「おーきーひとーみーでもっとみぃつめてこいはー」

れいなが楽屋に入ると、ジュンジュンが嬉しそうに駆け寄ってきて、真似してきた。
キモい。そう言ってカバンを机に置くと、キモくないもん、って頬を膨らます。
はいはい可愛いよーって最近茶色くした髪をぐしゃぐしゃに撫でる。こいつでかいから背伸びしないと届かないのが妙に悔しい。

「田中さんのが可愛いよー」

ぎゅーって音がするほど抱きしめられて、息が苦しい。

「はなして、痛いっちゃろ」
「ジュンジュンは痛くないもん」
「れいなは痛いの!離せバカ」

ジタバタしてみても、こいつの馬鹿力には勝てない。冷静に考えたらジュンジュンとは20cm近く身長差がある。
一度つかまったら、なかなか逃げられない。

ふと隣を見ると、さゆとリンリンが向かい合って、はにかんでた。花が飛んでるんじゃないかってくらい、甘い雰囲気。
このバカップル、またイチャイチャしとー

「今日もラブラブだねぇー」
「ほんとだねーラブラブだー」

ガキさんと絵里が笑って、通りすぎていった。え?今、ラブラブって言った?
さゆとリンリンみたいなのをラブラブって言うっちゃろ?
れいなたちもそんな風に見えとーと?

「ばかジュン、まじ離せ!」

もう一度暴れてみると、すんなり腕がほどかれた。
見上げると、ジュンジュンが悲しそうに眉を下げていた。

「ジュンジュン嫌い?」
「き、嫌いじゃないと!ちょっと苦しかったっちゃん」
「ほんと?じゃあジュンジュンのこと好き?」
「え…」

言葉に詰まる。好きだけど、その好きっていうのは友達とかメンバーに対する好きで、それならすんなり言えるはずなのに、声にならない。

「ねぇ、ジュンジュン好き?」
「うん、好き…とよ」
「わーい!ジュンジュンも田中さん好きー!」
「やーかーら!苦しいってば」

また再び包んでくる腕をほどこうとジタバタしてると、さゆがニヤニヤしながら近づいてきた。

「ほんと、ラブラブだね」

そう笑って、リンリンの手を引きながら、楽屋を出ていった。

あんたにだけは言われとーない。
そう言いたかったけど、ジュンジュンに対する抵抗で疲れきったれいなの口からは、何も言葉が出なかった。

どなたでも編集できます