まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

720名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/25(火) 22:39:55.550

「みやもものしんぎたい 5」

雅は暗闇で目を覚ました。
降っていた雨は止んだようで、窓の外からは音がしない。
手を動かす。隣に寝ていた筈の桃子はいなかった。
微かにテレビの音が聞こえる。
雅は再び眠ろうと目を閉じたが、思い直して起き上がった。

着ていたキャミの上に手早く、ルームウェアにしているTシャツとロングスカートを身に着け
そのままリビングに続くドアを開けた。
桃子はテーブルに寄りかかるように座り込んで、テレビを見ていた。
「寝れないの」
「うん。ちょっとだけ。ごめんうるさかった?」
「ううん。なんで服着てんの。パジャマ置いてたのに」
「後でね、シャワー借りてから」
「そっか」

ほんの数時間前、ベッドの上でしていたことは何だろう。
まるでそんな時間はなかったかのような
一緒に暮らしている家族みたいな今の会話は何だろう。
特に何ということもない、一日の中のほんの数時間。
どうして、こんな時間を共有するようになったんだろう。

おかしい。
だって、私たちは何も約束していないんだから。
やっぱり、これは嘘の時間だ。そう雅は思った。ここ数日で膨れ上がった思いだった。

だからさっき、ベッドの中で、雅は求められた言葉をやんわりと拒絶したのだ。

短い会話の後、桃子は黙ったまま、立ち尽くしている雅を無視してテレビを見続けている。
薄い壁をつくられていた。
雅はテレビの見える斜向いに座り、膝を抱えた。

何かを、間違えてしまったことはわかる。
わかり合っているつもりで、すれ違い続けている。
わかった振りをして、上辺だけを撫で続けるのはもう嫌だった。
言葉遊びも。

「本心だけ、言いたいんだけど」と雅は口を開いた。
「ん?」
「言葉を、弄ぶみたいなこと、したくないし」
桃子はテーブルに寄りかかったまま、ゆっくりと言った。
「……似合わないかもね」
「うん。性に合わない。だからもう、軽々しく言ったりしないから」
「さっきのだったら、気にしてないよ」
「決めたの。もう、言わないって」

かけ違ったものを、元に戻したい。そう思えるようになった。
軽い言葉にしたくない。そう伝えたかった。

722名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/25(火) 22:43:47.920

「なんだそれ。普段何にでも好き好き言いまくってる癖に」

そう言われて雅は顔を上げた。
桃子の表情は、あまり見たことのない
張り詰めた、何か後ろめたさを誤摩化すような薄い苦笑いで
急に見てはいけないものを見たような気になる。

雅は目を逸らし、頬杖をついて、テレビに向き直った。
どこの国の映画だろう。途中から見てもわからない。目にも耳にも何も入ってこない。

「なにそれ」
と桃子が言い、何それって自分が見てた映画でしょ。そう言おうとして
雅は振り返った。

桃子の目から、透き通った雫が次々に零れ落ちていた。
一瞬、テレビかと思い、それから思い直す。
思い直した。

これは、何かの間違いだ。

声も出さず、静かに息を吐きながら
桃子は必死に自制心を保とうとしているように見えた。
そればかりが痛い程伝わってきて
見なかったことにしなければいけない、そう咄嗟に思う。
再びテレビの方を向き、息を殺した。

大丈夫。みやは見てない。何にも見てない。

「ぇ……る、帰るね」
桃子がテーブルに手を付いて立ち上がる気配がした。
雅は振り返らず
「あ、うん。わかった」と普通に、出来る限り普通に答えた。

桃子が出て行く。玄関の閉まる音がして
雅は急に激しく打ち出した鼓動を押さえようと胸に手を置く。
顔が赤くなっていくのを感じた。

冷蔵庫に向かい、手近な缶を一本取り出した。
その場で開けると一口飲み、冷蔵庫に寄りかかる。
「……今のどう思う?」
他人事のように、呟いてみた。

今のを、なかったことにできるんだろうか。

「て、いうか……」
ていうか今、何時だよ。
雅は時計を見た。
帰るって、この時間タクシーも走ってないけど。
知らずに笑いが漏れていた。「何やってんの」

缶を置くと、雅は真っ直ぐ玄関に向かいドアを開けた。
温い外気が全身に纏わり付く。
振り切るように、雅はエレベーターに向かった。

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