最終更新:ID:al6a35L5vQ 2017年07月17日(月) 17:59:32履歴
176 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/17(月) 17:35:27.29 0
真意とは何なのか。雅にもよくわからない。
本心を口にしたつもりで、後から思い返せば嘘に塗れていたと気付くこともある。
あの日、心が千切れるような思いで口にした「好き」という言葉だって
「ごめん、どうかしてた」と自身から一言添えれば簡単に霧散しそうだった。
桃子が口にした言葉はどうだろう。
あの瞬間、心に降りてきたと思った桃子の真意も
日が経てばまたあっさりと、疑わしいものに変わっていく。
所詮は、あの夜のためだけに交わされた言葉だ。
無責任な戯れ言だった。
結局、何かと言えば
そんなものを転がして楽しめるほど、大人ではなかったということだろう。
わたしは。少なくとも私の方は。
「なにこれ」
「アイスワイン。もらったの。飲もうと思って冷やしといた」
「開けちゃうの?もったいなくない?」
「これすっごい甘いんだって。飲んでみたくない?」
「へぇ、甘いんだ。何なの、みや」
ほら、これだ。
だけど今夜は構いはしない。
甘い甘い。いろんなベリーの香りがする
舌に溶け残る蜂蜜、キャラメル、メイプル?
ねえ、抜けていく酸味が、大人っぽいね
「これ以上はやばい」と言う桃子にさらに飲ませた。
クッションに倒れ込んだ桃子の身体を起こし、口付けても飲ませた。
心の中に沸き上がる、このワインの赤みたいな毒も
無理矢理に注ぎ込む。
こんなやり方、卑怯かな。
だけど、手段なんか選んでられないんだよね。本気だから。
ねえ、もも。この間から、耐えられない。
もう一度言わせたい。そして、確かめておきたい。
自分の思いがどこにあるのか、わからない不安を、どうにかしたい。
177 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/17(月) 17:38:27.72 0
苦しげに肩で息をしている桃子の首に触った。
熱く脈打っている。
わななく唇から絶え間なく息が漏れていた。
ももしんじゃいそう。可哀想。
そう思った瞬間、雅の胸は詰まった。
抱き抱えるようにベッドまで連れて行き、寝かせてやる。
トロリとしていた桃子の目が、不機嫌そうに細められた。
殺気。
咄嗟に飛び退いた雅の足がもつれてよろけた。
桃子の手は空を掻いて、枕に叩き付けられた。
ねえ、どれくらい時間が経ったのかわからない。
雅は壁に背を付けて座り込み
時折不意に聞こえてくる時計の秒針の音と、自身の心音を、ずっと数え続けていた。
全身の震えが止まらないのはお酒のせいだと思った。頭がまるで回らないのも。
がくがくする身体を抱きながら、ひたすら数えていた。
桃子はずっとベッドの上で泣き喚いていた、
恐ろしさと、同時に安堵があった。
桃子が怒っている。
呂律も回らずほとんど何を言っているのかわからなかったが
唸り、嘔吐く桃子を見ながら
もう、喉が枯れちゃうなんて心配しなくていいし。と思った。
この安心感は何だろう。
いつの瞬間からか、桃子はこうしてただ甘えているだけだということもわかったし
何かしてやる必要もない
ここにいてあげるだけでいいんだとわかったし
耳の奥が、桃子の声と自身の激しい鼓動で破裂しそうだと思いながら
雅は静かに、嬉しさのようなものを抱き締めていた。
あんなに欲しかった言葉など
どうでもよくなっていた。
「みや」
桃子の呼ぶ声が聞こえた。
顔を上げると、桃子は枕に顔を押し付けたまま「助けて」と言った。
ごめん、やっぱり、卑怯だった。
そう思いながら、雅は誘われるまま這うようにベッドに近づく。
今、みやが助けてあげる。
この思いは、ワインの赤より毒々しくて
甘くてトロトロしてる。と雅は思った。
それ以上のことは、わからなかった。
真意とは何なのか。雅にもよくわからない。
本心を口にしたつもりで、後から思い返せば嘘に塗れていたと気付くこともある。
あの日、心が千切れるような思いで口にした「好き」という言葉だって
「ごめん、どうかしてた」と自身から一言添えれば簡単に霧散しそうだった。
桃子が口にした言葉はどうだろう。
あの瞬間、心に降りてきたと思った桃子の真意も
日が経てばまたあっさりと、疑わしいものに変わっていく。
所詮は、あの夜のためだけに交わされた言葉だ。
無責任な戯れ言だった。
結局、何かと言えば
そんなものを転がして楽しめるほど、大人ではなかったということだろう。
わたしは。少なくとも私の方は。
「なにこれ」
「アイスワイン。もらったの。飲もうと思って冷やしといた」
「開けちゃうの?もったいなくない?」
「これすっごい甘いんだって。飲んでみたくない?」
「へぇ、甘いんだ。何なの、みや」
ほら、これだ。
だけど今夜は構いはしない。
甘い甘い。いろんなベリーの香りがする
舌に溶け残る蜂蜜、キャラメル、メイプル?
ねえ、抜けていく酸味が、大人っぽいね
「これ以上はやばい」と言う桃子にさらに飲ませた。
クッションに倒れ込んだ桃子の身体を起こし、口付けても飲ませた。
心の中に沸き上がる、このワインの赤みたいな毒も
無理矢理に注ぎ込む。
こんなやり方、卑怯かな。
だけど、手段なんか選んでられないんだよね。本気だから。
ねえ、もも。この間から、耐えられない。
もう一度言わせたい。そして、確かめておきたい。
自分の思いがどこにあるのか、わからない不安を、どうにかしたい。
177 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/17(月) 17:38:27.72 0
苦しげに肩で息をしている桃子の首に触った。
熱く脈打っている。
わななく唇から絶え間なく息が漏れていた。
ももしんじゃいそう。可哀想。
そう思った瞬間、雅の胸は詰まった。
抱き抱えるようにベッドまで連れて行き、寝かせてやる。
トロリとしていた桃子の目が、不機嫌そうに細められた。
殺気。
咄嗟に飛び退いた雅の足がもつれてよろけた。
桃子の手は空を掻いて、枕に叩き付けられた。
ねえ、どれくらい時間が経ったのかわからない。
雅は壁に背を付けて座り込み
時折不意に聞こえてくる時計の秒針の音と、自身の心音を、ずっと数え続けていた。
全身の震えが止まらないのはお酒のせいだと思った。頭がまるで回らないのも。
がくがくする身体を抱きながら、ひたすら数えていた。
桃子はずっとベッドの上で泣き喚いていた、
恐ろしさと、同時に安堵があった。
桃子が怒っている。
呂律も回らずほとんど何を言っているのかわからなかったが
唸り、嘔吐く桃子を見ながら
もう、喉が枯れちゃうなんて心配しなくていいし。と思った。
この安心感は何だろう。
いつの瞬間からか、桃子はこうしてただ甘えているだけだということもわかったし
何かしてやる必要もない
ここにいてあげるだけでいいんだとわかったし
耳の奥が、桃子の声と自身の激しい鼓動で破裂しそうだと思いながら
雅は静かに、嬉しさのようなものを抱き締めていた。
あんなに欲しかった言葉など
どうでもよくなっていた。
「みや」
桃子の呼ぶ声が聞こえた。
顔を上げると、桃子は枕に顔を押し付けたまま「助けて」と言った。
ごめん、やっぱり、卑怯だった。
そう思いながら、雅は誘われるまま這うようにベッドに近づく。
今、みやが助けてあげる。
この思いは、ワインの赤より毒々しくて
甘くてトロトロしてる。と雅は思った。
それ以上のことは、わからなかった。
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