新司法試験雑考〜4.論文編4(刑事系)

みなさんこんにちは。
だらだら続いているこの連載も
いよいよ最終回も近いですね。

今回は刑事系です。
といっても、私は群を抜いて点数が悪かったので、
こういうことをやっておけばよかったという
点を踏まえて書いていきたいと思います。
まずは刑法から。

1.刑法

少なくとも、この点数は刑法の責任ではないと信じたい
のですが良く分からない以上、対策として間違っている
可能性も高いことを予めご承知ください。

プレテスト、本試験を通して、理論的に難しいところ
(原自行為等)はきかれませんでした。

もちろん今回も、共犯者の正当防衛状況
という問題はありましたが、回避することは
可能でした。正直、点数が悪かったのは回避したせいかも
しれませんがそのあたりは良く分かりません。
問題に触れつつ、回避した方が賢かったとは思います。

この傾向は今後も続くと思われます。
抽象的問題について理論的にその当否を検討させるよりも、
大量の情報を与えて、事件の処理を
してくれということなのでしょうか。

という勝手な予想を踏まえて、基本書選びを考えます。
あくまで、東大系の人向けに書くので、そういう教科書
セレクトになっています。
ボクは違うという方は、夫々の教科書でよいと思います。
説の当否より、処理の巧拙を見ている問題だと思うので。

読みやすさ、薄さから考えると、
山口厚 刑法 有斐閣でしょう。
判例も沢山引用されています。
理論的に良く分からないところについては、
西田先生の基本書か山口先生の基本書に戻れば良いと思います。
で、その論点についてはノートに筋道をまとめておくと。
それでも分からなかったら刑法が得意そうな友達にでも
聞いて下さい。
理論的な当否はさておき、論点について筋道が分からないところ
がない様に気をつけてください。
これをその場で考えていると、大幅に時間をくいます。

判例集については、百選でも、判例集でもかまいません。
個人的には刑法は事案に特徴があると思うので、事案がきちんと
載っているものが良いでしょう。百選では足りない、古いという説も
ありますが、そのあたりは重判をチェックするなり、判例セレクトを
チェックするなりしてください。判例ベースの法学教室の山口連載
もオススメです。数に不安を感じるのであれば、
山口先生らの刑法判例集を使っても良いと思います。
一方で、200を確実に覚えるという割切りも大事な気がします。

また、上級刑法のノートははっきり言って使えます。
出てきた論点で、知らないものについて基本書でフォローする
だけで立派な最終確認ノートになるでしょう。
実際、刑事系の前日にはそれを眺めてました。

各論については、罪ごとのウエイトは当然違います。
ここら辺は試験委員の趣味を調べることも大切だと思います。


2.刑事訴訟法

基本書を使いましょう。無いじゃんなんて身も蓋もないことを
言わないで下さい。
田宮でも田口でも良いと思います。
特に、東大系の方々は、捜査に知識が偏りすぎていると思うので、
公判、証拠についてきちんと抑えておく必要があります。
演習刑事訴訟法でも良いと思います。

百選も読みましょう。せっかく新しくなったので。

ここでは、問題形式について検討したいと思います。
東大の方は、ああいう問題形式についても、
捜査については、学部、ロースクールを通して、
やり飽きた感すらあるのでは無いでしょうか。
有形力を行使したり、ギモウしたり、監禁したり、
令状なしで、踏み込んだり、
問題文を読みながら自然とポイントを捕まえられます。
基本的に1対1の関係というシンプルなものが多いのも
特徴です。

ところが、証拠に関しては難しいです。

なお、ぜんぜん平気という方は
以下の文章を読み飛ばすことをオススメします。
特に、現行試験の論文の勉強を答錬等で沢山されている方は
「アホか」と思われるのも当たり前ですので、
読み飛ばしてください。

自分が苦手なこともあるのですが、本当にピントがどこにあるか
分かりません。結局、問題文の読み方について癖がついていない
ということになるのでしょう。
身構えて読まないので、気づかないのです。
証拠に関しては、簡単な例でしか学習して無いし
出来ないのが現状だと思います。
よく、「私は万能の神」と被告人が言っていたいうことを聞いたという
供述は、被告人の精神状態に問題があることに関しては非伝聞なんて
やります。
ご案内の通り、何パターンかありまして、
それそのものは理解できるでしょう。
また、共犯者の供述について云々という論点自体はご存知のことと思います。
しかし、これらが組み合わせられて、あのような形で
だらだらとした生の供述になってしまうと、
それを論点に噛み砕くのはかなり難しいと思います。
というか慣れが必要だと思います。
また、状況に応じた記述というのもかなり難しいと思います。
判例集の判旨には供述調書そのものが載っているわけではなく、
すでに取り出された論点の形で載っているので、判例でも
学習できないというのが悩ましいところです。

その分、答案構成にかなりの時間がかかるわけです。
ぜひ、問いを先に見て、人間関係を先に考えて、
出来れば論点をある程度思い出してから
より慎重に問題文を読むことを
オススメします。
答案構成に時間をかけることはもちろん危険ですが、
これをしないと本当にピントのずれたものを書きかねません。
現行の過去問についても、証拠法で事実が長い問題は
その問題の取り出し方に特に注意を払った方が良いと思います。

そんなわけで刑訴に関しては本当に、
答練うけておけばよかったと思ってます。
やったからって出来るようになるかはまた別問題ですが、
練習しないよりはるかにマシだと思います。
度胸のある人は、F先生なり、Y先生を捕まえて
そのあたりを聞いてみてもいいのではないでしょうか。
飲み会の席を利用するのも良いと思います。

次は、本番について簡単に書いて終わりにしたいと思います。


3刑法加筆(筆者交代)
刑事系の二つの大問のうちの一つは刑法ではなく、刑法+刑事実務基礎だと思ったほうが良いと思います。
つまり、いくつかの事実については問題文からきちんと認定しなくてはならず、刑法の理論的な問題だけにとらわれてはいけないということです。

たしか、問題文を読めば殺人の故意の有無の認定をさせたがっているのは明らかでしたが、それ以外にも、
たとえば、前の筆者が書いている「共犯者の正当防衛状況」という論点を書こうと思えば、本問では、現場共謀が成立していることを認定することが論理的な前提のはずです。しかし、あの問題文では、現場共謀が成立しているかどうかはかなり微妙ではないでしょうか。

筆者は、現場共謀をスムーズに認定できない気がしたので、疑わしきは被告人の利益にの観点から、現場共謀は成立していないと認定し、結果として「共犯者の正当防衛状況」という論点は書きませんでした。(これでも刑事系の評価は結構良かった。)

このとき、頭の中では、プレテストについての佐伯先生のコメント(配点されていそうな論点が書けるように認定するのが答案戦略上優れているというような趣旨。確か法学教室。)がよぎりましたが、現場共謀の成立を説得的に認定することができなければ、「共犯者の正当防衛状況」の論点だけ書いてもしょうがないと判断して、上記のようにしました。

しっかりした事実認定なんて、ロースクールを卒業しただけでできるほうがおかしいんで、これはできるできないの問題というよりも、試験中に刑法の部分に熱くならずに、どれだけ刑事実務基礎を意識しておけるかだと思います。

なので、特に準備するとかではなくて、試験前に、「事実認定、事実認定、・・・」と何回か唱えればそれで十分だと思います。
2006年10月05日(木) 01:51:03 Modified by roytheman4u




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