《桃から生まれたリン子》

むかしむかし、あるところに、愛ちゃんとガキさんが住んでいました。
愛ちゃんは駅前留学に、ガキさんは川へ洗濯に行きました。
ガキさんが川で洗濯をしていると、バッチリンリン、バッチリンリンと、奇怪な音をたてて大きな桃が流れてきました。
「なにこれキモい」
慎重派のガキさんは、華麗にスルーしました。桃はそのまま流れていきます。その後順調に川を下った桃は、下流の駅前で愛ちゃんに発見されました。
「でっけぇ桃!うまそうやん!」
愛ちゃんは大きな桃をひろいあげて、家に持ち帰りました。

「なんで拾ってきちゃったの!」
もちろんガキさんは怒りましたが、愛ちゃんは人の話を聞かないので平気でした。
「いいかガキさん、そこに桃があるから食べるんや」
愛ちゃんが喜んで桃を切ってみると、なんと、中から小うるさい女の子が飛び出してきました。
「アァーせまかったぁ!窒息すると思いマシタ!しかも一回スルーされましたデスねハハハ!」
「…な、なにこれ!?」
「桃じゃないがし!!!」

桃を食べる気まんまんだった愛ちゃんはガッカリです。
しかたなく桃から生まれた女の子を、ガキさんは桃子と名付けようとしましたが、『その名前は何かとアレなのでリン子でお願いします』と訂正されました。

それからリン子はスクスク育って、やがて口達者でジョークの寒い美少女になりました。
そしてある日、リン子が言いました。
「ワタシ、うさちゃんヶ島へ行って、わるい鬼を退治してキマス」
「えー。……まあ、好きにしなよ」
愛ちゃんは放任主義でした。
ガキさんに土手のいらないもんじゃ焼きを作ってもらうと、リン子はうさちゃんヶ島へ出かけました。

旅の途中で、猫に出会いました。
「おうリン子、どこ行くと?」
「うさちゃんヶ島へ、鬼退治に行キマス」
「じゃあその明太子入りのもんじゃ焼きくれたら、仲間になってあげてもいいったい。ニヒヒ」
猫は上から目線で言いましたが、リン子は笑って言いました。
「結構デス」
「ちょ、なんで!?」
猫はさみしくなってしまったので、無理矢理リン子のおともになりました。

そして、こんどはパンダに出会いました。
「リン子どこ行くダ?」
「うさちゃんヶ島へ、鬼退治に行きマス」
「なら、そこにいる猫をくれたら仲間になるダ」
「えっ!?嫌たい!」
猫は怯えてリン子の後ろに隠れましたが、リン子は笑って言いました。
「猫はあげるケド、仲間になる件は結構デス」
「こらーー!!」
「アリガトウ」
猫をゲットしたパンダは、暇なので無理矢理リン子の仲間になりました。

こうして、猫とパンダの仲間を手に入れたリン子は、徒歩数分のうさちゃんヶ島へやってきました。
うさちゃんヶ島では、鬼のさゆみんが近くの村から盗んだお宝に囲まれ、誘拐した美少女をはべらせて、酒盛りの真っ最中です。
「悪そうな鬼っちゃね。このスキに倒しちゃろか」
れいなはそう言いましたが、平和主義のリン子はもんじゃ焼きを持って挨拶に行きました。
「初めまして、可愛い鬼さん。これはほんのお近づきのしるしデス。…それにしても、世の中にこんな可愛い鬼がいるなんて!ビックリンリンデス!!」
「そんな…本当のこと言われたら照れるの…」
さゆみんはリン子の巧みなトークにすっかりメロメロです。
この隙に、パンダは捕われの女の子たちを逃がしました。

「あなたの可愛さをアピールするためにも、こんな小さな島にいてはいけまセン。ワタシと一緒に村に行きまショウ」
「あなたがそこまで言うなら…」
「ありがとうございマス。では、荷物をお持ちシマス」
リン子は、パンダがこっそりお宝をつめこんでおいた荷車を引いて、さゆみんをエスコートしました。
リン子はとても口達者な上に、紳士だったのです。
ちなみにこの間、ビビりの猫はずっとパンダの陰に隠れていました。

そして、お宝を持った一同は、元気よく家に帰りました。
愛ちゃんとガキさんは、その姿を見てびっくりです。

「鬼じゃん!!なんで連れて来ちゃったの!?」
「存外いい人デシタ」
「うわー、お宝がいっぱいやよー」
「ふつつか者ですがよろしくなの」
めいっぱい嫌な顔をしていたガキさんですが、お宝と聞いて黙りました。
「ていうかこの猫とパンダはなに?」
「仲間ダ。一緒にお宝持ち出した」
「いい仕事したと」
二人は無い胸を張りましたが、慎重派のガキさんに『お引き取りください』と言われてへこみました。

そしてリン子は、鬼のさゆみんをお嫁さんにして、しあわせにくらしましたとさ。
めでたしめでたし

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