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5p〜

夜になると彼の元へ男は帰って来た。
快楽を求めて。

自分は利用されているのだと、知りながら受け入れるアレン。
だが、行為の最中アレンは「愛撫の仕方が悪い」と下腹部に蹴りを入れられ、顔面を殴打され、
美しいその顔は醜く腫れ上がり、皮膚の下は寄生虫が這いずり回った様に鬱血し、吐血を繰り返した。
「何が悪かったのだろう…」と思い詰めていると、涙が溢れて来た。殴られた事が辛かった訳じゃない。
受け入れて貰えなかった事実が心苦しいのだった。

歪んでしまったアレンの顔を伝う涙を見て満足した男は彼の元を去ろうと立ち上がり、アレンは「また、置いていかれる事に」頭が真っ白になった。
男に必死に縋ると、さも当たり前の様にアレンに責め苦を与え続けるつもりなのか、自身のベルトでアレンを縛り上げると、アレンの形相が変わった。いや、変わったと言うより変貌した様にも見えた。彼は男の唇を食い千切り、原型がなくなる位に顔面を食い潰した。その、ガツガツと貪り、しゃぶり付く姿はまるで悪魔其の物だった。男は余りの驚きに断末魔さえ上げられずに、くたばった。惨たらしくも残酷な彼の愛の形かも知れない。「愛されないなら一層の事、愛し殺して仕舞おう。」そんな、欲望は醜く形を歪め押し出されたのだ。







 途方に暮れていた。
男の血肉に汚れたシーツに包まれ、涙を零したシーツは涎や吐瀉物に塗れて異臭を放っていた。
何度も何度も吐き出し、胃液が出るまで吐き続けた。吐き出しても茶色い胃液が排出されるだけで、彼が元の姿を見せて呉れる訳はないのに。
それでも、吐き出した。喘ぎ嗚咽していると、男が飼っていたと思われる1匹の猫が擦り寄ってきた。

彼は今まで猫などに興味は湧かなかったが、このタイミングで擦り寄られてくると運命とは思わずには居られなかったのだろう。

彼は口を拭い汚れて仕舞った猫と一緒にシャワーを浴びて、男のちょっと大きめのシャツとスキニーパンツを纏って猫と共に街へ飛び出す。
彼には帰る家などない。帰って行ける人も、迎え入れて呉れる人も居ないのだ。
今までの経験上、アレンの身体以外が目的で近付いてきた者など居ない。この子、以外は…
そんな事をぼんやりと考えていると、この子が心から愛おしく思えて来た。






雨が降り止まないマンハッタンの空は冷たい。
一人猫を抱えて路地裏を歩いていると、一軒のバーが見えて来た。
店先で慌てて電光看板をの片付けに励む男と視線が合うと、男はこちらに駆け寄って来たが、男に特別不信感は抱かなかった。

ーマイク「何やってんだ!ぼっとしてないで店に入れ。風邪をひくだろ?」

誘われてるかと思い言われるがまま、店の奥に入っていくが「どうせ、自身の身体目的なのか」と思うと切なくなる。
すると、意外な事に男は一緒に居た猫の方を抱き上げ優しくタオルで拭いてやり、アレンと猫を暖のある場所へと導くと、はっとした様に侘びを入れたのだ。


ーマイク「すまん。猫の事になるとついな…ほら、タオル使え。このままじゃ、本当にかぜをひく。」

差し出された洗い立てのタオルを受け取ると、マイクは葉巻にを口元へ持っていき、ジッポーライターで火を灯した。その、仕草に見惚れた。
今まで自分を誘う目的以外で連れ込んだ男は初めてなのだ。懸命にその仕草を見ているアレン。その、熱い視線に気付いたマイクは冗談っぽく笑うのだった。

マイク「おいおい…お前さんみたいな綺麗な男でも俺は男には興味がない。」

冗談ぽく笑うその仕草も堪らなくアレンの心を擽る。最初は身体目的なのだと決め付けていた男の印象が変わった。自分を組み敷く男も女も腐る程いたが、興味がないと言われたら言われたで悲しくなる。今までは自分に少なからず興味を持たない人間には出逢った事がなかったので、こうも無視をされると気分が悪い。この、感覚はナルシストと取れるのだろうか?
そんなアレンは、マイクにとことん構って欲しくなった。自分を受け入れて欲しい。その感情が剥き出しになり、アレンは服が濡れて重いからと気だるそうに言うとその場で脱ぎ始めた。

マイク「おい。常識ってものがないのか?お前さんは…それとも、誘ってるのか?悪いが本当に興味がないんだ。」

半ば呆れ気味のマイクは眉間に皺を寄せ、煙草の煙を嫌悪する様に吐き出すと、渋々と腰を上げ着替えを用意しに行って呉れたのだ。
アレンは唖然としてしまった。人間なんか男にも女にも限らず、服の一、二枚脱げば自分のモノになって呉れると勘違いしていたことを今になって思い知らされる。
でも、そんなマイクに初めて興味が湧いた。

−アレン「名前…教えてよ…」

−マイク「そっちから、名乗るのが筋じゃないか?先ずは自分から名乗れ。」

素っ気無く返すこの態度が堪らなくアレンの心を揺さぶる。
一瞬、目を泳がせ俯くアレンとは対照的に真っ直ぐ見返すこの男、非常に魅力的な雰囲気を漂わせているのを、本能で感じるアレン。

−アレン「俺はアレン。あんたは?」

−マイク「マイクだ。…ったく良いから服を着ろ。俺は美女の裸しか見ない主義でな。何度も言うが、野郎には興味がない。」

きっぱりと言い終えると、マイクはバスタオルをアレンの頭に投げ付け、アレンの頭には無様にもバスタオルが降って来た。
早々と部屋を出るマイク、だが、彼は「出て行け」とは一言も言わない。

初めてアレンは人に「受け入れて欲しい」と心の底から感じたのだった。


 用意された服に着替えて、猫と戯れていると、マイクが珈琲を持ってやって来た。相変わらず、距離感は置かれて警戒はされているが、
それすらも心地良く感じるこの空気。

−マイク「お前、飯は何を食うんだ?」

煎れ立ての珈琲の湯気と香りを楽しみながら、マイクを見返すと、そこには眉を寄せて如何にも嫌そうな顔をしたマイクが居た。

−アレン「俺は肉しか食えない。でも、今はマイクと話したいかな?」

「そうか」と呟くと隣に座るマイクから香る先程の葉巻の匂いに少しだけ、擦り寄ってみる。
マイクはアレンの何かに気付いたのか嫌がる素振りは見せない。多分、それはきっとアレンから染み付いて離れない死臭。
彼を出来る範囲で受け止める覚悟くらい彼は持っていたのだろう。

−マイク「お前が連れてきた猫はスティーブンの飼っていた猫だな。どういう、関係だ?」

−アレン「俺の元恋人。でも、なかなか俺を理解してくれなくて食べちゃったんだ。それで、途方に暮れてたら、猫が擦り寄ってきて、せめてこの子だけはって…愛してたから。」

躊躇いはなかった。寧ろ、そんな自分を理解して欲しい一身でマイクに打ち明けた事に脚色はなかった。
今は、本心で名前のないあの子は大切にしてやりたいと思っていたからだ。その思いが通じたのかマイクは柔らかい表情を見せ。

−マイク「猫は良いだろ。気まぐれでマイペースで、でも、愛情を込めれば応えてくれるし、懐いても呉れると俺は思ってる。俺の大切な家族だ。」

その、マイクの自信に溢れる、佇まいに何処か影が差した気がした。
彼が猫を愛する気持ちには揺ぎ無いものを感じるのに…そこに、一瞬アレン自身が抱えている「孤独感」を感じたからだ。
一見、完璧過ぎるこの男にも自分と同じような弱い部分があるのだと分かると、ついつい弱音を吐いてしまった。

−アレン「俺は…家族も居ないし、恋人も失った。また、あの頃の様に堕落した生活は送りたくないのに。埋まらないんだよ。
     毎日、違う女や男に抱かれるのも心地の良いものではないって分かってる…けど…」

そこで、言葉が詰まってしまった。溢れ出してしまった感情の制御は出来ないのだ。
涙が溢れ、誰かに縋らずには居られなかったのだ。恋愛感情かどうかはアレン自信にも分からないが、マイクは肩を優しく叩き励ましてくれのだった。
アレンの弱い部分を初めて受け入れて呉れたのは彼だけだった。

そして、今まで得ることが出来なかった「パズルのピース」を見付けられた様な気がしたのだった。

7p〜

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