まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

90名無し募集中。。。2017/11/18(土) 21:53:50.390
 
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 紅白の終盤からすうすうと可愛い寝息を立てている寝顔を何度も何度も盗み見て、大きくため息をつく。

(……よくもまあ、人の部屋でここまで無防備になれるもんだよね)

 うっすら桃色に染まった頬と目元に影を作る長い睫毛、規則正しく上下する肩の上でさらさら揺れる茶色の髪。
見慣れているはずなのに、今夜の自分はどうもおかしい。
薄く開いた唇からこぼれる寝息まで甘ったるく聞こえて、先刻から何度も手を伸ばしかけては必死に堪えているこっちの気持ちなど、きっと夢の中の彼女は少しも気付いていないだろう。


 いつもと同じくそっけない文面のメールに誘われ、いつものように夏焼家に顔を出した。
 雅の母が腕によりを掛けたご馳走に、雅も一緒に作ったという年越し蕎麦まで食べさせてもらった。
頃合いを見てアパートに帰ることにした桃子を追いかけてきたのは、他でもない夏焼家の可愛い可愛い一人娘だった。

『へへ、お家からシャンパン持ってきちゃいました。モモ先生と一緒に飲みたいなと思って』

 私たちまだ未成年でしょ、と先生らしく咎めたのに、うれしそうにシャンメリーを掲げられて追い返すタイミングを逃し、結局部屋に入れてしまった。
今思えば、それがすべての失敗の始まりだったような気がする。


 小さな炬燵の中に投げ出された足が、向かいに座った桃子の膝に触れる。たったそれだけのことでこっそり息を飲んでしまう自分がもどかしい。
 寝顔なんてこれまでに飽きるほど見ているし、逆に寝込みを襲撃されたこともある。
泣きじゃくる彼女を慰めようとして抱きしめても、何の甘酸っぱい感情も沸かなかった。
 見た目の割に頭の中は子供っぽくて、いつも夢みたいな恋愛が繰り広げられる少女漫画ばかり読んでいる教え子――そう、彼女は教え子なのだ。


 うーん、と小さく唸って顔の向きを変えた雅は、もぐもぐ口を動かしながらふわりと笑った。勝手に緊張しているのはどう考えても自分だけなのが、なんだか悔しい。
「こら、いつまで寝てるの」
「んん……うちょっとなんか言ってくださいよお、それみやが選ん……」
(……何の夢見てるんだか)
 ふっくらした頬をつつくと、長い睫毛がわずかに震えた。
ん、と甘えるような声が洩れた唇に視線を落として、何度となく心の中で繰り返してきた名前を口にする。
「……みや」
 本当は、起きている彼女に向かってそう囁いてみたいのだけれど。

「あれ、ももせんせいだあ」

 舌っ足らずな声に名前を呼ばれ、伸ばしかけていた手を引っ込める。大丈夫、きっと彼女は気付いていないはず。
「除夜の鐘、終わっちゃいました?」
「うん、とっくに」

 冷静を装って残っていたぬるいシャンメリーを飲み干す。瓶を手繰り寄せまだ飲むか訊ねると、大丈夫です、と半分眠っている声と心地良い笑い声が返ってきた。

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