まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

767 夏焼雅生誕祭企画@無断転載は禁止 2017/08/25(金) 01:04:54.97 0

「みやー、おたおめ」

不意に桃子が呟いた。
時刻は0時を回っていた。
「おう……もうそんな時間かいな」雅は手牌から目を離さないまま言った。

「そんな時間だよ……!」桃子は小さく震えていた。
「みやがこんな長考タイプだとは思わなかったよ半荘に4時間以上かかるなんて誰が」

「よしっ。リーチ!」
千点棒がなかったので雅は代わりに百点棒を置いた。
「あっ……ああ、そう」桃子は、雅の捨牌に視線を流しながら煮干しを1本摘んで口に咥える。
さっきまでの渋面が嘘のように、雅はごきげんな笑顔を浮かべた。
「やった。みやの誕生日キタ!みんなありがと〜!つぐさん一発頼むわ」「ヤだよ」
「みやハピバ。麻雀終わったらお祝いいろいろ準備してるからさ」対面で佐紀が微笑んだ。
「おめでとー!早くももさんにどっかーんと振り込ませてケーキ食べよう」下家の千奈美はさっさと現物を切った。

果たして、桃子が当たり牌を振った瞬間のときめき。それは何にも例えようのないときめきだった。雅は高らかに「ロン!」と宣言した。
手牌をさらすと、場の空気が凍り付いた。桃子が口を開く。
「ごめんみや、せっかくのお誕生日に言いたくないけどさ……それフリテン……」
「え?何言ってんの……どういうこと」
「あ、うん。ももの切った牌じゃあがれないってこと」佐紀は桃子と視線を絡ませた。
「みやアガリ牌切ってるよ」千奈美の言葉に雅は焦って自分の牌を見る。イヤな汗が止まらない。
「その手だと五索もアガリ牌。みや捨ててる」桃子はそこまで言うと、ほそーくため息をついた。「なんで序盤でそんなド真ん中切った」
佐紀が優しく言った。「いやでも5面待ちは混乱してもしょうがないかな。難しいよね」
「え、待って、待って。じゃあ、みやはどうなるの……」
「3,000点オールじゃない」桃子の言葉に雅は気が遠くなるのを感じた。
「なんで……なんで誕生日なのにみやがみんなに3,000点ずつ払わなきゃいけないの!っていうかもう点棒ないし」
「罰金だからしょーがない。もう借金するしかないね」千奈美がちらりと箱を見てくる。

雅はいっとき言葉を失った。口許が歪む。目の焦点が合わない。

佐紀が急に慌てたようにぱちんと両手を合わせた。
「あのさ、みや誕生日なんだし、今のロンは聞かなかったことにしない?」
佐紀の言葉を受けて桃子が顔を上げる。
「そ、そだね。時間巻き戻そう。みやはフリテンリーチのままツモったらあがってもいいよ」
「いいけどさー2人とも絶対ダマテンでしょ。ちーなんかまだイーシャンテンにも」

「バカにしないでよ!」雅は叫んだ。

「そんな、そんなお情けいらない!払えばいいんでしょ払うし今誰が一番勝ってんのちーか、ちー9,000点貸して」
「みやってば、いいのに」佐紀の語尾は弱くなった。
宥めるように桃子が差し出してきたチーズ鱈を雅が叩くように振り払うと、場はしんと静まり返った。
「ごめん……少し、頭冷やしてくる」雅は立ち上がる。ちょっぴり涙声になっていた。3人はもう何も言わなかった。

外へ出ると雅は空を見上げた。「月が……赤いぜ……」
「みんながいいって言ってるんだから本当にいいんだよ」振り返ると、桃子が後ろに立っていた。
「……ううん、いいの。このチョンボを乗り越えたら、またいっこ大人になれる気がする」
「誕生日だけに」
「誰が上手いこと言えと」
桃子がそっと握らせてきた鮭とばは、何よりの誕生日プレゼント。
このしょっぱさ決して忘れない。オーラスで役満あがってやる。雅は月にそう誓った。

おわり

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