甘えられると嬉しい。応えてあげたいとも思ってる。
でも、できないんだ。

「道重さん」

みっつぃがあたしを呼ぶ。同じ呼び方のはずなのに、どうして胸は高鳴らないんだろう。

「なーに?」
「ブラッディマンデイ観ましょう」
「うん!」

頭を撫でた。指を繋いだ。くすぐったそうに笑う横顔に、思わず笑みがもれた。

さっきから、何度も携帯に目をやるけど、あの子からのメールは来ない。
これみよがしにブログにみっつぃとの一日を載せてみたのに。
ブログ、見てないのかな。それとも、なんとも思ってないのかな。
今、誰と過ごしてるのかな。

胸が痛む。考えたくない。そばにいないときまで、頭の中に出てこないで。

会いたいよ。どこにいても。あたしばっかり、こんな風に想ってるのかな。

「次の話気になりますね!」
「…あ、みっつぃ、そろそろ帰るね」
「ほんまですか?駅まで送りますよ」
「ん、大丈夫。危ないし」

家を出た。駅へ向かう。
電話をかける。三コール目で出た。

『もしもし』
「もしもし、今どこ?」
『家です』
「会いたいんだけど」

返事をする電話越しの彼女の声に、笑みが含まれてる気がした。いつもあっちは余裕で、あたしばかり翻弄される。
次会うときは、大人びてみせようとしても、抱きしめられると全部忘れてしまうんだ。





憎しみにも似た感情を抱いてしまう自分自身が、一番憎い。

開く度更新されるブログ。プリクラまで載せちゃって、本当に楽しんでるみたい。
携帯をベッドに放り投げた。机の上に置いてある春ツアー用の歌詞カードを見る。
“道・リン”と書かれた部分を指でなぞった。些細な喜びは、道重さんと光井さんとのキスシーンにかきけされた。
いくら気持ちが違うからといって、他人に触れた唇で、口づけられるのは辛い。
今度こそ、終わりにしよう。どれだけ嫉妬を重ねても、わたしはあの人を咎められる立場じゃない。

低いバイブ音が鳴った。“道重さん”の文字がディスプレイに浮かぶ。一つ息を吐いて、電話に出た。

「もしもし」
『もしもし、今どこ?』
「家です」
『会いたいんだけど』

じゃあ家来てください、そう、喜びを隠して言った。

きっと、抱きしめられたら、さっきまでの決意は揺らいでしまうだろう。
どこまでもワガママな人。そう分かってても、もう、すっかり夢中になってしまっている。

インターフォンが鳴ったら、何も思ってないような顔で出よう。ヤキモチなんて妬いてませんってふうに。
そう余裕ぶっても、きっとあの人には全て分かってしまうんだろうけど。

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