倒産処理研究

担当教官 松下教授、岡講師

2005年度冬学期

実務系の選択必修科目の1つ。
20人程度まで受講者を絞るので、ゼミと同様に選抜がある。
2年次に倒産民事執行法を履修しておらず、かつ学部でも破産法を履修していないと、そもそも選抜対象から外されてしまうので注意が必要。

毎回分の資料と設問付きレジュメが入ったCD−Rが事前に貸与される。
たとえばある回の中身は、レジュメ本文のほか、「予納金一覧表、申立書、監督命令、保全命令、開始決定、財産評定書、再生債権認否書、再生計画案」などとなっている。
実務家教員が実際に管財人等として関与した事件が元になっている。
中身は、民事再生:会社更生:破産:個人再生・個人破産=1:1:1:0.5程度の割合。

最初に実務家教員(岡先生)が事案の概要を説明し、その後松下先生が設問について、1問につき2〜3人程度ずつ回答を求める形で進行する。
指名はランダムで、毎回ほぼ全員が指名されるので、全員が全問、毎週予習してくることが要求される(あまりに予習量が多く、担当者を決めた回も2回ほどあった)。
参考文献の指定があることもあるが(CD−Rにpdfの形で収録されている場合もある)、まだあまり雑誌論文等でも議論がなされていないような問題も多い。
とにかく、自分で考えて何らかの答えを用意してくることが求められる。
先生が入手しづらい資料をpdfで提供してくださるなど、学生への配慮も十分になされていた。

実際の事例がほぼそのままの形で用いられ、またそれを実際に担当した実務家教員から話を聞くことができる、貴重な授業である。
また、学者−実務家間の議論も活発になされ(オブザーバーの森田修先生の質問から、学生を置いて議論が白熱することも)、学問としての倒産法分野に関心を持った方、将来実務で倒産法を専門にしたいと考えている方、いずれにとっても(負担は大きいが)得るものの大きい授業だと思う。

試験等は課されないが、冬休みに予習の一環としてペーパーを提出したことがあった。
最終回には、ゲストスピーカーとして裁判官(東京地裁民事20部の方)の話を聞く機会も設けられた。
ちなみに、全回とも一人の欠席者もなかった(一度も休んではいけない、という緊張感のある授業だったということでもある)。

成績評価は、基本的に毎回の発言等の平常点でつけられているはずである。
他の受講者の成績はあまり把握していないので、授業についていければ単位の心配はしなくてよい、くらいのことしか言えない。



2007年度冬学期

本年も選抜が行われた。選抜の倍率は1.5〜2倍程度で、基本的に前年度の倒産民事執行法(現・倒産法)の成績がA+又はAの者が選抜対象とされたようである。

授業形式については2005年度冬学期についての紹介の通りであり、初回で配布されたCD-R所収の資料を元に、実務・学説における最先端の問題を生の事例を通じて学ぶことができる。実際の事件に関する資料を元に、申立代理人の立場として、管財人(監督委員)の立場としてどのように行動したのか、というお話を聞くのは非常にエキサイティングな体験である。

毎回の教材にクエスチョンが用意されており、これについて自分なりの回答を用意して授業に臨むことで授業が進められる。例外として、倒産租税についての回と否認権についての回では割り当てが決められた。また、冬休み明けの回では相殺権についてのレポートがそれぞれに割り当てられた。また、本年も最終回では東京地裁民事第20部の裁判官の話を聞く機会が設けられた。

ある教授がこの授業を評して「東大ローの黎明期における実務と学問の架橋たる試みのうち最も成功したものの一つとなるであろう」と語ったとされるが、まさにその評にふさわしく、毎回の負担はそれなりにあるが、学ぶところの多かった授業であった。


このように素晴らしい授業であったが、誠に残念なことに、2008年度は都合により開講されない見通しである(正式な情報は今後発行されるシラバスで確認のこと)ため、選択・必修科目の実務系科目の履修計画については留意されたい。これは実務家教員の会務多忙化に伴うものであるが、それだけ一流の実務家によってこの授業が運営されてきたことの証でもあり、再度の開講が待たれるところである。
2008年02月05日(火) 11:19:11 Modified by lstanpyo2007




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