の中心地であり、鉄の製錬や貴重な石のビーズなどの産業があったことを示唆している。この地域では粘土が広く使用されており、粘土とレンガを使って壁を作った。粘土で作られた最も有名な工芸品は、チャンドラケトゥルグ産で、神や自然や日常生活の場面を描いている。ワリ・バテシュワルで発見された初期の遺跡ではボートの工芸品が見つかっている。
ベンガルでの多くの考古学的発掘調査によると、紀元前700年〜200年にかけて発展したNBPW文化が存在したことが明らかとなった。紀元前500〜300年にかけてはインドの十六大国が出現した。ベンガルはそのうちのアンガ王国の領域であった。
タムラリプティ、マハスタン、マイナマティなど、紀元前300年までにはベンガルで発達した大きな都市が出現した。ベンガル地方では主要な町が川沿いに形成された。マハスタンにはベンガルで最初に書かれた石碑が存在する。これは、この場所がマウリヤ帝国の重要な町であったことを示している。マハスタンは当時、州の中心であったと考えられている。プラークリットの碑文には、緊急時に備えて備蓄をせよ、との命令が含まれていいる。この碑文はマハスタン・ブラーフミー碑文と呼ばれている。ベンガルはマウリヤ帝国の東部辺境であった。タムラリプティ港を持つベンガルは、マウリヤ帝国の支配下で重要な土地となっていった。

アンガ王国と連合を形成していたヴァンガ王国は古代インドの強力な海洋国だった。彼らはジャワ、スマトラ、シャムと貿易関係にあった。マハヴァムサによると、ヴァンガの王子ヴィジャヤシンハは紀元前544年にランカを征服し、国に「シンハラ」という名前を付けた。
ベンガル人は東南アジア島嶼部やシャムに移住した。

ベンガルの北部や西部はインド亜大陸の巨大帝国の一部だったが、ベンガル南部は海外貿易で繁栄し、勢力を増した。
紀元前326年、アレクサンドロス大王の侵攻により、この地域は再び注目されるようになった。
ギリシャやローマの歴史家は、アレクサンドロス大王がベンガル地方にあった強大なガンガリダイ帝国の強烈な反撃を予期してインドから撤退したことを示唆した。アレクサンドロスはコーナス将軍との会談の後、戻るほうが良いと確信した。ディオドロス・シクルスはガンガリダイがインドで最も強力な帝国であり、その王は2万頭の馬、20万の歩兵、2,000の戦車、4,000頭の象を訓練し、戦争のために準備していたと述べている。ガンガリダイ帝国とナンダ帝国の同盟軍は、ガンジス川沿いのアレクサンドロス軍に対する大規模な反撃を準備していた。ギリシャの歴史書による技術では、ガンガリダイは少なくとも紀元1世紀まで繁栄し続けた。

ベンガルは、マウリヤ帝国の勢力が衰退した後はそのまま放置された。その後の期間についてはほとんど知られていないものの、ベンガルの一部はパタリプトラに拠点を置くスンガ王朝の領域だった。この時代のベンガルは重要な仏教の中心地の一つだった。300年代から400年代にかけては、ベンガルの有力者たちは、グプタ帝国に服属しながら権力を維持した。ベンガルデルタはその後サマタタ王国となった。これは現代のチャンドプール近くを中心としていた。グプタ朝の碑文は、グプタ帝国が直接支配せずにもサマタタ王国に影響力を持っていたことを示している。ベンガルは、インドの中心地との関係にもかかわらず、未だ辺境のままだった。次の数世紀の間にはいくつかの王朝が入れ替わった。それらについてはあまり情報がないものの、コミラ地区から得られたプレートやその他の証拠によると、ゴパチャンドラが500年代初頭にこの地域を統治したことを示している。カルガ朝は次の世紀に支配者となった。その後、ディーバ王朝、ハリケラ王国、チャンドラ朝、ヴァルマン朝が続いた。彼らはみな、現在のダッカにほど近いヴィクランプルを拠点としていた。

6世紀までに、北インド亜大陸を統治していたグプタ帝国は崩壊し、ベンガルはベンガル人の王国であるサマタタとハリケラ、そしてガウダの三国が分立する時代となった。最後のグプタ皇帝の家臣であるシャシャンカは独立を宣言し、これらを統一した。彼はインド北部の覇権をハルシャヴァルダナと争った。シャシャンカはその後ハルシャの兄ラジャヴァルダーナを殺害したが、ハルシャの継続的な圧力は、シャシャンカによって設立されたガウダ王国を徐々に弱体化させ、ガウダ王国は最終的にシャシャンカの死で終わってしまった。この結果、ベンガル地方は再び分裂の時代へと戻ってしまった。

750年になるとベンガル地方からはパーラ朝が勃興する。
パーラ朝はハルシャヴァルダナのヴァルダナ朝崩壊後の荒れ果てたビハールとベンガルから勢力を拡大し、インド東部の一大勢力となった。
パーラ朝はガンジス川に沿ってインド北部を影響下に置き、さらに南部へもその触手を伸ばした。
パーラ朝はベンガルにおける仏教の黄金期であり、ヴィクラマシーラ寺院などが建立されたことで知られている。
デーヴァパーラの治世となると、パーラ朝はアッサムやオリッサまでもを服従させて巨大な帝国と化した。
パーラ朝は大乗仏教とタントラ仏教を信仰しており、パーラ様式とも言われるような密教芸術が開花した。
ベンガルの王朝としては驚くべき隆盛を誇ったパーラ朝であるが、その後のチョーラ朝の攻撃などにより徐々に勢力を衰退させ、最終的にはビハールの小さな勢力にまで落ちぶれて、滅亡の道を辿った。

パーラ朝時代のベンガルも全てが統治下となったわけではなく、ハリケラ王国の系譜を継ぐチャンドラ朝が隣国として存在していた。チャンドラ朝は一時、ベンガル東部を支配することとなったが、チョーラ朝によって滅ぼされた。

パーラ朝を破ったカルナータカ起源のセーナ朝はこの地を仏教ではなくヒンドゥー教の勢力に取り戻そうとし、仏教を弾圧した。
この地での仏教の勢力はセーナ朝によって弱められた。セーナ朝はカースト制度を蘇らせた。

東ベンガルはチャンドラ朝後、ディーヴァ朝が成立していた。彼らはヒンドゥー教を信仰する小さな勢力であった。しかし、最盛期ともなるとアラカンに侵入し、チッタゴン付近までを自国の領域とした。

1204年、ムハンマドバフティヤルキルジーは西方よりヒンドゥスタン平原、そしてベンガルのナディアを占領し、イスラム教徒による統治を確立した。イスラムの政治的影響力は、ナディア占領によりベンガル中に広がり始めた。バフティヤルは興味深い方法でナディアを占領した。ナディアへの主要ルートにセーナ朝のラクシュマナセンの強力な軍隊がいることを知ったバフティヤルは、代わりにジャールカンドのジャングルを通過したわ彼は軍隊をいくつかのグループに分け、そして、彼自身は17人の騎士のグループを率い、馬商人を装ってナディアに向かって前進した。このようにして、バフティヤルは都市の門を通ることに何の問題もなく、侵入した。その後まもなく、バキティアーの主軍が彼に加わり、ナディアが占領された。これにはわずかな時間しかかからなかった
ナディアを占領した後、バフティヤルはセーナ朝のもう1つの主要都市であるガウダに向かって進攻し、1205年に征服した。翌年、バフティヤルはチベットを占領する遠征に出かけましたが、この試みは失敗し、彼は体調不良で軍を減らしてベンガルに戻らざるをえなくなった。その後まもなく、彼は指揮官の一人であったアリ・マーダン・キルジーによって殺された。一方、ラクシュマナセンと彼の二人の息子はヴィクランプールに逃げた。
その後のベンガルはデリー・スルタン朝の領域に常に含まれていたが、ベンガルに派遣された知事はしばしば独立を企んだ。
ベンガルは前の時代での仏教弾圧の結果もあり、布教がしやすい状況下であったため急速にイスラム化が進み、イスラム教国となった。

• クチビハール王国?
• 丘陵部族地域?

ベンガル州はインド東部の経済の中心である。コルカタやチッタゴンのような港湾は内陸のアッサムやブータンなどにとっての輸出拠点、輸入拠点であり、大量の貨物が取引されている。
ベンガル州は巨大な繊維産業で知られており、アジア各国や欧米向けの繊維工場、服工場が大量に設立されている。造船、魚介類、ジュートや皮革製品、製薬、鉄鋼、食品加工の分野も大きく成長しているほか、人口の多さから、通信業界の発展が著しい。ベンガルは大量のガスの埋蔵も確認されており、さらに石灰岩なども豊富である。

ベンガルで最も盛んな産業は農業である。主な農作物としては米やジャガイモ、ジュート、サトウキビ、小麦が知られている方、トウモロコシ、豆類、油糧種子、小麦、大麦、野菜なども盛んである。茶はベンガルを象徴する農作物の一つであり、アッサム、ヒマラヤの州、セイロンとインドの茶産業の中心の座を争い続けている。ベンガルはインドでは肉の生産でも有名である。菜食主義者が人口の多くを占めるインドではベンガルやシンド、パンジャーブといった州を除き、殆どの州は肉の生産を好まないため、ベンガル州はイスラム教徒などへ向けた貴重な肉の生産源である。

ベンガル人の重要なタンパク源ともなっている魚介類は、ベンガルでも広く行われている。
ベンガル湾に面しているほか、ガンジス川が中央を貫くベンガルはさまざまな漁業の可能性に恵まれた地である。
ベンガルで消費される魚介類の多くは淡水産であり、飼い慣らされたカワウソなどを利用した伝統的な漁業から、現代的な様々な機械を利用するものまで様々な手段で漁獲されている。イリシャと呼ばれるニシンの一種はベンガルとトリプラの胃袋支える大切な魚であり、国民魚といえる。

ベンガルはエビの養殖が盛んである。当初、ベンガルのエビの養殖は原始的で弱かったものの、世界銀行などの投資を受けて以降発展し、今ではインド国内のエビの供給源の一つである。沿岸のマングローブ林など、エビや小型の魚が好む環境はベンガルの沿岸であればどこでもみられるため、エビは広く養殖されている。

ベンガル州で最も盛んな軽工業、商業は繊維に関するものである。ベンガル州の輸出の70%ほどは繊維産業によるものである。ベンガルは歴史的にもモスリンの産地であり、現在もジュートや絹の主要な産地の一つである。ベンガルの女性を中心とした安価な労働力は、ベンガルの繊維産業を支えている。
ベンガルは州単体で、世界2位の衣料品生産地域であり、世界中のブランドなどが安価な生産拠点としてベンガルに工場を建てることを望んでいる。
ベンガルは中国よりも低賃金での雇用が可能であり、先進国は生産拠点としてのベンガルの優秀さに目をつけ、実際、多くが進出している。
ベンガル製は可能な限り安い値段で販売されるが、少し低品質であることでも知られている。
ベンガルは単に工場を建てる場だけではなく、新たなブランドが次々と誕生してくる場でもある。
インド全域を商圏と考えることのできるベンガル企業は巨大な市場を存分に活かして多くの利益を上げている。

ベンガルの繊維工場で雇用されている従業員は80%以上が女性である。ベンガル女性は伝統的に家庭を中心とした暮らしを強いられてきたものの、繊維産業の興隆は彼女らに多くの雇用の機会を生み出すこととなった。このことは女性の権利向上、意識改革にも直結し、ベンガル女性の地位の向上をもたらした。しかし、繊維工場での労働の現場では、多くの女性差別が見受けられる。
彼女らは教育の欠如もあり、同様の労働を行う男性と比べて給料は低く、働かなければ簡単に解雇をちらつかせられる。
こうした状況もあり労働組合などの結成が遅れている傾向にある。
ベンガルの繊維産業の現場では多くの児童労働が指摘されている。低所得家庭の児童は自らの食費や学費を賄うために繊維工場で違法に就労している。こうした現場では彼らの権利は守られているとは言い難く、さまざまな問題の温床となっている。
彼らの雇用は企業にとって違法なため、少しでも問題を発生させる可能性があると考えられた際は簡単に解雇されてしまう。

ベンガルの工場では多くの漂白剤やアゾ染料が使用されている。アニリンやベンザジンなどのアゾ染料は人体への害が大きく、ベンガルの工場でも労働者の健康被害が多く報告されている。ベンガル州政府およびインド政府はこれらの削減や健康被害の軽減を目指しているが、うまくいっているとは言い難い。
デニム生産で行われるサンドブラストは珪肺症の危険を生む。ベンガルの工場ではこれを防ぐ医療体制や設備が整っていると言い難く、多くの珪肺被害者が発生している。
また、過マンガン酸カリウムの吸引も問題である。サンドブラストの過程で撒き散らされる過マンガン酸カリウムはさまざまな健康被害をもたらす。

ベンガルで最も発展が著しい産業はエレクトロニクス産業である。
ベンガルは安価な労働力のために生産の一大拠点となっており、最新のスマートフォン工場から家電などに至るまで、さまざまな工場が存在している。こうしたものはインド国内の企業だけでなく、外国資本も多い。

ベンガルは造船業が盛んな地域である。ムガル帝国時代より造船が盛んであったベンガルは当時の最新の技術を保有した船舶の製造現場であり、英領インド帝国が成立した後も重要な造船の拠点だった。
ベンガルには200を超える造船会社が存在し、今ではベンガル地方の一大産業である。

ベンガルは医薬品の生産でも知られている。ベンガルの製薬業界では主にインスリン、ホルモン剤、抗がん剤の生産が盛んである。ベンガルは州の医薬品需要の多くを自ら賄っている。
ベンガルは通常の医薬品や医療機器だけでなく、HFA吸入器、CFC吸入器、坐剤、点鼻薬、注射剤、点滴静注などの輸出も行なっている。

ベンガル湾は天然ガスの産出地である。ベンガル州は天然ガスを産出する州であるにもかかわらず、あまりにも大きい人口から半分ほどの需要しか満たせていない。
ベンガル湾のガスは純度の高さでも有名である。