11p〜
内臓を喰い千切り、小腸から大腸にしゃぶりつく、そっと、血管を辿る指先すら愛おしい。
微かな満足感と埋まらない空虚感に、迸る狂気は、彼の生き様を映し出す。もう、言葉を紡ぐことは出来ないその口で、何を亡骸は思うのか。
割れた頭蓋を見渡す。そんな事は今更、どうでも良かった。嘲笑うかの様な無意味な笑いを零さずにはいられなかったのだ。こうも滑稽ったとは。
この時ばかりは生への執着心すら無駄だと思うのだ。無感情、無意味、無反応、それで良い。意味なんか微塵も必要が無い。
ほんの僅かな希望すらも真っ黒く塗り潰してやりたくなる。絶望、正にその言葉が彼にはお似合いだった。
一気に活動を始めた眼球は痙攣を起こし、血走るその瞳には本来、何を写すべきなのか。
もう、動かない亡骸?これから、起きる残酷で耐え難いリアル?向き合わなければリアルには近けない。
現実に困惑し飲み込まれる前に。
アレンは、あの悪魔との契約を交わすとナノマシンを埋め込まれ、DNA情報を奴らに全て提示させられた。
その代わり、「シドとの接触を図る」と言うのを理由に施設での、拷問からは逃げ出せたのだった。
当時の事は今でも、夢に見る。
息が出来ぬ程の恐怖に焦燥感すら覚える。でも、これが、現実。実際は浅い眠りから醒めただけだったのだ。
隣で寝ている彼女に伝言のメモを残そうと、ガサガサとペンを探していると彼女が起きた。
「あら、起きたの?坊や…」
物音で目が醒めた彼女は、気怠そうな声を漏らしたのだった。
彼女とは昨日知り合ったばかり、まだ、一晩、共にしただけの関係だが、根無し草な彼には帰る場所がなかったので、身売りする事を条件とし置いて貰っている。
−アレン「うん。ちょっと、出掛けたい所があるんだけど、良いかな?」
「良いけど、夜には帰って来て呉れるんでしょう?また、可愛がってあげるから。」
女は怪しげな笑みを浮かべ、アレンに言い寄って来る。
勿論、アレンはペット同然で女にで飼われる事を望んでいるので、喜んで条件を飲む。
−アレン「うん。分かった。」
そう言うと、彼は部屋を後にするのだった。
シドとの待ち合わせ場所向かう足取りは重いが、アレンは純粋にシドの事が友達として好きで、マイクの経営しているバーや食事等を繰り返して仲を深めていた。
−シド「アレン、また、遅刻。ケンジさんには一応、メール送っておいたけど…大丈夫かな?」
−アレン「本当にごめん!!」
アレンは申し訳なさそうに頭を垂れると、そんな、姿に同情したのかシドは彼の腕を引っ張り「早く、店に急ごう!」と走り出した。
汚い路地裏を掻き分け、人混みを掻き分け、いつものVIPルームへと足を踏み入れた途端、アレンの鼻先をビール瓶が掠め、破壊的な音と共に勢い良くビールが顔に掛かる。
−キャンダイス「ディビス!!テメェ、マイクさんの差し入れのボトルに、あたしより先に手ぇ付けるって良い根性してるじゃねぇえかァアッ!!」
今までにもこの二人の喧嘩は度々、目の当たりにしてるが、今日は豪い権幕のキャンダイス。
アレンはすっかり、へたり込んで仕舞い、顔を青白くしている。
そんな、アレンを達にケンジとゴメスが気付きケンジが場の雰囲気にはそぐわない様な元気スマイルでシドとアレンを招き入れる。
−ケンジ「あ、シドとアレン来て呉れたんだね。まあ、いつも通り騒がしいけど、ゆっくりして行ってよ。」
ゴメスは軽々と足の立たないアレンを抱えて、椅子に座らせる。
椅子にしがみ付くように着席するアレン、そんな、アレンを見てゴメスは申し訳なさそうにフライドポテトを差し出すと、
−ゴメス「ディビス…キャンダイスより先に…オーナーさんからの差し入れに手を出した。」
−シド「救い様がないね。」
−ケンジ「今回ばかりは…仲裁にも入れないよ。」
ふうっと溜息を吐き、苦笑するケンジ。
そんな中、シドは、まだ、ジョナサンが居ない事に気付く。
−シド「あれ、ジョナサンは?まだ、来てないの?」
−ゴメス「…買い出し中。」
−シド「そっかぁ。ってかアレン大丈夫?」
−ケンジ「あ、アレン顔切れてるよ?さっきのビール瓶で、切ったのかな?」
−アレン「いや、もう、大丈夫。」
やっと、復帰したアレンはゴメスが取り分けて呉れたポテトにそっと、手を伸ばす…
と、ディビスがポテトの皿に顔面から派手に突っ込む。
−ディビス「キャンダイス…もう、勘弁して呉れよ!!確かに、俺が悪かったからさぁ!!」
−キャンダイス「あたしがどんだけマイクさんを尊敬してるか知ってるだろ!?そんな、マイクさんの差し入れをあたしを差し置いて先に…」
再び、別の瓶が構えられた。
一方的にぶちのめされるデイビスが流石に可哀想になり見兼ねたシドがキャンダイスに声を掛ける。
−シド「こんにちは。キャンダイス。あ、こんばんはかな…?今日は呼んで呉れて有難う。」
−キャンダイス「あ、シドじゃねぇか!!待ってたぜー!!」
鬼の顔からコロッと表情を変えて天使の様な笑顔に変わるキャンダイスの七変化。その姿を、目の当たりにしたアレンは、
「絶対、彼女の機嫌をこれ以上損ねる真似はしない様にしようと」心に誓うのだった。
−ゴメス「ディビス、シドに感謝…」
−ディビス「はぁはぁ…マジで殺されるかと思ったぜぇ〜ってか、ケンジにゴメス!!テメェなんで止めに入らねぇえんだよ!?」
−ケンジ「ははっ…救い様のない馬鹿が一人くたばってもアンセムは変わらないしね。死体くらいは葬ってあげるけど。」
笑顔で強烈な毒舌を吐くケンジにぎょっとする、メンバー一同。
息を切らしながら、「ちっ」と舌打ちをし、アレンの隣に着席するディビス。
隣のアレンに気付いたらしく、早々と絡みに掛かる。
−ディビス「アレン!!こんな、哀れな俺を慰めに来てくれたのか?」
−アレン「キャンダイスさんの前では、そういうのは無しの方向で…」
アレンのVIPルームへの立ち入りも、未だにキャンダイスは良くは思っていないらしいのだが、
僕やケンジやゴメスの説得もあってか、何とか初対面の時の様な扱いを受ける事はなくなっては来た。
相変わらず、ディビスはアレンの事が気になる様子ではあったが、彼の場合は、何処までがジョークなのか、逆に何処までが本気なのか分からない事が多々ある。
−ディビス「んなこと言うなってっ!!俺と楽しい事しねぇ?」
アレンの腰を自分の方へと引き寄せるディビスと、口では「勘弁して下さい」と言うアレンだが、満更でもない様に見えるのは、
僕だけではなかった様で、キャンダイスがいる方から一枚の大きなピザまで投げられる始末。
内臓を喰い千切り、小腸から大腸にしゃぶりつく、そっと、血管を辿る指先すら愛おしい。
微かな満足感と埋まらない空虚感に、迸る狂気は、彼の生き様を映し出す。もう、言葉を紡ぐことは出来ないその口で、何を亡骸は思うのか。
割れた頭蓋を見渡す。そんな事は今更、どうでも良かった。嘲笑うかの様な無意味な笑いを零さずにはいられなかったのだ。こうも滑稽ったとは。
この時ばかりは生への執着心すら無駄だと思うのだ。無感情、無意味、無反応、それで良い。意味なんか微塵も必要が無い。
ほんの僅かな希望すらも真っ黒く塗り潰してやりたくなる。絶望、正にその言葉が彼にはお似合いだった。
一気に活動を始めた眼球は痙攣を起こし、血走るその瞳には本来、何を写すべきなのか。
もう、動かない亡骸?これから、起きる残酷で耐え難いリアル?向き合わなければリアルには近けない。
現実に困惑し飲み込まれる前に。
アレンは、あの悪魔との契約を交わすとナノマシンを埋め込まれ、DNA情報を奴らに全て提示させられた。
その代わり、「シドとの接触を図る」と言うのを理由に施設での、拷問からは逃げ出せたのだった。
当時の事は今でも、夢に見る。
息が出来ぬ程の恐怖に焦燥感すら覚える。でも、これが、現実。実際は浅い眠りから醒めただけだったのだ。
隣で寝ている彼女に伝言のメモを残そうと、ガサガサとペンを探していると彼女が起きた。
「あら、起きたの?坊や…」
物音で目が醒めた彼女は、気怠そうな声を漏らしたのだった。
彼女とは昨日知り合ったばかり、まだ、一晩、共にしただけの関係だが、根無し草な彼には帰る場所がなかったので、身売りする事を条件とし置いて貰っている。
−アレン「うん。ちょっと、出掛けたい所があるんだけど、良いかな?」
「良いけど、夜には帰って来て呉れるんでしょう?また、可愛がってあげるから。」
女は怪しげな笑みを浮かべ、アレンに言い寄って来る。
勿論、アレンはペット同然で女にで飼われる事を望んでいるので、喜んで条件を飲む。
−アレン「うん。分かった。」
そう言うと、彼は部屋を後にするのだった。
シドとの待ち合わせ場所向かう足取りは重いが、アレンは純粋にシドの事が友達として好きで、マイクの経営しているバーや食事等を繰り返して仲を深めていた。
−シド「アレン、また、遅刻。ケンジさんには一応、メール送っておいたけど…大丈夫かな?」
−アレン「本当にごめん!!」
アレンは申し訳なさそうに頭を垂れると、そんな、姿に同情したのかシドは彼の腕を引っ張り「早く、店に急ごう!」と走り出した。
汚い路地裏を掻き分け、人混みを掻き分け、いつものVIPルームへと足を踏み入れた途端、アレンの鼻先をビール瓶が掠め、破壊的な音と共に勢い良くビールが顔に掛かる。
−キャンダイス「ディビス!!テメェ、マイクさんの差し入れのボトルに、あたしより先に手ぇ付けるって良い根性してるじゃねぇえかァアッ!!」
今までにもこの二人の喧嘩は度々、目の当たりにしてるが、今日は豪い権幕のキャンダイス。
アレンはすっかり、へたり込んで仕舞い、顔を青白くしている。
そんな、アレンを達にケンジとゴメスが気付きケンジが場の雰囲気にはそぐわない様な元気スマイルでシドとアレンを招き入れる。
−ケンジ「あ、シドとアレン来て呉れたんだね。まあ、いつも通り騒がしいけど、ゆっくりして行ってよ。」
ゴメスは軽々と足の立たないアレンを抱えて、椅子に座らせる。
椅子にしがみ付くように着席するアレン、そんな、アレンを見てゴメスは申し訳なさそうにフライドポテトを差し出すと、
−ゴメス「ディビス…キャンダイスより先に…オーナーさんからの差し入れに手を出した。」
−シド「救い様がないね。」
−ケンジ「今回ばかりは…仲裁にも入れないよ。」
ふうっと溜息を吐き、苦笑するケンジ。
そんな中、シドは、まだ、ジョナサンが居ない事に気付く。
−シド「あれ、ジョナサンは?まだ、来てないの?」
−ゴメス「…買い出し中。」
−シド「そっかぁ。ってかアレン大丈夫?」
−ケンジ「あ、アレン顔切れてるよ?さっきのビール瓶で、切ったのかな?」
−アレン「いや、もう、大丈夫。」
やっと、復帰したアレンはゴメスが取り分けて呉れたポテトにそっと、手を伸ばす…
と、ディビスがポテトの皿に顔面から派手に突っ込む。
−ディビス「キャンダイス…もう、勘弁して呉れよ!!確かに、俺が悪かったからさぁ!!」
−キャンダイス「あたしがどんだけマイクさんを尊敬してるか知ってるだろ!?そんな、マイクさんの差し入れをあたしを差し置いて先に…」
再び、別の瓶が構えられた。
一方的にぶちのめされるデイビスが流石に可哀想になり見兼ねたシドがキャンダイスに声を掛ける。
−シド「こんにちは。キャンダイス。あ、こんばんはかな…?今日は呼んで呉れて有難う。」
−キャンダイス「あ、シドじゃねぇか!!待ってたぜー!!」
鬼の顔からコロッと表情を変えて天使の様な笑顔に変わるキャンダイスの七変化。その姿を、目の当たりにしたアレンは、
「絶対、彼女の機嫌をこれ以上損ねる真似はしない様にしようと」心に誓うのだった。
−ゴメス「ディビス、シドに感謝…」
−ディビス「はぁはぁ…マジで殺されるかと思ったぜぇ〜ってか、ケンジにゴメス!!テメェなんで止めに入らねぇえんだよ!?」
−ケンジ「ははっ…救い様のない馬鹿が一人くたばってもアンセムは変わらないしね。死体くらいは葬ってあげるけど。」
笑顔で強烈な毒舌を吐くケンジにぎょっとする、メンバー一同。
息を切らしながら、「ちっ」と舌打ちをし、アレンの隣に着席するディビス。
隣のアレンに気付いたらしく、早々と絡みに掛かる。
−ディビス「アレン!!こんな、哀れな俺を慰めに来てくれたのか?」
−アレン「キャンダイスさんの前では、そういうのは無しの方向で…」
アレンのVIPルームへの立ち入りも、未だにキャンダイスは良くは思っていないらしいのだが、
僕やケンジやゴメスの説得もあってか、何とか初対面の時の様な扱いを受ける事はなくなっては来た。
相変わらず、ディビスはアレンの事が気になる様子ではあったが、彼の場合は、何処までがジョークなのか、逆に何処までが本気なのか分からない事が多々ある。
−ディビス「んなこと言うなってっ!!俺と楽しい事しねぇ?」
アレンの腰を自分の方へと引き寄せるディビスと、口では「勘弁して下さい」と言うアレンだが、満更でもない様に見えるのは、
僕だけではなかった様で、キャンダイスがいる方から一枚の大きなピザまで投げられる始末。
このページへのコメント
有難う(*´σー`)
アンセムは書いててすっきりする。(笑)
やっと、息が出来る所みたいなね。
おもしろいな!