まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

236 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/18(土) 02:26:22.83 0


その後の二人 A


視線がぱちりと合わさったら、慌てたようにそらされた。
それを追いかけて首を傾けると、ぱちぱちとまばたきが数回。
可愛い、とつぶやいたら、その頬がさあっと染まる。

「も、もう! アイス溶けるよ?」
「あは、そうだね」

雅のからかうような空気に触れたのか、桃子は染まった頬をぷくりと膨らませた。
ぺりぺりとアイスのパッケージを開ける桃子を横目に、雅もアイスの蓋に手をかける。

夏休みも終わりに近づいたとはいえ、まだまだ夏は色濃く街に残っていた。
バンドの練習も一休みで、学校が始まるまでのぽっかり空いた数日間。
雅が拙い言葉で、遊びに来ないかと桃子を誘ったのは少し前の出来事だった。

――次は、ももの休みの過ごし方、一緒にしようよ。

初めて二人で出かけたあの日の、最後の約束。
本当におうちでのんびりするだけだよ?と再三再四、念押ししてくる桃子がおかしくて。
それを、うちがしたいんだからと押し切って今日にこぎつけた。

現れた桃子は、片手に近所のコンビニの袋、片手に肩掛けカバンを提げていた。
薄着なことに少しどぎまぎしながら、カバンの方を受け取る。
ずしりとした重みに驚いて中身を覗けば、漫画やら小説やらの裏表紙が目に入った。
ぱっと見たところジャンルは多岐に渡っていて、そのままを口にすると桃子はちょっと照れたようにはにかんだ。

「どんなのが好きか分かんなかったから」

悩んだけれど、全部持ってきたのだ、とささやかな秘密を打ち明けるように桃子が告げる。
自分のために桃子が頭を悩ませてくれたということ。
重たい思いをして持ってきてくれたこと。
それらがじんわりと広がって、雅は思わず頬を緩めた。

「そっちは?」
「アイス。手土産っていうか……」
「ももが食べたかっただけ?」
「そ、そういうこと言わないの」

この反応は図星かな。
にやけた雅の表情に気づいたのか、溶けちゃうから、と言い訳のように重たいカバンの代わりにコンビニの袋が押し付けられる。
はいはい、なんて言いつつそれを受け取り、冷凍庫へ。
ちらりと見えたパッケージは雅の想像と同じもので、雅は密かに嬉しさを覚えた。

母親が作っておいてくれた焼きそばを温め直していると、桃子がドアの向こうから顔を覗かせた。

「……おいしそう」

つぶやきと共に、きゅる、と微かにお腹の鳴く音。
それにあたふたしているらしい桃子へと振り返って、もうできるよ、と声をかける。
二人でホカホカの焼きそばをお腹に収めてしまうと、まったりとした時間が二人を包んだ。
気ままに桃子の持ってきてくれた漫画を読んだり、互いの家族の変な話をしたり、最近よく聞く音楽の話をしてみたり。
ゆるやかに流れる時間を共有するということは、穏やかな幸せを与えてくれた。
たとえるならば、庭先の日だまりのような温かさ。

237 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/18(土) 02:28:11.85 0


お腹が少し落ち着いてきた頃合いで、デザートのアイスの登場。
お決まりのアイスを桃子に手渡す際、ふと触れ合ってしまった指先は偶然だった。あ、と桃子からささやかな声がもれて、視線が合わさる。
何でもないふりをするタイミングが、あっさりと逃げていってしまったことを悟った。
つい数分前まで仲の良い友達と同じくらいの距離感でいたはずなのに、そんな些細なことで容易く何かが切り替わる。
雅の言動で簡単に変化する横顔の素直さが可愛くて、片手がふさがっていることに少し歯がゆさを覚えた。
両手が空いていれば、何も考えることなく抱きしめるのに。
けれど、そんな思考もアイスを口に運んで満足気に笑う桃子を見ていたら、どこかに吹き飛んでいた。

「ん、おいし」
「ももって、いつもそれだよね」
「たまには冒険してみたいなって思うけど、気づいたら同じのになっちゃって」
「あー、わかる」

冒険してみたとしても、今までのお気に入りを超えるものに出会うことはあまりない。
結局、新しいものに出会うことよりも普段通りの安定感を求めてしまう自分がいる。そんなことを考えながら、ふと手の中のアイスが目に入ってあることをひらめいた。

「もーも」
「な……へ、何?」

アイスを一口すくい取って、桃子の口元へ差し出す。その行為が意味する所くらい、すぐに察しがつくだろう。

「二人ならさ、冒険も怖くないじゃん……みたいな?」

だからさ、と桃子を促すと、本当に良いのか、と確かめるように目で問われる。
どうぞ、と眉を上げてみせると桃子の視線は差し出されたスプーンに定められた。

「溶けちゃうよ」
「わ、かってる」

ぎこちなく開けられた口に向けて、スプーンをそっと差し出す。
閉じた瞼と唇になぜだかどきりとして、思わず凝視してしまった自分がいた。
じわりと溢れそうになった感情は、奥歯を噛んで抑えつけた。

「ん! これ、おいしい」
「でしょ?」

よほど美味しかったとみえ、ぴょこりと桃子の体が跳ねる。
その様子は、からくり人形とかそういった類のコミカルさを思わせた。
少し緩んだ空気に、雅が胸をなでおろしたのも束の間。

「みーやんも、いる?」

思ったよりも真面目な表情でそんなことを言うものだから、やりすごしたはずの感情がまた胸の奥で暴れ出す。

「い、いる」

自分の耳に届く声はなぜか掠れていて、それが桃子に伝わっていないか不安がよぎった。

「あ、えと……はい」

ピックに刺されたアイスが、こちらに向けられる。
別に目を閉じる必要なんてないのに、自然に閉じてしまうのはなぜだろう。そっちの方が、より集中できるから、だろうか。

「もものも、おいし」
「へへ、よかった」

以前口にした時は、甘ったるいなんて思ったはずなのに。
今、舌の上で溶けていく甘さはどちらかというと爽やかなのが、不思議だった。

238 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/18(土) 02:29:35.33 0



「そういや、もも」
「なに?」
「あれ、初めてだったんだからね」

お互いに食べさせて、食べさせられて、いい加減アイスも溶けきった頃。
雅がぼそりとこぼした言葉を、桃子はしっかりと聞き取ったようだった。
その証拠に、桃子の瞳が綺麗に丸く見開かれる。
そういえば昔、こんな風にまん丸くなる桃子の瞳がおかしくて、からかってばかりいたことがふと頭をよぎった。

「うそぉ……」
「嘘つく理由ないじゃん」
「本当に? ほんとにホント?」
「……本当だってば」

そこまで信じられないものを見るような目をしなくてもいいじゃないか。
そう主張するために唇をすぼめると、違くて、と桃子が大きく手を振った。

「だって、みーやん……か、……つ、付き合ってた人、いた、でしよ?」

言いにくそうに、もぞりと膝をすり合わせながら桃子がそう絞り出す。
千奈美と桃子が知り合いだった以上、バレていたっておかしくはない。
そうだと分かっていても、雅はひやりとしたものが腹部をかすめたのを感じた。

「確かに、いたけど」
「だ、だからね、そういうことは……その、もう……」

桃子の言わんとすることの先が見えて、体温がかあっと上がっていく。

「そ、それは! なんていうか……したいって、思えなかったから」

だから、本当にしたことがないのだ。
まさか、こんな形で桃子に告白することになるとは思っていなかったけれど。
頬が火照って仕方がない。
きっと、今顔を上げたらそれは桃子にも簡単に知られてしまうだろう。
どうにも気恥ずかしくて視線を床に落としたままでいると、ふわりと空気が動いた。

「どうしよう、喜ぶところじゃないの、分かってるんだけど」

――すごく嬉しい。
ホントだよ、にやけるところじゃないんだってば、とか。
そっちが勝手に奪ったくせに、とか。
いろんな文句は浮かんだけれど、しみじみと噛みしめるように桃子が言うのを聞いていたら些細なことに思えてきた。
そんなことよりも、今は。

「と、とにかく! ちゃんとやり直し、したい」

訳の分からないまま終わるようなものでなく、ちゃんと心に刻みつけておきたかった。
あれはあれで良かったと思うけれど、如何せん感触だとかそんなものは一切記憶に残っていない。
それよりも、あの時はステージの上を流れて行く波に呑まれぬよう必死だったのだ。

「え、と……もも、どうしたらいい?」

おずおずと尋ねる桃子に、はっと我に返る。
言い出した以上、自分からするのが筋だろうか。
それとも、あの時のやり直しというなら桃子にしてもらうべきなのか。
脳内でそんなやりとりをした後、雅はゆっくりとした動作で桃子の正面に座り直した。

239 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/18(土) 02:30:03.63 0

「目、つぶって」

言われるまま、素直に閉じられる瞼。
二の腕あたりに手を添えると、その感覚に桃子が身震いしたのが伝わってきた。
緊張しているのが自分だけではないと知って、ほんのわずかだが心に余裕が生まれる。
それが消え去ってしまう前に、雅は小さく息を吸った。
きゅっと目をつぶって雅を待っている様子は、想像以上に無防備で雅の心臓がどくどくと早まる。
やばい、抑えないと。何を?

「……は、はやく」

雅を急かす声には吐息が混じっていて、くらりと目眩を覚えた。
ごめん、と言ったつもりの声は、音にならないまま息としてこぼれ落ちる。
桃子との距離をゆっくりと縮めながら、雅自身も目を閉じた。
鼻先に伝わる桃子の熱がじんわりと増していく。
ああ、このままではぶつかってしまう。
少し首を傾けて、軌道修正。
甘い匂いは、きっと、さっき食べたアイスのせいだけではないと思った。

もう少し? まだ? きっと、あともうちょっと。

慎重に近づけていった唇は、温かくて柔らかい場所に不時着した。
感動にも似た思いが湧き出て、きゅう、と体の芯が熱を持つ。
瞼の裏にチカチカと星が瞬いたのを感じて、雅はゆっくりとそこから離れた。

「……っはぁ、はっ……!」

目を開くと、急に体が現実へと引き戻されたようだった。
だが、唇に残る熱は確かにそこにあって、それはそのまま先ほどの行為を物語る。

「みーやん、顔、まっ赤」
「もも、だって」

桃子も同じように息が上がっていて、声の間に呼吸が混ざる。
1秒にも満たない時間だったはずなのに、その一瞬で肺の中にあった酸素全てを使い切ってしまったようだった。
こんな経験は、初めてだ。
そしてきっと、これは桃子が相手でなければ味わえなかったものだ。
少し呼吸が落ち着いてきたのを感じながら、そろりと桃子へと視線を向ける。
かち、と音がして、雅は桃子に捕まった。

「……もっかいって言ったら、どうする?」

止まる理由なんて、二人の間には存在しない。

240 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/18(土) 02:31:07.92 0


二度目の口づけは、一回目よりも幾分スムーズに進んだ。
自然と目を閉じた桃子に誘われるようにして、先ほどと同じ場所に唇を重ねる。
こんなにも柔らかなものに触れたことは、今までなかったんじゃないかと思うほど。
触れるだけだったのを少し強めに押し付けてみると、今度は湿ったものに出会った。
それが何であるかを認識するよりも早く、その存在を確かめるように唇を開く。

「ん……っ」

耳に届く桃子の声は湿っていて、雅の脳内に甘く響いた。肩がぎゅっと掴まれる感触に、桃子の手が肩を掴んでいたのだと知る。
もっと先へ、と貪欲な自分が顔を覗かせた。

「っは、もも」
「ぅ……?」

一度離れると、桃子の濡れた瞳に出会う。
その瞳の奥にどろりと渦巻く熱を見た気がして、気づけば再びキスをしていた。
奥へ、先へ、求めるままに、舌をそっと差し出してみる。
唇とは違う柔らかさに、桃子が体を強張らせたのが分かった。
本当は、優しい言葉の一つでも囁いてあげる余裕があればいいのかもしれない。
けれど、今の雅には到底そんなことは無理だった。
ゆるりと忍びこんだ先で、緩やかに圧迫される。濡れていて、ざらついていて、けれど柔らかい。

「んぅ、ふ、ぁ」

きゅう、と肩を掴む指先の力が強くなった。
その感覚に煽られるように、雅は桃子の中を動き回る。
知りたいと思った。桃子の味を、全て。

「ぁっ、く、んぅ……っ!」
「わっ、ちょ」

突如、くた、と桃子の体から力が抜ける。
支えを失ってぐらりと倒れかけた桃子の体を、雅はどうにか受け止めた。

「ご、ごめん……やりすぎた」
「ちがっ! ちが、くて」

ちょっと待って、というように桃子の手のひらが雅の目の前に広げられる。大人しくそれに従うと、桃子は大きく深呼吸。

「なんか、幸せすぎて、頭、追いつかない」

へにゃ、と桃子が頬を緩ませる。
それにつられて、雅も同じような表情を浮かべていた。
全身が温かくてキラキラした何かに満たされていて、正直なところ雅も頭が追いつかないのは一緒だった。

「ちょっと、休む?」

桃子がこくりと頷いたのを見て、少し迷った後、膝の上に導いた。
膝枕なんて、他人にしてあげたのは何年ぶりだろう。
それこそ、弟が本当に幼い頃にしてあげたのが最後かもしれない。
桃子の髪の毛を軽く指に通しながら、ゆったりとしたテンポで撫でていると桃子の呼吸がすう、と深くなるのが聞こえた。
これは、しばらく起きないかもしれないな、なんて思ったけれど、苦ではなかった。
足も痺れるだろうし、床の上だから腰も多少は痛むだろう。

けれど、そんなものを全部ひっくるめて、きっと幸せと呼ぶのだろうと思った。

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