293 名前:名無し募集中。。。[sage] 投稿日:2013/05/05(日) 00:24:31.28 0
外は未だ雪が舞っている。
電車が止まってしまって動く目処が立たないため、東京に帰れない私達は急遽ホテルに止まることになった。
それはあの日と全く同じ状態だった。



ベッドが部屋の殆どを占領した大して広くない部屋。
白く曇った窓に触れてるみると氷のように冷たくて、そっと手を離すと自分の指の跡がくっきりと残る。
それをしばらく見つめた後、衣梨奈は息を吹きかけて手の跡を隠した。
3年前のあの日、東京に帰れなくなったさゆみと衣梨奈はホテルに泊まることになった。
そして1人でいるのがつまらないからという理由でさゆみの元を尋ねた。
具体的に何が引き金になったのかは今でも分からない、気がつくと2人の唇は重なっていて数分後には体を重ねていた。
娘を去ったさゆみのことはなるべく思い出さないようにしていたのに、この現状が嫌でも衣梨奈にあの日のことを思い起こさせる。
「生田さん、どうかしたんですか?」
突然聞こえてきた声に振り返ると、3ヵ月前に入ったきた後輩が心配そうな顔つきで衣梨奈を見つめている。
6つも下の後輩に心配されるなんて、と衣梨奈は苦笑しながら後輩の頭を軽く撫でる。
すると甘えるように腕に抱きついてきて無邪気な笑みを浮かべる後輩。
若い、というより幼いというべき年の少女は正に純白で穢れを知らない。
衣梨奈は無意識のうちに後輩に手を伸ばしていた。
それは汚してやりたいという気持ちではなく、純粋な好奇心で穢れを知らない少女に触れてみたいと思った。
右手を後輩の頬に置くと、左手は素早く腰に回して衣梨奈は顔を近づけた。が、寸前のところで止める。
沈黙。
衣梨奈は静かに顔を離すとドキドキしたやろ?と言って悪戯な笑みを浮かべた。
汚してしまいそうで怖かったし、未来がある後輩を思うとできなかった。何より先が分かっているから衣梨奈はしなかった。
「もうっ!生田さん!」
後輩は頬を赤く染めながら少しだけ怒った。
「あー、ごめんごめん」
「でも・・・生田さんならちょっとはいいかも、なんて」
後輩は本気か冗談か分からないことを呟いて無邪気に笑う。
その言葉に胸が大きく震えた。そしてなるべく表に出さないように堪えた。
衣梨奈は後輩に分からないように視線を横に逸らすと、あのときのさゆみの気持ちが少しだけ分かった気がした。





タグ

どなたでも編集できます