まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

393 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/02/28(火) 23:57:05.41 0

好き
その言葉がずっと頭の中をぐるぐると回っていた。
ストンと飲み込むことのできないその答え。
第一、年下の女の子。
今までの恋とは大きく違う。
桃子の事を考えると真っ先に脳裏に浮かぶのは寂しそうな目。
妙に心にひっかかる。
もっと単純にかっこいいとか素敵だとかで心動かされドキドキしたりキュンとしたりしたのならわかりやすいのに。
それでもイライラするのもモヤモヤするのも一つずつ整理していくと確かに好きという理由をつけると一応、納得がいく。
好きという言葉に単純に恋愛の好きを連想した。
でも好きが大きければ友愛でも家族愛でもイライラもモヤモヤもあり得る。
好きの種類がどれなのか。
いずれにせよこんなに心動かされるほど何にそんなに惹かれたのかわからない。
またわからないこと。

「今日は早かったんですね」

桃子の声に驚き、腰を浮かせる。
その反応に桃子も驚いた表情を見せた。
どうするか答えが出る前に会ってしまい戸惑う。
なんとか会話をしたが部屋に戻った時には何を話したのかすらうまく思い出せなかった。

一晩考えて出た結論は至極単純だった。
好きは置いといてもっと積極的に関わろう。
あまりお互いを知らないのだから答えなんて出るわけもない。
朝、リビングに姿を現した桃子に笑顔で声をかけた。
少し怪訝な顔をされたが普通に続く会話。
どこか遠慮していた距離の詰め方。
それをやめていつも通りを心掛けた。
それでも朝に帰ってくる日にはやはりする香水の匂いに気分は落ちた。
無意識に増えていたボディタッチ。
瞬間的に固まる桃子の表情に少し傷ついた。

394 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/02/28(火) 23:58:32.05 0

答えは意外に早く出た。
朝には帰ってくる桃子が帰って来なかった。
仕事中も桃子の事が頭から離れなかった。
帰宅しても部屋には人の気配が無い。
何をしているのかなんて容易く想像がつく。
考えたくもなかった。
それでも脳裏に過るのはホテルに見知らぬ人と入っていく桃子の姿。
堪らなく嫌だった。
早く寝てしまおうとベッドに潜り込んでも頭から離れない。
寂しさや悲しさ、それと形容し難いぐちゃぐちゃした負の感情。
勝手に零れ落ちる涙は止めようとしても一向に止まらない。
制御できない感情の動きに眠れないまま気付けば朝になっていた。
折角の休みなのに何かする気にもなれずリビングで座っているだけ。
感情を持て余したまま時間は過ぎ、桃子が帰宅した。
帰ってきた桃子から香る匂い。
普段纏っている匂いとは違うのに覚えのある香り。
それに胸が締め付けられた。
これは家族愛とか友愛とかそういう穏やかなものではない。

「前、して欲しい事があったらしてくれるって言ってたよね」

気付けば口をついて出た言葉。
ざわつく胸の内を完全に抑える事ができない。

「夜、ちゃんと帰ってきて」

言った後にしまったと思った。
桃子の不可思議そうな表情。
当然、尋ねられる理由。
たった今、自覚したばかりの本当の理由を答える事はさすがにできない。
自分自身がまだ戸惑っているのに。
つっかえながらもそれらしい事を言ってみる。
桃子が納得していないのは一見してわかった。
それでも少しの間の後、了承してくれた。
もしこれ以上、聞かれても答えようがない。
逃げるように自室に戻った。

395 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/02/28(火) 23:59:33.29 0

翌日から本当に夜、帰ってくるようになった桃子。
よく纏っていた香水の香りがすることもなかった。
以前の約束もあってか時間のある時は一緒にリビングですごしてくれた。
他者を感じない二人きりの空間。
それが嬉しくてついベタベタと触れてしまう。
不意に近づくとビクッと離れようと反応する桃子の態度に哀しくなる。
それでもその後は普通に受け入れてくれて落ち込んだ気分はすぐ上昇した。
自覚した恋心は歯止めがきかない。
側にいるとドキドキと高鳴る鼓動。
少しの拒絶で傷つき落ち込む。
些細な事で一喜一憂する。
嫌われてはいないと思う。
それでも告白する勇気はなかった。
あれだけ遊んでいた桃子。
本気で伝えたところで恋人になれる気はしない。
遊び相手の一人になるのは嫌だった。
どうやったら好きになってもらえるんだろうか。
思い返せば自分からここまで好きになる事なんて一度もなかった。
今までは相手から告白されるのを受け入れていただけ。
相手のアプローチの仕方を参考にしようにも男性だったから参考にしようがない。
友人に相談しようにも内容的に言いづらい。
相手は女の子な上に親戚の高校生。
どう反応されるか想像もできない。

「どーすればいいんだろ」

無意識にポツリと漏れた言葉はすぐ近くにいた熊井ちゃんに聞き咎められた。

「ん?何が?」

「どうやったら好きになってもらえるんだろうって」

人がいないせいか興味津々といった感じで食いついてきた。

「みやなら告白すればイケそうじゃん」

「それは多分、無理そうなんだよね」

「えーみやをふるなんてないよ」

真剣に言われても首を振るしかできない。
遊んでたし、どんなにベタベタしたところで変わらない反応。
言うつもりのなかったそれをつい嘆くように言えば少し驚いたような反応。

396 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/01(水) 00:00:53.86 0

「それってこの間、言ってた子?」

「そう」

「そっかー難しいね。でもみやなら大丈夫だよ」

何が大丈夫なのかわからないかけれど自信満々に言い切られて不思議と大丈夫な気分になる。

「熊井ちゃんはどうなの?気になる人とか」

と話を振ると少し難しい顔になった。

「いるけどただの後輩としか思われてないと思う」

人がいない事を良い事に熊井ちゃんの好きな人の話が続いた。
時折、相槌を入れながらアドバイスのようなものをする。
最後は自分はできないくせに無責任にも告白してみなよと言っていた。
よしっと気合いを入れやる気になっている熊井ちゃん。
その姿は青春という感じで微笑ましかった。

翌日、珍しく遅刻ギリギリで現れた熊井ちゃん。
妙に浮かれている姿に理由を尋ねたかったが中々、お客さんが途切れずできなかった。

「何かあったの?」

休憩に入るなり熊井ちゃんに尋ねる。
ぱっと満面の笑みを浮かべる。

「今日、告白したら付き合える事になったの」

あまりの行動の早さに驚いた。
それでも自分の事のように嬉しかった。

「みやのおかげだよーありがとう」

抱きついてきた熊井ちゃんの背中をポンポンと叩く。

「よかったじゃん。熊井ちゃん」

嬉しいと頬を紅潮させている熊井ちゃんはいつも以上に可愛くて。
楽しそうに話すのをニコニコと聞いていた。
自分もわからないなりに頑張ろうと前向きな気持ちになった。

397 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/01(水) 00:01:59.50 0

気のせいか少し柔らかくなった桃子の雰囲気。
常にどこか拒絶しているような緊張感がなくなっていた。
今までは見た事のない見せかけでない穏やかな笑顔。
そうなってからするようになったどこかで嗅いだ事のある香り。
遊び相手からの移り香とは違う香り。
それでも確かに覚えがあるのに思い出せない。
微か過ぎてわからない。

「香水つけるようになったの?」

思い切って尋ねると首を傾げられた。
少し考える素振りをした後に思い付いたのかああと声を漏らした。

「慕ってきてくれる後輩がいるんですけどたぶんその子のですね」

最近よく一緒にいるんですと言いながら目を細める桃子に心がざわつく。

付き合ってるの?

思わず口から出そうになった。
もし肯定されたらという恐怖がその言葉をギリギリで飲み込ませた。
少しずつ変化していく桃子。
決して悪い変化ではないのに歓迎できなかった。
今までのどこか軽薄なところは鳴りを潜めていて。
あの日、飲み込んだ疑問が確信になりつつあった。
日々募る焦燥感。
そんな中、久しぶりに遅くなっても帰ってこない桃子。
最近の変化を考えると遊んでいるとも思えなくて。
さすがに0時を過ぎて心配になる。
玄関に向かうのとドアが開いたのは同時だった。
ほっと安心して抱きついてしまった。
桃子から香ってきた久しぶりの香り。
それはあの時の女性の香りで。
感情を抑えることができなかった。

好き

気付けば言うつもりの無かった言葉がもれていた。
肩を強く押され距離を取られる。
ひどく傷ついたような後悔したような顔はすぐに何か痛みを堪えるような表情になった。

断られる。
そう思ったのと桃子の言葉は同時だった。

「ごめんなさい」

遊びでもいいから

咄嗟に自分の口から出た言葉。
少し前までなら考えられない。
今までは絶望的な気分を齎していた香りが一縷の希望になっていた。
どんな形でもいいから少しの希望が欲しかった。

「ごめんなさい。今、本気で付き合っている子がいるので無理です」

真摯な表情と声音で突き付けられた事実に力が抜けていく。
危惧していた予想は当たっていて。
溢れ出る涙を堪えることができない。
去って行く足音。
追いかけることなどできなかった。

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