《リン地蔵 》
あるところに、貧乏だけれど、とても仲のよい、美少女さゆみんと、居候のれいなとジュンジュンがいました。
今日はクリスマス。でも貧乏な3人には、食べるお米もありません。
「いいこと考えた!さゆみが作ったうさちゃん帽子を町まで売りにいくの!」
とさゆみんは、帽子をしょって町へむかいました。しかし、帽子は一つも売れませんでした。
「これじゃジュンジュンにバナナも買ってあげられないの…。でもジュンジュンがどうなってもいいか。れいなには…適当に謝ろう。じゃ、帰ろうっと」
そう言って、さゆみんは来た道を引き返しました。
帰り道、チラチラと降っていた雪がどんどん強く降ってきました。
「これは急いで帰らなきゃなの」
足を早めたさゆみんは、道端に六つの可愛いリン地蔵さまを見つけました。
「可愛い…。さゆみの次に可愛いの!みんな美人さんのお地蔵さまなのに、こんなに寒そうでかわいそう…」
そう言って、リン地蔵さまの頭の上の雪をはらいおとし、売り物のうさちゃん帽子をかぶせてあげました。

「これでもっと可愛くなったの!」
美少女に目がないさゆみんは、ご満悦です。
一つ一つかぶせていくと、六つ目のお地蔵さまの所で帽子が足りなくなってしまいました。帽子は五つしかなかったのです。
「これは困ったの…。あ、そうだ!」
なんとさゆみんは、自分のはいていたパンツを脱いで、六つ目のリン地蔵さまにかぶせてあげました。
「脱ぎたてだからあったかいと思うの…」
少し顔を赤らめてリン地蔵さまを見つめると、さゆみんは満足そうに帰っていきました。

家に帰るとれいなが出てきて、雪だらけのさゆみんを見てびっくりしました。
「あれ、さゆどうしたと?あ、帽子持ってないってことはもしかして完売!?」
「ううん、帽子はぜんぜん売れなかったんだけど、途中リン地蔵さまがあまりにカワ…いや、寒そうだったから、帽子をかぶせてきちゃったの。何も持って帰れなくてごめんね♪」

さゆみんは極上の笑顔で言いましたが、当然れいなは怒りました。
「はあ!?なんそれ、うちらのご飯は!?」
「おなかすいたダ…」
「文句があるなら二人も働きなさいなの」
さゆみんは逆ギレしました。れいなとジュンジュンはニートだったのです。
その日3人は、ポン酢をお湯で割ったものをすすって、薄い布団ではやめに寝ました。


次の日、まだお日さまもあがらない頃、外で大勢の声がしました。
「バッチリデス!ハハハ!」
「バッチリデス!ハハハ!!」
3人は、その声に目をさましました。
「何だろう…?」
戸を開けてみると、ビックリ。外には、パンツをかぶった可愛い女の子が立っていました。
そして向こうを見てみると、うさちゃん帽子をかぶった五人のリン地蔵さまが、雪の中へと消えていくのが見えました。
パンツをかぶったリン地蔵に奇跡が起きて、人間の姿になったのです。

「あなたのパンツ、あったかかったデス…。これから末永くよろしくお願いシマス」
「ああ…可愛い、なんて可愛いの!!」
さゆみんは、『リンリン』として生まれ変わった少女を抱きしめて、しあわせをかみしめました。
「…やばいよジュンジュン、変態が来たと。パンツかぶっとーよ」
「しかもあれ道重さんのパンツですな」
「あれも一緒に住むとかいな…?」
れいなとジュンジュンはどん引きです。
それでも、ニートなのでなにも言えませんでした。

そして4人になった一家はおおむね楽しく暮らしましたが、食いぶちが増えたせいでますます貧乏になりましたとさ。
めでたしめでたし。

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