最終更新:ID:WBoADLqcsg 2017年03月27日(月) 06:32:08履歴
513 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/22(水) 17:29:35.50 0
活動停止から十年。
誰からともなく会おうという話が出て本当に実現した。
予約した店に行くと既に茉麻が来ていてその懐かしい光景に笑いが出た。
手を振る茉麻の横に腰掛ける。
ちらほらと姿を現わすメンバー。
最後に雅が現れて全員揃った。
久しぶりに全員が集まるともう皆、三十になったにもかかわらずまるで十代の頃のまま。
お酒のせいもあってか年甲斐もなく騒がしい。
近況を一頻り報告し終わると思い出話。
一番遠い席に座った雅。
唯一、卒業してから八年一度も会うことのなかったメンバー。
ちらりと視線を向けると一瞬、目があった。
不自然にならないように視線を逸らす。
未だに胸の奥が少し騒つく事に苦笑する。
誤魔化すように隣の茉麻に絡んだ。
その後はお開きになるまで程々に会話に混ざりながら懐かしさに浸った。
二次会に行こうかという他のメンバーを尻目に一足先に会計を済まして店を出る。
数歩、歩いたところで腕を引かれた。
「ちょっと付き合ってよ」
すぐに聞こえた声にどうにか悲鳴を抑える事ができた。
頷くと歩き出した雅。
特に話し出すわけでもなく無言のまま。
理由のわからない行動。
ただひたすら歩くだけ。
さすがに疲れて近くに見える公園をさして雅を止める。
「ちょっとあそこで休憩しよ」
まだ寒い季節。
近くにあった自動販売機で二本飲み物を買った。
「どっちがいい?」
「こっち。ももが奢るなんて時の流れって怖いね」
「そりゃねもう三十三だよ。子どももいるしババチになっちゃったよ」
ベンチに腰掛けキャップをあける。
514 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/22(水) 17:30:27.95 0
「自分で言っちゃうんだ」
「まぁもうね、ほんとに若くないし。十年、早かったよ。もうアイドルやってた時間の方が短くなっちゃったんだよ」
「…ほんと早かった。でもまさかももが一番に結婚するとは思わなかったし、子どもももう幼稚園なんでしょ。何か変な感じ」
子どもの写真ないのと聞かれスマホを見せた。
大量にある娘の写真を解説しながら見せていく。
可愛いねとかそっくりとかそんな感想。
フォルダを一回りしたところで沈黙がおりる。
「なんで一度も連絡くれなかったの?」
ポツリと脈絡なく聞かれた。
恐らくこれが本題。
雅からの連絡にも返信することはなかった。
雅の左の薬指に光るシンプルな指輪。
さっきお店でプロポーズされたと言っていた会話が蘇る。
「もう十年以上経ってるし、みやも結婚するみたいだしいいよね」
「何、いきなり?」
「あの時、私みやのこと好きだった」
「知ってる」
「だろうね」
間髪入れずに返ってきた答えに苦笑する。
「だって最後に告白した時、もも泣いてた。それにあんな目で見られて好かれてないって思うなんてよっぽどの鈍感じゃないとあり得ない。なのに断るし。ほんと意味わかんなかった」
「そんなにバレバレだったんだ」
「もも嘘つくの得意なくせにあれだけはダメだった。いつもみたいにもっと上手に嘘ついて欲しかった。だからいつまでも諦めきることできなかった」
515 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/22(水) 17:31:27.52 0
過去形の言葉。
もう雅の中では終わった事のようでほっとするもどこかやはりさみしい。
空を見上げる雅の横顔。
相変わらず綺麗な顔に思わず伸びそうになる手を膝の上でギュッと握りしめ自分も空を見上げた。
「私も諦められなかったから連絡しなかった。だからお見合いしてさっさと結婚した。でもダメだったよ。いつまでもみやのこと気になってた」
「どうしたの?こんなに本心話すなんて」
「離婚するんだ」
空に向いていた視線がこちらを向く。
「なんで?」
「直接的な理由は相手の浮気。でも原因は私。最初から最後まで本当に愛情を向けることができなかったの。子どもができてからそれが明確に伝わちゃったみたいで我慢できなかったみたい」
離婚の話の時に真っ先にしたのは娘の心配。
そこに夫に対する感情は無いに等しかった。
「まあ仕方ないよ。今更だけどさ結局、家族以外で本当に気になって愛してたのはみやだけだったよ」
「何それ」
「ごめんね。でもみやは結婚相手と幸せになってね。何かあったらこれからはちゃんと連絡するから。はい、これでお終い。もう遅いし、帰ろ」
雅を見ないように立ち上がるとグイッとコートを引っ張られベンチに逆戻り。
「ほんと今更。ずるいよ」
俯いたままで表情が見えない。
「どんな思いで諦めたと思ってんの」
「ごめんね。でもこれが正解だったんだよ」
世間から後ろ指さされることなく祝福される。
その大切さは歳を重ねるごとにより実感した。
ただ幸せになって欲しい。
本心からそう思える。
今でも愛してる。
それでももうそれは大分、穏やかな感情になっていた。
516 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/22(水) 17:32:41.82 0
「正解って何?」
「みや、何子どもみたいな事言ってるの?」
窘めるように言うときっと睨みつけられるように真正面から視線が合った。
柔らかい感触。
一拍遅れてキスされたと気づく。
「何?仕返し?」
「ももは今でも私の事、好きなんでしょ?私もももの事まだ好き。付き合おうよ」
「愛だの恋だので動く年齢じゃもうないでしょ」
「年齢なんて関係ない。離婚するんでしょ。だったら一緒に暮らそ三人で」
「みや酔いすぎだよ。結婚する人が何言ってるの?結婚やめるの?」
思わず呆れたような口調になるのは当然だと思う。
酔った故の戯言でも酷すぎる。
「もう決まってるし結婚はするよ」
「はっ?不倫?冗談じゃない」
あまりに意味のわからない発言。
「んー。相手ゲイなんだよね。色々家とか世間体?とかでお互いちょうどいいかって。向こうはパートナーいるし。だからまあ少し待っててよ」
あっけらかんと衝撃の告白。
「待つって何を?」
「色々?説得とか?まあいいじゃん。どうにかするし。とりあえずもも何か言う事ない?」
突然の事態に頭がついていけない。
「まあ今はいいや」
立ち上がる雅。
「今度は逃げないでよね。連絡するから」
あの頃と変わらない自信に満ちた表情。
その言葉通り今回は逃げられない。
もう既に頭が勝手に雅と子どもと自分の三人で暮らす算段をつけていた。
逃げる気なんて消えてしまっていた。
終わりです
活動停止から十年。
誰からともなく会おうという話が出て本当に実現した。
予約した店に行くと既に茉麻が来ていてその懐かしい光景に笑いが出た。
手を振る茉麻の横に腰掛ける。
ちらほらと姿を現わすメンバー。
最後に雅が現れて全員揃った。
久しぶりに全員が集まるともう皆、三十になったにもかかわらずまるで十代の頃のまま。
お酒のせいもあってか年甲斐もなく騒がしい。
近況を一頻り報告し終わると思い出話。
一番遠い席に座った雅。
唯一、卒業してから八年一度も会うことのなかったメンバー。
ちらりと視線を向けると一瞬、目があった。
不自然にならないように視線を逸らす。
未だに胸の奥が少し騒つく事に苦笑する。
誤魔化すように隣の茉麻に絡んだ。
その後はお開きになるまで程々に会話に混ざりながら懐かしさに浸った。
二次会に行こうかという他のメンバーを尻目に一足先に会計を済まして店を出る。
数歩、歩いたところで腕を引かれた。
「ちょっと付き合ってよ」
すぐに聞こえた声にどうにか悲鳴を抑える事ができた。
頷くと歩き出した雅。
特に話し出すわけでもなく無言のまま。
理由のわからない行動。
ただひたすら歩くだけ。
さすがに疲れて近くに見える公園をさして雅を止める。
「ちょっとあそこで休憩しよ」
まだ寒い季節。
近くにあった自動販売機で二本飲み物を買った。
「どっちがいい?」
「こっち。ももが奢るなんて時の流れって怖いね」
「そりゃねもう三十三だよ。子どももいるしババチになっちゃったよ」
ベンチに腰掛けキャップをあける。
514 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/22(水) 17:30:27.95 0
「自分で言っちゃうんだ」
「まぁもうね、ほんとに若くないし。十年、早かったよ。もうアイドルやってた時間の方が短くなっちゃったんだよ」
「…ほんと早かった。でもまさかももが一番に結婚するとは思わなかったし、子どもももう幼稚園なんでしょ。何か変な感じ」
子どもの写真ないのと聞かれスマホを見せた。
大量にある娘の写真を解説しながら見せていく。
可愛いねとかそっくりとかそんな感想。
フォルダを一回りしたところで沈黙がおりる。
「なんで一度も連絡くれなかったの?」
ポツリと脈絡なく聞かれた。
恐らくこれが本題。
雅からの連絡にも返信することはなかった。
雅の左の薬指に光るシンプルな指輪。
さっきお店でプロポーズされたと言っていた会話が蘇る。
「もう十年以上経ってるし、みやも結婚するみたいだしいいよね」
「何、いきなり?」
「あの時、私みやのこと好きだった」
「知ってる」
「だろうね」
間髪入れずに返ってきた答えに苦笑する。
「だって最後に告白した時、もも泣いてた。それにあんな目で見られて好かれてないって思うなんてよっぽどの鈍感じゃないとあり得ない。なのに断るし。ほんと意味わかんなかった」
「そんなにバレバレだったんだ」
「もも嘘つくの得意なくせにあれだけはダメだった。いつもみたいにもっと上手に嘘ついて欲しかった。だからいつまでも諦めきることできなかった」
515 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/22(水) 17:31:27.52 0
過去形の言葉。
もう雅の中では終わった事のようでほっとするもどこかやはりさみしい。
空を見上げる雅の横顔。
相変わらず綺麗な顔に思わず伸びそうになる手を膝の上でギュッと握りしめ自分も空を見上げた。
「私も諦められなかったから連絡しなかった。だからお見合いしてさっさと結婚した。でもダメだったよ。いつまでもみやのこと気になってた」
「どうしたの?こんなに本心話すなんて」
「離婚するんだ」
空に向いていた視線がこちらを向く。
「なんで?」
「直接的な理由は相手の浮気。でも原因は私。最初から最後まで本当に愛情を向けることができなかったの。子どもができてからそれが明確に伝わちゃったみたいで我慢できなかったみたい」
離婚の話の時に真っ先にしたのは娘の心配。
そこに夫に対する感情は無いに等しかった。
「まあ仕方ないよ。今更だけどさ結局、家族以外で本当に気になって愛してたのはみやだけだったよ」
「何それ」
「ごめんね。でもみやは結婚相手と幸せになってね。何かあったらこれからはちゃんと連絡するから。はい、これでお終い。もう遅いし、帰ろ」
雅を見ないように立ち上がるとグイッとコートを引っ張られベンチに逆戻り。
「ほんと今更。ずるいよ」
俯いたままで表情が見えない。
「どんな思いで諦めたと思ってんの」
「ごめんね。でもこれが正解だったんだよ」
世間から後ろ指さされることなく祝福される。
その大切さは歳を重ねるごとにより実感した。
ただ幸せになって欲しい。
本心からそう思える。
今でも愛してる。
それでももうそれは大分、穏やかな感情になっていた。
516 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/22(水) 17:32:41.82 0
「正解って何?」
「みや、何子どもみたいな事言ってるの?」
窘めるように言うときっと睨みつけられるように真正面から視線が合った。
柔らかい感触。
一拍遅れてキスされたと気づく。
「何?仕返し?」
「ももは今でも私の事、好きなんでしょ?私もももの事まだ好き。付き合おうよ」
「愛だの恋だので動く年齢じゃもうないでしょ」
「年齢なんて関係ない。離婚するんでしょ。だったら一緒に暮らそ三人で」
「みや酔いすぎだよ。結婚する人が何言ってるの?結婚やめるの?」
思わず呆れたような口調になるのは当然だと思う。
酔った故の戯言でも酷すぎる。
「もう決まってるし結婚はするよ」
「はっ?不倫?冗談じゃない」
あまりに意味のわからない発言。
「んー。相手ゲイなんだよね。色々家とか世間体?とかでお互いちょうどいいかって。向こうはパートナーいるし。だからまあ少し待っててよ」
あっけらかんと衝撃の告白。
「待つって何を?」
「色々?説得とか?まあいいじゃん。どうにかするし。とりあえずもも何か言う事ない?」
突然の事態に頭がついていけない。
「まあ今はいいや」
立ち上がる雅。
「今度は逃げないでよね。連絡するから」
あの頃と変わらない自信に満ちた表情。
その言葉通り今回は逃げられない。
もう既に頭が勝手に雅と子どもと自分の三人で暮らす算段をつけていた。
逃げる気なんて消えてしまっていた。
終わりです
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