まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

640名無し募集中。。。2017/12/28(木) 22:07:55.560

おうちの前から走り去っていくトラックの音を
ももは、玄関に突っ立って聞いていた。

みやが、すぐに戻って来ないから。
ドアが閉まる音と、外から、門へ向かっていく話し声が聞こえたから。
嫌な予感がして、食器はとりあえず放って、こうして玄関まで来たんだけど
それ以上先は、追いかけられなかった。

ノブに貼付けられている銀のフォークを睨みつける。
いや、トラックは去ったけど、それから荷物持ったみやがすぐにでも戻ってくるんじゃないかって
そんな風にも思って
そのまま、ももは数分待った。

数十分待った。
なんで出てくのみやのバカ!って思った。
それから
くまいちょーやりやがったな!と、思った。
ああ見えて、やるときはやるんだよくまいちょーは。
油断した。
これは、ももの油断だ。
その場に、へたり込んだ。

いや、待った。
みやだけ拉致って、どうするつもりなんだろう。
眉間に皺が寄った。
ももは立ち上がると、考えるために、一旦居間へ戻った。

644名無し募集中。。。2017/12/28(木) 22:11:07.76

ソファに座って、頭を捻る。

連れ出したみやを誑かして、ももを外へおびき出そうという計画だろうか。
けど、みやがそこに乗っかるとも、ちょっと思えない。
諦めて帰してくる可能性も、なきにしもあらず。
みやだって一筋縄じゃいかない筈なんだよ。

そう、時間を置いて、帰ってくる可能性はある。っていうか
その可能性が大きい気がする。

くまいちょーがみや自身に危害を加える目的があったのだとしたら
もっと前に、そう、みやがまだ自由に出歩いていたときにアクションを起こしてたはず。
やっぱりこれは、ももをクリパに連れ出すための布石としか思えないし
だとしたら、くまいちょーはみやの説得には失敗するだろう。

もうちょっと待ってみよう。
と、ももは思った。

ほんの僅か
ももが目を放した隙に外に出ちゃった♡やっぱりお買い物行きたいもん!
という、みやの可能性にも賭けたい。

ももはキッチンに戻り、出しっ放しにしていた食器を片付け始めた。
こうしてる間にも、玄関のドアが開かないか、耳をそばだてながら
あちこちに出された食器を片っ端から戸棚に詰め込んだ。

連れ去られてしまったという事実から目を背けられなくなるまで
それからさらに、数時間かかった。

落ち着かないまま居間を出ようとしたとき
ドア横のサイドボードに乗せてあったみやのバッグにうっかり手が触れてしまったのだ。
落ちたバッグから、黒い招待状が飛び出し、床を滑った。
ももは、それを拾い上げた。

649名無し募集中。。。2017/12/28(木) 22:15:46.750

夜になっていた。
明かりも付けず、暗闇の中、ももはソファの上にうずくまっていた。

くまいちょーがみやを説得するために連れ出した説は、捨てざるを得ない。
それなら、いずれにせよ、みやは戻ってくる筈。
じゃあ、どうしたの。
目的はももなのに、みやだけ連れ出して、どうすんの。
まさか、ニンゲンを魔界に連れ込んだりしないよね。正気の沙汰じゃない。
けど、けどな。くまいちょーだからなぁ。

ふと浮かんだ想像に、ももはゾッとして体を抱えた。
みやがいなくなれば、ももが戻るなんて、そんな短絡的に考えてないよね。
そんなバカなこと、しないよね。
みやほど悪魔に理解ある悪魔バスターなんて、いないんだけど。

ももは深呼吸した。
ごめん、みや。
こんな風にただ、帰りを待っているだけなんて、むり。

ももは立ち上がり、玄関へ向かった。
銀のフォークを横目で見てから、シューズケースの引き戸を開けた。

みやの理想とする世界がある。
その世界では、悪魔とニンゲンが、うまくやってるんだよ。
そんなのあるわけないって、思うかもしれないけど

ももは振り返る。廊下の突き当たりにある部屋。
このおうちの家主の部屋だ。

そんな世界を、信じたらいけない?
ううん。そういう思いが、世界を変えるんだよ。
そうやって、歴史は変わってきたんだ。

奥の部屋の扉を開ける。埃っぽい匂いが鼻をついた。
部屋の奥、背の高く薄い本棚にぎっしりと、家主の文庫本が詰め込まれている。
ももは目の前の段の目につく本を片っ端から両手で引き抜いていった。

650名無し募集中。。。2017/12/28(木) 22:17:40.230

その段の本を全て引き抜いて床に置くと
今度はそのすぐ上の段と、下の段の本を全て抜いた。
ももが指先で棚板に触れると、ぐらぐらと揺れた。

随分古いけれど、背板もない、簡易な本棚だ。
棚板を引き抜く。
その向こう側に、窓枠が見えた。

みやは知らなかったでしょ。
ももは唇を噛んだ。

この窓を開けて出てしまったら、みやは気付いてしまう。
出られないフリをしていただけだって知ってしまう。
このおうちの結界は、みやのよすがなのに。
破ってはいけない、みやにとって神聖なものなのに。

壊したくなかった。

ももは掛け金に手をかけた。
固く錆び付いている取っ手を握り、力を込める。
「結界もなにもない」
口の中で呟く。
みやが戻って来れなければ、何の意味もない!

ガチン!と音をたてて、掛け金がはずれる。
ももは、外に向かって窓を押し開いた。
すぐ目の前に境界のフェンスが見える。夜風が頬を撫でた。

ももは窓枠を乗り越え、土の上に降り立った。

655名無し募集中。。。2017/12/28(木) 22:21:31.980

出たはいいけど。さて。
その場に立って、辺りを見回すと
とっても都合のいいことに、一匹の蝙蝠が低くフェンスに沿って飛んでいるのが目に入った。
さすがクリスマス間近。ももの唇の端が上がった。

「ねえ」
声をかけると、蝙蝠は訝しげに上下しながら、ゆっくりももの方に近づいて来た。

「何のお使いかな?」
そう言うと、蝙蝠はももの鼻先までその小さな身を寄せた。
「まさか会えるとはな」
そう蝙蝠は言った。
「何してんのこんなとこで」
「いやだって、クリスマスじゃん?あっちこっち飛ばされて
浮かれたニンゲンがいないか偵察してたんだけどさ、もうキリがないわけよ」
「だろうね」
「まあでも今日の報告ノルマは達成したわけ。
そんで気が付いたら、噂の夢魔が閉じ込められてるって現場の近くじゃん?
野次馬根性って言ったらアレだけどよ」
「ほうほう。それはそれは」
ももは手を伸ばして蝙蝠の小さな体を掴んだ。
「おい」
蝙蝠は低く凄んだ。

「いいじゃん。ちょっとお願いがあるんだけどなぁ」
「……何だよ」
「クリパに行きたいんだよね」
「勝手にゲート開いて行きゃいいじゃん」
「それができればこんなお願いしてないの!」
「ああ……今年はリ○ちゃんキャッスルだったっけ」
「いっこしかないゲートが上空じゃんか」
「そうだな。飛べないもんな」
蝙蝠が鼻で笑った気がして、ももは手に力を込めた。
「そんな強く抱き締めんなよ……」
「は?」
「で、何?ぶら下げてってくれとか勘弁してくれよ。さすがに無理だからな」
「え?無理なの?」
「サイズ比を見ろよ!」
「わかった。じゃあそれは諦めるから、他に何かない?」
蝙蝠はしばらく黙った。

659名無し募集中。。。2017/12/28(木) 22:25:56.830

「……ったく桃子はしょうがねぇなあ」
「なっ……!なにその呼び方やめてよ!」
「桃子は桃子だろうが」
掴んでいたボディをさらにぎゅーっと握り締めると、蝙蝠は慌てたように叫んだ。
「アアアーーーーーっ!わーったよ!わかったわかった!ももちゃん」
「おう」
「お前さんをクリパ会場に連れていける場所に、心あたりがあるわ」
「場所?」
「案内してやるから着いてきな」
「……しょーがないなぁ」

手を緩めると、蝙蝠はももの手のひらを蹴り、上へ浮かび上がった。
間を置かず、案内するように道路の方へヒラヒラと飛んでいく。思いの外スピードがある。
ももは急いでその後を追いかけた。

後について、広く長く伸びた道を緩やかに下っていく。丘を切り崩してつくった住宅地のようだった。
「おうちの周りってこんなだったんだ。もしかしてけっこう田舎?」
「通勤に一時間ちょいってとこかな」
「サラリーマンみたいに言わないでよ」
「もうちょっと行けば駅に繋がる商店街がある」
「へぇ」
みやがいつもお買い物しているのは、その商店街だろうか。
ももはちょっとワクワクした。

長いフェンスが続いていると思ったら、学校だった。
金網越しに校庭を見る。
「何覗いてんだよ通報されるぞ」
「ちょっと見ただけじゃん!」
「急いでんじゃねぇのかよ」
「急いでるに決まってんでしょ。早く案内してよ」
「さっきからトロトロ歩いてんのは誰だよ」
「しょーがないじゃんみやのスニーカー履いてるんだからサイズが合わないの」
「え?」
蝙蝠は羽を羽ばたかせながら中空に止まった。
「えっ?何?」
「そういやあれどうしたのあれ、ほらお気に入りのスチームパンク風の」
「は?あんな格好で出て来られるわけ」
「ダッサ。……ま、そういうとこが可愛いんだけどな」
さっと手を伸ばして捕まえようとすると、蝙蝠はひょいと上へ逃げ、手は空を掻いた。
「ほんっっっとやだ!」
「やだって言いたいのはこっちだっての。行くぞ」
蝙蝠がスピードを上げ、ももは慌ててその後を追いかけた。

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