<一寸れいな>

むかしむかし、あるところに、さゆみんとリンリンが住んでいました。
二人は同性婚で子どもがいなかったので、冗談で神さまにお願いしました。
「子猫くらいの小さい小さい子どもでもけっこうです。どうぞ、子どもをさずけてください」
すると、ほんとうにさゆみんから小さな子どもが生まれました。
びっくりしたリンリンが『どこで作ってきたのデスカ!』と怒ったので、一時は離婚の危機に見舞われましたが、さゆみんが『さゆみは美少女にしか興味ないもん』と胸を張ったので無罪放免となりました。

生まれた子供は、子猫サイズの女の子です。
ふたりはさっそく、れいなという名まえをつけてやりました。

ある日のこと、れいなは、さゆみんとリンリンに、こんなことをいいました。
「れいな都へ行って、ちょっと玉の輿狙おうかと思うと。旅のしたくをして欲しいっちゃ」
「れいなは運が悪そうだからやめたほうがいいよ」
さゆみんは的確なアドバイスをしましたが、れいなは怒りました。
「行くったら行くと!!玉の輿が無理やったら、ロト6で億万長者目指すと!!」
「ハイハイ、わかりマシタ」

仕方なくリンリンは、木を削って、れいなにちょうどピッタリの大きさの刀をつくってやろうと思いましたが、不器用だったので挫折。
代わりに、刀代わりの武器として、うまい棒を渡しました。
さゆみんは、もなかの皮を川に浮かベて、れいなの乗る舟をつくってやりました。
「ほら、このスプーンで舟をこいでおいで」
「じゃあ、いってくると!」
れいなは上手にもなかの舟をこいで都に出かけましたが、もなかは数分で溶けて転覆しました。
「さゆのアホーー!!」
れいなはどんどん川を流れます。
半ばずっと溺れていましたが、結果的に都にはつきました。

「はあ…ひどいめにあったと」
れいなは気を取り直して、都でいちばんりっぱな家をたずねていきました。
「たのもー、たのもー!」
「はーい。…あれ?」
出てきたのは、お手伝いの愛佳です。
愛佳は首をかしげました。
「なんや誰もおらんやないかい」
「ここっちゃ、ここ!!」
愛佳は玄関の靴の横に立っている、小さなれいなをやっと見つけました。
「なんやこの小さい人!」
「あぁ?なん言おーとやガキ」
れいなは小さいくせにガラが悪くて短気でした。
愛佳は少し怯みましたが、猫掴みでれいなをひょいと持ち上げると、そのまま家の中に連れ込みます。
「あっ!!何するっちゃ!!下ろして!下ろして!!」
「姫ー。なんか玄関に変な生き物がおったんやけど」
「なんダ?」
振り向いたのは、むっくりとした大きな姫。この屋敷の一人娘・ジュン子です。
ジュン子は、れいなを一目で気に入りました。
「カワイイ!!ペットにする!これペットにするダ!!」
「ギャー!!!」
そしてれいなはその日から、ジュン子のペットになりました。



ある日のことです。
れいなは、ジュン子のお供をして、おやつのバナナを買いに行きました。
するとその帰り道、突然でかい子供が出てきたのです。

「♪やきそばルンルンやきそばルンルン…ん?」
でかい子供はジュン子を見ると、指差してヘラヘラ笑いました。
「パンダ!パンダそっくり!!」
「むむー!」
子供は、普段からジュン子と仲の悪い、近所の小春でした。
れいなは『また始まった』と傍観していましたが、ジュン子はそれを許しません。
「やっつけて!このガキやっつけて!」
「ええっ!?れいながやると?」
仕方なくれいなは、リンリンにもらった刀(うまい棒)をかまえると、小春に飛びかかりました。
ところが、
「くれるの?ありがと〜!」
小春は、うまい棒をヒョイと取りあげると、むしゃむしゃ食べてしまいました。
「あっ!!れいなの武器が!!」
れいなは丸腰です。
にもかかわらず、相手が子供なので強気にキレました。
「あげるなんて言いよらんもん!返すっちゃ!れいなのうまい棒返すっちゃ!!」
「えー、だってもう食べちゃったもん」
困った小春は、ポケットから小づちを出しました。
「これ、ガキさんに頼まれて通販で買ったんだけど。効果なかったらしいからあげるよ」
そう言って小づちを渡すと、小春はヘラヘラ帰って行きました。


「なんねこれは」
「えーと、『振ると大きくなる』って書いてあるダ」
そこでれいなは、ジュン子に頼みました。
「それやったら、れいなの背がのびるように、『背出ろ、背出ろ』って言いながら振ってほしいと!」
「わかったダ」
ジュン子は喜んで、打ち出の小づちをふりました。
「背出ろ、背出ろ」
「背出ろ、背出ろ!」
するとふしぎなことに、れいなの体は、ふればふっただけグングンとのびて、普通の人間に近いサイズになりました。
「立派になったデスネ!あ、でも…」
ジュン子は、いまひとつ立派でない部分が気になって、もう一度小づちをふりました。

「胸出ろ、胸でろ!!」
「なっ」
ところが、それに関してはまったく変化が起こりません。
ジュン子は、ガキさんがこれを手放した理由を理解しました。

「でもとにかくこれで人並みになれたと!!」
「小さくても可愛かったデスケドナ」
それでもジュン子は、『このサイズなら体の関係も持てるナ』と考え直したので、今まで通り一緒に暮らすことにしました。

やがて二人は結婚し、れいなは念願通り玉の輿に成功しましたが、もなかの舟の件を根に持っていたので、一度も実家には帰らなかったそうです。

めでたしめでたし

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