まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

804 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/02/04(土) 15:30:38.19 0

「そんなの聞いてない」

休日の昼、連絡も無しに現れた母親。
両親が新年度から海外転勤のため遠い親戚の子がここに明日越してくる事を告げられた。

「この部屋、決める時に伝えたでしょ」

「記憶にないし、いいとも言ってない」

「承諾してたわよ。それに家賃半額の条件なんだから。いいじゃない、全く知らない子でもないんだし」

部屋一つ空けといてねと手伝う事もなく帰っていった。
専門卒の新社会人には不相応な2SLDK。
数週間前の浮かれた自分を呪いたくなる。
冷静に記憶を探るとうっすらと言われたような気がする。
まだ越したばかりでダンボールに梱包されたままの荷物を寝室と定めていた部屋に放り込んで行く。
とりあえず空にした部屋。
すっかり狂ってしまった部屋のレイアウト。
遅々として片付けは進まないまま、あっという間に一日が終わってしまった。

805 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/02/04(土) 15:31:44.25 0

翌朝、玄関からの物音で目が覚めた。
飛び起きて見ると大型家具を運び入れる引っ越し業者の人間。
こちらに気づき朗らかに挨拶をしてくるのに会釈を返すのがやっとだった。

「おはようございます」

後ろからかけられた声にビクッとする。
振り返ると小柄で地味な女の子。

「挨拶もせず失礼かと思いましたがまだ寝てらっしゃったので勝手に運び込ませてもらってます」

俯いたままボソボソとした話し方で言葉を続けるその子は暗そうという印象しか持てない。
何か言葉を返す間も無く引っ越し業者の人に呼ばれていく。
そう時間もかからず引っ越し業者の人は帰って行った。

とりあえず、お茶を入れリビングの椅子に向かい合って座る。
長い黒髪を二つ結びにし、今時どこに売っているのか聞きたくなるようなダサい黒縁のメガネ。
服装もシンプルと言えば聞こえがいいがはっきり言ってダサい。
顔はずっとうつむき気味でしっかりと見えない。
小さい頃遊んだ事があるらしいが全く記憶に残っていない。
高校生だと聞いていたがとてもそうは見えないし、共通の話題で盛り上がるのも難しそうだった。

806 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/02/04(土) 15:32:52.86 0

「えっと…聞いてるとは思うけど夏焼雅です。今日からよろしくね桃子ちゃん」

「嗣永桃子です。よろしくお願いします」

うつむき気味な頭をペコリと下げた。
こもりがちで聞き取り難い声にいじめられっ子かといらない心配をしてしまう。

「部屋の事なんだけど…」

「すみません、話すのが苦手なのでこれ読んでください。何か不都合があれば言ってくださればまた後でお願いします」

その言葉と同時に一枚の紙が渡された。
そしてそのまま部屋に引っ込んでしまった。
あまりの素早さに呆気にとられる。
手元に残された紙に目を落とす。
可愛らしい文字で丁寧な言葉遣いで書かれた内容は全く可愛くないものだった。

自分の部屋の一室以外は使用しない。
食事は各自自由に。
トイレお風呂は使った後に各自掃除する。
共用するものに関わる事柄以外には気を遣って話し掛ける必要はない。
人を招く時だけは事前連絡を。

要約すれば大体こんなところで、端的にいえば関わりたくないから話し掛けてくるなといったところか。
紙の一番下にはご丁寧にも電話番号とメールアドレス。
できればメールでお願いしますと書き添えられている。
確かに乗り気では無かったが仲良くしようと思っていただけに大人気ないがカチンとくる。
そっちがその気なら誰が気にかけるか。
速攻で了解とだけメールするとありがとうございますとだけすぐに返信がきた。
結局その日は一度も話す事なく過ぎていった。

825 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/02/04(土) 20:59:59.00 0

客入りの少ない平日の昼。
棚の商品を整理しながら考えるのは未だに関わりの薄い同居人の事。
バイトからそのまま店員兼デザイナーとして雇って貰った個人経営の雑貨屋。
慣れた作業に半自動的に手は動く。

「どうしたのみや?」

ここシワ寄ってると眉間に指を当てられた。
スラリと高い身長の相手を見上げる。
創立記念日で休みだからとバイトにきた熊井ちゃん。
今年から高校生になった彼女。
今年受験生の同居人。
思わず脳内で比べてしまう。
同じ高校生とは思えない。
といっても関わりがなさ過ぎてどんな子か判断する事もできずにいる。

「親戚の子とルームシェアしてるんだけど…」

続く言葉が見当たらない。
心配そうに顔を覗き込まれた。

「仲悪いの?」

「それ以前に関わり合いがなさ過ぎて。顔合わせたのも数回程度だし、たまにする物音でいるんだなってぐらい」

もうあの日から一ヶ月が過ぎていた。
玄関にある靴の有無で居るか居ないかわかる程度。
その玄関にある一足のローファー以外の私物を目にした事がない。
お風呂場やトイレ、洗面所の物がごく稀に少し動いているだけでそれ以外のところは立ち入った形跡すらない。
ゴミもどう処理しているのか自分の物以外目にした事がない。
それ程に存在感がない。

「みやは何が気になってるの?」

「それが何かわかんないんだよね」

「何それ」

笑う熊井ちゃんに何だろうねと返す。
入ってきたお客様に話しはそこで途切れた。
何がそんなに気になるのか。
何がわからないのかがわからない。
思考を放棄して目の前の仕事に集中した。

826 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/02/04(土) 21:01:11.22 0

帰宅して目に入るローファー。
朝出かける時にはもうないそれ。
そういえば一度も外出する姿も帰宅する姿も見た事がない事に気付いた。
休日、一日のほとんどをリビングで過ごしていた日も一度も姿を見なかった。
食事はどうにかなるとしてもそれ以外の生理現象はどうしていたのか。
関わり合いたくないとはいえ、あまりにも異常。
徹底的に避けられているのか徹底的に存在感を消しているのか。
最初の時、カチンときて必要以外声をかけるものかと意地になっていたが考える程におかしさに気づく。
もしかして本当に人間関係を構築するのに何らかの問題を抱えていて最初のあれが精一杯の歩み寄りだったのではないか。
そう思うと自分のとった行動が情けなくなる。
メールで少しずつでも距離を縮めていくべきか。
しかし受験生に無駄なストレスも与えるのも気がひける。
悶々と悩む。
答えが出ない。
とりあえず夕食を作りながら答えを出そう。
気づけば一人分には少し多い量が出来上がっていた。
試しに桃子の部屋を軽くノックしてみる。
物音一つしない。
もう一度ノックしてみるもやはり何の反応もない。
寝るにはまだ早い時間。
試しにどこか出かけてる?とメールを送ってみる。
いつもはすぐに返ってくるメール。
食事が終わっても寝る時間になっても返信は来なかった。


【仮眠のつもりがそのまま寝てしまったようです。
何か用事でしたか?】

翌朝返ってきていたメール。
部屋から玄関に行くとやはりもうローファーは無くなっていた。
通っている学校はこのマンションから徒歩で行ける程近い。
早すぎる登校時間。
一度気になりだすと気になって仕方がない。
直接顔を見て一度話すべきかもしれない。

【ゴールデンウィークに何か予定ある?】

目前に迫っている大型連休。
それを口実に何か会話の糸口を掴めるかもしれない。
そんな淡い期待をこめて送信する。
即座に返ってくる返信。

【ゴールデンウィークは友人と受験勉強の合宿に行きます。伝え忘れていて申し訳ありません】

がっかりすると同時に友人がいる事に少し安心する。
やはり少しずつ歩み寄ればどうにかなる。
前向きな気持ちで出勤した。

827 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/02/04(土) 21:02:30.35 0

夏休みまで後数日。
あれから毎日メールするようになったが返ってくるメールも他人行儀なままちっとも距離は縮まらない。
それどころか顔を合わす事すら無くなった。
塾の講習や学校の受験対策の補習とやらでほとんどいない。
まともに受験勉強しなかった身としてはそんなに忙しいものなのかぴんとこない。
夏休みも夏期講習でほとんど家にいないらしい。
顔を見せなさいと言われ久しぶりに帰った実家。
リビングのソファーに寝転がる。

「桃子ちゃんとは上手くいってる?迷惑かけてない?」

思わず言葉に詰まる。
まさか姿すら見てないとは言えない。

「んー?勉強が忙しいみたい」

当たり障りのない事だけを答える。
しかしその答えに少し意外そうな顔の母親。

「あらそうなの?成績優秀でもう附属の大学に進学するの決まってるようなものらしいわよ。生徒会長もしてるみたいだし、真面目な子は違うわね」

あのまともにコミュニケーションを取ろうとしない子が生徒会長。
あり得ない。

「ママ、それ誰から聞いたの?」

「桃子ちゃんから。休みの日たまに遊びに来てくれるのよ。この間も話題になってたケーキ屋さんの…」

その後の声は耳を素通りして行った。
心配していた自分がバカみたいだった。

「帰る」

予想外に低い声が出た。
呼び止める母親の声を無視してマンションに帰った。
単に自分が嫌われていただけだったなんて。
あれからできるだけ桃子が出て来やすいようにと自室にいるようにしていた自分の行動はなんだったのか。
玄関にないローファー。
今日もどこか勉強に出かけているらしい。
リビングに座り買って来た缶チューハイを次々と空けていった。

828 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/02/04(土) 21:03:31.39 0

いつの間にか寝ていたようで眩しい日差しで目を覚ました。
何故か起きると自室のベッドに。
鈍く痛む頭。
リビングに行くとテーブルの上に空きカンは無く代わりに一枚の紙が。

《飲むのは程々になさった方がいいですよ。
今日からしばらく夏期講習で留守にします。》

どうやら片付けをしてくれてもしかしたら部屋に連れて行ってもらったのかもしれない。
嫌われていると判断するのは早すぎたのかもしれない。
視界の片隅にキラリと何かが光った。
テーブルの脚の横。
屈んで拾い上げると切れたチェーンに通った指輪。
自分の物ではないそれは間違いなく桃子の物。
それなのにどこかで見た事がある気がする。
思い出そうにも頭痛が邪魔をする。
ひとまずお礼のメールを送ってみた。
お気になさらずとだけ返ってくる。

「もー意味わかんない」

もやもやする。
オーナーの都合でできた三連休。
明日も休み。
寝すぎたせいでもう夕方。
素早く着替え外に出る。
オーナーの友人のお店。
喫茶店とバーを兼ねているそこで二十歳の誕生日にオーナーに連れられ初めてお酒を飲んだ。
その日、起きたもう一つの出来事。
そのせいでそれ以来一度も足を運ばなかった。
それでも知らないお店で一人で飲むには不安が残る。
約一年ぶりに扉を開く。

「いらっしー」

振り向いた店員。
途切れる高い声。
黒いショートカット。
モノトーンの制服。
頭の中に蘇る、首から下げられた指輪。
カチリとはまった音がした。

「ももっ!」

逃げ出そうとくるりと踵を返した小柄なその店員の腕を捕まえた。

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