ブログ「日々是千早」もよろしくね!

[SSメモ] 

同じタイトルのブログ版と途中経過がやや異なるバージョンです。
途中の千早視点がない、母の心情が少し違うなどですが、ラストは同じ展開です。

◆1は29スレ617に投下、◆2は30スレ-208にて続編として投下したものです。
 
  • 以下本編-

◆1 

一人暮らしがしたいと千早が言い出したのは、Cランク昇格直後のことである。
家事や学業の負担による影響を考えれば、当然反対したいのだが
決然とした千早の表情をみれば、それが得策ではないこともよく分かる。
彼女のご機嫌を損なわずに打開する適切なプランを考え、そこに思い至った。

「無条件に賛成できんが、千早の意思も尊重したい。親御さんのご意見はどうなんだ?」

予想通り千早は黙って俯く。
離婚後、母親と二人で暮らしているという話はこの前聞いた。
その時の様子から、母娘の関係が上手くいっていないのは推察できた。
つまり独り暮らしはその延長にある話であり、
問題をこじらせれば、影響は彼女のメンタルに及んでしまう。

「まだお母さんとは話、していないんだな」

そう聞くと、無言で頷いてから不貞腐れた顔で俺を小さくにらむ。
家を出たいからあなたが何とかして、とこの幼い歌姫は仰せのわけだ。
独り暮らし云々はともかく、これは千早の母親と話をする絶好の機会である。
本人が明かさない家庭の内情を掴めるかもしれないし、上手くすれば…
いや、今の段階で高望みはするべきでない。
まずは情報を集めること。どうするかはそれ次第である。
俺の第一義が、千早をトップアイドルに仕立てることにあるのを忘れてはいけない。

「分かった。君のお母さんと話をしてみよう」
「……では、お願いします」
ほっとした顔を見せた千早に、俺は母に渡すよう名刺を託けた。
生意気で強情なところのある小娘だが、大切な存在であることに変わりはない。
千早が笑顔でいてくれるに越したことはないのである。



母親から連絡が来たのは翌日のことである。

「千早、この日君は春香たちと地方にいく予定だったな」
「ええ。それが何か?」
「君自身のプライベートな話し合いの場になぜ本人が同席しないのかな?」
「プロデューサーがあの人と話をつけてくれるといったではないですか」
「確かに言った。でも君がいなくていいとはいってない、君の母親なんだぜ」
「母といっても血縁だけの存在。子供をネグレクトするような人と話し合うつもりはありません」

実母に対し容赦の無い言葉を淡々と並べる千早。
その表情と口調に問題の根深さが感じ取れるが、あえて追及はしなかった。
この子は人が思うほど無愛想でも冷たくもない、少しばかり不器用なだけだ。

「分かった。だが、話の結果がどうなっても文句は言うなよ?」
「かまいません。プロデューサーにお任せすれば上手くいくと信じていますから」

勿論きっちり話をまとめる自信はあった。
そして千早の信頼を、できれば公私共々頼りになるパートナーであるという認識を
抱かせたいというのが俺が密かに書く絵ズラなのである。


人と会う場合、ホテルというのは実に便利な場所である。
待ち合わせ、喫茶に食事あるいはアルコール、場合によっては客室。
さすがに今回は喫茶室あたりが妥当だろうが、できればレストランに誘えるような
フレンドリーな会見になってくれれば言うことはない。
そんなことをぼんやり考えながら、俺はロビーのソファーで入口を眺めていた。

あれ、千早?
入口に現れたスーツ姿の細身の女性。
よく見れば似ているわけではないが、身にまとう雰囲気から千早を連想したか。
そのとき携帯が振動で着信を伝えた。通話ボタンを押してロビーを見回したとき
さっきの女性が携帯を耳にあて、こちらを見て目が合った。
それが千早の母親との初対面だった。



「こんな若い方とは思っておらず、先ほどは失礼しました」

初対面の挨拶で狼狽していたのはそういうことか。
やはり先入観など持つものではないと実感する。
千早の言葉だけを聞いていると、冷たい利己的な母親を想像してしまいがちだが
目の前にいるのは、愛する息子を事故で失い、その後8年間家庭不和に苛まれ
その果てに夫と離別し、娘にすら見放されようとしている哀れな女だった。
遠めにはすっきりとみえたスーツ姿も、間近でみれば草臥れた感じは隠せないし
精一杯と思えるメークも、時代遅れな感じがいかんともしがたい。
唯一の救いは、大人びて見える娘とは反対に若く見える童顔であることか。
実年齢はともかく、30前半に見えなくも無い容貌のおかげで、多少やつれた感じが
かえって女の色気を感じさせてくれている。

まずはリラックスしてもらわないと。
緊張を隠せない彼女を観察しながら、俺がそう考えたのは千早の用件のためでもあるが、
彼女を見て抱いた個人的興味からでもあった。
かつてはさぞ美貌だった…いや、今でも十分魅力的な女性のはずである。
それを引き出し見てみたい。その理由が俺自身の欲望であったとしても。

「ええ、多分私の方が若造のようですから、そんなに改まらないでください」
「そうですか。でも……」
「それに敬語はやめてください、もっとフレンドリーにいきましょう。ところでえーと、
本当に母親ですか? お姉さんとかじゃなくて?」
「あら、からかわないでください。そういうノリにはついていけませんから」
「からかうだなんて。千早さんを生んだのは実は10代の頃だったとか」
「まさか。今時の言葉で言えばアラフォーってやつですよ」
「そうですか? では詳しい話は食事でもしながらゆっくりと」
さりげなく彼女の肩に手を回してレストランに誘導する。
体型は千早と似ていても、彼女の体には女らしい柔らかさと熱さがあった。



喫茶室の予定をレストランに変更したのは正解だった。
高層階からの夜景やシャンパンといった陳腐な仕掛けも、彼女を解きほぐすのには十分で
おかげでフレンドリーな雰囲気に持ち込めたのはいいが、彼女に請われるまま披露する
芸能界の裏話を、肝心の話に切り替えるタイミングがつかめない。
だがこの時、俺の目的は別のものに変わっていた。

自分がなぜ千早のような、タイプでもない少女に執着するのか、その理由が目の前にあった。
俺は既に彼女を千早の母親ではなく一人の雌として認識している。


どうしたら千早の話にかこつけて彼女をバーに誘い、アルコールを摂らせられるか。
どうしたら保護者面談であるべき場を、大人の駆け引きを楽しむ場所に変えられるか。
久々の狩りの予感に、俺の気分は騒々しく浮き立っていく。
獲物は世間知らずの元人妻、なら変化球よりも直球勝負だろう。

「そういえば肝心の話がまだでした。時間が大丈夫ならバーにお誘いしても?」
「…そういうお誘いは嬉しいけれど、飲みながらするような話だったかしら?」
「アルコールの力は人の本音を見せてくれるといいますから」
「いやねぇ、別に隠し事なんてないのに」
そうは言っても、俺が差し伸べた手に遠慮がちながら手を重ねてくる彼女。
その手を俺の肘に誘導すると、そのままバーに向かう。



「一人暮らしの話、あの子がいいだしたことなら賛成するつもりよ」
「いいんですか、それで」
「どうして? 他に何か選択肢があるのかしら」
「家を出たいと思う理由が無くなれば、一人暮らしなど望まないかと」
「……確かにそれは理想だけど、もう無理なのよ、そういうのは」
「事情を知らずにいうのもなんですけど、簡単に諦めてしまうことでしょうか」
「もういいの。あの子の望みを叶えてやれるなら、なんだっていいの」
「……分かりました。そのように話をすすめます」
「ねぇ、そんなことより。こういう場所でお酒を飲むなんて独身以来なの。
少しくらい気晴らししたっていいわよね?」
「ええ、もちろん」
「千早のことはあなたに任せます。それがあの子に一番いいとと思うから」
「それは責任を持ってそうさせていただきますよ」
「でも……今夜だけは、お願い、忘れたいのよ私だってつらいことやいやなこと……」

目的や過程がどうあれ、今夜の終着点がどこかお互い分かっていたと思う。
あと必要なのは、彼女の背中を押す力、ただそれだけだろう。
三杯目を干す頃、さして強くなさそうな彼女の肩を受け止め、俺たちは寄り添いあう。

「あまり強くないのなら、そろそろお酒は……」
「まだ大丈夫よ。ちゃんとエスコートしてくれるのでしょう?」
そういってお替りを頼もうとする手を俺はとどめる。
「帰れなくなりますよ?」
「……いいのよ、もう帰る場所なんてどうだって」
「帰さない、という意味だとしたらどうします?」
俺は無言でルームキーをカウンターに置いてみせた。

「……年上をからかうのって、面白い?」
「冗談でこんなことはしません。本気です」

彼女はキーから目をそむけ、立ち上がろうとしてよろける。

「ほら、つかまって。エスコートします」
今度は彼女から手を絡ませてきた。
抱きかかえるようにして彼女を部屋に入れ、ドアが閉まるのももどかしく
俺は彼女を壁に押し付けて唇を重ね合わせる。
だかその薄い唇は震えながら、固く閉ざされ開こうとはしない。
思い浮かぶ千早の口元を振り払いながら、俺は何度も舌でなぞる。
それでも応じてくれない彼女を抱き寄せ、その耳元に口を寄せた。

「僕じゃ、だめなんですか? ならなぜここまで付いてきたんですか」
「……だめ、あなたは千早のものでしょ。私なんかが……こんなことしちゃ」


俯いてしまった彼女の顎に手を添え、顔をあげる。
「今はそういうのは関係ありません。一人の男と一人の女、それじゃだめですか
「……やっぱり駄目。やめましょう、こういうのは…んっ!?」
あとの台詞を唇で塞ぎ止めると、彼女もすぐ瞼を閉じた。
舌で催促するまでもなく、今度は彼女も素直に唇を開き、すぐキスが深くなる。
千早に似た薄い唇を夢中で貪り、華奢な体をしっかり抱きしめた。

千早より少し背が高いが、華奢な分重さは感じないその体を抱き上げると
ベッドに運んで無造作に落とした。
ヒールを脱がせ、俺も上着を脱いでベッドに上がる。

「明かりはつけないで」
手で顔を覆った彼女が、かろうじてそう呟く。
覆いかぶさり、もう一度唇を重ねる。
先ほどよりも積極的に舌が絡まり始める。
荒い呼吸。押し殺した喘ぎ声。
ブラウスのボタンを慌しく外し、そのままブラの中に手を差し込む。
娘より一回りだけ大きい乳房。だがしっとりと汗ばんだ肌が掌に吸い付くようで
柔らかく重みが感じられる乳房を手のひらで包みゆっくりと揉んだ。

「あぁっ……」
ずっと堪えていたらしい女の声を、一旦こぼしてしまうともう止まらない。
ブラを押しあげ、曝け出した乳房を揉み、乳首を指でつまみ、舌で啄ばむ。
吐息と喘ぎに、どこかぎこちなさがあるのは長かった空閨のせいか、
それとも元から経験が少ないためか。
どちらにせよ、やることに変わりは無い。

体型も表情も声も、全てに千早の面影を宿していた。
そして体つきも、恐らく千早が成人したら恐らくこうなるだろうという風に。
千早の母親を抱こうとしている現実より、未来の千早を犯そうとしている錯覚。
それが俺をさらに激しく滾らせる。

「ねっ、待って……さきシャワー浴びさせて」
俺の手がスカートのホックにかかると、不意に慌てた声があがる。
「駄目ですよ」
そのままスカートを脱がせて放り投げると、ショーツに手をかける。
「いやっ……」
押さえようとした手を頭の上でひとまとめに拘束する。
スイッチに手を伸ばし、さらにスタンドを燈すと、途端に部屋が橙色で満たされる。
子供のように手で顔を隠したのを幸い、じっくりとその半裸身を眺めてみれば
ピンク色の洒落たショーツは新品かそれに近いらしく、ブラともおそろい。
つまりはそういうこと、なら遠慮するのは彼女に失礼だろう。
抵抗は言葉だけで、体、特に下半身にもう抵抗の力は残っていない。
ショーツを下ろしてしまうと、足首を掴んで大きく開いてやった。
薄めのヘアーに飾られた彼女のその部分。
開き始めた花弁は充血して紅く、その中はもうすっかり雌の沼地と化してしまっている。

「駄目、見ないで……お願いだから」
「綺麗ですよとても。だからここにもキス、してあげます」
「や、やめて。汚れてるから、シャワーあびてないから、やめて」
力ない抵抗を押さえつけ、足首を掴み拡げるとそのまま口をつけた。

濃厚な女の味だった。
流れ出る愛液は強く粘り、舌に喉に絡みつく。
彼女が恥じるような汚れはなく、かすかな尿臭すらほどよい刺激となって鼻をつく。

「やぁ、だめ、いや、やめてぇ、お願い、だめなの、やぁ、いやぁ……」
制止の声はもう力を失い、ただ惰性だけで続いている。
「やめてもいいですか?」
「だめ、やめないで、もっと……ひさしぶりなの、だからお願い、いっぱい」
ようやく堕ちたか。
俺は彼女の秘部を丁寧に嘗め回しながら服を脱いでいく。

のしかかりあてがうと、彼女は俺の意図を察して薄く目を開ける。
「ねえ、危ない日なの」
「わかっていますよ」

服を脱ぐとき出しておいたパッケージを示してみせる。
それだけで安心したのか、目を閉じた彼女にあてがい腰を前に進める。
先が潜り込もうとしたところで抵抗がそれを拒む。
狭く、硬い。
彼女の眉間に深いしわが刻まれる。
長い空閨のあとだろうから早急にはしない。
緩慢に抜き差ししながら、ようやく整い始めた潤いに男根をなじませる。

慣れ始めた膣口が先端を包み込むと、そのまま滑り込ませる。
今度はもう拒まなかった。
「あっ、ぁあん!」
背中にまわされた彼女の手が爪を立てる。
大きなため息とともに表情が緩み、あとは腰を押すだけで全体が呑み込まれていく。
すべてを収めきったところで一旦動きを止めると、彼女の頬に手をやりキスを浴びせる。
「そろそろ動いて大丈夫ですか?」
「……待って。お願い、しばらくこのままで……」
胎内に迎え入れた異物の感触を味わうよう、ゆるやかに深呼吸を繰り返す彼女。
その吐息に合わせるよう、包まれた男根が軽く締め付けられる。
「痛くはないですか?」
「……馬鹿」
それが俺の冷やかしだと知って、彼女は顔を赤らめながら腕をつねる。

「まだ動いちゃだめですか?」
切羽詰った声を装い、俺はセックスに初心な若者を演じてみせる。

「我慢できないの、君は」
俺が渡した主導権を、彼女はためらいながら使ってみせる。
「早く、教えてください。どうしたらいいか……」
「いいわ、動いても。でもゆっくりよ?」

俺は彼女の目を見つめながらゆるやかにピストンをはじめる。
「どう、女とするのは気持ちいいかしら?」
「はい。すごく……もっと動いても?」
「ええ……いいわっ、あぁ、そう、上手よ、少しはやく……」
そうして抽送をしながら、彼女の感触を存分に味わう。

「ねえ……このこと、絶対に……」
「千早には内緒に、でしょ?」
「そう、あっ、んっ……死んでも内緒よ、んぁっ、はぁあん、言ったら殺すわよ」
「あなたに殺されるならベッドの上で」
「あぁっ、ば、馬鹿なこといわないの……やっ、そこ……あたる」

もう大丈夫かと、俺は膝を立てると彼女の腰を掴み激しい動きを加えていく。
彼女の手が催促するように尻に回され、その腰も妖しくうねりはじめていく。

「あっ、あ、あ、あああ、やぁ、もっと、い、いい、あぁん、いいの……」
長らく遠ざかっていたとしても、体質のせいか愛液は豊富だった。
ペニスを抜き差しするたび、じゅぷじゅぷと溢れた愛液が泡立ちシーツを浸していく。

「あ、ああ、だめ、くる…き、きもちいいの、いく……いきそぉ」
「いいですよ、僕も合わせていきますから」
「おねがい、いっしょに来て、もっと、強く、あああ、そこ、もっと強くぅっ」
「僕もいきそう、行きますね一緒に」
「ええ、きて、いっしょに、いく、いきそう、ああ、いっちゃう、だめぇ、いくぅーー」
「僕も行きます、中に一杯出しますから、受け止めてくださいね、お母さん」
「あああ、あ、え、やぁ、駄目よ、出しちゃ、出来ちゃうから、だめぇぇぇぇ」
「孕んでください、そうしたら家族になれますから」
「駄目、やめぇ……あっ、出さないで、ほんとに、やぁっ、いやぁあああ!」
「……いく!」
快感と抵抗にさいなまれながら、なんとか逃れようともがく腰を強く引き寄せ、
その最奥までペニスを打ち込み、子宮口をこじ開ける勢いで俺は引き金を緩めた。
溜まっていた分射精は長く続き、逃れようとした彼女も途中で抵抗を諦め
快感を貪ることに集中した末、そのままベッドにぐったりと落ちた。


「年上をからかって楽しかった?」
シーツにくるまった彼女は、そういって俺の胸をさっきから強く抓っている。
生で入れたのは最初だけだ。途中で体位を代える隙を見て手早くゴムは装着していた。
もちろん、終わったあとすぐに抜いてそれを彼女に示して見せてのことである。

「もし本当に出していたら?」
「冗談でもそういうこと、言わないの。今度いったら」
「それが本気だとしたら、許してもらえますか?」
「……冗談はやめなさい。それより今何時?」
「もうすぐ11時ですけど。帰るつもりなんですか」
「そうだったわね、今日はあの子……」
「そういうことです。大人の時間はまだまだありますから」
「シャワー、浴びてくるわ」
そういって彼女は立ち上がると散らばった衣類を拾い集め、バスルームに向かう。
その後ろ姿は、千早ほど引き締まってはないが弛みもほとんど感じられない。

薄化粧をしてバスローブ姿で戻ってきた彼女と入れ違いに俺も浴室に入る。
もう一度、今度は恋人同士のようにもっとゆっくり丁寧に愛し合おう。
そう思いながら部屋に戻ったとき、既に彼女の姿は無かった。

テーブルの上に一枚のメモがあった。
千早とそっくりの、丁寧な文字はこうかかれていた。

「今夜のことは全部忘れて。千早のことお願い。大事にしてあげて」


◆2

初対面の相手と会ったその日にベッドを共にしただけでなく
快感のあまりはしたない催促をした上あっけなく絶頂させられた。
長い空閨を経てなお性愛の快楽を求め昂ぶる一方の自分の体が恐ろしくなり
私は辛うじて残った理性の命じるまま、あの部屋から逃げ出したのだが
再び目を覚ました女の本能は誤魔化しようがなかった。
酒の上での過ちと何とかして忘れようとしながら、夜毎あの若い雄を思い出しては
秘所に沈めた指を蠢かせ後悔と愛液にまみれながらあの夜の続きを夢想している。
私にとってセックスは破局しかもたらさない忌まわしい行為のはずなのに。


壊れかけた家庭に止めをさしたのも夫とのセックスが原因だった。
口論で昂ぶらせた感情を強姦のような形で私にぶつけた夫。
けれど砂を噛むような虚しい行為が気持ちを萎えさせるのに最適だと気づいた私たちは、
口論の果て収まりきらなくなった感情をセックスでぶつけあうようになった。
破綻しかけた私たちに残された、唯一の夫婦らしい関わり方。
たとえそれが心の通わない薄ら寒い交わりでも、体温や吐息は感じることができる。
無言で行為に没頭する夫の背中に手を回し、私は喘ぎ声をかみ殺しながら
惨めさに埋もれそうな快感を、懸命に集め味わおうとしている。

終幕は馬鹿馬鹿しいほどあっけないものだった。
ある休日、営みを終えたまま体も拭わずソファーで呆けていた私の姿を
夜遅くまで戻らないはずの娘が凍りついた表情で見つめていた。
そのときあの子がどんな気持ちでいたかなんて考えたくもない。
その日を境に娘は父親に対するのと同様私に話しかけることもなくなった。
諍いにも交わりにも気力を亡くした私たちの関係は途絶え、離婚への秒読みが始まった。


あれが最後だと思っていたのに、またしても私はセックスによる破局を求めているか。
娘を踏みにじることで見離された私が、再び娘を踏みにじろうとしている。
どれだけ私が娘のためという建前を振りかざしたところで、そこには説得力というものは
一切存在しないことを私自身が知っている。
あの日新しい下着を身に着けていたという事実がある限り
酔いを覚ますため部屋についていったという口実がある限り
いや、どれだけ正当な理由があったとしても、彼のペニスに貫かれ悶えた事実は覆らないし
そうなることを心のどこかで期待し、待ち望んでいた事実も隠せない。
そうして考えれば考えるほど、背徳感がもたらす快感はより大きくなる。

私は雌の欲望が命じるまま手をパジャマに差し込み下着をくぐらせる。
湿っているなど生易しいほど花弁の中は熱い沼地と化している。
ならばこの責任を張本人に取らせるのは当然のこと。
携帯を開き、放置していた着信の番号をプッシュする。
屈託のない彼の声を聞きながら、私は指を密やかにうごめかし
性欲という本音を娘のためという建前で覆い隠した会話の末、
ついに私は、あの若い雄に再会を約束させてしまっていた。
一度きりなら過ちで済ませられたとしても、二度目となるとそうはいかない。
娘を守ろうとする母親としての理性が、淫欲に溺れる本能にあっさりと負けて
再び彼に抱かれることは、一体どのような罪になるのだろう?



ロビーで落ち合った私たちは、まっすぐ客室に上がるエレベータに向かう。
千早の為という建前のもと、これから行われる大人の話し合い。
それをテーブルでしようがベッドの上でしようが、最終的に千早のためになるのなら
それはそれで構わないのではないだろうか。
この期に及んでまだそんな言い訳を考えている私の唇を彼はドアが閉まる直前に塞ぎ
私の理性というスイッチをパチンとオフにした。


ほんの少しだけ抗って見せながら、若い彼の情熱的なキスを堪能する。
息継ぎに与えられたわずかな時間、弱々しい声で抗議を口にするのは
それを塞ぐためすぐ次のキスをもらえるからであり、そうしたほうが
大人しく愛撫を受けるだけの女より、彼の加虐心が刺激されるはず。

「いっておきますけど僕は本気ですよ?」
お姫様だっこで喜ぶような年ではないのに、囁かれた言葉に弾む心が止められない。
「駄目よ、前にもいったでしょ。あなたは千早を……んっ、こら、体だけだから」
「……しょうがない。遊びじゃないことを分かってもらいますよ」

ベッドに落とされた私を見ながら、彼が服を脱ぎ捨てていく。
全裸になった彼の中心には、既に逞しいペニスが天を仰いでいる。
それから目が離せない私は、催眠術にかかったように自ら服を脱ぎ始める。
彼のぎらぎらとした目が見守る中、脱いだ下着を放り投げると
生まれたままの姿になり、ベッドの傍らに突っ立った彼の前に膝をついた。
あの夜、私に堕落の烙印を焼き付けた彼のペニス。
手を沿え、透明な液体をにじませた先端に唇を寄せてその味を確かめる。
こんなことをするのが初めてだと、彼は気づいてくれるだろうか?
膨らんだ先端に舌を絡ませてみてから、思い切って喉の奥まで飲み込んだ。
えづきそうになるのを堪え涙を滲ませる私の髪を優しく撫でながら、
それでも彼は口を犯すことをやめようとはしないし、そうされることで私は
男に支配される感覚を味わいながらたっぷりと溢れさせている。
やがて彼は私をベッドに寝かせると、待ち望んでいたものを押し付けてきた。
それが抜き身のままであることを確かめ私は目を閉じる。
彼の本気がそういうことなら、私にも私なりの本気がある。

酔っていた前回と違って、与えられる感覚は鮮明だった。
自分の指で得るのより遥かに大きい快感が押し寄せ、翻弄された私の理性は
あっけなくどこかに見失ってしまう。
そうなるとあとはもう彼のなすがまま、私は喘ぎ、泣きながら愛撫の懇願を止められない。

「ほら我慢しないで。声出してもいいんですよ」
「駄目よ恥ずかしい……お願い、あっ、そんな、だめ、そこ、もっと」
「ほら。感じてるんでしょ? 声と顔で分かりますよ。それに腰だって」
「ち、違うわよ、あぁ……ちがう、もっと、お、奥まで」
彼の慎重で丁寧な愛撫が物足りなくなった腰が無意識に動き始めている。
「じゃあ、こういうのはどうですか」
強引に抱き寄せられたと思えば、体がひっくり返され彼の上にまたがる格好になる。
「ほら、こうして自分の気持ちいい場所、探してください」
仰臥した彼の上で、言われたとおり自分で腰を動かしてみる。
体重をかけているせいか挿入は深く、奥をノックされているのが分かる。
「あっ、あたってる……んっ、いいわ、ここ…、あぁっ!」

夢中で動かすたびに奥を突き上げられ、そのたび達しそうになり遠のきかける意識を
胸への鋭い愛撫が引き戻し、乳房だけでなく尻、脇腹、お腹と縦横に動く彼の手が、
次々と私の快楽を目覚めさせてゆき、そのたびに私も顔を寄せ唇を、舌をねだる。

「そろそろ、いいですか?」
「駄目……まだよ、もっといっぱい」
「そんな、もう我慢が……」
切なそうな顔を苛めてみたくもあったけれど彼の切迫は本当らしい。
「いきますよ、このまま」
彼は起き上がると、つながったまま私の体を持ち上げる。
ベッドの上で胡坐をかいた膝の上に載せられて向かい合わせになると
彼は私の名前を、初めて私の名前を呼びながら抱きしめてくれた。
そうして私は、子宮に勢いよく叩きつけられる精液を感じながら果てた。

$3
愚かな夢を語ろうとする男の唇を指で塞ぎ、その胸に顔をうずめたのは
情事のあとの気だるさと、奥から逆流してくる精液の感触を味わっていたいから。
どれだけたくさん飲み込もうとも私の子宮が決して満たされることがないのを
彼は知らないし教えるつもりもないのだけれど。
それでも彼は私と一緒になることで家庭を築こうとしていて
それが千早のためだと信じているし、私のことも千早を説得できると考えている。

「千早だってきっと分かってくれます」

何度目かの台詞に溜息を抑えながら、生真面目な彼の横顔を盗み見る。
どうして男はこうも愚かな夢を見たがるのか。
返事の代わりに胸を抓ってやる。
それならあなたが千早と家庭を築けばいいのに。

結局その夜は中に2回。それから口にも一度。
初めて口にした精液は私の人生のように苦く後味が悪かった。
喉にからまる精液を唾液で流し込みながら私は改めて決意を固めていた。
だからこそ娘には幸せな未来を渡さなければいけないのだと。
重要なのはその結果であり、過程も手段も二の次である。



ささやかな荷物をワゴン車に積み込んだら、もう引越しはそれでおしまいだった。
よそよそしい顔で別れの挨拶をつげる娘に、一言だけ私の決意を仄めかせておく。
「彼のこと、好きなのでしょ」と。
訝る娘には答えず、去っていく二人の背中を見送る。
好きならその男を放してはだめよ、ずっと一緒にいなければ。

そうして娘が家を出てからも、彼とは娘に関する報告を受け取る名目で連絡を取りあった。
電話やメールでいいといったのはもちろん理由があってのこと。
すぐ彼は耐え切れなくなり、“重要な相談”という言い訳で私をあのホテルに呼び寄せる。
私は彼の望みを知りながら、素知らぬ顔で若く逞しい体を存分に堪能する。
そうして一月が過ぎ二月も半ばの頃、ようやく私の計画は実を結びはじめる。
私と彼の度重なる密会にようやく娘が気づいてくれたのである。
その知らせは実にあの子らしく、私に対する“宣戦布告”という形でもたらされた。

携帯電話が振動したのは彼との交わりを終え、まだ繋がったままでいるときだった。
発信者が千早であることを確認した私は、そのまま通話ボタンを押した。
彼のペニスを咥え込んだ膣が、私の意志とは関係なく最後の一滴まで子種を搾り取ろうと
ゆるやかな蠕動を続けているのを感じながら、一方的にまくしたてる娘の話に耳を傾ける。

「千早でしょ今の電話」
「ええ、宣戦布告だそうよ。あなたあの子に何かしたのでしょ?」
「……別に大したことは」
「責めてないの。元々私がお願いしたことだし。それよりあの子やっぱり処女だったでしょ?」
「キスしただけですよ。それも挨拶みたいなのを」
「あの子にとってはそれでも十分よ。それより私たち……」
「待ってください」
あわてて腰を動かすことで私の最後通告をさえぎろうとする彼。
それがどれだけ真剣であっても、私の目的は変えようがない。

「そろそろ潮時なのよ」

これが最後になるだろうと思えば、私自身にも名残惜しさがあった。
彼のたくましい背中に手を回し、しっかりと抱き寄せた。


「親子揃って頂きますだなんて欲張りすぎ。娘だけにしておきなさい」
「そ、そんな事……僕はあなたと結婚して千早を幸せにしたいだけです」
「前に約束したわよね、あなたの子が出来たらそうしてもいいって」
「ええ、だからいつも……さっきだって」
彼の腰が動くたび淫靡な水音を立てるのは私の愛液だけでなく、
交わるたびに中で受け止めている彼の精液でもある。
子宮を満たした彼の精液の量とタイミングを考えれば、年齢を考慮しても
受精する確率は相当に高かったはずだ。

「気づかなかった? あれだけして何故私が妊娠しなかったのか」
「まさか……ピル?」
「子供がほしいならあの子とつくりなさい……」

ピルを処方してもらったのは彼と会った直後のことだ。
初めて体を交わした最初の夜、彼がきちんとスキンをしてくれたから事なきを得たが
危険日だと知りながら抜き身での挿入を黙認し、途中から雌としての本能がそれを
求めていたのを自覚したのがその理由。

「別れたい訳じゃないのは分かって。あなたがあの子をもらってくれるなら
それでも私たちは家族になれるでしょ?」
「その言葉、信じますよ。本気にしますからね」
「あぁっ、もちろんそうよ、あぁっ……いいわ、そこ…」
「分かりました。千早のことは約束します……」
「ええ…お願い、やぁっ…まって、きついの、駄目、そんな、あっ、ああああっ……」
「だからってあなたが逃げるのは駄目ですよ」
「そんなこと……やっ、私のことはいいから、あっ、抜かないで、続けてお願い」

若い雄と侮っていたわけではないが、彼も彼なりに思い描く理想があり
そこにいるのは千早だけではないということ。
これが最後とばかり獣のように激しく攻め立てられながら私は彼の求める約束に応える。
そして何度も大きな波に翻弄され、数え切れないほど絶頂に押し上げられた果てに
彼はそうすれば強引に妊娠させられるとでもいうように逞しいペニスを子宮口に突きたて、
こじ開けるように強く押し付けると何度も何度もそこに精液を浴びせかけた。



彼が千早をその気にさせたことと、その彼が私の説得に応じてくれたことで
二人を一緒にする私の計画はほぼ成功したといってもいいだろうが
彼が私に求めた約束は三人揃ってが条件だった。
そのためには千早と私が和解しなければならない。
今度こそ娘のために。
私はそう胸に刻んで千早の家に向かった。

「用事って何? 私忙しいのだけれど」
「今日はオフだって聞いたけど。彼とデートの約束でも?」
「プロデューサーのことなら話すことなんてないわ」
「そのプロデューサーのことであなたの勘違いを解いておきたいだけ」
「何が勘違いなのかしら。いまさら誤魔化せるとでも思ったの?」
「誤魔化すつもりなんかないわ。彼と会っていたのは事実だし」
「喧嘩を売りに来たのなら帰って」
「喧嘩じゃないから上がってもいいわね」

しばらくは玄関先でにらみ合った私たちだったが、先に折れたのは娘だった。
今回の面談のためあの男から千早にメールを送ってもらった効力だろうか。
きれいに片付いた、というよりまだ殺風景のままの部屋を見回しながら
通されたリビングに腰を下ろした。

「最初にいっておくけれど、彼を奪うつもりなんてないわよ」
「それを信じろっていうの?」
「私はただ事実を言ってるだけ。彼と何度も会っていたこと、それがどういう意味かは
いくらあなたでも分かるわよね」
「やっぱりそう……で、あの時みたいなことしてたのね……」
「ええ、ゆきずりのセックスを楽しんだわ。相手があなたの知り合いだというだけのね」
「わざわざそんな汚らわしい告白をしにきたのなら、もういいから帰って」
「汚らわしいなんて彼が悲しむわよ。あの人、私に子供を生ませるつもりだったのだから。
そうすれば強制的にでも結婚してあなたの家族を作れるのだって」
「う、噓よ。プロデューサーがそんなことを……」
「事実よ。でも安心しなさいな、私にそんな気は無いから」
「もう止めてよお母さん! そんな話聞きたくない、私から大事なものもう奪わないで!!」
「落ち着きなさい千早。あなたの大切な人を横取りしようなんて思ってないから」
「でも……プロデューサーとお母さんは……」
「私はあの男の体を楽しんだだけだしそれももう終わりにした」
「……そんなこと」
「彼には悪いけど利用させてもらったの、あの人が家庭を作ろうとしたのは貴女ためだから
それなら貴女と作ればいいでしょって話。彼のこと好きなんでしょ? なら頑張りなさい」
「……そんな、だって私、まだ」
「話はこれで終わり。どう、誤解は解けたかしら」
「……お母さん、勝手よ。どうして、そんな風に……自分ばっかり」
「謝ってすむならいくらでもそうするけれど、貴女はそれを望んでいるかしら?」

それまで真っ直ぐ私を見つめていた娘だったが、そのときがっくりとうな垂れると
小さく首を振って否定を示した。

「お邪魔したわね。あとは自分で考えて、やりたいようにやればいいわ」
「……待ってよ、そんなのずるい」
「私のようにだけはならないでね」
「だから待ってよ! お母さん勝手すぎる! 私だって家族が欲しいわよ、ちゃんと昔みたいな
家族がいるの、お母さんはなんで逃げようとするのよ!」
「母親としての義務が果たせなかったから、こうして娘にも捨てられたの。
それより千早、いつか分かってくれると思うけど男女のことを汚らわしいなんていわないでね」
「じゃあどうしたらいいのよ、私一人でどうしろっていうのよ!」
「それは彼と二人で考えなさい。じゃあ帰るわね」

「いや、いやだ、そんなのいや!」
立ち上がった私の背中に娘が飛びついてきた。
「千早、あなた……」
子供のように声をあげてなく千早の体を抱きしめ、長くて綺麗な髪を撫でながら
再び母親として最後に果たす覚悟を決めていた。

「千早、もう一度お母さんと家族を作り直してくれる?」
「うん。お母さんともう一度やり直す」
「そこに彼も入れてあげないと。三人で新しく家庭を築くというのはどう?」
「……お母さん、彼はどうするの」
「あら、もともとあの人はあなたの大切な人なのでしょ?」
「そ、それでいいの?」
「そこで顔を赤らめるなんて、あなたも一人前の女としてみなきゃ駄目ってことなのかしら」
「からかわないでよ! わ、私だってもう結婚できる年齢なのだし……」
「じゃあそれで決まりね」

こうして娘を抱きしめるなんて何年ぶりのことだろうか。
小さく華奢だった娘もいつのまにか大人に近づき、細くて華奢なのは変わりなくとも
女の柔らかさと匂いだけはいつの間にか一人前になっていることを私は知った。


帰らないでと袖を掴んで離さない娘の願いを容れたのはいいのだけれど
流石にシングルベッドに二人で寝るのは少々窮屈だった。
それでも娘はお構いなく予備らしいジャージ姿で布団に潜り込んでくる。

「そんなにくっついて子供みたいよ、千早」
「いいじゃない私子供だもん。だからお母さんも母親らしくして欲しいのだけれど」
「はいはい、分かったわ。これでいいのでしょ?」

胸に埋めた顔を甘えたようにすりつける娘の髪をゆるやかに撫でさすってやる。
「お母さんにはいろいろと教えてもらわなきゃいけないことがあるわ」
「何を教えればいいのよ。ほんとあなたはいつまでも子供ね」
「彼にキスされたときにも言われたわ、大人の考え方ができるようになったら
もっと真剣に私のことを考えるって」
「あなたもそろそろ18だものね。いいじゃない、体から先に大人になってしまえば」
「それは……その、セ…セッ……」
「セックス。あなたまだ処女なら彼と既成事実作ればいいじゃない」
「そ、そうだけど……それはその……」
「不安なのはわかるけど大丈夫、男と女ならだれでもしていることよ」
「でもどうすればいいとか分からないし、怖いんだもの」
「大丈夫、全部お母さんが教えてあげるのだから」

母親が娘の初体験の手ほどきに立ち会うことの妥当性はあえて考えない。
娘の相手をさせる男と私が体を通じているのだ。
世間ではそれを親子丼といって揶揄するかもしれないけれど
それでも親子の絆が回復するのであれば
手段や対面などどうでもいいことかもしれない。


◇ 

「こういう形で会わないと決めたのは確かあなたでしたよね」
「ふふっ、ごめんなさいね。女というのはしょうがないものなの」
「僕は嬉しい限りですけど」

千早を通じてスケジュールを確認し、その夜一切の段取りを千早と打ち合わせして
予約しておいたホテルに彼を迎え入れた。
口では軽い皮肉をいいながらも、彼の表情と体がその気持ちを如実に表している。
騙すようで気が咎めなくもないけれど、どうせ私たち三人はこれからしっかりと
結びついて家族になろうとしているのだから、あまり気にしないほうがいいのかしら。

一緒にシャワーを浴び、バスローブを羽織っただけでベッドに移る。
クローゼットの中では愛娘が息を潜め、今から始まる男女の営みを待っている。
以前彼女に見せたのは、事を終えた直後の女の素顔。
今から見せるのは男を受け入れたときの女の本性だから、
母親であることは頭から捨て最初の奉仕から全力を尽くす。
見ていなさい千早、これが女であるということだから。
私はベッドに寝かせた彼の上に跨ると、クローゼットに向かって合図を送った。

「ち、千早!?」
「ええ、そうよ。千早、よく見ていなさい」
慌てる男にかまわず、私は彼の股間に顔を埋めて既に反応を見せ始めている
半勃ちの陰茎を口に含んで見せる。
「ちょ、ちょっと待って、これはどういうことですか」
「あなたが希望してくれた通り三人で仲良くするのよ。少し形は違うけれど」
そういってベッドに千早を呼び寄せる。


「さっきのは見ていたわね。早速だけどあなたもやってみる?」
「待ってください、いきなりそんなことを千早にさせる気ですか?」
「キスは済ませたって聞いていたからいいじゃないの?」
「そうじゃなくて、こんなのって変です、千早やめなさい!」

娘がためらったのは彼の言葉に対してではなく、目の前に頭をもたげている
男性器が思っていた以上に大きく醜悪な形状だったからであることが分かる。
それでも千早は一つ深呼吸をしただけで、私がしたように顔をそこに伏せて
私の唾液で濡れ光る逞しい亀頭部分をそっくり口に含んでみせた。
私に目線を送る彼女に頷いてみせながら、ゆっくり動かしなさいと伝えてあげる。

「うっ、千早ぁっ、やめろ、あっ、ううっ……」
「そう、上手よ千早。彼も喜んでくれているでしょ?」
そういって頭を撫でてやると、娘は笑顔を見せてより大きく口を動かし始める。
無邪気に、そして懸命に舐めしゃぶる娘の口元から涎が垂れ落ちて
それが陰茎にそって流れるのを見ていると、ただ眺めているのが惜しくなった。
空いている陰茎の下部に舌を這わせ、睾丸も含めて舐め始める。
それを見て娘も舌を伸ばして舐めることを覚え、時折彼女の舌と触れ合うと
お互い顔を見合わせ笑みを交わす。

その頃には彼も抵抗をやめ、自分に与えられる母娘による口淫の光景を
呆けたように眺めているだけだった。
やがて陰茎が小さく震え始め、睾丸が何度かぴくぴくと動きを見せる。
そろそろかしら? 
初めてでいきなり受け止めさせるのはどうかと思ったけれど
そうそう何度も娘のセックスに付き合うわけにもいかないから
今夜できることはすべて教えておいてあげよう。
そう考えた私は口を離し、娘の耳元にこれから起こることとすべき事を伝える。
陰茎を含んだまま頷いた千早は、両手でそれを捧げるようもって顔を大きく上下させ始める。

「千早、だめだ、出る、だすぞっ……」
直後彼の陰茎が大きく爆ぜて娘の口内に注ぎ込んだのが分かった。
射精はかなり大量だったらしく、目を白黒させている娘の背中をさすってやる。

「千早、それが彼の精液よ。こぼさずに全部飲み干しなさい」
「…………!?」
「無理なら手に出しなさい。私がいただくから」
直後千早は大きく喉を上下させ、口に溜まった精液を懸命に飲み下していく。
「苦くて喉にひっかかるでしょ? 洗面にいってうがいしてきなさい」
そういって娘を送り出すと、横たわって虚脱している彼の陰茎を口に入れ
残った白い雫を吸い出してから陰茎全体を舐め上げてきれいにする。
「今からが本番なのよ、まだ大丈夫かしら?」
「本気なんですね、あなたは」
「そうよ。前からいっていた通りにね」
「じゃあもう遠慮はしませんよ、最後まで」

戻ってきた千早をベッドにあげると、代わりに私はベッドから降りる。

「いい、千早。あとは彼のいうとおりにすればいいのだから」
「お母さんはいてくれないの?」
「私がいないと不安?まだ怖い?」
「……放っておかれるがいやなだけ」
「分かったわ。あなたもそれでいいわよね」

部屋の明かりを絞り、椅子をベッドサイドにおいてそこに腰を下ろす。
「千早、ここでちゃんと見ていてあげるから心配しないで」


ベッドの上に座って向き合ったままの二人。
やがて彼が手を伸ばして千早の肩を抱き寄せると躊躇いがちにキスを交わす。
おとなしいキスをただ受け止めるだけの娘が、おずおずと彼の背中に手を回し
キスが深くなるごとにその手はしっかりと男の体を受け止めていく。
唇を重ねたまま彼は千早を優しく押し倒すと、唇を首筋にずらしながら愛撫が始まる。

「……んっ、ぁっ……」

初めての愛撫を受け、遠慮がちながら女としての反応を見せ始める娘を愛しく思う。
彼も最初は私に気兼ねがあったのかもしれないけれど、千早の肌を開いていくたび
そして娘の初々しい喘ぎを聞くたび、雄としての本領を発揮し始めていく。
やがて娘の着ていたパジャマが剥ぎ取られ、この日のために用意してあげた
大人っぽいデザインのインナーも取りされれ、生まれたままの姿になった娘。
唇から始まったキスはほぼその全身に及び、いまだその洗礼を受けていないのは
ベッドにつけている背中と、しっかり閉じ合わせた足の付け根にあるその場所だけ。
そして彼の手がついにそこにかかる。

力んで抵抗する力を、手馴れた様子の愛撫でそぎ落としていきながら
ついにその場所が開かれる。

「やぁ、恥ずかしい……だめ」
両手で顔を押さえた娘にかまわず若い雄はその体をのしかからせる。
腰の動きからその目論見を見ながら、娘の破瓜の瞬間を待つ。

「やぁ、やっぱり怖い、やだ、お母さん……怖いの、あっ、やぁあ、痛い!」
恐らくはまだ彼の先端を宛がわれただけだろうが
娘のおびえた視線を見かねて私は立ち上がってしまった。

「いい、千早。よく見ていなさい。怖いことなんてないのだから」
娘と場所を変わり、仰向けになって足を広げる。
まだ潤いは十分ではないけれど、すぐに満ち溢れるから大丈夫だろう。
「来て……」

先走りを滴らせている彼の亀頭がゆっくりこすりつけられ、そのまま何度か
上下に動かされるにつれ、私の花弁がゆるやかに開かれるのが分かる。
彼の陰茎も動くたびに徐々に奥に向かって沈み始め、膣口を捕らえた瞬間
ずぶりと中に挿入を受ける。
「あぁっ…いいわ」
「お母さん、痛くはないの?」
「大丈夫……気持ちいいだけよ、あっ、そう…そこ……」
彼も心得たもので、ことさらゆっくり、前後に腰を振っておおげさに
抜き差しを千早に見せ付ける。
「いい、千早。女のここは男のひとのを受け入れるようにできているの。
初めてのときは少し痛みがあるだろうけど、それだけは我慢しないさいね」
「……うん」
「ここはね、ペニスよりももっと大きい赤ん坊を産むだけの余裕があるの。
だから大丈夫よ、力を抜いていれば」
「……わかった、お母さん」
「じゃあ、今度こそあなたの番よ」
「ね、お母さんにそばにいてほしい」
「まあ……本当にあなたって子供みたいね」

それでも、そうしてあげることで不安が払拭できるのであればと
私は千早の後ろに座って、その体全体を抱きしめてあげる。
「少しくらい痛がってもやめちゃだめよ」
「いいのかなぁ」
「わ、私なら大丈夫ですからお願いします、プロデューサー」

彼はもう一度娘の足を開くとその間に腰を進める。
そして手で支えた陰茎を娘の秘部にあてがい、馴染ませるようこすり付ける。
そうしながらごくごく細かい動きを加えてゆっくりと娘の処女地に沈めていく。

「……んっ、つっ、くぅ……」
やはり痛みがあり、食いしばった歯の隙間から声を漏らすたび
私は抱きかかえた娘の体をさすり、耳元で力をぬくよう囁きつづける。
「ゆっくり息を吸って。そう、いいわ。今度はゆっくり吐いて」
そうして長い時間をかけながら、それでも確実に彼の陰茎は娘の処女を侵してゆく。
およそ半分ほど進んだあたりで娘の目から涙が零れ落ちる。
「大丈夫よ、千早。あと少しだからね」
「……うん、だ、だいじょう…ぶ、んっ……、あぁっ!!」

もう奥まで入れて大丈夫と判断したのか、彼は大きく腰を前に進める。
「千早、全部はいったぞ。大丈夫か、痛い?」
「……うん、痛い、けど…大丈夫」
「しばらく動かさないであげて。千早、ほら彼をちゃんと見てあげて」
「あぁ、プロデューサー……私、これで、やっと……やっとあなたのものですよね?」
「そうだ千早。お前はもう俺のものだからな」
「おめでとう千早。よかったわね」
「うん、お母さん……わたし、私……」
「じゃああとは彼と最後まで、二人でするのよ」

ベッドに二人を残し、わたしは湯を張った浴槽に疲れた体を沈めた。
役割を果たし終えた達成感と、それからいくばくかの寂寥感。
それがわたしの中からすべて消えたときこそ
わたしの母親としての役割が終わるときなのだから。


◇ エピローグ

「服を着ていればあまり目立たないわね。もう8ヶ月だというのに」
「お母さんもこんな風だったの?」
「ええ、まあそうね。でもあなた、お腹にいるときはすごい暴れん坊だったのよ」
「……そんなの知らない」

高校を出て2年後、娘は予定通りあの男と結婚した。
もちろん妊娠したのが理由ではなく、計画的な出産である。
そして私は新婚夫婦の隣の部屋に住み、必要とされるときには
すぐ娘達の部屋に駆けつける。
体調が悪いとき、料理の手ほどき、そして夜のひととき。
もうすぐそこに赤ん坊の世話が加わることになるが、それが今の私にとって
何よりの楽しみである。
娘の妊娠を知ったときには、ふと自分の息子となったあの若い雄の子種を
受け止めたいとも思ったもの。
けれど、ようやく築くことのできた幸福な家族を維持するためには
それはあってはならないこと。

一度は壊し、諦めた家庭。
今度こそ大切に守っていかなければならない。
世間では決して認められない関係であっても
それが私たち親子にとって幸せであるなら
私にとっては命にも等しい価値がそこにあるのだと思う。


おしまい

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