「DRAG ON DRAGOON エロパロスレ(暫定"キャビア総合スレ")」の保管庫であり、編集権限は無しです。

青い子猫のおはなし

それぞれの思いを胸に秘め、一行は神水の直轄区を後にした。
マナの疲弊が特に酷かった。
それは肉体的なものより、精神的のほうが酷かったが。
とりあえずはどこかの街で休まなければ、到底これから旅を続けることは無理だと思われた。
そしてある宿でマナが封印騎士団を抜け出した男の噂を耳にすることになる。

レグナの翼は錆の街を目指し、羽ばたき続けている。
子猫はマナの足の間に腰を降ろし、丸くなって寝ていた。
ごろごろ。
子猫の喉がなる。
マナはそっと撫でてやる。
子猫は目を開けずに、喉をまた鳴らした。
そして錆の街上空でレグナが言った。
「女、小僧を頼んだぞ。儂はこの前受けた傷が治りきっておらん。悪いが林で休ませてもらうぞ」
その後マナと子猫を降ろすと、レグナは颯爽と林の方へと飛び去った。


錆の街。
本当に寂れていた。
あたりからは強烈な酒の臭いと、血の臭いが漂ってくる。
マナはその臭いを嗅いでしまい、顔をしかめた。
時折叫び声や、悲鳴が聞えてくる。
しかし誰ともすれ違わないのだ。
まるで別世界に迷い込んだような錯覚さえ、マナは覚えていた。
青い子猫はマナの肩に乗り、辺りを見回している。
子猫も不穏な空気を読み取ってか、目を細めてあたりを警戒していた。
しばらく行くと枯れた噴水のある広場に出た。
水はもう枯渇しているのか、噴水から吹き上がる水はなく、泥水が微かに残っている程度だった。
子猫はそこで肩から飛び降り、マナを誘導するかのように歩き出した。
小道に入っていく。
小道の臭気は大通りより酷かった。
次第に酒の臭いは薄まっていき、逆に血の臭いが強烈になっていった。
小道に女の姿を見つけた男たちは気付かれないように後ろから近づいていった。
警戒していたのだが、男たちの方が一枚上手だった。
その男達の気配に子猫がいち早く気付き、鳴いた。
が、マナの反応が遅れてしまう。
「んっ」
口元を押さえられ、何もいえなくなってしまった。
子猫は毛を逆立て、男に飛び掛ったが、後ろにいたもう一人の男に取り押さえられてしまう。
マナはソレをみて激しく騒いだつもりだったが、男たちは意に介していなかった。
そしてマナの口を押さえつけた男が言った。
「お嬢ちゃん、一緒にイイコトしてあそぼうや」
そう言って男はマナに唇を近づけていく。
と、その時静止の声が掛かった。
「ちょっと待つんだな」
そう聞えるのとほぼ同時に真上から影が落ちてくる。
暗く、顔が見えないため本当の性別はわからないが、影の体躯と声からして恐らく男であろう。
それと頭に何か被っているように見えた。
「レディにはやさしくするもんだぜ」
影が放った手刀は男の首筋に吸い込まれるようにしてめり込む。
音を立てて男が崩れ落ちる。
男が崩れ落ちたときにはすでにもう一人の男も倒れるところだった。


「マドモワゼル、大丈夫ですか」
影の人は振り向き様、少し大げさに言った。
影の男は顔に奇妙な仮面を被っていた。
まるで死神を模して作られたような仮面だ。
それだけでこの影の男が、マナたちが探していた人物だとわかる。
噂の男は“奇抜な仮面をつけた世話焼きな男”だったからだ。
「あの、助けていただいてありがとうございます。あと、あの…」
「ん、なにかな」
「あなたは封印騎士団を抜け出した人ですか」
とマナはおずおずと尋ねてみる。
すると影の男は、ん、それは俺だな軽くと答えてくれた。
「そうですか、私達あなたを探していたんです。もし良ければ話を訊きたいのですが…」
「それはいいんだが、私達ってこの子猫も入ってるのかい」
「あ、はい、この子はノウエと言って元はにんげ――」
とそこまで言ってマナはしまった、という様に口を手で覆った。
が、時既に遅し。
「今なんて言った」
マナがノウェと口にした途端男は唐突に聞き返してきた。
凄みを帯びた男の声に、マナは驚きながらも答えていた。
「ノウェって」
「それはあのドラゴンと一緒にいたノウェか」
と仮面の男は念を押して訊く。
「え、えぇ」
と阿呆のようにマナは答えてしまった。
男はそうかと言って仮面のしたでほくそ笑む。
「俺はユーリックつって、ノウェの先輩だったやつさ」
「えぇ、…え、えぇぇぇぇぇぇ」
阿呆の見本のようなマナの返答に、仮面の男ユーリックは声を出して笑った。


「ほう、お前の話は確かに小僧から聞いたことはあるぞ」
静かな林の中で、口うるさい仮面の男が青い竜と話をしており、男の話を聴き終わった竜はそういった。
男と竜は何気に楽しそうに話をしているが、そんな光景を眺めているマナは未だに状況があまり把握出来ていなかった。
子猫はばつが悪そうに、マナの後ろで涙を目に溜めプルプル震えている。
ユーリックはそんな子猫をみて、悪戯心をくすぐられたのか、目が怪しく輝かせひたひたと近づいてくる。
そして徐に子猫の首根っこを掴んで持ち上ると、怪しい光を放つ目で子猫の潤んだ瞳を直視する。
「さてと、子猫ちゃん俺と遊ぼうな」
とユーリックは爽やかに言って、涙を流して抵抗する子猫の姿をしたノウェを林の暗がりに連れて行ってしまった。
にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
静かな森に子猫の悲鳴が木霊する。


一行空から宝光の直轄区に向かっていた。
「ん…小癪な真似を」
直轄区の中にある城の上空あたりでレグナが忌々しげにぼやいた。
「強力な結界が張られておる。儂ではこれ以上進むことはできんぞ…後は自分の足で進むことだ」
そう言うとレグナは少し引き返し、地上近くでマナたちをおろし、再び上空に舞い戻っていった。
その姿を眺めていたユーリックが―というのも、鍵を壊しているのは私達だとマナが言ったら俺も行く、と
言ってついて来たのだ―
「ったく、面倒なことになってきたな。お嬢ちゃんここの魔術師達は強いから気をつけな」
そう言って、腰につけていた斧を取り外しながら言った。
さきほどまでつけていた仮面は素性がばれないためのものだったそうで、今はもうつけていない。
艶のある髪の毛が風にゆられて、さらさらとゆれていた。
その後ろ姿は思わず見惚れてしまいそうなほど格好良かった。
にゃぁ。
子猫がマナの肩の上で鳴く。
それでマナは忘れかけていた現実に引き戻されていった。
「ん、どうしたお嬢ちゃん。俺に惚れたか」
などと顔を真っ赤に染めているマナをユーリックが茶化す。
それをムキになって否定するマナもそうとうリラックスすることが出来ていた。
「ちちち、ちがいます。ぜったい違います」
一人必死になって否定するマナをユーリックが静かに制した。
その顔からはもう先ほどまでのものとうって変わり、真剣そのものだった。
「ちょっと囲まれちまったな… お嬢ちゃん、死ぬなよ」


今は月を雲が覆ってしまいあたりに光はない。
あるのは確かな殺意と、今にも張り裂けそうな心臓。
今にも口から飛び出してきそうなほど動悸が激しくなっていく。
そして静かなだけにそれだけ恐怖心も高まっていく。
暗すぎて何処にいるのかもわからない敵。
もう気がふれそうになるほど長く感じられた。
それは一瞬か、はたまた一生か。
それほど長く感じられ、そして短く感じられた。
その終わりはとても長く、そして短い。
欠けた月を覆っていた雲が、消えた。
薄い闇の中で鈍い光が見えた。
刹那。
殺意の篭った一撃をユーリックの斧が受け止める。
刃と刃が互いに呼び合い、そして弾きあう。
鈍い金属音と飛び散る火花。
それが舞台の幕開けとなる。
敵の剣をそのまま押し返し、ユーリックは斧を一旦上段に構えなおしよろけている男の懐に叩き落とす。
ぱっくりと裂けた男の腹からは人を興奮させる色を持つ液体が噴出す。
まるでそれは壊れた噴水のように大量に鮮血をぶちまけ、あたりを容赦なく汚していく。
そして醜い臓器をその傷口から吐き出し男は絶滅した。
あまりにもあっけない死。
死。
人の命の重圧がまた一つユーリックの肩に重く圧し掛かる。
まるで重石のように…


暗闇の中、マナは持っていた杖に魔力を通わし始める。
その感覚には未だに慣れていない。
そして魔力を十分に通わせた杖に軽く詠唱する。
「――――――――――」
それは魔術を専門としている者の聴覚でしか捕らえることの出来ない波長で唱える。
魔力で力を与え、詠唱で命令を与える。
魔法は誰にでも使うことが出来る。
が、それはごく簡単なものでしかない。
それは燃える物に火をおこす程度でしかない。
絵本に出てくるような魔法を使えるのは血の滲む様な努力をし、尚且つ才能を持ったほんの一握りの人間に過ぎない。
そしてマナは後者だけで魔法を使いこなしていた。
それは天才としかいいようがないほどの逸材だった。
マナは天才と持て囃されようと、村に居たかつて賢者と呼ばれた老人から魔法を教わった。
老人の持つ知識を二年の歳月をかけ全て盗み終えた彼女はいつの間にか村から姿を消した。
力なき者を助けるために。
そうして彼女は今力を振るう。
そのための代償は誰かの命。
決して軽くはない。
軽くあってはならない命。
それでも奪う。
手に持っていた杖を地面に刺し、抑えていた力を解放する。
するとまるで意思を持ったかのような光が杖の周辺から現れ、次々と敵を“通り抜けていく”
通り抜けられたものは血を吐き、悶絶しながら死んでいく。
光が通った箇所の皮膚から下はなくなっているはずだった。
そうなるようにマナが命じたから。
命を奪い去る。
初めて命を奪ったマナの手が震えていた。
今まではノウェが彼女の代わりで、かつて仲間だった者たちを切り捨ててくれた。
だがこれからはその手も汚さなければならない。
それが自分が死なないための唯一の術だから。
しかしマナは泣いた。
それはとても悲しいことだから。
誰かを助けたければ、誰かを殺さなければならない。
マナは一つ、人の醜き業の深さを知った。


二人と一匹はなんとか敵兵を退け、城内へと侵入を果たす。
薄暗い城内の光源はところどころ壁に掛けられた灯火しかなかった。
その薄気味悪い城内を進んでいく。
人には今まであっていないが、どこかで出会えば戦闘は避けられないだろう。
そんな緊張感のなか、ユーリックが口を開いた。
「お嬢ちゃん、人を殺したのは初めてかい」
マナはその質問に答えてはいけない気がした。
そんなマナを尻目にユーリックは話をつづける。
「人を殺したらその人の命背負わなきゃいけない。でもそれはつらい。というわけで、俺と一緒に背負おう」
と、いつの間にかユーリックはマナの手を握り締め、プロポーズらしきものをしたのだが、
子猫がユーリックの喉元に噛み付いたため、その手は直ぐに離れていった。
「あ、ありがとう」
またもやユーリックが彼女の緊張を解してくれていた。
さすが経験豊富な男、とでも言うべきものだった。
さきほどまで震えていた手の震えは自然と収まっている。
それからまもなくして行き止まりに当たってしまう。
「…お嬢ちゃんこの壁おかしくないか」
ユーリックはそのオカシイ、といった壁を手の甲で叩きながら言った。
そういわれてみれば他の壁と比べて、比較的新しく、そして音が違っていた。
「かなりオカシイです」
「だよな。この壁ちゃん、どうしてくれようか…斧だと根元から折れちまいそうだしな…」
かなり悩んでいる様子のおじさんは、あぁぁぁと呻っていた。
「あの、魔法で壊しましょうか」
マナの提案を後でな、と流そうとしていた。
が、その直後に間抜けな声をあげ、そして頼むとマナに言った。
それにマナは苦笑いで答える。
「あの、出来ればその斧を貸してもらえませんか」
「ん、別にいいけどこんな斧どうするんだ」
ユーリックは斧を差し出しながら訊いた。
その質問にマナは、
「魔法の媒体にするものによってそれぞれ内に秘めた力が違うんです。
で、この斧は物を壊すことに長けているんで、その力を借りたいな。と…」
「そうか、なんかこうすごいな」
とだけ言ってマナに道を譲った。
しかしマナは斧の重さに勝てず、その場で奮闘するばかりだった。
子猫はそれを肩から降りて興味なさげに見ていた。
その斧をそっとユーリックが持ち上げてやり少し前に動かした。
そしてそこでマナは作業を行い始めた。


マナは斧の柄の部分を両手で握り、そこから魔力を流し込んでいく。
それに応じて斧の刃の部分が微かに燐光を帯びてくる。
そして暫くすると、斧が放つ光は昼間の太陽と同じくらいにまで輝いている。
もう瞼を開けているのも辛いほどだった。
「――――――――」
そして詠唱が始まる。
ユーリックには聞き取ることが出来ないが猫の耳では捕らえることが出来るのか、
子猫が耳をピンと張り、その音を拾っているように見えた。
いつの間にかマナが口を動かすのをやめている。
つまり詠唱が終わったのだ。
「終わったのか。わりと簡単なんだな」
「……」
ユーリックは感心して褒めたのだが、もしかしたら茶化しているように聞えたのかもしれない。
勘違いされていたらいけないと、ユーリックはマナに謝るために彼女の前に立って驚愕した。
マナの顔から生気というものがまったく感じられなかったのだ。
ユーリックは彼女の肩を掴み揺すりながら叫んだ。
「おい、嬢ちゃん大丈夫か。お嬢ちゃん」
「少しやすませてください、そうすれば大丈夫ですから…」
としゃがれた声でマナは言うとユーリックの胸へと向けて倒れてしまう。
その拍子に支えを失った斧はカラン、と乾いた音を立てて倒れてしまった。
マナはユーリックの腕の中で意識を失っている。


マナはユーリックの腕の中で寝息を立てていた。
「ったく、無茶しやがって……おい、ノウェ」
と、子猫のノウェに来い、と手を振り近くに寄られる。
きょとんとしている子猫にユーリックがまじめに言った。
「この子処j――」
子猫の爪が三つの線を描き、ユーリックの顔の表皮を切り裂いた。
「冗談だ、冗談。あのなこの子、お前が護ってやれよ。俺はいつか――」
今度は子猫の爪ではなかった。
足音である。
ユーリックは近くに落ちている斧を拾い上げようとしたが、マナの身体が邪魔になり
とることができなかった。
それが命取りとなってしまう。
足音が途絶えたと同時に角から剣だけが突き出でて、その鏡面でこちらの様子を伺っているようだった。
それでユーリックは相手が手馴れだとわかり、潔く諦めることにした。
「大人しく武器を棄てて、手を背中の上に置いて床に這い蹲れ」
敵の命令に大人しくユーリックは従う。
その様子を子猫は不思議そうに、そして腹立たしげに見ていた。
その眼は何故なんだ、と訴えているがユーリックは無視している。
「わかった……」
そして角の向こう側から敵兵が飛び出してきた。
「抵抗したら殺す」
「わかってる。だけどこのお嬢さんには手荒なことすんなよ」
「私はこれでも紳士なんだ。安心しろ」
それだけいうと敵兵はユーリックの首に向けて手刀を打ち込んだ。


青い子猫のおはなし3

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