まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

356名無し募集中。。。2018/12/16(日) 01:16:38.510

ちょっぴり香ばしい匂いは、外にいても香ってきた。
頭に浮かぶとろとろしたブラウンのソース。
朝言ったの、覚えててくれたんだ。
るんるんした気持ちのまま、玄関のドアを開けた。

「ただいまぁ」
「おっかえりぃ。晩ご飯できてるよん」

歌うように言いながら彼女――よーちゃんはウインクした。
ソファにバッグを放って、みやもコートのままそこに飛びあ込む。
こら、って呆れた顔のよーちゃんに、ぐいって首根っこ掴まれた。

「おいみやび。さっき言ったこと聞こえなかった?」
「聞こえたよ、晩ご飯」
「そう。あたしお腹空いてんの。食べたらまた仕事なの。早くしてよね」
「はいはーい」

よーちゃんはぽいっとみやを離し、キッチンに戻っていった。
くつくつ音を立てるお鍋に呼ばれたみたい。
コートを脱ぎながら、鍋をかき混ぜるよーちゃんを眺めた。
料理してるところが見える方が良いよねって、カウンターキッチンを選んだのはみや。
よーちゃんは特にこだわらないから良いよって笑ってた。
無造作な一つ結びとか、使い込まれた無印良品のエプロンとか。
よーちゃんはそういうのがよく似合う。
不意に、よーちゃんと目が合った。
にやって笑う。みやのこと呼んでるって思った。

「みやび、味見」
「いいの? やった」

とろりと小皿に注がれたハヤシライスソースは、バツグンに美味しかった。
よーちゃんは普通に作ってるだけって言うけど、絶対なんか隠してるだろっていつも思う。

357名無し募集中。。。2018/12/16(日) 01:17:47.490

よーちゃん。本名は流川桜子(るかわようこ)。
みやの仕事仲間っていうか、相棒っていうか、この人なしじゃ成り立たない人。
みやより背が高くて、料理が上手で。
片付けとか洗濯が好きなマメな人。いろいろと雑なみやとは正反対。
でも、化粧っ気はないし、服装はざっくりしたのばっかり。
そういうバランス感覚が、よーちゃんの良いところなんだと思う。

「ご飯、好きなだけよそって」
「いっぱい食べちゃいそー」
「あのなあ、明日分も入ってんだから考えてよね?」

分かってるし。
そう言い返して、炊きたてほかほかのご飯をしゃもじですくう。
ご飯をラグビーボールみたいに整えて渡したら、「変なとこ几帳面」って笑われた。
あるじゃん、そういうポイント。
カレーのルーをご飯にどうやってかけるのか、みたいなさ。

「あたしの適当でいいから」
「えー、分かんない」
「分かれよ。ああ、そのくらいでいいって、あんま食べたら太る」

まだざっくり盛っただけのご飯の上に、よーちゃんは豪快にルーをかけた。
すらっと縦に長い手が二人分の器を持ち上げた。
リビングに向かう背中から、ウキウキしてるのが漂ってくる。
良いことあったんだってすぐに分かった。

渋谷、決まったよ。
ハヤシライスをがしがし食べながら、よーちゃんがいきなり話し始めた。

「渋谷?」
「おい。忘れたのか、あたしがずっと交渉してた案件じゃんか、miaowの」
「あー……え? えっ、まじで?」
「まじまじ。おおまじ。だから忙しーの」

くいっと片方の眉を上げて、よーちゃんがにひひって声を出した。

358名無し募集中。。。2018/12/16(日) 01:18:14.560

渋谷。みやの第二のふるさとみたいな街。
その一角にあるポップアップストアをかけて、よーちゃんは営業活動をしてくれていた。
何のポップアップストアかって、そりゃみやが作ったコスメブランドの、だ。
ステージに立つことを辞めた後、みやはヘアメイクの仕事をさせてもらえることになった。
事務所の後輩達を可愛くしてあげるお仕事。めっちゃ良くない?
その中でいろいろ教えてもらったことを活かして、数年前にみやが立ち上げたのが"miaow"だった。
よーちゃんはmiaowの営業兼広報みたいな立ち位置。
情報系の大学を出たらしいよーちゃんは、マック一台でどこでもバリバリ仕事をする。

「ということで、目玉になるような新製品のアイデアよろしくぅ」
「簡単に言うなー」

ごちそうさま、とよーちゃんはさっさと席を立った。
じっとしてられないタイプなんだ、とよーちゃんは言っていた。
仕事してるよーちゃんは、なんとなくももっぽいなって思う時がある。
わーかほりっく、って人種らしい。みやにはよく分かんないけど。
よーちゃんに言わせれば、みやも十分わーかほりっくだろって。

「食べ終わったらお皿おいといて、後で洗うから」
「ありがと」

マックとにらめっこを始めたよーちゃんを横目に、みやはテレビのスイッチを入れた。
仕事モードのよーちゃんは、ごついヘッドホンで完全に一人の世界に入っちゃうから。
何を見るでもなく、適当なバラエティにしておく。
売り出し中らしい女子アイドルに目が行くのは、もう職業病みたいなもん。
耳より高い位置のツインテール。なんだよ、ただのももちじゃん。
あちゃ、トークは全然だめか。いやいや、まずあいつと比べる時点で違うでしょ。
ももちっぽい(っていうかほぼパクリ)その子が特に存在感を発揮しないまま、番組は終わってしまった。
こうして見てると、ももってホントにすごかったんだなって思う。
勝手に向こうが出演情報送ってくるから、仕方なく録画してた番組の数々。
ちゃんと全部見てたなあって思い出した。
だってもも、みやが感想言ったらめちゃくちゃ嬉しそうな顔するんだもん。

「みやびー、ちょっと」
「ん」

ぷつっとテレビを消したら、耳の奥でキーンって音がした。

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