7.6さゆみん 201-203


ベッドまで優しく乱暴に歩かされた私は、すでに自分でも怖いくらいに昂っていた。
これから何をされるんだろうという恐怖。
自分はどうなってしまうんだろうという不安。
こんなことをしていていいのだろうかという背徳感。
それらが、抗い難い期待と快感を私にもたらしている。

やっぱり私はおかしい。

甘く痺れる頭の片隅で、人ごとのように思う。
大好きな道重さんに酷いことをされるのが、こんなに気持ちいいなんて。
おかしいと思いながら、それを求めてしまうなんて。

「いっぱいいいこと、しようね?」
意地悪い笑いを含んだ声が、そんな思いに揺れる私の耳朶をくすぐった。
その言葉と耳にかかる温かい息だけで、私の体は蕩けそうになる。
ふらつく私の体を、道重さんはわざとのように乱暴に突き飛ばした。

「アッ・・・」
柔らかいベッドが受け止めてくれる・・・そう分かっていても、反射的に手が出そうになる。
だけど、私の両手は私のその意思に従わなくて。
そして私は思い出した。
両手が体の後ろで一つに括られていることを。

今の私は、突き飛ばされても、何もできずに不様に倒れるしかないんだ・・・

そのことを実感した私の体を、痺れるような陶酔が貫く。
一瞬意識が飛び、気がついたときには私はベッドの上にうつ伏せに転がっていた。

「んっ・・・ァ・・・」
自分でも分かるくらい切なげな声が吐息とともに漏れる。

ただベッドに転がっているだけなのに、いつもとは全然違う。
馴染まないホテルのベッドだからということでは、きっとない。

すごく不自由だ。
ただ、両手を拘束されているだけなのに。
体の前で括られたときとは全然違う拘束感と・・・被虐感。

ワタシハイマ、ムテイコウ・・・

そのことを何度となく実感させられる。
そしてその度、ゾクリとするような甘美な感覚が背筋を走って。

もっと、酷いことをされたい。
道重さんに、蹂躙されたい。

そんな思いが体の中いっぱいに膨れ上がって。
両手を後ろで括られてベッドに転がされただけで、私は完全に道重さんに支配されていた。

「ア・・・・・・」
そのとき、黒い革が食い込んだ私の手首を道重さんの柔らかい指がそっと撫でて。
私はビクンと体を震わせて息を漏らした。

「こんな風に縛られちゃったら動けないね、リンリン。怖い?」
「ァ・・・ハイ・・・ちょっと・・・怖い・・・デス・・・」
耳元で囁く道重さんの声に、回らない頭で途切れ途切れの言葉を返す。

「そっか・・・やっぱり怖いんだ・・・」
「ア・・・」
道重さんのその声に、私は慌てて言葉を探す。

怖い・・・怖いけど・・・・・・でも・・・・・・

「でも、ほどいてあげないよ?それに・・・これからもっと酷いことしちゃうから」
「ッッ・・・」

道重さんの冷酷なその言葉に。
言ってほしいと心の奥で思っていたことを見透かしたかのようなその言葉に。
体を痺れるような恍惚が満たして。
私の頭は真っ白になった。

道重さんの手が私の腕のあたりにかかり、ぐいっと無造作に持ち上げられる。
身動きの取れない私は、まるでモノのように転がされて仰向けにさせられて。
大半を白いベッドシーツに覆われていた私の視界に、声だけだった道重さんの姿が飛び込んでくる。

ほんとはこんな風にされたいんでしょ?

開けた視界の先では、そんな色を湛えた道重さんの瞳が、私を意地悪く見下ろしていて。
恥ずかしさのあまり、顔が火照って赤くなるのが自分でも分かる。

「顔、真っ赤だよ?そんなに興奮しちゃってるんだ。こんなことされて喜んじゃってるんだ」
「ち・・・・・・ちがい・・・マス・・・・・・」
「ヘンタイだね、リンリンは」
「や・・・・・・アッ・・・・・・」
私を嘲笑うような笑みを浮かべながら、道重さんがその指を私の首筋にそっと這わせる。
身悶える私を楽しそうに見つめる道重さんの唇の隙間から、舌が僅かに覗いていた。

「今日は遠慮なく虐めてあげるからね?」

そう囁いた道重さんの言葉で、私は改めて気付かされた。


もう、私は戻れないところまで来てしまったのだということを。


7.6さゆみん 314-317

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