帰りの新幹線、幸せそうに牛タン弁当食べてたジュンが言った。
「田中サン、牛タンのタンて、意味はなに?」
「は?意味?ああ、ジュン知らんと?」

れいなより物知りやけど、日本語だけは別やね。
それがちょっと嬉しくて、れいなは言った。

「舌っちゃよ。した」
「エ?した?下にあるの?」

すぐには伝わらなかったようで、ジュンは床を指差す。
ああもう、日本語の説明難しかね。

「違うけん。舌。ベロ」

べ、と舌を出して見せてあげる。
ジュンはちょっと目を丸くしてから、スッと顔を近づけてきた。
…え?

なんだかわからないうちに、その距離がゼロになる。
薄く開いたジュンの唇に、自分の舌が吸われて、チュッと音が響いた。
思わず息を飲んでしまって、とっさに言葉が出ない。
顔が離れると、ジュンが小さく笑った。

「…田中さんのタン、おいしい」
「…ちょ…」

微笑みにドキっとして、バレるはずはないのに恥ずかしくなる。
わけがわからないまま、とりあえず頭をはたいた。

「イタっ」
「いきなり何すると!?アホ!変態!死ね!」
「エー。だってだって!」

なんか言い訳しようとしたみたいっちゃけど。
聞かないことにして、弁当を口に詰め込む。
そうでもせんと、ジュンの舌の感触がずっと残ってしまいそうで。

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