リハが終わったあと、リンリンのサプライズパーティをした。

サプライズ、といっても恒例のこと。メンバーの誕生日にリハが重なれば、サプライズが行われることなんてわかりきっている。
だけど、美味しそうなケーキがそうさせるのか、リンリンが素直すぎるのか、彼女は目をキラキラと輝かせて喜んでいた。
食べ物が大好きなリンリンは、さっきからバクバクとケーキを口の中にほうり込んでいる。
さゆみたちも遠慮せずに、ケーキを取り囲んでフォークでつっついていた。

んー!おいひぃ!

ちらりとリンリンを見たら、さゆみのことを見ていたのか、ばっちり目が合った。
どきっとして、目を離せないでいたら、リンリンは何も言わずにさゆみに近づいてきた。

え、え、何?

ゆっくり近づくリンリン。スローモーションみたいに感じる。
さらさらした髪の毛が綺麗だなと思った。

小さな手が肩に触れて、リンリンが背伸びをした。
どぎまぎしてたら、ふにっと柔らかい感触を唇の端っこに感じた。

「え?」
「クリーム、ついてましたヨ」

ニコニコと笑って、自分の唇の端を軽く叩くリンリン。
さゆみはドキドキが収まらない。

しばらく放心したあと、はっとして周りを見渡したら、みんなケーキに夢中で、さゆみたちのことなんて見てなかった。

ほっとしたのと同時に、リンリンの手を握って耳元に口を寄せる。

「ちょっとリンリン、みんなの前だよ!?」
「はい?」

何故注意されているのかわからない様な表情。無邪気というか純粋というか……まぁ、これがリンリンの良さなのかな。

「……なんでもない。ありがと」
「イイエー」


満開の笑顔が眩しい。
さゆみまで笑顔になっちゃうよ。

いつも、笑顔をくれてありがとう。幸せをくれてありがとう。
ふいに感謝の気持ちでいっぱいになって、涙が込み上げた。
照れ臭くって、リンリンの頭を乱暴に撫でると、さゆみは未だケーキに群がるみんなの輪に戻る。リンリンもさゆみのすぐ後ろパタパタとついて来た。

「道重さん道重さん」

しばらくすると、くいくいっとジャージの裾をリンリンが引っ張る。
「何?」と耳を近づけたら、「今日、泊まり行ってもいいデスカ?」と照れたように聞いてきた。

「もちろんだよ。」
「あの、リンリン誕生日ダカラお願いあるんですけど…」
「ん?何?」
「今日は、リンリンが道重さんを貰ってもいいデスカ?」

「も、貰う…?」

思わず聞き返す。
色んなこと想像して、ほんのり顔が赤くなってるかも。

「あの、いつもリンリンが気持ち良くなってるダカラ、今日はリンリンが道重さん…を」

メンバーがこっちを見ていないとはいえ、ペラペラ喋りだすリンリンに慌てて口を塞ぐさゆみ。

「ぷはっ、いきなり何デスカ」
「いや、リンリン、みんないるから、ね?」

きょろきょろしながら、小さい声で言う。

「で、いいデスカ?貰っちゃっても」
「う…うん。」

絶対真っ赤になってるよね、さゆみ。

「リンリン、結構自信ありますよ。」

悪戯っ子みたいに笑うリンリン。
19歳のリンリンは、ひと味違うみたいです……。

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