最終更新: dragons_roar_for_me 2009年08月23日(日) 09:00:26履歴
旅の途中で立ち寄った小さな村。
空を見上げると冬の気配が近いのが分かる。
(男と旅に出てこの空の色を見るのは何回目だろう…)
もう逃げる気力はとうに失せていた。
男の方もそれを分かっているのか、時々こうしてマナの手を離して調達に行く。
目の届く距離に置いては行くが。
視線を男の背中に戻す。応対してる女が色目を使っているのが分かる。
マナはいつからか、不愉快に思い始めていた。
「お嬢ちゃん、ひとり?」
不意に背後から声を掛けられた。
振り向くと、でっぷりと太った行商らしき男が立っている。
「何してるの?こんなとこでしゃがんでたら寒いよ?」
「…」
無言で頷く。
「おじさん、これから食事に行くんだけど一緒に暖かいものでもどうかな?」
ちらりと男の背中を見るが相変わらずこちらを振り向く様子は無い。
(いなくなったらどうするだろう?心配、するかな?)
「いいよ」
「じゃ、行こう」
太った男がニヤリと笑ったのをマナは見逃した
マナと太った男は村外れの食堂へとやって来た。店の主人とは顔見知りらしく、奥の個室へと通された。
(おいしい)
久し振りにまともな食事にありついた気がする。
「おいしいかい?」
「うん、おじさん優しいね」
無邪気な笑顔で答える。
「そう、おじさんねぇ、優しいんだよ」
太った男の右手がマナの腰を抱き寄せる。
「…何するの?」
それには答えず左手で太股に触れると、そのまま手は上へと向かう。
「やだっ!」
その感触に身を固くする。
「今さらそれは無いだろぅ?ちゃんと優しくしてあげるからね」
押し倒され荒々しく上着を脱がされる。
マナのふくらみかけの胸をまさぐる。
「やだ!やだ!離して!」
「大声出してもムダムダ。ここの人達はねぇ、みんなおじさんの仲間だから」
ニヤリとおぞしく笑う
あの男…カイムは絶対助けになんか来ない。
隙を見せたおまえが悪い、とでも思うに違いない。
それでも…
「助けて…!」
そう叫ばずにいられなかった。
扉の外で誰かの断末魔が聞こえた。
「何だ?」
扉を勢い良く蹴り倒してカイムが入って来る。
手にしている剣からは血が滴り落ちていた。
(来て、くれた…)
「な、何だおまえ」
無言で近付いてゆく。
マナは膝を抱える様にうずくまっている。
剣の振り落とされる音
肉と骨の砕ける音
きっと物凄く怒っている…そう思うと怖くて目を開けられなかった。
ふと、身体が浮く。
「?」
目を開けるとすぐ近くにカイムの顔があった。
抱きかかえられているのだと気が付いた。
(こんな近くで顔を見たのは初めてかも知れない…)
カイムが視線をマナに落とす。
とっさに目をそらし顔を胸に埋めた。
「…お願いです…一度でいいから、やさしくして下さい…」
小さな声でつぶやく。
カイムの足が止まる。
「…」
何か言いたげな表情でマナの顔を覗きこんで来る。
そして
マナの額に、頬に、唇にキスをした。
その夜ふたりは初めて同じベットで眠った。
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