【美女と淫獣】

むかしむかし、あるところに、商人の愛ちゃんが三人の娘・アイカ・ジュンジュン・リンリンとくらしていました。
娘達はどう見ても美人3姉妹でしたが、小うるさいせいか町の評判にはなりませんでした。

ある時、愛ちゃんが仕事で近くの町ヘ出かけることになると、アイカがいいました。
「おみやげに檜の木魚を買うてきて!」
すると、ジュンジュンも、
「木彫りのバナナが欲しいダ」
と、ねだりました。
「…わかった、まかせるやよ」
木彫りのバナナを何に使うつもりなのか激しく気になりましたが、愛ちゃんはあえてききませんでした。
「で、リンリンは何が欲しい?」
「ワタシはそういうのは別に」
「ええやん、なにかひとつくらい欲しい物あるやろ?」
リンリンは何も要らないと言い続けましたが、不憫に思った愛ちゃんが何度も聞くと、
「…じゃあ、最新版のオリジンのメニューが欲しいデス」
と、答えました。
「まかせるやよ!」

そして町へ出かけ、仕事を終えた愛ちゃんは、アイカたちの頼んだおみやげを買いました。
でも、オリジンのメニューはどこにもありません。
そもそも、愛ちゃんは『オリジンのメニュー』がなんだかわかっていませんでした。
おまけに帰るとちゅう、道にまよってしまったのです。

こまっていると、遠くにあかりが見えました。
近づいてみると、とてもりっぱなお城です。
東京で例えるなら、鶯谷や円山町あたりに乱立しているような、
ネオンがパステルピンクで恥ずかしい感じのりっぱなお城でした。

けれど、いくらよんでも、お城からはだれも出てきません。
そーっと中に入ってみると、食事のメニューっぽいものがおいてありました。


「オリジンかどうかわからんけど、これはどう見てもメニューやよ。これをリンリンのおみやげにしよう」
愛ちゃんはリンリンのために、フロントに貼ってあったメニューをはがしました。
「なにやってるの!!」

そのとたん、目のまえにおそろしい淫獣があらわれました。
「商売道具のメニューをぬすむなんて最低なの!ゆるさないんだから!」
「ええー!?あの、でも、これは…」
「あなたの娘を一人ここへつれて来るの!さもないと、メッタメタのぐっちゃぐちゃに犯してやる!」
と言って、淫獣はパッとすがたを消しました。

「アッヒャーー!!」
愛ちゃんはふるえながら道をさがして、やっとのことで家にたどりつきました。
そして愛ちゃんがまっさおな顔で淫獣の話をすると、リンリンはいいました。
「愛ちゃん、ごめんなサイ。わたしがオリジンのメニューをねだったせいデス。淫獣のところへはわたしがまいりマス」
「でも…」
「いえいえ、わたしがまいりマス」
リンリンが言いはるので、愛ちゃんは泣く泣く、リンリンをラブホ…ではなく、お城へつれていきました。
するとたちまち、淫獣が出てきて、
「この娘はあずかっておくの!」
と宣言しました。
「ん…でもよく見たらあなたも美形ね。あなたもこの子と一緒にお城に入って3Pなんていかが?」
「いえ結構です」
愛ちゃんが即答してとっとと逃げたので、リンリンは内心『エエー』と思いましたが、
3Pって柿ピーの親戚かな、くらいにしか思ってなかったおかげで、心に傷を負わずに済みました。

それでも、淫獣はなんだかこわかったので、リンリンはふるえています。
それを見ると淫獣はやさしい声で、リンリンにいいました。
「こわがらなくても大丈夫なの。この城はあなたの城。食べるものも着る物も、欲しいものは想像しただけでひとりでに出てくるの。一緒に楽しく暮らそうね」

「…ハイ」
リンリンはふるえながら頷きます。
しかしそのとき雑念がわいたのか、目の前にクレープが出てきてしまいました。
淫獣は『さっそくクリームプレイ!?』とテンション上がりましたが、リンリンが泣きそうな顔をしたので少し冷静になりました。


それからしばらくの間、淫獣は隙あらばリンリンを襲おうとしました。
しかし結局逃げられたり、リンリンが無防備になると淫獣がヘタレたり、リンリンがアニメに夢中だったりしたので、
表向きはなにごともなく日々が過ぎました
それでも、なんだかんだでいつもやさしい淫獣に、リンリンはうれしくなりました。

ある日淫獣は、遠くの物を見ることが出来る、ふしぎな鏡をリンリンにくれました。
リンリンがその鏡で自分の家のようすを見てみますと、なんと、宝塚のDVDに夢中でテレビから離れない愛ちゃんのすがたがうつっていたのです。
愛ちゃんは一人で逃げた罪悪感から、現実逃避していたのでした。

「おねがい、愛ちゃんのおみまいにいかせてください」
「いいよ。・・・でも、かならず帰ってきてほしいの」
リンリンが家に帰ると、愛ちゃんは大よろこびで、宝塚病も若干よくなりました。
「元気になってヨカッタ。ではワタシは城へ戻りマス。DVDはほどほどにしてクダサイ」
「ちょ、待ちーやリンリン!またあの淫獣のとこへ行くんか!?」
「今度こそ奪われてまうで」
「テーソーの危機だゾ!!」
リンリンはすぐに帰るつもりでしたが、
愛ちゃんやお姉さんたちにひきとめられて、なかなかお城へもどれません。
そのまま数日が過ぎたある晩、今にも死にそうな淫獣の夢をみました。

「たいヘんダ。はやく帰らないと!」
むちゅうで道を走り、やっとラブ…お城ヘついた時、淫獣はグッタリして、もう口もきけません。


「ごめんなさい、ごめんなさい。わたしが帰らなかったせいデスネ。ほんとうにごめんなさい」
リンリンは涙を、ポロポロとこぼしました。
そして、その涙が淫獣の顔におちたとたん、淫獣の体が虹色に輝きました。
「…こ、これは!?」

リンリンは、光の中から白馬の王子様が現れると予想しましたが、出てきたのは
よりエロさを増した、ハイパーミラクル淫獣(美少女)でした。
「ありがとう、リンリン。おかげでレベルアップできたの!可愛い女の子が、さゆみのために泣いてくれなければ、レベルは上がらないのです。
…リンリン、どうかさゆみと結婚してください」
「…ハイ」

淫獣のあまりの愛らしさに、リンリンは思わず頷いてしまいました。
しかし、レベルアップした淫獣はヘタレが治っていたので、こんな好機を逃すはずありません。
「じゃあ早速、今日が新婚初夜なの!!リンリン大好き!!」
「エっ!?あ、いやあぁ…」
やがて二人は心身ともに合体し、リンリンはなしくずしながらもなんとなく幸せになりました。
ちなみにそれから、二人はお城を改築し、一緒にラブホを経営して楽しく暮らしたそうです。

(大体)めでたしめでたし

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