【さゆデレラ】
むかしむかし、とても可愛くて、ちょっと変わった娘・さゆデレラがいました。
しかし、お母さんがなくなってしまい、お父さんが二度目の結婚をしたので、さゆデレラには新しいお母さんのガキさんと、二人のお姉さんの絵里とれいなができました。


ガキさんは、自分の二人の娘よりも可愛い娘が気に入りません。
…というのは単なるうわさで、本当はさゆデレラとの接し方がガチでわかりませんでした。
なにせさゆデレラは、家の手伝いもせずに、女性アイドルのブログや写真集ばかり眺めていたのです。
「お母様、あの子なんか変だよ」
「ちょっとコワイっちゃ」
「…あの、さゆデレラ。それじゃ社会に出らんないじゃん?家事も出来るようになってよ」
三人は、さゆデレラのためにつらい仕事をみんな、さゆデレラに経験させました。
また、ナルシストぎみだったさゆデレラが自意識過剰にならないように、寝床は粗末なわらぶとんに。
着る物も、つぎあてだらけのものを着せました。
ガキさんは大変苦労しましたが、なんとかそれでも、さゆデレラが普通の女の子になるようにしつけました。

ある日のこと、お城の王子さまが、お嫁さん選びの舞踏会を開くことになり、絵里やれいなたちにも、招待状が届きました。
二人は、大はしゃぎです。
「モテまくると!」
「食べまくるよ!」
さゆデレラはお姉さんたちのしたくを手伝い、ニッコリ笑って送り出しました。
というのも、さゆデレラは圧倒的に女の子が好きだったので、王子様に興味がなかったのです。
けれど、一人になってからふと気づきました。
「そうだ!舞踏会って、綺麗な女の子がたくさんいるんじゃないの!?うわあぁぁ行けばよかったぁぁ!!」



それから悲しくなって、シクシクと泣きだしました。
「やなのやなの!こんな素敵な機会を逃すのはやなの!…でも招待状もないし…」

「泣くのはやめるダ、さゆデレラ」
「…?だれ?」
さゆデレラの目の前に、中華風でパンダっぽい、妖精ジュンジュンが現れました。
「さゆデレラ、あなたはだいぶ、社会不適合が直ってきましたネ。ごほうびに、舞踏会へ行かせてあげまショウ。まず、畑でカボチャを取ってくるダ」
「わかった!」
そう言ってさゆデレラは畑へ飛び出しましたが、時期はずれだったせいかカボチャは見つかりませんでした。
「ごめん…ネギしかなかった…」
「あ、ソウデスカ…まあやってみます…」
ジュンジュンがとりたてのネギを杖でたたくと、なんと、某国風のミサイルっぽい乗り物になったではありませんか。
「まあ、立派な…馬車…?す、すてき…」
「…無理しなくてイイデス」

ジュンジュンの予定ではカボチャの馬車とネズミの御者を用意するつもりでしたが、これでは計画を変更せざるをえません。
「じゃあもう仕方ないからこれに乗ってください。ジュンジュンが魔法でお城の庭に飛ばします」
「ありがとう…。…でも、こんなドレスじゃ美少女はひっかけられないの」
「うん?ああそうデスネ、では…エイッ!!」
ジュンジュンが杖を一ふりすると、みすぼらしい服は、たちまちセクシーエロガーターつきの美勇伝衣装に変わりました。
そしてなぜか、ジュンジュンは勝負パンツもくれました。
「楽しんでクダサイ、さゆデレラ。でも、ワタシの魔法は十二時までしか続かない。決してそれを忘れないでネ」
「うん、いってきます!!」

さて、お城の大広間にさゆデレラが現れると、そのあまりのいかがわしさ…いや、セクシーさに、あたりはシーンとしずまりました。
それに気づいた王子が、さゆデレラの前に進み出ました。
「…あの、他の方がビックリしますので…大広間への出入りは遠慮していただけませんカ?」
みんなの憧れ、イケメンのリン王子です。
さゆデレラは一瞬『なんだ男か』と思いましたが、直感的に気がつきました。
「…これは…違うの!!あなた…女の子でしょ!」
「エッ!?なぜそれを!!」

そうです。
リン王子は実は女の子でしたが、男の子として育てられていたのです。
なので舞踏会の度に偽装結婚の相手を探していましたが、リン王子が女の子と知ると、みんな逃げ出してしまっていました。

「お願いシマス!一部の人間しか知らないことナノデ国民にはまだ秘密にしてクダサイ!」
「ふふふ、いいよ。その代わり、一緒に踊ってよ」

リン王子はよく見ると、さゆデレラの好みどストライクでした。
半ば脅迫する形で、さゆデレラはリン王子とのダンスを楽しみました。
そして、リン王子もさゆデレラから放たれるエロスが濃厚過ぎて、だんだん夢中になっていきます。お互い手が放せません。
楽しい時間は、あっというまにすぎて、ハッと気がつくと、十二時十五分前でした。
「あっ、いけない…おやすみなさい、王子さま。とても楽しい夜でした」
「アアッ…あの、そういえばまだ名前も…」
さゆデレラはリン王子の頬にキスすると、急いで出ていきました。
ですが、あわてた拍子に階段にひっかかって、胸元に入れていた勝負パンツを落としてしまいました。
でも、取りに戻る時間がありません。
さゆデレラは城の庭に突き刺さっていたミサイルに駆け寄りました。
「妖精さん、おうちに帰して!」
…が、勤務時間外だったのでジュンジュンは現れません。
仕方なく、徒歩で家へ帰りました。

一方リン王子は、さゆデレラが帰った後も、可愛くてセクシーなさゆデレラを忘れることができません。
「…決めた!ワタシこのパンツの持ち主と結婚シマス!」
そこで王子自ら国じゅうを駆け回り、手がかりのパンツの持ち主を探しました。
しかし、どこへ行っても『舞踏会でパンツを落とすような恥ずかしい人はここにはいません』と言われてしまいました。
そして、王子はさゆデレラの家にもやってきました。


「…あの、なんか王子様が落とし物のパンツの持ち主と結婚するって言ってるんだけど。なんだと思う?」
事情を聞いたガキさんがそう言うと、絵里は渋い顔をしました。
「…王子様って、もしかして変態?」
「う、うーん…ああでも、持ち主ですって言えば王子と結婚できるかもよ?」
「そっか!じゃあれいなが行くと!」

姉のれいながパンツの持ち主と名乗り出ましたが、リン王子はれいなを上から下まで眺めると、ぽつりと言いました。
「…あの人はこんなに貧乳じゃなかった思いマス」
「キーーッ!!なん言おーと!!」
あっさり見抜かれたので、仕方なく絵里が名乗り出ました。

「ん…ちょっと雰囲気違う気もしますが、本人と言うならソウデスネ!結婚してクダサイ!!」
「はい!!」
こうして無事婚姻手続きに移りましたが、『実は王子は女です』との事実を伝えたところ、絵里は死ぬほどがっかりしました。
「…あの、絵里そういうんじゃないんで。ホントすみません無理です」
「エエーまた破談!?」

リン王子がうちひしがれていると、そこにさゆデレラが現れました。

「あ!!それさゆみのパンツ!!」
「「「えっ!?」」」
さゆデレラが声高に主張すると、お姉さんたちは驚きました。
「なに言っとーと?さゆデレラは舞踏会行かなかったっちゃん」
「行ったの!!ちょっとじゃあそれ貸してよ!」
さゆデレラが急いでパンツをはいてみると、ピッタリです。
しかし、潔く全裸になってのパンイチだったので、お姉さんたちは『やっぱりこの子おかしい』としみじみ思いました。


「お、ワタシの出番ですカナ?」
そこへ、あの時のパンダ妖精が現れました。
残業代が出ると聞いて、働く気になったのです。
ジュンジュンが杖を一ふりすると、さゆデレラは舞踏会と同じ、無駄にエロい衣装に変身しました。

「アア!あなたはあのときの!!」
「さゆみの王子様…v」

王子を見つめるさゆデレラはラブビーム出しまくりです。
すると絵里が横から口を挟みました。

「…盛り上がってるとこ悪いけど…。さゆデレラ、この王子様は女の子なんだってよ?」
妹を案じての発言でしたが、さゆデレラは真っすぐな瞳でリン王子を見ました。
「当然なの!だってさゆみは美少女が大好物なんだもん!!なんの問題もないの!」
「あ…そうですか…」

リン王子も含め、その場の全員がちょっと引きましたが、さゆデレラは幸せでした。

それからリン王子は、さゆデレラと偽装結婚しました。
しかし、偽装なんて嫌なの、本気で愛し合いたいの、と言い張るさゆデレラとうっかり体の関係になってしまい、リン王子は毎晩毎晩求められてすっかり痩せこけてしまったそうです。


めでたくなしめでたくなし

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