「DRAG ON DRAGOON エロパロスレ(暫定"キャビア総合スレ")」の保管庫であり、編集権限は無しです。

下腹部に鈍痛が走る。
その日、マナは「月のもの」を向かえていた。女の証だ。

足取りが遅れがちの少女に、カイムは振り向く。
その先に見える顔色が、悪い。

(どうした…?)

「あ。その……ちょっと具合いが悪いだけ」
思春期を向かえたばかりの少女が、「月のものが来た」などと、男に言えようか。

カイムは怪訝な面持ちで彼女を見つめた。

…ああ、昔フリアエも月に一度、顔色の優れない日があったな…

過去の記憶に、カイムの目が遠くなる。

(…無理はするな)

「はい…」
カイムに悟られてしまったようで、マナは顔を赤らめ、俯いた。

旅の途中、今までも何度も「この日」は訪れた。
しかし、ここまで痛むことはなく、カイムにも知られないようになんとか過ごしてきた。
本当は、カイムは気づいていただろうけど。


再び二人は歩き出す。
カイムは先刻立ち寄ったばかりの村を越え、今日中に先の荒野を抜けるつもりらしい。

まだ日は高く、荒野を抜けるには充分に時間はある。

――――――――

眼前に広がる荒野は、思った以上に歩が捗った。
砂嵐が時折り唸りをあげるのが邪魔ではあるが。

丁度、半ばに達した頃だった。
マナの足取りが非常に重い。
今となっては掴むこともなくなっていた手に、カイムは思わず腕を伸ばした。
手を引かれ、カイムに続こうとするマナだが、足元がもつれてしまう。

(……)

カイムが立ち止まる。それにマナは一瞬脅えた。
―――怒られる…

が、カイムは何も言わない。そして、突如クルリと踵を返したのだ。
「…?」
不思議そうにしているマナの手を引いて、歩き出すカイム。
足取りは確かにもと来た道を辿っている。
「待って、今日中にここを抜けるんでしょ?」

(…気が変わった。あの村まで一旦引き返す)


――――――――――――

マナは目を瞑ると、数日前の旅路を思い出していた。


  (…気が変わった。あの村まで一旦引き返す)

…あの後、二人は通りがかった村へと戻ることとなる。
村に到着した頃は、既に日が暮れかけており、カイムは真っ直ぐに宿を目指した。
通された部屋はやはり二人部屋だ。

荷物をドサリと床に投げ置くと、カイムは扉側の寝台に腰掛け、剣の手入れを始める。
その際、ポツリと彼が呟いた言葉。
それが意外なもので、マナは忘れられないでいた。
 
  (暫らくこの村で宿をとる。長旅が続いたからな。お前もゆっくり休むといい)


あれから、既に過ぎること五日目。


眠れずに、毛布にくるまりながらマナは窓辺に射す月明かりを虚ろに見つめていた。
もうすっかり秋だ。
夜になるとひんやりと空気が冷たくなる。
冴えた空気に、煌々と満月が顔を出し、深い藍の空に映える。
そして、虫の弱々しい音が響くだけで、まるで静寂が全てを支配したような夜だ。
 

その時だった。背後でカイムが身を起こす気配がした。
そぉっと顔をそちらに向ける。
寝台の上でカイムは体を起こし、上着を脱ぎ捨て上半身を露わにしていた。
傷が痛むのか、カイムは己のあちこちの古傷を見つめている。無表情で。

マナは、思わず息を呑む。
彼の体には、数えきれない程の傷が刻み込まれていた。
帝国軍との戦いでできたものであろう。
マナが、自分が、引き起こした戦乱で。
月明かりで照らされるカイムの傷が、一層痛々しげに浮き上がる。

無意識にマナは起き上がり、気づいた時にはやっと塞がったばかりの彼の肩の傷に触れていた。
峠越えの際に、マナを魔物から庇ってできた傷だった。


「痛むの…?」

自分でも分からない行動をとっていることに、内心驚くも、マナはカイムに小さな声で問う。
ハッとカイムがこちらに振り向いた。
驚きと、哀しみに満ちた目が、マナの視線にぴたりと重なる。

カイムはどこか寂しげな面持ちで。
びくりとするマナ。
大きな手。
温かい手が、そっとマナの頬を撫で伝った。
深紅の双眸が驚きと戸惑いに見開く。

…俺は、何をしているんだ?この少女は憎むべき存在なはずなのに…

彼本人にも理解しがたい感情が芽生えていた。あれだけ怒りと憎悪の対象でしかなかったマナに。
何故か胸が切なくなる。
全てを失った今のカイムには、最も感じられるのはマナだけだった。
そしていつの間にか、心のどこかで探し、求め、見い出していたのだ。
もう二度と感じられることのないはずの「温もり」を。

…俺は、求めているのか?重ねているのか?この少女に…


(頼む…俺に安息をくれ…ひと時で構わない…)

自分の言動に躊躇いながらも、己の腕の中にカイムはマナをきつく引き寄せた。

―――ああ、カイムの鼓動が聞こえる。
腕の中でマナは、同時に哀しい、彼の切ない思念が流れこんでくるのを感じた。
何故、彼が自分にこんなことをするのか。
よく分からない。分からない…

「……」

マナの、かたく硬直していた身体が、徐々にほぐれていく。
その温もりの心地良さに気がついたかのように。
カイムの胸に、徐々に加わっていく重み。

「……私を、憎まないの?」


(もう何も、言うな……)


マナは、カイムの胸に身をゆだねた。
カイムの肌から直に感じる温かさに、涙が少女の頬を伝う。



―――欲しかった。私、本当は欲しかったんだ。
   カイムの背に負われて眠った時に感じた「温かさ」。
   あれから暫く、胸が苦しかった。
   でも、カイムにこうされて、やっと気づいた。
   もしかしたら、これが私の望んでいた「愛」なの?


……俺は、この「温もり」を求めていたのか。
  傍にあって、気づかぬ内に。
  俺は、お前を赦したのか? 
  お前のことを…。
  まさか。
  だが確かに今、俺は心地良さを感じている。お前に…。
  因果なものだ。それでも俺は……


カイムの背に、か細いマナの手がおずおずと回される。
何がそうさせるのか、分からない。
だが、互いが互いを必要としていたのは紛れもなかった。


ぽとりとマナの涙が一粒、カイムの胸に落ちた。
カイムは閉じていた目を開くと、ゆっくりとマナの体をはなす。

離れてゆく温もりが寂しくて、マナの手が空に一瞬泳いだ。
カイムの親指が涙に濡れたマナの頬を拭う。
彼の優しさが胸に沁み渡ってゆくことに、マナは小さな驚きを感じる。

―――どうして?どうして彼はこんなにも優しいの…?

そしてカイムを見上げた瞬間。

カイムがマナに、口づける。
そっと、甘く唇を食まれる感触が、マナの脳を支配した。
マナの胸が、締め付けられるように痛んだ。
何もかもが初めてだった。身を包まれるのも、口づけなども。

やがて重ねられた唇が離れる。
どうしたらいいのか分からない。彼の優しさと温もりと、全てに混乱する。
今まで愛されたことが無かった故に。
どうやって愛を受け留め、表現すればいいのか。
マナは切なくて、どうしようもなくなり、ただ涙をぼろぼろ零した。

(…泣くな)

「あ。あ…。カイム……私」

涙を零し続けるその反応に、カイムは言い得もない熱に掻き立てられた。
…守りたい。暖めたい。感じたい…
震えるマナの肩に手を置くと、やんわりと彼女の身体を寝台に押し倒してゆく。


カイムが手をついて、自分の瞳を覗き込んでいることにやっとマナは気がついた。
朦朧としていたのだ。
恐怖と痛みに伴わない涙など、流したのは初めてかもしれない。
涙にぼやけた先に、カイムが見える。

―――ああ、カイムがこんな眼差しをするなんて、今まで気がつかなかった。
   怖いとばかり思っていたのに…

カイムが徐々に身を覆い被せてくる。
もう一度、彼の手がマナの頬を撫で、マナは身体をびくりとさせた。
でも、それがマナは不思議と心地良い。不快ではなかった。恐怖でもなかった。

カイムの哀しく切ない気持ちがマナに沁み入ってくる。
そうか、と彼女は思った。
カイムも何かを求めてる。それはきっと私と同じものなのかもしれない、と。
マナはそれを悟った。
手をカイムに伸ばし、その肩に触れる。そして自らカイムの唇を求めた。

「もう一度、下さい。カイム…私を、私を――」

その先の言葉を、カイムが遮った。深い口づけで。もうそれ以上言うなというように。
マナはそれに応え、ゆっくりと目を閉じてゆく。


「…ん……ふっ…」

絡まり、もつれ合う舌。溶けるように、それは熱かった。
息を詰まらせたマナから、唇を名残惜しそうにカイムは離す。

(後悔はしないか…?)

カイムが真っ直ぐにマナを見つめる。
うまくマナは言葉が出てこない。
ただ、伏し目がちに頷くと、腕をカイムに伸ばした。
華奢な指が、無駄なく鍛えられた身体に刻まれた傷跡を撫でる。

「きっと、カイムと私が求めているものは、一緒だから。…だから」

その言葉にカイムはふ、と、笑みとも溜息ともつかない表情を一瞬見せた。
哀しくも優しげな顔だった。
再び唇を重ねると、大きな手がマナの体を辿りだす。

「…っ!」

服の上から、まだ小ぶりな胸を弄られ、一瞬マナは体を強張らせた。

(…怖いか?)

頬を僅かに染めて、マナはかぶりを振った。
怖くはなかった。カイムが求めている。
それに、そんなに優しく触れられたことも無く、未知の快感がそこにはあった。
そして、心のどこかで、やはり彼に愛されたい想いがマナにはあった。
彼の心に気づくにつれ、彼を受け留めたいという想いも。


――――――

月明かりの射す先に、重なる二つの影。
そしてその部屋に、寝台の軋む音と、熱い吐息が響く。
カイムはマナの背中に手を回し、己の体に引き付けるように掻き抱く。消え入りそうな肩を。
それは儚くて脆く、だが抱きしめなければすり抜けてしまいそうに彼には感じられたのだ。
触れ合う温もりと快感に、カイムは急き立てられてゆく。

きつく抱かれ、カイムに何度も突き上げられながら、マナは目をぎゅっと瞑る。
初めて男を迎え入れた下半身が、熱く痛む。
それでも、と思う。カイムの激しく昂ぶった想いを、放したくない。
痛みこそはあれど、自分の中でカイムが自分を感じている。
そして、重ねた身体から感じる彼の体温が心地良かった。

身体が心を暖め、心が身体を暖める。

――いやだ、心地良い。ずっとこのままでいたい…

安心感の中に、自分に愛を向けてくれたカイムに、ふとマナは不安を感じた。
どこかに置いて行かれてしまうんじゃないかと。
カイムが離れて行ってしまったりしないかと。
欲しくて堪らなかったものを与えられて、それを拍子に過去の不安が身を襲ったのだ。
マナは不安を振り切ろうと、カイムの胸に額を押し付けた。

激しい熱に突き動かされるカイムが、マナを乱暴な程に揺さぶり上げる。

「う……くぅっ…!」

マナは呻き声をあげた。
痛みにマナの顔が歪む。だが、カイムの背に回された手は、彼を放そうとしなかった。
まだ男を受け入れるのには、きつ過ぎる身体である。
だが、それがカイム自身を締め付け、更なる快感の渦へと引き込む。
ぎしぎしと軋む音の間隔が短くなっていく。カイムの荒い息が響き渡る。
華奢な腕が、カイムの体を包んだ時だった。

(…っ…マ、ナ…)

マナの中で、カイムが大きく跳ね、爆ぜた。


――――――

行為の後。未だマナはカイムの腕の中に包まれていた。

(すまなかったな…)

カイムがマナの体を気遣い、その背中をそっと撫でた。

「平気です。でも、あの…」

マナは頬を赤らめる。まともにカイムの目が見られない。
カイムの視線があまりにも真っ直ぐで。

(どうした?)

「…あの。もう少し、このままでいさせて下さい…」

カイムは優しく微笑むと、再びマナの背を撫でてやる。
その柔らかな感覚が、マナの心の中を安堵感で一杯にしてくれる。
満たされた心が、思わぬ言葉をマナの口から零れさせた。

「カイム。どこにも、行かないで…」

掠れた声で、やっとの思いで、それだけ言うとマナは目を閉じた。
どこか、むず痒かった。

(俺はここに居る。もう何も考えずに、眠れ)

カイムの言葉と、背中を撫でられる温もりに安心したのか、マナは彼の胸にそっと額をつけた。

「おやすみなさい…」

暫くすると、マナが小さな寝息を立て始める。
目の前の少女を見つめるカイムの眼差しは、愛しい者を見つめる瞳に他ならなかった。
マナの左手につけられたカイムのブレスレットが、秋の月光を照らし返す。
こうして、二人の夜は更けていった。



―――流れゆく時は、二人の運命をも結びつける。
    二人は共に歩み、やがて赤き竜を解き放ち、再びその背に跨り世界に挑むだろう―――


                     (了)

                     〜真のエンディングは貴方の心の中に〜
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このページへのコメント

・・・美しい!

0
Posted by S.K 2011年04月20日(水) 19:08:09 返信

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