町外れの丘の上にポツンと建っている古い屋敷の上にポッカリと満月が輝いている夜
サキュバスえりりんはお友達のヴァンパイアさゆみちゃんのお家に遊びに来ています
「ねぇえり……さゆみ、これからお出かけしたいの……」
「えー?せっかく遊びに来てあげたのにぃー…さゆはえりちゃんを置いて行っちゃうんだ…」
「毎日毎日えりが遊びに来るからさゆみここ最近、全く獲物にありつけてないんですけど!」
「でもヴァンパイアとかって、しばらく血とか吸わなくても死なないじゃん」
「死なないけどしんどいの!って言うかね、えりはれいなといちゃこらしておけばいいじゃない!なんで毎日ここに来るのよ?!」
「だってれーな、この時間はお仕事に行ってるんだもん…」
「……暇だからってさゆみを巻き込まないでほしいの……」
「あ、そーだ!ねぇねぇさゆぅ〜お腹空いてるんでしょ?」
「誰かさんがさゆみの夜の散歩を邪魔するおかげでね…」
「じゃあさ、れーながお仕事してる所に一緒に行こうよ!」
「えりだけ行ってればいいの」
「カワイイ子、いっぱいいますよ?」
「……なん……だと?」
「あ!急にヤル気になってるしさゆのスケベ」
「…うるさいの…ところでそのれいなが働いてるお店って何?」
「えっとぉ…クラブ?ってゆーの?お酒飲んだりする所」
「ふーん。まぁ、さゆみはカワイイ子がいるなら何でも良いんだけどね…」
「あ、そうだ。忘れる所でしたよ?」
「何?」
「あのね。れーなにね、れーなのお店に行くんだったら、行く前にちゃんとれーなに連絡しなきゃいけないのね。でも、えり、れーなに今日お店に行くよって言ってこなかったぁ」
「れーなれーなってしつこいの…」
「さゆ、どうしよう…」
「電話すれば?」
「えり、ケータイとか持ってないもん」
「さゆみだって当然持ってないの」
「しかたないなぁ…じゃあ、伝書コウモリ使うしかないね!」
「…なに、それ…」
「昔の人間がやってたじゃん!鳩の足に手紙を付けて届けてもらう、アレ!アレのコウモリバージョンさゆならできるでしょ?」
「…ぃゃ…まぁ…できますけど……」

さゆみは使役している蝙を2匹呼び寄せて、その足にえりの手紙を括り付けた
「さゆ、すごいね!」
闇夜に溶けるように飛んで行った蝙を見送りながらえりは感嘆の声をあげた
「まぁ…ヴァンパイアですから…ってゆーか、どうして事前の連絡が必要なの?」
「ちゃんとね、えりが座る席を用意したいからなんだって!ウヘヘ…」
「とか言いながら、本当はえりのいない所で浮気とかしてるから、急に来られると困るからじゃないの?」
「ちがうもん!前に連絡しなくて遊びに行ったらお店が結構混んでてぇ。仕方がないからぁえり、れーながいる場所から見えない席に座ったのね。
そしたらえり、すっごいすーーっごいいっぱいナンパされたの!それでれーなすっごい心配しちゃってそれかられーなってば、えりがれーなから見える場所に座っとらんと落ち着かんとーって」
「完全に惚気話なの……」
さゆみはふにゃふにゃと笑いながらクネクネしてるえりをため息まじりに見つめるしかなかった
それからも次々に繰り出される惚気話にさゆみがウンザリしていると、先程の蝙がさゆみの元に戻って来た
「お帰りぃ〜って早いねー」
「さゆみの僕達だもの。デキる子達なの」
「ウヘヘ〜…エライねー」
ヨシヨシと蝙を膝に乗せてナデナデしているえりの隣でさゆみは蝙が持って帰って来た紙切れを開く
「“えりとさゆのふたり分の席を用意しとくっちゃん!さゆにはカワイイ女の子も用意しとくけんね!ちなみに今日はれいなのバースデーパーティーやってマス(≡´T`≡)”だって…」
「良かったねカワイイ女の子いるって」
「えりは手紙になんて書いたのよ…」
「ん?さゆが飢えてるって書いた」
「そんな事言われると極度に気まずいの…」
「まぁまぁじゃ、行こっか?」

と、言うわけでやって来たのは繁華街からひとつ細い路地に入った所にあるそれらしい建物
「ここ?」
「そう。ここですよ?」
重厚な鉄の扉の開けると重い音圧とタバコや甘い香水の匂いとキラキラした照明が一気に洪水の様に押し寄せて来て、一瞬クラッとするさゆみ
「うわぁ…なんなの?」
「さゆ?大丈夫?あ、こんばんはぁ」
絵里は空いたグラスを持って歩いていた長髪の女性に声を掛ける
「オォ、コンバンワ。席用意シテルゾ」
気さくに絵里に答えた女性は慣れた様子で絵里とさゆみをカウンター席にエスコートする
「れーな!れーなぁ!さゆ、連れてきましたよ?」
「おぉ!いらっしゃい!お友達のさゆもいらっしゃい」
いたずらっ子みたいな笑顔で迎えるれいなにさゆみはハイチェアに座りながら頬を膨らませて反論する
「別にお友達でもなんでもないの。カワイイ子がいるって言うから着いて来ただけなの」
「ん?何か言いましたか?」
「いや、別に……」
「まぁまぁで、何飲むと?」
「絵里はいつものー」
「さゆみは赤ワイン、グラスでね」
「かしこまりましたー。で、さゆはどんな子がタイプなん?」
れいなは背後の棚から適当なグラスを取出しながら、早速本題に入る
「れーな、いきなりだねぇ」
「やってさゆ、そーゆーのこだわりありそうやし」
「そうね…可愛くて素直で血がおいしくて」
「それって、えりじゃん!」
「いや、違うし…」
「絵里はダメやけんね」
「いや、いらないし…」
「さゆ、ひどーい」
そうこうしている内にふたりの前にグラスが並べられたのでとりあえず乾杯する

「れーなの誕生日とさゆの久々の食事にカンパーイ」
「カンパイ…って絵里、大声で恥ずかしいの…」
「ウヘヘ〜」
八重歯を見せながらオレンジ色のカクテルを飲む絵里とそんな絵里を見ながら頬を緩ませるれいなに呆れながらグイッと赤ワインをあおるさゆみ
「って言うか、れいなの誕生日なのにれいなは働いてるの?」
「まぁね。今日はお店のスタッフとお客さんに祝ってもらって。明日は休みやけん絵里と過ごそうかなって思っとーよ」
「もうれーなったらぁ明日は寝かせませんよ?」
「元々、寝るつもりとかないし」
「はいはい、ごちそうさまで、さゆみにはどの子を紹介してくれるの?」
ちろりと唇を舐めながら店内を軽く見回すさゆみ
「血が美味しいかはわからんけど、素直で可愛いオススメの子がおるったい」
カウンター越しに絵里と指を絡ませながら笑うれいな
「どの子?」
「さゆ、がっつき過ぎ」
「しかたがないじゃない!お腹空いてるんだもの!」
「そんなに慌てんでも夜は長いけん気に入ったら奥のVIPルームに通してあげるけん、ゆっくり楽しめばよかよ」
そう言ってれいなは「紹介したい子、ちょっと探してくる」とフロアの方へ消えて行った
「絵里はその紹介してくれる子のコト知ってるの?」
「うん。たぶんあの子かなーって」
「カワイイの?」
「うん。可愛くて素直なイイ子ですよ今、れいなのお家に絵里と一緒に居候してるの」
「なんで?」
「中国から来た子なんだってー」
「ちょっと…言葉通じるの?」
「大丈夫大丈夫めっちゃ日本語上手だから」
「ふーん」
「さゆー、お待たせー」
ちょっと不安になってたさゆみの背後かられいなののんきな声がしたので振り返るさゆみ
そこにはニヤニヤしたれいなと、その隣にれいなと同じぐらいの背丈の女の子が立っていた

「コンバンワー」
「この子がさゆに会わせたいって言ってた子やけん」
「ハジメマシテーリンリンデス!」
「あ、はじめまして…さゆみです…」
さゆみの頬がちょっと赤くなったのはお酒のせいじゃない…と思ったれいなと絵里は思わずニヤリと笑ってしまった



さゆえり「れいなはココが感じるの?w」14.2 60-161

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