806 名前:名無し募集中。。。[sage] 投稿日:2013/05/31(金) 00:38:45.60 0
視線の先に生田がいる。
さゆみはまた無意識のうちに見ていたことに気づくと、小さな溜め息を吐き出しながら少しだけ視線を横にずらした。
好きか?と問われたらさゆみは首を横に振るう。
生田とはそういう関係ではない、今更そんな甘ったるくて純粋な関係にはなれない。それにその相手に自分は相応しくない。
思えば生田とは7つも年が離れている。現実に考えれば高校生と社会人で付き合っていているようなものだ。
そうして付き合っている人も実際いるにはいるだろうけど、本来なら同期とか10期や11期と生田は付き合うべきだった。
アイドルだからみんな可愛いし、性格もみんな良い子だから誰と付き合ったって嫌な思いはしないに違いない。
ふと視線を向けると輪の中心に生田がいる。
またいじられたのか本人は膨れっ面だけど周りの子達は笑顔で、でもその笑顔の中には熱ぽっい視線も混じっていた。
生田の顔が笑顔に変わる。
生田は明るくて優しいから、密かに何人かから好意を抱かれているのは見ていると何となく分かる。
きっと自分は生田には相応しくない、誰かに譲るべきなんだ。と思う度にさゆみは泣きそうになる。
胸が熱くなって熱いものが込み上げてきて、無性に生田に触りたくなる。
「道重さん」
「えっ?生田?!」
いつから居たのか気がつくと目の前に生田がいた。
生田はそっとさゆみの手を取ると耳元に顔を寄せて、楽屋抜け出しませんか?と囁いてから悪戯っ子のように笑う。
「いや、でもみんなが・・・」
「みんなゲームに夢中だし、すぐに戻ってくれば気づきませんよ」
生田の言葉にさゆみは視線を少しだけ横に逸らすと、確かに生田以外のメンバーは何やらかなり盛り上がっている様子だった。
少しだけなら大丈夫かな。と思って、さゆみは小さく頷くと生田は満足そうに笑いながらさゆみの手を引く。
そのまま二人で人気のない場所までいくと、生田は体を反転させてすぐにさゆみの体を抱きしめる。
仕事場ではなるべくそういう行為をしない約束だったので、生田!とさゆみが少しだけ声を荒げると、胸に顔を埋めた生田はただ抱きしめるだけです。
変なことはしません。とくぐもった声で答える。
「・・・道重さん」
「ん?」
「好きです」
「うん」
「本当に、衣梨は道重さんのこと好きですから」
「・・・うん」
さゆみがぎこちなく生田の背中に手を回すと、そのお返しと言わんばかりに痛いくらい抱きしめられる。
そのときさゆみは生田のことは誰にも渡させない、と強く思った。






タグ

どなたでも編集できます