「DRAG ON DRAGOON エロパロスレ(暫定"キャビア総合スレ")」の保管庫であり、編集権限は無しです。

18年前の帝国軍との戦いの経験者である少年、セエレは前神官長ヴェルドレにその才能を見出された
いや、厳密には少年ではなく、青年である
18年前に6歳だった少年は、普通ならば24歳の成人男性に成長している筈だが、セエレは違う
自身の“時間”を代償に、意思を持つゴーレムと契約した為、その身体は一向に成長しようとしない
外見は幼い少年
しかし精神は早熟した成人男性
アンバランスなその状態は、セエレに多大なる解消のしようの無いストレスを生み出していた




18年前の帝国軍との戦いで戦火に家を焼かれた女、ハンチは騎士団長にその力を見出された
いや、厳密にはハンチのではない、ケルピーの力である
18年前に6歳だった女は、普通ならば24歳の成人女性に成長している筈だが、ハンチは違う
自身の“美しさ”を代償に、水の上位精霊であるケルピーと契約をした為、その容姿は醜いものになった
昔は太陽の微笑みと称された美少女
しかし今では卑屈になった独り身の女
過去を顧みれば羨望と嫉妬
もはやどうしようもない状態は、一層ハンチを卑屈な女へとさせていった




大神殿・神官長室


机に向かい、広げられた多数の書物を読み耽る少年は、大きく欠伸をしたあと、全身から力を抜き机に突っ伏した

「ふぅ………」
書物の取り纏め、過去の文献の意訳
行うべきことは山程あるが、時間の制約がないと好きなこと以外に打ち込む気にはなれない
セエレは何度かの溜息の後、もはや日課となりつつある“行為”を行うため、ゆっくりと机から離れた
誰も居ないはずの室内を見回した後、窓から見えない位置にある本棚に近づき、一冊の本に手を伸ばした






大神殿・応接間


「集合は明後日なんですかぁ?勘違いしすぎましたよぉ……」
伝令役の兵士の言葉に、ハンチは思わず声を上げてしまった
役目が終わるや否や、伝令役の兵はすごすごと立ち去った

「ケルピーがお留守番してるから問題はありませんが……」
濡れた豪華な椅子の背凭れに寄れかかり、天井を見上げたハンチは、暫くの沈黙の後立ち上がり、廊下へ繋がるドアへと向かった

「ここにはあまり居ませんからねぇ……二日ぐらいなら時間も潰せますよね……?」
誰に言うでもない無い言葉は、これから起こるであろう出来事を予期していた
二日程度で済めば、の話だが

「おーんななんだ♪おーんななんだ♪おーんななんだっけれど♪」
暇潰しの散歩だったが、注ぎ込む柔らかい陽の光りの暖かさはなんとも心地良く、自然と気分も良くなる
普段ならば、すれ違う兵士達の侮蔑の視線が気になる所だが、今日は違う
廊下にいる見張り番の兵は、首を僅かに動かしながら転寝をしている
それを見咎める者もおらず、その静けさに小鳥の羽音すらが聞こえる程

「契約者なんだ♪強い奴さ♪………ん?」
意気揚々に自作の歌詞で歌を謡っていたハンチの視線に、大きな装飾の施された扉が目に付いた
気が付かぬ内に神殿の奥に来ていた様で、辺りにはそのドア以外には何も無い
となれば重要な人物の部屋であることは明白だ

「神官長………ですかねぇ?」
思い浮かんだ人物の顔に、ハンチは何故か頬を赤らめた
ハンチは数年前、初めてその姿を見た時の事を思い返した
風の噂には聞いていたが、想像以上に幼い外見に驚いた事を覚えている
とても同い年には見えなかった
そして何より、全く自分に訝しげな視線を向けなかった事が印象に残す要因となり、単純な好意を抱いていた

数年前・大神殿・応接間

「貴方が清水の連隊長ですね?」
よくよく考えれば、セエレは騎士団の新体制に良い顔色はしていなかった筈
それでも、初めて面通しした時はそんな素振りを一切見せずに振舞っていた

「えぇえぇそうですよぉ……」
そんなセエレにハンチは目を合わせず、気の無い返事を返した

「…………?こんな外見ですが、貴方とは同い年……宜しくお願いしますね」
ハンチの様子に疑問の念を浮べながらも、会話のきっかけになればと思っていた言葉と共に、ハンチへ向けその白い小さな手を差し伸べた
セエレにとって、単純に友愛の証と言ったところの握手という行動に、ハンチは挙動不審に近い反応をしてしまった
伏せられていた視線は、ゆっくりとセエレの顔に向けられた後、差し出された手に落ち着いた

「どうしました?」
僅かに手の平をハンチに見せるように傾け、セエレは握手を求めた

「いえ……変わったお人だなぁと思いまして……」
握手を求められるなど何年ぶりだろうかもはや分からないハンチにとって、自ら手を差し出すセエレの真意が読み取れない

「…………なにかおかしい事を言ったでしょうか?」
ハンチの言葉の意味を汲み取れないセエレは、不安げな表情を浮かべた
そんなセエレに申し訳なさを感じつつ、ハンチは差し出された小さな白い手に、自身の濡れて青ざめた手を重ねた

「宜しくお願いしますね」
漸く応えてもらえた事に、セエレは満面の笑みを返し、手の平に適度な力を加えた
合わさった手の平が水音を生んだが、セエレは一向に気にする様子は無い

「こ……こちらこそ宜しくお願いしますねぇ」
慌てつないだ言葉に、セエレは再び笑みを浮かべていた

数分間、ドアの前を行ったり来たり
その間に何度足を止め、ドアを叩こうかと思ったが、その度に怖気づいてしまっていた
しかし、室内から時折聞こえる、少年特有の声変わり前の高い声が耳に届くと、どうしても一言声を掛けたくなる

「…………おかしいですねぇ……」
意を決し扉を叩いたが、予想していた返事が無い
“開いていますよ、どうぞ” “ちょっと待っていただけますか?”等、想像していた言葉は一切聞こえず、先程まで時折聞こえていた声は、その瞬間から聞こえなくなった

「失礼しますよっ……と」
叩いた勢いのまま思いドアを開けるが、見渡せる限りの視界にはセエレの姿は無かった
机の上には多数の書物が積み重ねられ、数冊は開かれたまま置いてある
椅子も在るべき位置に納まっており、
一目には部屋には居ないかと思われる

「でも……さっき確かに声が聞こえたんですけどねぇ……?」
室内を注意深く見てみると、右手側に天井近くまで背のある本棚が並んでおり、そこのみが唯一の死角になっている

「神官長殿ぉ〜……?」
念の為、もう一度声を出し呼びかけて見るが返事は無い
完全な沈黙が室内に横たわった時、ハンチは外からの物音が一切聞こえなくなったことに気付いた
分厚い壁の所為なのか、そもそも防音加工の施された造りなのかは定かではないが、余程の事でないと、この静寂を壊すことは難しいだろう
となれば先程聞こえたセエレの声は聞き違いなのか、それとも余程大声を上げていたかのどちらかである
前者はありえない、そう確信しているハンチは必然的に後者を思い描いたが、何かあったのならばこうして声を掛ければ何かしらの反応うはあるはず

「…………ん?この匂いは……?」
しかし家捜しをするわけにはいかないと踵を返そうとしたとき、ハンチはなにか慣れない匂いを感じた

自分一人だけの空間
外界からの音も遮断され、完全に隔離されている
静寂──と言っても扉一つを開けるだけで簡単に崩れる静寂だが、今のセエレにはそれがたまらなかった

「ん……ふぁ……!!」
図書館の奥、それも前神官長ヴェルドレのみが入れたとされる最深部
漸く解錠の呪符を見つけ、その貯蔵された書物を目の当たりにしたのはほんの数日前
そしてとある本を見つけたのは昨日の深夜

「こんなに……気持ち良いものだったなんて……!」
小さく呟かれた言葉は静寂の内に消え、自身の息遣いと手の動きが生み出す一定のリズムが心地良い程に反響する
湿った何かを執拗に擦り付ける音は、恐らく年頃の少年が一度は行うであろう行為が生み出していた

「手淫……自慰……オナニー……どれが正しいんだろ……うぁ!!」
言葉に反応するように脈打つセエレのか細いものは、皮に包まれた先端から僅かに透明で粘性の高い液体を滲ませた

「ふぅ……はぁ……」
慣れない感覚に身を委ね、セエレは快感の余韻に浸っていた
セエレはまだ、精通に至ってはいない
それでも硬く勃起するものを扱けば、それなりの絶頂に至ることも可能だった

「ふぁ……ぅん……ぇ?」
瞳を閉じ、小休憩がてらうな垂れていると、ふと人の気配を感じる
顔を上げ、耳を澄ますとどうやら誰かがドアを叩いているようだ
居留守で通そうと思ったが、訪問者は事もあろうにドアを開けたようだった

「失礼しますよっ……と」
声の主はどうやら女性であることは分かったが、それが連隊長ハンチのものであることに、慌てふためくセエレは気付けなかった
ただこの状況をどう乗り切るかを考えるだけに、思考は回転している


「神官長殿ぉ〜……?」
息を殺すセエレのいる本棚へ向けられた声に、セエレは身を固めた
なんとかこの場をやり過ごして───そう考えつつ、先程まで固く滾っていた物を隠そうと、ずり下がったズボンに手を掛けた

「…………ッ!!??」
しかしズボンは何かに引っかかり、不恰好な状態にしかならない
視線を下ろすと、先程一度落ち着いた筈のものは再び熱を帯び、固くなっていた
思わず手が伸び、再び快感を得ようと力がこもる

「…………ん?この匂いは……?」
ハンチはそんな言葉を発しながら、セエレが隠れる本棚へと歩み寄った
その気配を感じて尚、セエレはその行為を止めようとも、隠そうとしなかった


「……あらあら、かわいらしいですねぇ…!」
ハンチは自分自身の言動に、度肝を抜かれていた
好意を抱いていた異性のあられもない姿を眼前に、ハンチの感情は爆発する
何事か呟き、形ばかりの弁明をするセエレに対し、困惑した顔と扱かれるセエレのものを交互に見つめる
ピクピクと小刻みに震えるセエレのものに、ハンチは文字通り心が躍った

「ああ……神官長殿に失礼でしたか、すみませんねぇ…ふふ」
満面の笑みを浮かべるハンチは、セエレへと歩み寄る

「でも本当にかわいらしいお姿ですねぇ…うふふ」
互いに手を伸ばせば触れる事が出来る距離まで近づき、足を止めた

「私も昔はみんなから可愛がられてたんですよぉ?……嘘じゃありませんよ、今はこんなみすぼらしい姿ですけど…見苦しくてすみませんねぇ…ふふっ… 」
自身の胸に手を当て過去を顧みるハンチは、悲しみや諦めの混じった声でそう呟いた

「……今は、違うんですか……?」
手を一旦止めたセエレは、頬を赤らませながらも疑問の言葉を投げ掛けた
ハンチを見る目にはやはり訝しげな感覚は無く、純粋な疑問の念だけが伝わる

「……当たり前じゃないですかぁ……神官長殿だって、こんな女は嫌でしょう?」

「…………何故、でしょうか……?」
ハンチの質問に質問で返答すると同時に、セエレは再び自身のものを扱き始めた
先程まで脈動するのみだったものは、先端から透明で粘り気のある液体を滴らせた

「………すみませんねぇ……、神官長殿を困らせてしまったようで……」
自身でも分からぬうちに、ハンチはセエレに対し詫びの言葉を呟いていた
秘すべき姿を見てしまったからなのか、卑しくも可愛いと言ってしまったからなのかは定かではないが、俯きながらそう呟くと同時に踵を返し、セエレから離れようと足を動

かした

「あ……待っ……」
そんなハンチの背中にセエレは呼び止めるために声を上げたが、ハンチは振り返る事も無く部屋を出て行った

「…………はぁ…私はなにやってんでしょうかぁ……」
あんなことをするつもりは無かった
ただ一声掛けたかっただけ
何度か言葉を交わしたかっただけ

「……なのに……」
もう暖かな日差しも、そよぐ風にも何も幸福感も感じない
ひたすらに、溢れる涙を拭うだけ

「……何を期待していたんですか?鏡、見たことありますよねぇ……?」
ベッドにうつ伏せに寝たまま、涙を吸い込んだ枕に埋められた青ざめた唇が動いた

「…………卑しい女……あの人が私に優しいのは私を憐れんでいるから……」
薄れていた卑下の思いが、沸々と湧き上がっては言葉になって独りきりの部屋に消えてゆく
ハンチはうつ伏せのまま手にも足にも力を入れず、やがて全身から力を抜いた
呼吸は落ちつき、やがて埋めたままの瞳からも力を抜いた

「分かりきって……いたのに」
何年振りか分からないが、自身を激しく疎ましく思う感情に、ハンチは悲しみを通り越して虚しさすら感じた
思考はやがて薄れ、休む為ではなく“逃げるため”の睡眠に落ちるまで、そこまで時間は掛からなかった

ぅ……ん……」
去っていくハンチの背中に何も言えず、セエレのものは何故か興醒めしたかのように硬さを失っていった
何度か手を動かしてみても、僅かにも反応は無い

「…………ふぅ」
人に見られても構わない行為ではないことは分かっていた筈だった
しかしハンチの存在に気付いた瞬間に、多少残っていた理性が消えたことを今思い出した

「なんで……あんなこと……」
恐らくハンチ以外の人物が来たのならば、一声掛けると同時にずり下がったズボンを上げていた筈
ましてや行為を見せ付ける事などしなかった筈

───では何故?
乱れた衣服を整えながら、分厚い本を本棚へと戻すセエレは自問自答を繰り返していた

───何故あの人が来た時に心が躍った?
自分自身への問い掛けに、不意に思考の奥から答えが返ってきた

───惹かれたから、単純に

「……………惹かれた……?」
思わず声に出してしまった言葉の意味に、セエレは戸惑った
行方知らずの妹、マナへの感情と似て非似るそれに、セエレの鼓動は僅かに早くなった
それが本心なのかどうかは分からない
しかし今、高鳴る胸の鼓動が偽りでは無い事は明らかだった

「…………僕は……」
考え込む思考を置き去りに、セエレの身体は廊下へと続く扉へと向かった
大きく思い扉を全身を使い押し開け、人気の無い廊下へと飛び出す
左右を確認するが、そこにハンチの姿は無い
神殿内部の地図を思い浮かべる前に、絨毯に付いた目印を頼りに走り出していた

数十秒足らずの浅い眠りの中、ハンチは夢を観ていた
緑の生い茂る湖の畔で、ボートで漕ぎ出そうと数人の子供の姿が見える
ボートを押し出そうとしている子供達と、その中の一際可愛らしい少女の様子を心配そうに見つめる、少し背の高い少女
同じ色合いの赤毛が何とも可愛らしい二人の少女が、姉妹であることをハンチはすぐに分かった
そして何故、“姉”が不安げな表情をしているのかも

「駄目ですよぉ……今日は……今日だけはボートなんかに乗らないで下さいよぉ……」
何度と見た夢である
無駄だと、声が届かないと知っていて尚、ハンチは声を上げずにはいられなかった
この時、姉の言うことを聞いていれば
あと少し早く岸に戻っていれば
そうすれば……“太陽の微笑”でいられたのに
皆に好かれていられたのに

「お願いですからぁ……戻ってくださいよぉ……」
陰りを見せる空には気付かず、子供達は浮べたボートに乗り込んだ
涙を浮べ、鼻声になりながら懇願するハンチだが、やはりその願いは届かない
姉の最後の忠告を一蹴し、岸を離れ始めたボートの行末は歴然だった

「なんで……こんな……」
願いはもはや言葉にならず、嗚咽となって水面に吸い込まれていった

トラウマ……といっても差し支えのない出来事の夢は、室内に響いた高い音によって終焉を迎えた
涙に歪む視界の中、ハンチは自身を悪夢から引き戻してくれたその音に感謝した
分かりきった結末は、決して心地良い物でもはないからだ
仰向けになり、涙を拭う為に腕を眼に押し当てていると再び先程の高い音が耳に届いた
否、高い“声”が正確だろう

「………先程は失礼しました……」
ハンチの返事を待たずして、その高い声の主、セエレは言葉を繋げた

「なんと言えば良いんでしょうか……貴方の声が聞こえた瞬間に我を忘れたと言うか……自分を抑えられなくなりまして」
もし自分がが部屋にいなかった場合、どうするつもりなのだろうか……そんなことを考えたハンチは、返事をするタイミングを逃してしまった

「今こうやって喋っていても……動悸が激しくなってしまうんです……」
控えめに発せられた予想外のその言葉に、ハンチは息を飲んだ
それが何を意味するのか、恋愛沙汰から遠ざかっていたハンチですら瞬間的に分かる

───それは……つまり……
心の中で反復するセエレの言葉に、ハンチは驚愕と戸惑いと、言いようの無い感情に包まれた

「………それだけです……それじゃあ、僕はこれで……」
セエレは扉の向こうに声が届いている事を願いながら、ドアに背を向け歩き出した
今は何も考えられず、只自室に向かうだけ
そんなセエレの足を止めさせたのは、背後から聞こえたドアの開く乾いた金属音だった

「神官長殿……?」
僅かに開いたドアからセエレを覗き見る瞳は、微かに赤くなっている

「……良かったら少し……お話しませんか……?」
そう良い残し、ハンチは扉を開けたまま薄暗い室内へと消えた

「………はい」
嬉しそうに笑みを浮かべ、セエレはハンチの言葉のままに薄暗い室内に入った

「さっきの、は……どういうことなんでしょう……」
セエレに背を向けたまま、ハンチは怯える子供の様な弱々しくい声で呟いた
その声はいつもと違い、媚を売るでもなく、自身を卑下するような口調でもない
ただ “分からない” それだけが感じられる

「……そのままの意味です」
それを敏感に感じとったセエレだったが、思いをそのまま、言葉にした

「…………………」
ハンチはその言葉に肩を震わせ、息を詰まらせた
肩は上下左右にに揺れ、荒れた息遣いが室内に響き渡る

「………そんな……訳無い……私なんかに……」
そう涙声で呟き、ハンチはセエレへと向き直った
二つの瞳の両端には大粒の涙が潤み、一筋の光となって頬を伝う
頬骨を超え、喉まで伝ったその光は一つに合わさり、雫となって更に輝きを増した

「こんな……醜くて……気持ち悪くて……同情だったら、悲しくなるだけ……」
ハンチは顔を隠すように手で抑え、吐き出す様に言葉を繋げる
涙は際限無く溢れ、次々と光を放ち、零れ落ちる

「同情なんか……してません」
その溢れ出る涙を止めたのは、真っ直ぐハンチを見つめるセエレの言葉だった

「嘘…………嘘……嘘嘘嘘…」

「嘘なんかじゃありません」
否定の言葉を続けるハンチに、セエレは一歩踏み出し互いの身体を近付けた
ハンチを見上げる視線は、先程と変わらず真っ直ぐにハンチを捉えて離さない

「他の人が貴女をどう言っているのか、どう思っているのかは知りません……ただ、僕は貴女が好きなんです」
自身を真っ直ぐ見詰めるセエレの澄んだ瞳に、ハンチは再び瞳に涙を讃えた

「理由だけ……教えてもらえませんか?なんで私なんかを……」
日は沈み掛け、差し込む光で黄昏色に室内が染まっていく
広いベッドに寝そべったハンチは、自身と同じ様で横に寝そべっているセエレへ向け、どうしても気になる事を問うた

「理由……ですか?………自分でも良く分からないですよ」
笑顔でそう答えたセエレは、身体を捩じらせハンチへと身体を近寄らせた
一瞬ハンチは後ろへ引こうとしたが、思い止まり寧ろ自身もセエレへと身体を寄せた

「ジスモア騎士団長に貴女を紹介された時……ここが、暖かくなったのを良く憶えています」
その時の出来事を思い出しているのか、セエレは瞳を閉じ、胸へ手を当てた

───トクンッ……
セエレの言葉に、ハンチの心音は大きく振れ動いた
自分もそうだったと、唇だけが空を描く

「そんな訳で、理由と言われても答えられないんです」
一瞬苦笑いになったセエレだったが、相対するハンチの表情の変化に直ぐに笑顔に戻った

「わた……ッ、私……も……」
またもやハンチの感情は爆発した
一番望んでいたからこそ、叶ったときのことなど考えてはいなかった
動揺と感激とが交じり合い、笑みと涙となって表情へと表れる
先程とは違い喜びの混じったハンチの涙を、セエレはそっと細い指で拭った

「………ありがとうございます」
小さく呟かれた言葉と共に、セエレの唇は咽び泣くハンチの唇に重なり、その啜り声を覆い隠した

互いが互いの服を完全に脱がせ、二人は一糸纏わぬ姿となっていた

「宜しく……お願いしますねぇ……」
ハンチは何故か正座したまま頭を下げた
恥ずかしさを一層際立たせる行動は前時代的な初夜を思わせるが、ハンチにとって初めての事なのだから仕方が無い

「僕の方こそ……宜しくお願いします」
向き合い正座する二人は、互いに下がった頭を上げたとき視線が交わった
思わず照れ笑いしてしまい、事に及ぶタイミングを掴めない

「えっと……失礼します……」
意を決し、先に動いたのはセエレだった
ハンチの肩に手を掛け、ゆっくりと押し倒し仰向けに
ハンチは指を胸の上で絡ませては解き、その戸惑いが伝わってくる

「あの……初めてなので、優しくしてくださいねぇ……?」
セエレへ時折視線を向け、恥ずかしそうに呟かれた言葉に、当のセエレは元よりそのつもりなのだと言わんばかりに頷いていた

「分かってます……もう大丈夫だとは思いますが、念の為……」
ハンチの足の方へ身体を動かしたセエレは、先程一度湿り気を与えられたハンチの秘所へと顔を近付けた

「今のままだと、僕だけ……なんて事になりそうなので……」

「えっ……と、それはどういう……ッ!?」
ハンチは言葉を半ばにして止めてしまった
今まで異性に見せた事も無い裸体を愛でられ、何者を受け入れられた事無い秘所に熱い吐息と柔らかい感覚が這わされては当然だ

「ぅぁ……んッ!!……そ……んな……ぁ!!」
縦一文字に走る割れ目をなぞる様に動かされるセエレの舌に、ハンチは未知の感覚に襲われた
上方には薄い産毛のように陰毛が茂り、秘所を閉じ込んだ二つの丘が佇んでいる
楕円を描くセエレの舌は、やがて愛液の滲み出る二つの丘の谷間へと近づく
ハンチは更に声を上げ、体内から溢れ出る蜜の感覚に戸惑った

「もう……良いですかね?」
何度か舌を押し付けた後、セエレはひくつくハンチの秘所から舌を離した
舌の進入すらもを拒むハンチの秘所に、セエレは未開の地を進む冒険家の心に宿る探究心が生まれ始める

「大丈夫……だと思いますけど……」
ハンチは息を整えてはいるが、どうせ直ぐにまた荒くなってしまう事は明白だった
それをやはり分かっているセエレは、間髪いれず、行動を起こした

「えっと……ここで良いでしょうか……?」
閉じたハンチの秘所に、大まかにだが当たりをつけたセエレは、その一点に向け自身のものを向かわせた
───にちゃ
何とも言えない生々しい水音が、二人の耳に届いた
その瞬間にもハンチは身を震わせたが、明確な言葉をセエレへとかけた

「……私の初めて……差し上げますぅ……だから………」
ハンチの言葉を遮るために、セエレは再びハンチと唇を重ねる

───だから……嫌いにならないで───

そして互いの唇を唾液の糸で繋いだまま、セエレは腰をゆっくりとハンチの膣内へと押し付けた

「……っぁ!?……ひぃ……!!」
初めて“男”を受け入れたハンチは、破瓜の痛みに思わず悲鳴を上げてしまった
セエレのものは決して大きい訳ではないが、かと言ってなんら苦痛無く受け入れられるものでもない
接合部からは僅かに血液が滲み始めていた

「大丈夫……ですか?」
セエレは、痛みにその身体を強張らせるハンチへ気遣いと、瞬間的に暴発しそうになった自身のものを宥める為に腰を密着させたまま動きを止めた
ハンチは薄っすらと涙を瞳の両端に浮べ、愛しい男性に刻まれた決して癒えぬ傷が生み出す痛みを一身に受け止めている
対しセエレは愛しい女性を文字通り深く感じると共に、初めてが故に無意識に込められる力に、今にも性を放ちそうになっていた

「ちょっ……と、痛いですけど……」
ハンチは涙を指で拭うと、心配そうに見つめるセエレの顔へと手を動かす
そっとセエレの輪郭をなぞった

「神官長殿に付けられた傷なら……平気ですから……」
気丈にも微笑みながら呟くハンチに、セエレは言い様の無い感情に包まれ、同時に本能的な“愛でたい”という感情が噴出した
しかし理性はハンチを気遣う事を優先し、腰は固定したまま

「………セエレ、で結構ですよ」

「じゃ私も……ハンチ……、って呼んでください……」
互いが互いを気遣い、ハンチが指し伸ばした手にセエレの手が重なる

「……ハンチ」

「……セエレ」
二人は笑みを浮かべたまま、互いの名前を呼び合い始めた

「…………ハンチ」

「…………セエレ」
何の意味も無いその呼びかけを、二人は暫くの間繰り返した

もう太陽は完全にその顔を地平線に隠し、代わりに輝きを増した月が夜の空を飾り、愛を紡ぐ二人を照らしている
二つの手は繋がれ、十ある指は絡み合ったまま
何を話す訳でもなく、二人は文字通り繋がった悦びを味わっている

「………セエレ?」

「なに?ハンチ……」
互いの名前を呼び合う二人
ハンチは未だ恥ずかしそうに時折身を捩じらせ、セエレはそんなハンチを笑みを浮かべ見つめる

「もう……大丈夫、ですから……」
ハンチの言葉に、セエレは最初にあった身体の強張りが弱まっている事に気付いた
接合部からの出血も、もう治まった様であった
それが契約者だからこそである事を、二人が知る術は無い

「動いて……?……私で気持ち良くなって下さい……」

「………大丈夫なんですか?」
確かに痛がる様子は無いが、だからと言って直ぐに自身の欲望を焚き付ける事など、セエレが出来ない
促すハンチに只戸惑うだけだったが、僅かに重心がハンチに偏った瞬間、戸惑いは何処かへ消え去ってしまった

「ッんぁ……!」
小さな小さなその声には、今までの変わらず恥かしさと破瓜の痛みが込められていたが、それとはまた別の感情が組み入られていた
頬を一層赤らめ、抑えながらもこぼれた声には、明らかに快感を伝えようとする独特の雰囲気を纏っている
どうやらハンチは未だ自身の変化には気付いていない様だが、間近でその身体を見つめ、繋がり合うセエレには一目瞭然だ

「………?」
セエレを見上げるハンチの唇からは、ハンチのものか先程の行為によるセエレのものか定かではないが、うっすらと唾液が頬に向かい伸びている
それがセエレを欲望を焚き付ける種火となり、結果としてゆっくりとだがセエレが腰を前後させるに至った

「ふ……ぁッ!!」
一層艶めきだすハンチの嬌声に、セエレは自身を形作っていた理性に抑えつけられた人格の内から溢れ出す、どす黒い欲求を感じた

「…………セエレ?」
一旦動きを止めたセエレから、只ならぬ気配を感じ取ったハンチが声を掛けた瞬間、セエレはその欲求に従い全身に力を込めた
その欲求は、ある種支配欲であり、ある種所有欲でもある
只一つ言える事は、その欲求が世間一般では “愛” と呼ばれるものだと言う事だ

「ひぅ……ッ!?ぁあ!!」
突如身体に走った衝撃に、覚悟をしていたもののハンチは驚き、大声を上げてしまった
抜け落ちる寸前まで引かれたセエレの腰に従い、ハンチを内から圧迫していた物も引き抜かれていく
込めていた力は不要になり、当然下腹部から力は抜ける
しかしそのタイミングを狙い打つ様に、抜け落ちる寸前だったセエレのものは、腰の前進に従い再び子宮へ届かんばかりにハンチを打つから圧迫する

「あぁ!!……あぁ!!……ハンチィ……!!」
盛りのついた犬猫の様に声を上げながら、セエレは一心不乱に腰を振り、自身のものをハンチの内部に擦り付けて始めた
先程までのハンチを気遣う様子は無く、己の心中に秘められていた滾る欲望に忠実に従う一匹の雄と変貌していた

「セ……ッ!?……エレェ……!!」
突如爆発したセエレの欲望を、ハンチはその線の細い身体で受け止めた
突然の事に気は動転し、与えられる快楽に身体は言う事を利かなくなっていた
予想していた痛みは消え、代わりに何倍もの快楽が生み出され、ハンチの思考を薄く曖昧にしていく

「気持ち良いよぉ……!!ぁあ!!」
更に声を高くするセエレは、開かれていたハンチの太ももに腕を掛け、ハンチの腰持ち上げるようにした
必然的にハンチに接合部を見せ付ける体勢になるが、セエレはそんな事を一向に気にする様子は無い
腰の動きは早くなり、それに伴いハンチの愛液とセエレの先走り液が交じり合ったものが泡立ち、ハンチの顔へ飛び跳ねる

「こん…な……!?恥ず、かし………!!」
一瞬視線を接合部に向けたが、直ぐに逸らし瞼を閉じた
独特の匂いを放つ泡が顔に掛かっても、ハンチの腕にはそれを拭うだけの余力は残されていない
濡れたシーツを握るだけで精一杯のハンチの手は、更に力を込められていった

「ふぁぁ……」
体勢を変えてから数分で、セエレは込み上げる快感の波の存在を感じていた
膨大に膨れ上がった自身のものを感じながら、セエレはほんの僅かだが理性を取り戻した

───果たしてこのままハンチの膣内へ射精してしまって良いのだろうか
未だ精通の無いセエレだったが、今、この瞬間に何かが迫っている事を肌で感じている

───妊娠……してしまったら……
確率は低いだろうが、だからと言ってそのまま……と言う訳にはならない
息をするだけだった口に力を込め、一度溜まった唾液を呑み込み、やっと言葉を紡いだ

「ハン……チ……?も……出そ……う……」
やっと搾り出したその言葉に、ハンチの返答は無い
疑問に思うセエレが耳を澄まし、ハンチの様子を垣間見ると、僅かながらハンチの唇が動いている
時折小さく聞こえる単語と、その唇の動きから自ずと答えが見えてきた

「大……丈夫ッ!!……です……今日は……あぁッ!?」
その言葉に、セエレの理性はあっさりと欲望に埋もれた
再びハンチの太ももに手を這わせ、バランスを取り直そうとした時、力の抜けていたハンチ足が動いた
セエレの腰の裏に、絡めるように動かされた足は、やはりがっちりとセエレの腰を絡め取る

「もし……んッ!?ぁ……かちゃんが……出来ても……大丈……夫ですからぁぁ!!」
強請りにも似た言葉に、腰の稼動域が狭められた結果小刻みにしか動かない状況でさえ、一段と快楽の波は迫る

「だから……だからぁ!!」
シーツを握っていたハンチの手は、いつの間にかセエレの頬へ這わされていた
二三度頬を撫でられた後、セエレはその手に自身の手を重ね、強く握り締める
閉じられた瞼も開き、セエレの視線とハンチの視線が交わった

「私のぉ………私の子宮にぃ……セエレの精液注いでくださいぃぃ!!!」
セエレと変わらぬ程大声を上げ、ハンチは思いの丈を吐き出した
その強請りに後押しされ、セエレは迫り来る快感の波に身を任せた

「ハンチ……ハンチィィ!!」

「セエ……レェ……!!」
間も無くセエレは限界に達し、人生初の射精を、愛する女性の膣内奥深くへと解き放った
熱い感覚がハンチの下腹部の奥、子宮を満たし、愛される満足感と愛する男性に与えられた快感により、追い掛ける様に絶頂へと至った

「ハンチ……?」

「セエレェ……」
繋がり、互いの熱を感じる中、二人はどちらかと無く唇を寄せ、重ねた
唇が名残惜しそうにも離れたとき、二人は笑みを浮べ、共に暖かい微睡み誘われている事を感じ取った

「ハンチ……愛してるよ……」

「セエレ……愛していますよ……」
重なった言葉に、二人は一緒に微睡みに落ちていった
指が絡まり繋がれた手は、互いを強く握り締め、簡単には離れそうに無かった



「う……ん?」
聞き慣れない音が耳に入り、セエレは暖かな日差しの中で目を覚ました
シーツの濡れた箇所を避ける様に寝ていたようで、幾分身体に違和感がある
しかしそれよりも、手や、身体に残る前夜の感覚が何とも心地良い気だるさを生み出していた

「朝の日差しがぁ〜窓を揺らしてぇ〜」
動かされた視界に入ったのは、高く芯の通った声で唄を歌うハンチの背中だった
慣れた手付きで包丁を使い、時折火に掛けられた鍋の様子を伺っている
毎日やっている事なのか、複数の料理を同時進行で作っているようだ

「……料理、得意なんですか?」
ベッドの脇に畳まれていた、昨日脱捨てた自分の衣服を引っ張りながら、セエレはハンチの背中に声を掛けた

「あぁあぁ……起こしちゃいましたかぁ?」
首だけを振り向かせながらそう呟くハンチは、今までで一番自然な、幸せそうな笑みを浮かべていた
包丁を置き、セエレへ向き直ろうとした時に鍋が吹き零れそうになり、ハンチは慌てて鍋へ顔を近づけ息を吹きかけた
鍋の縁からこぼれそうになった泡は、ハンチの息に押し負け鍋の中に戻っていった

「ちょっと……火が強かったみたいです」
小さく呟き、次いで指先に生まれた水玉を火に向け飛ばし、一瞬後には火の勢いは幾分弱まった

「私の故郷の、簡単な郷土料理です……お口に合うといいんですけどぉ……」
自信無さ気に向き直るハンチに、セエレはやはり満面の笑みを浮かべ、そっと答える

「美味しそうな香りです……大盛りで頂けますか?」

「……はい」
思わずハンチも微笑み返し、真っ白な皿に出来たばかりの料理を装う
最初に運ばれた、湯気を上げるスープを見つめ、セエレは小さく呟いた

「久しぶりに、手料理を振舞ってもらった気がします」

「私なんかで良かったら、毎日作って差し上げますよぉ?」
野菜と鶏肉の炒め物を装った皿を差し出しながら、ハンチは嬉しそうに提案した

「ホントですか!?」

「ホントですよぉ」
少年と女が───いや、一組の男女が互いの愛を確かめ合えた事を祝福するかの如く、窓際に止まった三羽の小鳥がさえずり始めた
空には雲一つ無く、淡い青色が広がる
草原には風が流れ、草木に降り注ぐ陽の光は優しさすら感じられた

「うわぁ……美味しいです!これ!」

「あ……ありがとうございますぅ……気に入って頂いて良かったぁ……」






一年後、神官長セエレが部下を引き連れ、団長ジスモア率いる封印騎士団の圧政に立ち向かい、決起した
“封印”に苦しむ“全て”の者達を救う、後に救世戦争と呼ばれるその争いの最中、神官長は同じく謀反を起こした連隊長に守られ、陣頭指揮を執ったという
封印戦争の終局には、赤き竜と隻眼の男も共に居たと言うが、それはまた別のお話───

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