636名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/10(日) 05:07:47.920
お盆なだけあって帰省で混み合う車内はそれでも地元に近づくにつれ人の数を減らしていった。
重い荷物を引きずり改札を抜け駅のロータリーに向かう。
軽く見渡しても迎えに来ているはずの親の姿は見当たらない。
無闇に動く気にもなれず鞄からスマホを取り出した。
「みや」
突然、後ろから声を掛けられ手からスマホが滑り落ちる。
嫌な音を立てたそれを慌てて拾い上げるも画面には見事にヒビが入っていた。
買ったばかりなのにと声をかけられたことも忘れ落ち込む。
「ごめん」
思わず漏れたため息に紛れ聞こえて来た謝罪。
名前を呼ばれたのと同じ声。
その聞き覚えのある声に勢いよく振り返ると予想通りの人物がそこに立っていた。
「…もも」
申し訳なさそうな表情の桃子。
ラフな格好に疑問が湧き上がる。
なんでここにいるの?
いつ帰って来たの?
思うだけで言葉に出せず呆然としているとヒョイッとスマホをとられる。
「あーこれダメだ。帰る前にお店に寄ろう」
「ももなんでここいるの?」
ようやく出て来た疑問は見事に桃子の言葉に被った。
キョトンとする桃子。
「えっ?聞いてないの?」
「何が?」
「代わりにみやのお迎えに来たんだけど連絡…ごめん」
壊れたスマホを見て桃子の表情が暗くなる。
637名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/10(日) 05:08:55.050
「とりあえず乗って」
すぐ近くに停めてあった桃子の家の車。
何度も乗った事のあるそれに懐かしくなる。
「それ弁償するからどこのか教えて」
車を発進させてすぐに問いかけられる。
「弁償とかいいよ。勝手に落としただけだし」
弁償するしないが決着しないままショップに。
予想外に高かった見積もり額に半分出してもらう事で決着がついた。
「ところでなんでももが来たの?」
ショップからの帰り道、ようやく疑問をぶつける。
「急遽うちとみやんちでバーベキューしようってことになって。暇なのが私だけだったから」
それだけで終わってしまった会話。
途端になくなる話題に沈黙がおりた。
運転する桃子の横顔をこっそり盗み見る。
沈黙が気まずいのか見ているのがバレているのか少し居心地の悪そうな桃子。
それでも家に着くまでの間、車内には音楽の音だけが響いた。
予定よりも遅くなったせいか既に庭先からはお肉の焼ける匂い。
車の音に気付いたのか走り出て来た幼い甥と姪。
グイグイと手を引かれ庭に行くと桃子とうちの両親だけでなく弟達の一家まで揃っていた。
休憩する間も無く始まったバーベキュー。
近況やとりとめのない話題が止まらない。
話題の中心が自分からそれ子ども達に移った時には随分とお酒が減っていた。
クラっとする感覚にまずいかなと思いつつ立つと足元がフラついた。
疲労のせいなのか少しお酒の回りが早い。
水をと視線を彷徨わしていると桃子に手を引かれた。
638名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/10(日) 05:10:14.750
久しぶりの桃子の部屋。
何年かぶりに入るこの部屋も記憶にある姿とは少し違っていた。
まじまじと見ていると手を引かれベッドまで誘導された。
「少し寝なよ。まだまだ続くだろうし」
水取ってくると階段を降りていく桃子の足音。
子ども達の賑やかな声はドアを閉めても聞こえてくる。
ぼーっとしていたらすぐに戻って来た桃子に水を押し付けるように渡された。
空になったグラスを何をするでもなく見つめていたらスルリと手からグラスを抜き取られた。
「かなり酔ってる?」
机の上にグラスを置きながら問う桃子に首を振って返すとまた沈黙が降りる。
相変わらず仲の良い両親達とは違いどこか少しぎこちない空気が漂う自分達。
「何年ぶりだっけ会うの?」
覚えているくせに何を話していいかわからずそんな事を口にしていた。
どれくらいだったかなと呟く桃子に心が重くなった。
年単位で会わなかったのは今回が初めてなのに。
桃子の中の自分の存在はやはりその程度。
突きつけられたその事実にまだ両親にも言っていない事を口にしていた。
「…結婚しようと思ってて」
「そうなんだ、おめでとう」
唐突にした報告は驚かれもせず処理される。
間髪入れずに返ってきた祝福の言葉に最後の迷いが断ち切られた。
ほんの僅かに期待していた心に幾重にも蓋をする。
座っていたベッドに倒れこむと変わらない桃子の香りに苦しくなって顔を逸らす。
視線の先、ベッドの隅にひっそりと置かれた少し古ぼけたクッション。
見覚えのあるそれはまだ学生の頃に桃子に自分がプレゼントしたもので。
じんわりと涙が滲んでくる。
それを見られたくなくてまた顔を枕に押し付けた。
お盆なだけあって帰省で混み合う車内はそれでも地元に近づくにつれ人の数を減らしていった。
重い荷物を引きずり改札を抜け駅のロータリーに向かう。
軽く見渡しても迎えに来ているはずの親の姿は見当たらない。
無闇に動く気にもなれず鞄からスマホを取り出した。
「みや」
突然、後ろから声を掛けられ手からスマホが滑り落ちる。
嫌な音を立てたそれを慌てて拾い上げるも画面には見事にヒビが入っていた。
買ったばかりなのにと声をかけられたことも忘れ落ち込む。
「ごめん」
思わず漏れたため息に紛れ聞こえて来た謝罪。
名前を呼ばれたのと同じ声。
その聞き覚えのある声に勢いよく振り返ると予想通りの人物がそこに立っていた。
「…もも」
申し訳なさそうな表情の桃子。
ラフな格好に疑問が湧き上がる。
なんでここにいるの?
いつ帰って来たの?
思うだけで言葉に出せず呆然としているとヒョイッとスマホをとられる。
「あーこれダメだ。帰る前にお店に寄ろう」
「ももなんでここいるの?」
ようやく出て来た疑問は見事に桃子の言葉に被った。
キョトンとする桃子。
「えっ?聞いてないの?」
「何が?」
「代わりにみやのお迎えに来たんだけど連絡…ごめん」
壊れたスマホを見て桃子の表情が暗くなる。
637名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/10(日) 05:08:55.050
「とりあえず乗って」
すぐ近くに停めてあった桃子の家の車。
何度も乗った事のあるそれに懐かしくなる。
「それ弁償するからどこのか教えて」
車を発進させてすぐに問いかけられる。
「弁償とかいいよ。勝手に落としただけだし」
弁償するしないが決着しないままショップに。
予想外に高かった見積もり額に半分出してもらう事で決着がついた。
「ところでなんでももが来たの?」
ショップからの帰り道、ようやく疑問をぶつける。
「急遽うちとみやんちでバーベキューしようってことになって。暇なのが私だけだったから」
それだけで終わってしまった会話。
途端になくなる話題に沈黙がおりた。
運転する桃子の横顔をこっそり盗み見る。
沈黙が気まずいのか見ているのがバレているのか少し居心地の悪そうな桃子。
それでも家に着くまでの間、車内には音楽の音だけが響いた。
予定よりも遅くなったせいか既に庭先からはお肉の焼ける匂い。
車の音に気付いたのか走り出て来た幼い甥と姪。
グイグイと手を引かれ庭に行くと桃子とうちの両親だけでなく弟達の一家まで揃っていた。
休憩する間も無く始まったバーベキュー。
近況やとりとめのない話題が止まらない。
話題の中心が自分からそれ子ども達に移った時には随分とお酒が減っていた。
クラっとする感覚にまずいかなと思いつつ立つと足元がフラついた。
疲労のせいなのか少しお酒の回りが早い。
水をと視線を彷徨わしていると桃子に手を引かれた。
638名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/09/10(日) 05:10:14.750
久しぶりの桃子の部屋。
何年かぶりに入るこの部屋も記憶にある姿とは少し違っていた。
まじまじと見ていると手を引かれベッドまで誘導された。
「少し寝なよ。まだまだ続くだろうし」
水取ってくると階段を降りていく桃子の足音。
子ども達の賑やかな声はドアを閉めても聞こえてくる。
ぼーっとしていたらすぐに戻って来た桃子に水を押し付けるように渡された。
空になったグラスを何をするでもなく見つめていたらスルリと手からグラスを抜き取られた。
「かなり酔ってる?」
机の上にグラスを置きながら問う桃子に首を振って返すとまた沈黙が降りる。
相変わらず仲の良い両親達とは違いどこか少しぎこちない空気が漂う自分達。
「何年ぶりだっけ会うの?」
覚えているくせに何を話していいかわからずそんな事を口にしていた。
どれくらいだったかなと呟く桃子に心が重くなった。
年単位で会わなかったのは今回が初めてなのに。
桃子の中の自分の存在はやはりその程度。
突きつけられたその事実にまだ両親にも言っていない事を口にしていた。
「…結婚しようと思ってて」
「そうなんだ、おめでとう」
唐突にした報告は驚かれもせず処理される。
間髪入れずに返ってきた祝福の言葉に最後の迷いが断ち切られた。
ほんの僅かに期待していた心に幾重にも蓋をする。
座っていたベッドに倒れこむと変わらない桃子の香りに苦しくなって顔を逸らす。
視線の先、ベッドの隅にひっそりと置かれた少し古ぼけたクッション。
見覚えのあるそれはまだ学生の頃に桃子に自分がプレゼントしたもので。
じんわりと涙が滲んでくる。
それを見られたくなくてまた顔を枕に押し付けた。
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