あんな思わせ振りな奴に翻弄された自分が、悔しい。
「清水サンがね」
楽屋のなかで、浮き上がって聞こえてくるジュンジュンの声。聞きたくないと、思っているのに。
あのとき、自分に囁いた“好き”は嘘だったのか、という不安に陥ってしまう。もしかしたらただの、あたしの勘違いだったりして。
今になって思えば、メンバーや、友達としての“好き”だったのかもしれない。
どちらにしても、もう引き返せない。すっかり、ジュンジュンに惹かれてしまっているから。
嬉しそうに佐紀ちゃんの話をするジュンジュンを見ているのが辛くなってきたから、楽屋を出た。
しばらく違う場所で時間をつぶそう。自販機前のベンチにでも座ろうか、と歩き始めたとき、誰かに左腕を掴まれた。
振り返ると、ジュンジュンが立っていた。
「なん?」
「ドコいくデスか」
「…自販機」
「ナンで」
「理由とかないっちゃん。手…痛いと」
ジュンジュンは尚も強くあたしの腕を掴む。鋭い眼差しで見つめられる。高鳴る鼓動。こんな時にまで、ドキドキさせないで。
「最近田中サンおかしい」
「……誰のせいやと思っとん?」
「エ?」
「もういい。痛いから離してって」
手をふりほどこうとしても、力強く握られた手は離れない。その手に、ぐっと引き寄せられた。
ジュンジュンの腕の中に、抱きしめられる。
「ナンで怒ってるか教えて」
ジュンジュンはいつもまっすぐだ。包み隠さず、思ったことは口にするし、分からないことは尋ねてくる。
こんな風に聞かれたら誤魔化したりできない。
「…ジュンジュンが、佐紀ちゃんの話ばっかりするから」
恥ずかしい。ジュンジュンの背中に回した手を握りしめた。
「やっと、見てくれマシタね」
「え…?」
体が離れる。ジュンジュンが笑って、あたしのほうを見た。
「田中サンに、ワタシのこと見てほしかった」
目を細めて、泣き出しそうな顔で笑う。こんな切ない目、初めて見た。いつも楽しそうに、大きな口を開けて笑うジュンジュンとは、別人みたいだ。
「でも、佐紀ちゃんのこと、好いとおやろ?」
「田中サンへの好きとは違う」
「どう、違うと」
尋ねると、ジュンジュンはどん、とあたしの肩を壁に押し付けた。痛い。今日のジュンジュンはなんだか乱暴だ。
「どうしたらわかってくれマスか?」
懇願するような瞳であたしを見つめる。困らせるってわかってる。でも。
「……れいなだけやって証明して」
ジュンジュンが他の誰かと楽しそうに話すのが嫌だ。例え友達としてであっても、好きという言葉を他の人に言ってほしくない。
こんなの、ただのワガママだけれど。
「証明できマスよ」
え?尋ねる前に塞がれた。何度も重なる唇。あたしの肩を強く押し付けているのとはうってかわって、口づけは優しい。
少し、震えてる……?
どちらからともなく離れて、見つめ合う。心臓が痛いほどに鼓動を打つ。
「わかって…くれマシた?」
呼吸は乱れ、頬は赤く染まっているジュンジュンは、あたしのほうへ倒れこんできた。
「うん……わかった」
「良かった」
「でも、ちゃんと、好きって言って」
「…好きダヨ」
「好きは他の子にも言ってるっちゃん、れいなだけのを言うてよ」
ジュンジュンはうつむいてからしばらくして、決心したように顔を上げた。
「愛してる」
ちょっと訛った愛してる。あたしはきっと、ずっと忘れない。
「清水サンがね」
楽屋のなかで、浮き上がって聞こえてくるジュンジュンの声。聞きたくないと、思っているのに。
あのとき、自分に囁いた“好き”は嘘だったのか、という不安に陥ってしまう。もしかしたらただの、あたしの勘違いだったりして。
今になって思えば、メンバーや、友達としての“好き”だったのかもしれない。
どちらにしても、もう引き返せない。すっかり、ジュンジュンに惹かれてしまっているから。
嬉しそうに佐紀ちゃんの話をするジュンジュンを見ているのが辛くなってきたから、楽屋を出た。
しばらく違う場所で時間をつぶそう。自販機前のベンチにでも座ろうか、と歩き始めたとき、誰かに左腕を掴まれた。
振り返ると、ジュンジュンが立っていた。
「なん?」
「ドコいくデスか」
「…自販機」
「ナンで」
「理由とかないっちゃん。手…痛いと」
ジュンジュンは尚も強くあたしの腕を掴む。鋭い眼差しで見つめられる。高鳴る鼓動。こんな時にまで、ドキドキさせないで。
「最近田中サンおかしい」
「……誰のせいやと思っとん?」
「エ?」
「もういい。痛いから離してって」
手をふりほどこうとしても、力強く握られた手は離れない。その手に、ぐっと引き寄せられた。
ジュンジュンの腕の中に、抱きしめられる。
「ナンで怒ってるか教えて」
ジュンジュンはいつもまっすぐだ。包み隠さず、思ったことは口にするし、分からないことは尋ねてくる。
こんな風に聞かれたら誤魔化したりできない。
「…ジュンジュンが、佐紀ちゃんの話ばっかりするから」
恥ずかしい。ジュンジュンの背中に回した手を握りしめた。
「やっと、見てくれマシタね」
「え…?」
体が離れる。ジュンジュンが笑って、あたしのほうを見た。
「田中サンに、ワタシのこと見てほしかった」
目を細めて、泣き出しそうな顔で笑う。こんな切ない目、初めて見た。いつも楽しそうに、大きな口を開けて笑うジュンジュンとは、別人みたいだ。
「でも、佐紀ちゃんのこと、好いとおやろ?」
「田中サンへの好きとは違う」
「どう、違うと」
尋ねると、ジュンジュンはどん、とあたしの肩を壁に押し付けた。痛い。今日のジュンジュンはなんだか乱暴だ。
「どうしたらわかってくれマスか?」
懇願するような瞳であたしを見つめる。困らせるってわかってる。でも。
「……れいなだけやって証明して」
ジュンジュンが他の誰かと楽しそうに話すのが嫌だ。例え友達としてであっても、好きという言葉を他の人に言ってほしくない。
こんなの、ただのワガママだけれど。
「証明できマスよ」
え?尋ねる前に塞がれた。何度も重なる唇。あたしの肩を強く押し付けているのとはうってかわって、口づけは優しい。
少し、震えてる……?
どちらからともなく離れて、見つめ合う。心臓が痛いほどに鼓動を打つ。
「わかって…くれマシた?」
呼吸は乱れ、頬は赤く染まっているジュンジュンは、あたしのほうへ倒れこんできた。
「うん……わかった」
「良かった」
「でも、ちゃんと、好きって言って」
「…好きダヨ」
「好きは他の子にも言ってるっちゃん、れいなだけのを言うてよ」
ジュンジュンはうつむいてからしばらくして、決心したように顔を上げた。
「愛してる」
ちょっと訛った愛してる。あたしはきっと、ずっと忘れない。
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