まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

55 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/06(火) 01:19:33.00 0
プロローグ

1992年 3月 6日 千葉地方


「何?生まれた?そうか!そうか…生まれたか!」

男は電話に向かってそう興奮気味に話すと、受話器を放り出し、韋駄天の如し速さで部屋を飛び出した。

「おい!車を頼む!生まれた!大急ぎだ!」

この男、ここでは敬意をもって"嗣永伯爵"と呼ぶことにするが、
千葉地方では押しも押されぬ名士であり、嗣永家9代目当主でもある。


さて、そんな男がなぜ今こんなにも慌てているのかといえば、既にお察しのところであろうが、
もちろん、今し方、この嗣永家に待望の第一子が誕生したからに相違ない。

「桃子」と名付けられたこの子供は、少しばかり首をかしげるような変化はあったものの、
すくすくと成長し、やがて15年後、運命の出会いをすることになる。

102 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/07(水) 00:11:39.34 0
「桃子様、どうかおやめください!」



その日、嗣永家は朝から慌ただしかった。いや、慌ただしくさせられたといった方が正確だろうか。
最初に異変に気付いたのは、メイド長のサキであった。
彼女の役目といえば、もっぱらメイド達の指導であるが、それとは別に、"朝に弱い桃子様を起こす"という、重大な任があった。
そんなわけで、今朝も平時と変わらず、朝の7時頃に部屋の扉を叩いたのだが、
おかしいかな、いつもなら3回ほど繰り返せば起きてくるところが、今日に限っては一向にその気配がない。
「これは何かおかしい」 ―嫌な予感がしたサキが扉を開けると、案の定、部屋の中は物の見事にもぬけの殻であった。

さていよいよ屋敷の中は大騒ぎである。何しろ、朝一番に大事な嗣永家の第一子が忽然と姿を消してしまったのだから、これはただ事ではない。
かくして、嗣永家使用人総出での大捜索が開始された。
居室から厨房、物置小屋に至るまで、その勢いたるや髪の毛一本すら見逃さないほどであったが、一向に見つかる気配がない。
かといって攫われた形跡もなく、ほどなくして捜索は暗礁に乗り上げた。一体全体、何処に消えてしまったのだろうか?


ところでそんな様子を、向かいの屋敷から、二人して双眼鏡越しに覗く影があった。
片割れは名を徳永千奈美といい、この屋敷の持ち主、つまり徳永家のご令嬢である。
そしてもう一人、双眼鏡片手に笑っているこの青年こそ、今朝方から嗣永家に騒ぎを巻き起こした張本人、嗣永桃子その人であった。

116 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/07(水) 03:06:50.12 0
この嗣永桃子という青年、決して特別背が高いとか、スタイルが良いとか、そういう訳ではないのだが、
程よく引き締まった体とその端正な顔立ち、カラッとした性格は、他家のお嬢様方の気を引くに十分足るものであった。
もちろん、今隣で双眼鏡を握っている千奈美嬢もその例外ではなく、密かに桃子に思いを寄せる一人である。

さて、ではなぜそんな好青年が今、大変な騒ぎになっている自分の屋敷を見て笑っているのか、
実に不可解な光景であるが、当然、桃子には桃子の道理があって、今こうして双眼鏡を握っているのである。




原因は昨晩に遡る。
聖Berryz学園 ―千葉地方有数の名門校であり、桃子の通う学校でもある― その学園の高等部第二学年の新学期を翌日に控え、
桃子はとある願いを聞き入れてもらおうと、メイド長サキの執務室を訪ねていた。

「サキさんお願い。もう私も16歳なんだから、一人で学園まで通えるって!」桃子がそう言うと、即座にサキがこう返答した。
「桃子様、それはなりません。私ども、ご主人様から、桃子様を必ず毎日学園まで送迎するよう仰せつかっております。」

もうこうやり取りをするのも何度目だろうか。「毎朝歩いて一人で学園に通いたい」 ―たったそれだけの、
16歳にもなる青年の願いとしては、むしろどこか奇妙な響きさえするような願いなのだが、サキの前ではそんな常識は通用しない。
これ以上は無駄だと悟ったかのように、物言いもそこそこに、桃子は渋々と執務室を後にした。
この時サキが、今日に限っては桃子がやけにあっさりと下がったことに気付いていれば、
あるいは翌朝のあの大騒動は防げたのやもしれないが、ご存知の通り、サキが気付くことはなく、かくして事件は起こってしまったのである。

163 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/08(木) 01:55:38.66 0





さて、再び舞台は徳永家屋敷。おや、つい先刻まで、こと近しい様子で肩を並べていた二人の姿が無い。
空っぽの部屋の中には、窓縁に二面ほど置かれた双眼鏡が、ただ朝陽を映すばかりである。
諸賢を盥回しにする様で申し訳ないのだが、此処にいても仕方がないので、渦中の嗣永家へと戻る事にしよう。

来た赤絨毯の廊下を戻り、立派な欄干の階段をくだる。園庭を抜け、門をくぐり…
やや、道の向こう側、嗣永家の表門の傍に、何やら人目を忍ぶ二つの人影。
二つはどうやら男と女。一つは端麗、一つは華麗。
ああ、なんということだろうか。あれは桃子と千奈美嬢だ。
一体全体、何をしでかすつもりなのか、いやはや、見当もつかないが、ともかく、桃子様を止めなくては。
駆け出す。桃子が気付いた。その手に携えるはサキの自転車。瞬間、自転車が走り出す。間に合わない。
そして、サキは叫んだ。

「桃子様おやめください!」

二. 夏と桃

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