「DRAG ON DRAGOON エロパロスレ(暫定"キャビア総合スレ")」の保管庫であり、編集権限は無しです。

青々とした芝生の中にぽつりと黒い点が見える。
が、それはよくよく目を凝らしてみると人間の姿であることが認識できた。

封印学園。その敷地内の中の一角であるこの芝生広場は休み時間にもなれば学生の憩いの場だが、その主役の学生は今授業の真っ只中の時間である。
校舎からは学生たちが真剣に授業を受けているのか、はたまた舟を漕いでいる最中なのかは知らないが、サッカーの試合をしている運動場のように騒がしい声はしない。
家庭科室からは調理実習でもしているのか、腹の虫を騒がせるには十分な良い匂いが換気扇を通して漂ってくる。
そういえば、この次の時間は昼休みか。…今日は弁当を忘れてきたな。買いに行くもの億劫だし、夜まで我慢するか。
そんなことを考えながら、彼―カイムは一度目を開いて太陽に目が眩み、また目を閉じた。
眼光は異様に鋭く、気の弱い者なら目を合わせただけですくみ上がってしまう風貌だろうが、正真正銘この学園の数学教師である。
学園内にはごく一部を除いて出入りする一般人は殆どおらず、彼一人しかいない今はとても静かである。加えて今日は雲ひとつない晴天に恵まれ、
陽光が照らす大地はぽかぽかと暖かく、丁度良い昼寝場所ともなっていた。暖かさを通り越して汗がうっすらとにじみ出る暑さを感じるが、
それを相殺してくれる涼しい風がさやさやと側の樹木の青葉を揺らし、紋白蝶がのどかに舞っている。
そんな気候に包まれているうちに、やがて彼の意識は夢うつつの中へと流れ込んでいく。
その時、乱暴に芝生を踏みしめる音がカイムの耳に届いた。がさがさと乾いた音がいやに耳に残る。
足音はこちらに近づいて来るようだ。気配を隠そうともしない。
やがて、彼の頭の側で止まった。細身の影が顔に覆いかぶさる。
―誰だ。
そう思って瞼をこじ開けたその目の前に、ぺちぺちと細長い何かが伸びて彼の額を叩いた。
「何をこんな所で暢気に昼寝をしておる。そこの職務怠慢教師」
側にしゃがんだその影の主は、彼がよく見知ったものであった。思わずカイムの顔がほころぶ。
豊かな胸、きらきら輝く金色の髪に―真紅の竜の仮面を被った女。
―何だ、アンヘルか。
「何だとは何だ、このうつけ」
ふん、と鼻を鳴らしながらアンヘルは彼を見下ろしている。
カイムは額を叩いていたもの―アンヘルの持っていた割り箸を掴むと、ゆっくりと上体を起こした。

―また電子レンジを使いたいのか?
「いや、今日はカップラーメンを作った」
見ると、彼女の手にはコンビニ袋が握られていて、中からは醤油風味であろうインスタントのカップ麺が蓋越しに湯気を漂わせている。
思わずカイムの胃が自己主張を始めてしまう。その音を掻き消すかのように校舎から予鈴が鳴った。昼休みの合図だ。
―電気ポッドの使い方を覚えたのか。
「あんな得体の知れない機械をどうやって使えと言うのだ。運動部の部室棟にあった薬缶を拝借して火を熾した」
―……「仕事」はいいのか。
「仕事は一旦休憩だ。それに、たまにはこんな場所での食事もいいだろう」
彼女―アンヘルは何の理由あってか、普段は学園の隣にあるビルで双眼鏡片手に校内を監視している姿がたびたび目撃されている、校内では不思議な人と囁かれている人間の一人だ。
つまりは学園からしてみれば部外者なのだが、時折昼食のコンビニ弁当を持って、顔見知りであるカイムに暖めさせるために学園内を訪ねて来る。
んな理由で彼と一緒にいる姿を校内でよく目撃されているためか、学生(特に女子)の間でそれなりの男女の関係があるのではと噂をされていた。
というか、現に本人たちに頻繁に問い質されている。
(…何が「先生の元婚約者って本当ですか」だ。「何処までした仲まで行ったんですか」だの、何だって子供は人のそんな事を知りたがるんだ)
どうやらアンヘルがその手の質問をされた時に、「あ奴のことか?我とは「ケイヤクシャ」の絆で結ばれておる。人間が色恋などとほざく浅はかなものではない」
と答えたことで妙な解釈を受けてしまったのが原因のようだ。
「発情期の人間の若造なんぞ、常に考えていることはたかが知れておる。なに、人の噂も七十五日だ」
それを別段と気にした風でもなく、アンヘルはカイムの隣に腰を下ろす。暢気なものだ。
―その元凶がいる限り「噂」は消えないと俺は思うんだがな。
パキリ、と小気味の良い音と立てて隣で割り箸を割る音がする。
昼飯を取れない人間の目の前で鼻歌交じりに昼食を取ろうとする姿を見ていると、無性に腹が立ってくるのは気のせいだろうか。
それが顔に表れてしまったのだろうか、アンヘルがこちらを見ているのに気がつく。
―…何だ。
「お主、そういえば昼餉は取ったのか?」
―まだだ。…うっかり買い忘れていた。
どうせ彼女の事だろうから一笑されて終わりだろう。そう思っていると、
「…はん。愚かだな」
予想通りのことを言いながら彼女は、割り箸の片方をこちらに差し出した。
―…?何のつもりだ。
「分けてやろう」
何を、とは聞くまでもない。目の前にあるカップラーメンの中身のことだ。
―別にいい。後で購買でパンでも買ってくる。いつもの事だから混んでいるだろうが。
「あの激戦区を潜る気か?今から行ってもとっくに売り切れておるだろうな」
―…教鞭を執る者の権限で殺してでも奪い取る。
「物騒なことを言うな、そこの教師」
―……お前の食べる分が減るだろう。俺はそんなに腹は減っていない。
「…まったく。強情な奴め」
ぬっ、とカイムの前にラーメンが差し出される。
「夜まで腹が持つまい?先程から腹を鳴らしているのは何処のどいつだ」
―…………。
腹の音は聞こえてしまっていたらしい。
こうも強く押し出されては断る気にもなれない。渋々ながらも、一本の箸で麺を掬い取って食べる。
玉子風味の麺に絡みつく鶏がらの汁の味がとても後を引く。空きっ腹に入る食事はこうも美味いと感じるものか。
「まあ、確かにこうしていれば、それなりの仲とも解釈されるのも仕方がないな」
―黙れ。
何故か勝ち誇ったような顔でこちらを見るアンヘルを横目に、なんだか幸せな気分を感じたのは食欲を満たしたせいだけではないような気がした。



同時刻。
芝生広場から離れた、しかしその光景がはっきりと見ることが出来る教室の窓際。
「…青春っていいなあ…」
「何を言っているの!いい大人が校内でいちゃつくなんて…不埒にも程があるわ!」
「全くです。あんな男、万死に値します。と言うか今すぐにでも処刑すべきです」
「………」
「?…どうしたのノウェ。何か言いたいことがあるならはっきり言って下さいな」
「…な…なあ…マナ…俺今日弁当忘れちゃってさ…よかったら君のを分けてくれn」

すぱぱーん!!
「ちょっ、エリス!何でお前がひっぱたくんだよ!!」
「黙れ!!」

終わり。

このページへのコメント

ほのぼのと幸せそうな王子とアンヘルたんが見られて幸せ(*´∇`*)

0
Posted by 冬 2011年04月30日(土) 08:39:10 返信

う〜ん、ほのぼの(笑)

0
Posted by S.K 2011年04月23日(土) 21:53:21 返信

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