生まれてきてくれてありがとうって、ほんまに思っとぉ。
調子に乗るから言うてやらんっちゃけど。

お風呂から上がって、ふと時計を見ると23時57分だった。濡れた髪をタオルで拭きながら、携帯を手に取る。
もともと作ってあったメールをすぐに送信出来るように準備する。
あいつ、携帯とにらめっこしてみんなからのメール待っとるっちゃね。想像したらおかしくて、思わず笑みがもれた。
0時になった瞬間にメールを送信。携帯をテーブルに置いて、ベッドに寝転がった。髪が濡れているのにもかまわず、おりてきた睡魔に身を委ねようとしたときだ。

振動音と共に携帯が光る。開くと、ジュンジュンからの着信だった。

「もしもし」
『もしもし、田中サン』
「あー…誕生日おめでとう」

『ありがとうございマス。あの、メールのお礼言おうと思って』
「ってことは、みんなにかけよぉ?」
『違いマスよ、田中サンだけ』
「ふーん。ありがとう」
『誕生日だカラ、ジュンジュンのお願い聞いて?』
「えー何?」
『逢いたいデス』

思わず起き上がった。眠気なんてすぐにふっ飛んだ。今から用意したら何分かかるか。頭の中で瞬時に計算。
髪渇かして化粧して服決めて…一時間はかかるだろう。

「今からやと1時間はかかるっちゃん」
『あの、ダカラ、ジュンジュンが、行きマス』
「れなんちに?」
『ハイ。っていうカ、もう着いてるんですけど』

耳を疑った。すぐにカーテンを開けて窓の外を見下ろす。人影はない。

ピンポーン…

インターフォンが鳴った。電話を持ったまま玄関に行く。
あたし今、髪ボサボサやしすっぴんやし、おまけにパジャマやけん、出るの恥ずかしいと。
ドアの取っ手をギュッと握り、扉を開いた。
そこには、寒さで耳を赤く染めたジュンジュンが立っていた。寒い、なんて言いながら靴を脱ぎ、部屋へ上がった。
体がぐい、と引き寄せられたかと思うと、ジュンジュンの腕の中にいた。
ぎゅー、と抱き締められる。ジュンジュンの体は冷えきっていて、胸が締め付けられた。

「逢いたかった」
「…れいなも、よ」
「大スキ」
「……うん」

思ってることを、ちっとも恥ずかしがらずに言ってのける彼女に、あたしは今年も翻弄されそう。

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