まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

120 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/08(土) 20:04:07.63 0

distance

「会おうねって言いながらなかなか会えなかったよね」
「お互い忙しいからね、いつでも会えるって思いながらなかなか」
「そう。けっこう久し振り、でも……あ、ここ」
「えっ、みや、こんないいとこ住んでんの」
「そんないいとこでもないけど」

エントランスラウンジを通り抜け、奥の自動ドアの手前でまたパネルを操作する雅の後ろで、桃子は周りをきょろきょろと見回す。
「ここのロビーって使うの?」
「座ったことない」
「そうなんだ」
「あ、そこのソファ座ってみたい?」
「いやいいけど」

あれ?と雅は思った。待ち合わせしてから初めて、桃子が少し緊張しているらしいということに気付いた。
なんで緊張するの?
それはあまり嬉しいことではないような気がした。
もう仕事も何も関係なく、ただのプライベートで、お互いフリーな時間で
ちょっと久し振りでも会ってしまえばすぐ、前みたいな馴染んだ雰囲気で過ごせることに
ついさっきまでくすぐったいような喜びを覚えていた。
今日、桃子を招くことに緊張していたのは自分だ。
けれど、桃子にはいつも通りで居て欲しかった。
こちらの緊張を気取られたくはなかったのだ。

中庭を囲む回廊に入ると、桃子は
「ほんとにここに住んでるの?」と言った。

「お部屋は狭いし普通だから」
「いやいや、友達にもいないもん、この年でこんなとこ住んでる人」
「友達って誰」
「大学の」
「あ、そう」
「やーこれ以上は聞かないでおこう」
「ここでそこまで引かれると思わなかったわ」
「引いてない引いてない」
並んで歩く肩口がぶつかって、桃子は「あ、ごめんね」と言った。

121 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/08(土) 20:05:48.25 0

「うわーきれい。やっぱりおしゃれにしてるねえ」
玄関を入ると、桃子はそんなことを言った。雅はスリッパを揃えて出してやる。
「何飲む?」
「うーん、冷たいものがいいな。あ、これ」
桃子が差し出した袋を受け取る。
「なに」
「お菓子」
「こんなのいいのに。ももってこういうことする人だっけ」
「いいじゃん。今日は4のつく日だし」
「それまだやってんだ。いいけど……ありがとう」
「どういたしまして」
戯けたように笑う桃子の顔を見て、雅は変わってないなと思う。そして、時間が変えたものを思う。
毎日一緒に居た時とは違う。もものことはわかると思っていても
会わない時間の中で知らないことばかり、加速度的に増えていく。

雅は桃子から受け取ったクッキーを開け、冷たいミルクティーをテーブルに置いた。
昼下がり、広い窓から入る光が部屋中に回っていて、ゆったりした時間が流れていた。
お互い、軽くとりとめない会話を流す。

「ももはさ、いつ結婚するの」
「え」
「結婚願望強いじゃん。忙しそうにしてるけど相手探してるのかなと思って」
「え?探すものじゃないんじゃないの」
「わかってない。待ってれば降ってくるとでも思ってんの」
「待ってるわけじゃないの。運命の出会いがあるの」
「そしたら結婚するの?」
「そうだよ。みやは結婚するの?」
「今そういう相手いないし、忙しいし」
「ねぇ。ほんといつまでも忙しいよねえ」
「とか言ってると駄目なんだからね」
「うーん、そうかぁ」
「合コンとか行く?」
「行かないよ。いい人いたら紹介してよ」
「あ、ゴメン、ももに合いそうな人ちょっと想像つかないわ」
言いながら、雅は思った。

今のももに合う人って、どんな人なんだろう。

124 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/08(土) 20:09:34.17 0

「いやぁ、久々会って早々こんなガールズトークになるとか、やっぱそういう歳になったんだね」
何やらしみじみと桃子は言い、指先についたクッキーの粉を払った。
「何か話でもあった?」
「ううん」
雅の質問に半ば被せるように返ってきた返事、雅は少しだけ緊張する。

「あの」「あのさ」
二人同時に口にして、一緒に黙り込んだ。

「どーぞみやから」
「あ、いや、なんでもない」
「何よそれ」
「そっちの話していいよ」
「ん?私何か言ったっけ」
「……」
どう返していいのか一瞬見失い、雅はグラスに口をつける。
呷っても氷の音だけで、ほんの僅か紅茶の香りだけが喉に広がった。
「空っぽだよ?」
桃子が笑った。
「入れてくる。ももは……まだ残ってるか」
「うん。大丈夫」

喉が乾いた。冷蔵庫から取り出したアイスティーをたっぷりグラスに注いで、その場で一口飲んだ。
確信する。最初を間違えた。
これまで通りにしなきゃいけないと何故か思い込んでしまっていた。
それから、勝手に距離を感じて、気付けば突き放してしまう。
桃子が今日ここに来た理由。気のせいでなければ、勘違いでなければ。
こんなどうでもいい会話をするための時間じゃない。
もう一口飲んで、振り返ると、桃子がキッチンカウンターの横に立っていた。
探るような視線が絡む。それから、桃子は目を伏せた。

雅はやっと、気持ちのままを言葉にした。
「ずっと、待ってた」

「ほんとに?」
桃子は拗ねたように視線を横に流した。

212 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/09(日) 02:18:37.41 0

ほんとに?そう訊かれると、よくわからなくなる。
ずっと待っていたわけではない。
そんなことは有り得ない。桃子が来るなんて
雅の事を求めて来るなんて有り得ないことだと思っていたから
別に、待っていたわけではないのに

ずっと、待っていたことに気付かされる。
絶対に来ると、どこかで確信していたから、桃子の今の様子を見た瞬間に言葉が滑り出ていた。

「いつ、来るのかなって思ってた」
「そう……だね。ちょっと驚いた」
「何に?」
「何の説明も言い訳もいらないってことに」
「うん。みやも、ちょっとびっくりしてる」
「だよねぇ」

桃子は頷き、それだけ言うと、リビングに戻って行った。

今のは、何だったんだろう。
アイスティーのボトルを冷蔵庫に仕舞いながら、雅は考える。
今の会話を他人が聞いても、そうだとは思わないだろう。

みやが告白して、ももが応えた。

ううん。それは多分もうわかっていたことで
わかっていたと、ただ、確認した。それだけのこと。
こんなにも、あっさりと
有り得ない事が、現実になってしまった。

グラスを手にして、それからまた置いた。
えっと、どういう顔してリビングに戻ればいいんだろう。
何を話せばいい。
急に、グラスに置いたままの雅の手が震え出した。
もう片方の手で手首を抑える。

ねえ、もも、どうするつもり?

213 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/09(日) 02:22:41.56 0

恋愛に対して、普通だと思う。ももだって、そうだと思う。
たとえ妄想だって、相手は男性だと思う。

普通じゃない濃い時間を一緒に過ごしてきた。
想いは深い。
いろんな感情を抱いてきた。共感も、苛立ちも。芽生えた尊敬も。
心から幸せを願える、友情などを越えた想いは
言ったら恋心なんて小さい、そんなもの吹き飛ぶほど、深い。

雅の心の中にずっとあったのは、そんな想いの中でほんの一瞬掠める、気持ちの交差だった。
時折、不意をついて沸き上がった胸の苦しくなるような切なさ。
時折、桃子から感じることのあった一瞬の躊躇い。
けれど、そのことに意識を集中させることなどなかった。
どこかで、2人に要らないものだと思っていたのかもしれない。
きっとこれだって、2人同じように考えていた筈。
引退を聞くまでは。

それを聞いて、胸騒ぎがしたのは
会社のこととか、桃子の行く末のこととかそういった心配のほかに
ほんの小さく、消すことなく心の隅に置いていた
この気持ちの歯止めがなくなるという恐れだったのかもしれない。
現実に、確信を抱いてしまっていた。

引き返せない。ううん。もう引き返さない。

雅は静かに大きく息を吐き、グラスを手にリビングに戻った。
桃子はダイニングの椅子に座り、膝に手を置いて
爪先を揺らしながら窓の外を見ていた。
雅が戻ったことに気付いても、窓の外を見ていた。ゆったりとした穏やかな顔で。

本当、何の説明も要らない。
ここまでは。

「何か、言って欲しい」と雅は言わずにいられなかった。
桃子は少し嬉しそうに、笑みを浮かべて雅の方を見た。
「いまさら?」
その攻撃的な表情に、雅の中で何かが弾けた。

224 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/09(日) 10:14:00.75 0

「ちゃんと、言葉にしないと嫌だから」
雅は心持ち強めにそう言った。拗ねているわけじゃない
それが真っ当だろうとしっかり伝えたかった。
「そうかもしれないね」
それきり、桃子が黙ってしまったので、雅はその場に立ち尽くす。

どうしよう、こっちから動かなければいけないんだろうか。
雅がそう考えた暇に、桃子が椅子から立ち上がる。
動けないままでいる雅の前まで、まっすぐ歩いてきた。
桃子は雅の顔を見上げ、眩しそうに目を細めてから、ゆっくりと言った。

「もう、みやってば、どれだけももの事好きなの?」

雅の全身がカッと熱くなった。
そんな台詞は、これまでだって何度も言われてきた。
照れたように、からかうように、その場をいなすように、困惑を交えながら。
ファンサービスの体を取り、桃子はそれを言うことで、これまでむしろ打ち消してきたのではなかったか。
軽く突き放してきたのではなかったか。

その言葉を、今、こんな風に使うなんて。
雅の顔が一瞬歪んだ。それから、笑うしかなかった。
「何か、文句ある?」
笑いながら、そう言うのが精一杯だった。

「文句なんて、全然ない」
桃子は澄んだ瞳で、雅の顔を見据えたまま、言葉を継いだ。
「それが、支えだった時もあった」
そう言うと、雅の片手を取って、両手で握りしめた。
「みやの愛に助けられたことが何回もあったと思う」

雅は泣きそうになる。

「狡くない?」雅の声は震えた。
「そう……貰うばっかりだったから、返しに来たの」

桃子はそこで俯き、少し口ごもりながら、小さい声で言った。
「みやのことが、好きなんだよ」

231 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/09(日) 11:49:59.24 0

求めていながら、与えられれば一瞬戸惑いが先に立って
雅は小さく息を飲み込んだ。
「そんなこと、言っちゃっていいわけ」
「知らないよそんなの」

桃子は握りしめていた雅の手を放した。それが合図だったかのように
雅は考えるより先に桃子を抱き締めていた。

背中に触れた手で感情のまま抱き寄せ、桃子の髪に指を差し入れた。
桃子はされるまま、雅に体を寄せ、ゆっくりと雅の背中に手を回してくる。
雅は息もできない、苦しさに身を任せた。

初めて、想いを込めて桃子を抱いた。

たった、これだけのことで

これまで積み重ねてきた時間が崩壊する。
仕事に賭けてきた、プライドも、測りながらキープし続けた距離も
言わない事でこれまで大切に守ってきた信頼も。全てが
あっけなく台無しになる。
それはあまりにも嗜虐的な快感だった。

目眩むような思いで、雅はようやく息を吐く。
「すごいね」と桃子は言った。掠れて少し震えた声。
同じ事を考えている、と雅は思った。

「これが、いいのか、わかんないんだけど」
「違うよ、全部、繋がってきて今なんだと思う」
「ほんとに?」
「そう思えたから、今日ここに来た」
桃子の手が優しく、雅の背を撫でる。
今雅の中で起きている、激しい感情のうねりとうらはらに、部屋の中はあまりにも静かで
外から聞こえてきた鳥の囀りはあまりにものどかで

「やっと、みやに会いに来れた」
「うん」
桃子を抱いたまま、雅は窓の方を向いた。眩しい光に目を細めた。

356 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/10(月) 00:38:11.07 0

何か、言葉にしようとすると喉の奥が捲れ上がるようで
雅は何度も躊躇い、口を開きかけては息を吸って、吐いた。
そのうち桃子が笑い出す。揺れる髪が雅の耳もとをくすぐった。
「ちょっと落ち着いて欲しいんだけど」
桃子は宥めるように雅の背中を優しく叩いた。
それから雅の腰に手だけを置いたまま、ゆっくりと体を離す。
小首を傾げるように、間近に雅の顔を見上げた。
「いいよ喋んなくて」
「……もも」

雅は桃子の瞳の色を見る。無防備な目のかたちを縁取る睫毛を
間近に見るほどに立体的な鼻梁を、その下の口許、薄く開いた唇の端が
嬉しそうに持ち上がっているのを見る。
桃子の唇が動いた。
「手に入れた」

雅の全身が固められたように強張った。
桃子が伸び上がる。瞬く間に顔が近づき、ほんの一瞬、唇の先だけが掠めるように触れた。
桃子はすぐにすとん、と踵を下ろすと
雅の体から手を離して、少し後ずさる。

雅は焦るような気持ちで、追うように桃子の手を取り
半ば強引に再び抱き寄せた。
腕の中で少しビクついた体。見下ろすと桃子の顔は少し怯えたように歪んでいた。
構わず、唇を被せた。仰け反った桃子の喉から声が漏れる。
このまま、桃子の虚勢を潰してしまいたいと思った。

唇を押し付けたまま、体重を乗せた。
桃子の両手が雅の背中に回って、しがみついてくる。
じりじりと後ずさった桃子の背中がテーブルの端に押し付けられた瞬間
そのまま上半身を押し倒した。

唇を離す。
桃子は目を潤ませ、眉根を寄せて雅を見上げていた。
「言ってよ、みや」
雅はやっと、言えなかった二文字を口にした。

「好き」

桃子は雅の言葉を吸い込むように目を閉じた。

357 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/10(月) 00:40:52.44 0


雅は、濡れたグラスを手に取ると
すっかり薄まった紅茶と氷の欠片を飲み干した。
桃子は後ろ髪を雑にゴムで一つに結ぶと
「明日会社行くんだっけ?」
と言った。

「そう。イベントの打ち合わせで」
「そういうの懐かしいなあ」
「いつだって顔出したらいいのに。誰かいるんだし」
「うん」
「まあ、来るとは思ってないけどね」
桃子は鼻だけで微かに笑った。
「みんなによろしくね」
「……そうだね」

玄関先で、靴を履くと桃子は振り返った。
「ここでいいよ」
雅は少し鼻白む。
「帰り道わかるの?」
「わかるよそれくらい」
「覚えた?」
「んーたぶん大丈夫」
桃子はバッグを肩にかけ直した。
雅は仕方なく手を伸ばしてロックを開けてやる。
「ありがと」
ドアが開くと、隙間から夜の匂いが流れ込んできた。

雅はゆっくりと息を吸った。
「次、いつ来るの」

「いつでも」
そう言うと、桃子は雅が驚くほど柔らかい顔で微笑んだ。

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